マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 ここまで読んでくれた皆様に感謝を。


48、Lucky Comes True!

「スズカに勝つ方法?」

 

 天皇賞秋が終わってから、私はゴールドシップさんに相談しました。

 勝ちたい相手であるスズカさん。あのオーバーペースがマイペースな方に勝つには、どう走ればいいのか。

 私もたくさん考えましたけど、結局いい案が思いつきませんでしたから……。

 

「スズカより速く走るしかないんじゃねーか? それかスタートを止めるとか」

「スタートも止めれないぐらい速く出ちゃいますよ~……」

 

 ゲートが開いた瞬間、スズカさんはもう1歩目を出しているのです!

 私たちが1歩目を出した時には、既に2歩目。まず初速で負けてます。

 

「ゴールドシップさんだったら勝てると思います?」

「フクよー、アタシを誰だと思ってんだ? 最高にすげー強いウマ娘ゴルシちゃんだぜ?」

 

 自信満々に自分を指さして胸を張っています。

 

「ま、2,000mだったらかなりキツいと思うけどな。あのスピードには中々ついていけねーし」

「そうですか……ということは、距離が伸びれば?」

「おう。アタシもフクも長めのが走りやすいだろ? でもスズカはどっちかっつーとマイル派だろうしな。トレーナーも言ってたけど1,800mがベストなんじゃねーかな」

 

 確かに、スズカさんはあまり長めの距離は……って言ってましたね。

 トレーナーさんもマイルのGⅠを登録するか相談したりしてましたし。

 

「だからよ、きっとスズカはペースを落とす。それか、息を入れる時間が長くなる。そこで近づいてからスズカより速い末脚でちぎる」

「なるほど……でも、ハイペースで走ってるスズカさんに近づけますか?」

「半分ぐらい走ってからスパートかけりゃあいけんだろ!」

「それできるのゴールドシップさんぐらいですよ!」

 

 結局その時はそれで終わってしまいました。

 でも……URAファイナルズ決勝に出走が決まって、スズカさんに勝つには、本当にそれしかないって気づきました。

 だって、スズカさん細かく息を入れるテクニックを身につけているんですから!

 

 トレーナーさんに相談したら、たった1つだけ。

 ゴールドシップさんだからできた信じられない走り。

 それを組み込んだ、対スズカさん用の作戦を考えてくれました!

 

 ……スズカさん、息を細かく入れるのでペースは途中で落ちるかもですけど、最終直線でもスピードが保つのは確実です。

 なら、直線までに少しでも近づいて、そこから一気に行くしかありません!

 

 それなら、この京都のレース場ではどこからスパートすればいいのか。

 決まっています!

 

「ここからです!」

『京都の上り坂ァ!? 上りでマチカネフクキタルが仕掛けました! 最後方から一気に駆け上がっていきます! バ群の中を突き抜けて、一気に前に出ていきます!』

 

 隣にいたナリタタイシンさんも、ウイニングチケットさんも驚いていました。

 上り坂で仕掛けてますし、しかも集団の中を突っ切ってますからね。

 ですが、少しでもスタミナを残しながら前に出るためには、これしかありません。

 これを邪魔されないために、コーナー前でプレッシャーをかけてスタミナを削ったんですから!

 

 トレーナーさんが鍛えてくれた、信じてくれたこの私が走るための光の道!

 これを信じて走るだけです!

 

『マチカネフクキタルが上がってくる! これは大丈夫なのか! トウカイテイオー、エイシンフラッシュたちに合流しました! トーセンジョーダンと並んだぞ!』

「うそ!?」

「あそこから仕掛けてきたの!?」

「これは、ゴールドシップさん……!」

 

 いきなり後ろから突っこんできた私にみなさん驚いています。

 テイオーさんを抜かしてエイシンフラッシュさん、トーセンジョーダンさんと並びます。

 

 ここで坂を上り終えて、下り坂です。

 私はここで息を入れるためにペースを少し落とします。

 それを見たトーセンジョーダンさんがものすごい嫌そうな顔をしました。何故でしょう?

 

『サイレンススズカが坂を下る! それに差を詰めるようにミホノブルボン! その差は3バ身から2バ身半!』

 

 前に来てわかりましたが、ミホノブルボンさんがスズカさんと差を詰めていますね!

 すごいスピードとスタミナです……スズカさんよりも速く走ってるってことですからね。

 しかも少しずつ近づいていってるので、かなりのスピードですよ!

 

 第3コーナーの下り坂が終わり、第4コーナーにはいりました。

 ここから緩やかな下りで、最後にゆるやかな上りです。

 ここからみなさん動き出す時です!

 

『第4コーナー回ってサイレンススズカ逃げる逃げる! ミホノブルボン追走するが、差がもう詰まらない! 3バ身差のまま最終コーナーを抜けてしまうのか!』

『後ろからはウイニングチケットが上がってくる! ナリタタイシンも外から上がっているぞ!』

「行っくよー!」

「ここからです!」

「ここだし!」

 

 後ろからの圧が一気に強くなって、並んでいたみなさんもペースを上げました。

 私も合わせてペースを上げながら最終直線に入ります!

 

『最終直線に入った! 誰が最初にゴールするのか!』

「すぅー……ふっ!!!」

 

 スズカさんがコーナーの終わり際に少しだけペースが緩んだと思ったら、一気に加速しました!

 仕掛けが思ったよりも早いですね……! ですが、前みたいに、金鯱賞のような差ではありません!

 

「遠いっ……!」

「これがサイレンススズカの逃げ!」

 

 テイオーさんやトーセンジョーダンさんがスパートをかけていますが、全く追いつく気配がありません。

 エイシンフラッシュさんも苦し気に走っています。

 それもそうです。だってずっとハイペースのままなんですから。

 

 ですが、今日は2,400!

 まだ間に合います! この距離ならば!

 

「先に行きます!」

 

 思いきりターフを踏みしめて、一気に駆け抜けます!

 最終直線は400m! 私の全力で差せなければ負けです!

 

『先頭は変わらずサイレンススズカ! 逃げて差す! 直線で加速した! しかしミホノブルボンも追走! マチカネフクキタルも一気に上がってきた!』

『マチカネフクキタルに続いてトウカイテイオーが上がってきている! 外からはエイシンフラッシュ! トーセンジョーダン! ウイニングチケットもツッコんできた! ナリタタイシン凄まじい末脚ッ!』

 

 誰もが先頭を行くスズカさんを追いかけています。

 その差はミホノブルボンさんでさえ3バ身。そこから距離が詰まりません。

 ハイペースで差すだけのスタミナがもう残っていないんです。ただでさえ速いのに淀の坂を越えなければなりませんからね。

 

 ……体の丈夫さとスタミナ強化を大切にするフナボシで、私ができるって信じてくれるトレーナーさんでよかったです。

 だって!

 信じてくれた通りに!

 

「まだっ! 行けます!」

 

 差すだけの力がまだまだ残っているのですから!!!

 

『ミホノブルボン差が詰まらない! 後続も上がってくるがサイレンススズカに近づけていなっ! マチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルが少しずつ差を詰めている! このハイペースのレースで、マチカネフクキタルだけがサイレンススズカへと肉薄しています!』

 

 みなさんが必死に走る中、ドン! ドン! と力強くターフを踏みしめてスズカさんに近づきます!

 あの人は本当に厄介ですね!

 レースに出るだけで、1番に対策しなければならない相手になるのですから!

 

「うわあああぁぁ~~~!!!」

『マチカネフクキタル! ミホノブルボンに並ぶ! 抜かした! 残り200mを切った! サイレンススズカはまだまだ伸びる! しかしマチカネフクキタル! これは届くのか!? 距離は!? 足りるのか!』

 

 脚が重いです……肺も苦しいです……っ!

 でも、まだ走れますっ!

 

 何をしてもダメダメだった私をここまで連れてきてくれたトレーナーさんに、お返ししたいんです!

 するんです! 絶対に! 私が、恩返ししたいから!

 だって! トレーナーさんは、勝ちたいって夢を叶えてくれる! 私の運命の人だから!

 

「スズカー! フクキタルー! ゴー!」

「スズカさーん! フクちゃーん!」

「スズカー! フクー! 最高にぶっちぎれー!」

 

 ――スズカー! 逃げろーッ!!! フクー! 差しきれーッ!!!

 

 必死に走っていたら、ゴール前のみなさんが見えました。

 タイキさんも、レイさんも、ゴールドシップさんも。

 トレーナーさんも、みんな笑ってます。楽しんで応援してくれています。

 

 私の走りを、楽しんでくれているんですね。

 あんなにも笑顔で……!

 

 やっぱり、勝ちたいです!

 このレースを楽しんでくれているみなさんに福を届けたいから!

 笑う門には! 福来たる、ですよ~~~!!!

 

「あああああ~~~!!!!」

「はぁーーーっ!!!」

『サイレンススズカ粘る粘る! まだ加速しているぞ! しかしマチカネフクキタル! 他のウマ娘の時が止まっているかのような末脚ッ!』

 

 ――来たわね、フクキタル。私が勝つわ。

 ――来ましたよ、スズカさん! 抜かしちゃいますからね!

 

 目もあってません。しゃべってもいません。

 でも、お互い通じ合ってます。

 絶対に勝つという意志も通じ合ってますけどね!

 

『マチカネフクキタルが追い上げる! 残り100を切る! 2バ身差! いや1バ身! 並ぶか!? あと少し! もう距離はないぞ! サイレンススズカがまだ前にいる!』

 

 あと少し! あと少しでスズカさんに勝てます!

 ずっと負けっぱなしは嫌です! スズカさんには絶対に勝ちたいんです!

 だって! 友達で、ライバルだから!

 

『マチカネフクキタルッ! 前に出る! しかしサイレンススズカがさらに差す! マチカネフクキタルか!? サイレンススズカか!?』

 

 見ててください! トレーナーさん! スズカさん! チームのみなさん! ファンのみなさん! シラオキ様!

 

 ――お姉ちゃん!

 

 これが自信も実力も何もなくて! 幸運だけで勝とうとして!

 それでもいろんな人から大切なものをもらった!

 マチカネフクキタルの走りです!

 

「うあああああ~~~!!!!」

『マチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルが最後に抜け出した! サイレンススズカもう届かないか!? マチカネフクキタルだ! マチカネフクキタルだ!!! 京都に3度目の福が来たァーーーっ!!!』

 

 スズカさんと一緒にゴール板を駆け抜けて、そのままフラフラになりながら地面に手をつきます……ぜぇ、ぜぇ……。

 もう無我夢中で……どうなったのか、全然分かりません……。

 隣を見ると、スズカさんがゴロンと横になっています。いやぁ……お互い全てを出し切りましたね……。

 

「はぁ……はぁ……フクキタル、やっぱりあなただけね。追いかけてきたの」

「ぜぇ……ぜぇ……そ、そうでしたか?」

「ふぅ……。そうよ。だって、フクキタル以外の圧は近づいてこなかったもの」

 

 今回は得意な京都でしたし、作戦もうまくハマりました。

 ゴールドシップさんの教えもありましたから。

 

「ぶへぇ~……そういえば、どっちが勝ったんでしょうか」

「ふぅー……そうね。どうかしら。私、差されたと思うけど」

 

 2人で体を起こして掲示板を見ます。

 1番上の数字は、14。2番目が1。そしてアタマ差。

 ……か、ったんですか? スズカさんに。

 

「……フクキタルの勝ちね」

「や、やりました……! やりました~! 私! スズカさんに!」

 

 思わず立ち上がって跳びはねてしまいます!

 ついにリベンジできました!

 負け続けて、ずっと勝ちたかったスズカさんに!

 ううぅ~~~! 熱いものがこみあげてきますよお~!

 

「フクキタルー!」

「うええぇ~! やりまぐぇっ!?」

 

 横から誰かに突撃されました!

 おぶぶ! く、くるしい! 涙も引っこみましたよ!?

 

「やったねえぇー! くやしいけど感動だあああぁぁーーー!!!」

「うべべ!? ウイニングチケットさん!?」

 

 のしかかっているのはウイニングチケットさんでした。

 他にも一緒に走ったみなさんが、悔しそうにしていますがおめでとうと言ってくれます。

 

「今日はボクの負け。でも次は勝つよ!」

「テイオーさん……!」

 

 あのすごいウマ娘のテイオーさんにも宣戦布告を……!

 でも、次も私が勝ちますよ!

 

「新しいライバルだね! にしし、これからもっと楽しくなるよ!」

「そうですね。次は負けません、フクキタルさん」

「いい追込だったよ。次は負けない」

 

 み、みなさん……!

 

 感動しながら立ち上がった時、ふとトレーナーさんたちが視界に入りました。

 視線を向けると、みなさん笑顔で手を振ってくれていて。

 

 トレーナーさんは……泣いてませんか? ゴールドシップさんがしょうがないって顔で背中を擦ってますね。

 

「えへへ。勝ちましたよ、トレーナーさん!」

 

 トレーナーさん。私を育ててくれてありがとうございます。約束通り、福を届けましたよ。

 私の担当でよかったと言ってくれますか?

 そうならとても嬉しいです。

 

 万感の思いでトレーナーさんたちに手を振ります。もちろん、ここ一番の笑顔で!

 笑う門には福来たるですからね!

 

 

 

 

 

 見ててくれましたか? お姉ちゃん。

 私、みんなに福を届けることができましたよ。

 ふわりと暖かい風が私の体を撫でたような、そんな気がするのでした。




 待ちかねた福来たる!
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