マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 うまぴょい……じゃない!?


49、ウイニングライブ

 大号泣。

 今の俺はまさにそれだった。

 ウィナーズサークルで周りのみんなからすごい気を使われるぐらいに大泣きしている。

 フクキタルも俺にしがみついてしゃびしゃびに泣いているけど。

 

「かぢましたよおぉ~~~!!!」

 

 だってそうだろう!

 俺の担当しているウマ娘たちが、みんなその距離部門で1着をとっているんだから!

 すごいよ、みんな……本当にすごい。

 みんなの担当で本当に良かった。もう伝説だ、このチームは。

 

 自分のチームだと思えないというか、単純にみんなの功績が凄すぎて当事者に思えない。

 これはもうだめだ。何が起きているんだ……。

 

「おいおい泣きすぎだろ。アタシのレースもあんだからな! アタシの分も残しとけよ!」

 

 ゴールドシップに背中を思い切りバシッと叩かれる。

 凄い衝撃で思わず涙が引っ込んだ。同時に俺に引っ付いていたフクキタルが吹き飛んでいった。

 ふ、フクキタルー!

 

「ぎゃぼーん!?」

「ああ、フクちゃーん!」

 

 ソーラーレイが飛んでいったフクキタルにあわてて駆け寄っていく。

 むすっとしたゴールドシップを見て、ほったらかしにしてしまったと頭をかく。

 ごめんなと言うと、しょうがねーなあと肩をべしべし叩かれた。

 

「ま、ゴルシちゃんが京都の走りを見せてやるぜ!」

 

 自信満々に親指でビシっと自分を指さした。

 京都嫌いだって前に言ってたのにね。

 

 

 

 

 

『上り坂で一気に詰めていくのはゴールドシップだぁ! やはりこのウマ娘! 既に先頭集団の外に着けているぞ!』

「こ、これがゴールドシップさん……!」

「すごい……」

 

 ゴールドシップが淀の坂を駆け上がっていくのを見て、フクキタル達が戦慄している。

 中距離であればまあ少しはわかるが、長距離でやっているのはもう狂気でしかない。

 ミスターシービーも決死の覚悟でやっていたのだろうなぁ……ゴールドシップはいつもやるけど。

 

『最終コーナー回って直線に入った! ゴールドシップが外からきているぞ! しかし! 後方から一気に駆け抜けてくるのはシンボリルドルフ! メジロマックイーンとライスシャワーも上がってきているぞ!』

『ナリタブライアンとビワハヤヒデも追走! 後続も上がってくるが間に合うのか!』

「来た……!」

「みなさんステイヤーデス!」

 

 ルドルフが一気に突っ込んでくる! マックイーンとライスシャワーも来た! ブライアンとハヤヒデも上がってきたな……!

 ゴールドシップも大外に出ながらグングン加速していく!

 

『シンボリルドルフ強烈な末脚! 一気に前に出て先頭に抜け出した! ゴールドシップも追走! その後ろにはメジロマックイーン! すぐ後方にはライスシャワー!』

 

 ゴールドシップが加速している中、ルドルフはその瞬発力を最大限使って追い抜かして先頭へ。

 マックイーンは抜け出してきたが、ライスシャワーが後方からびっちりとついてきている。

 苦しい流れだ……しかし、ゴールドシップの本領はここからだ。

 

 ――ゴールドシップー! かましてやれー!

 

 ニィっと歯をむき出しにして目を見開くと、ゴールドシップが爆発音とともに突っ込んできた!

 

『ゴールドシップが追い上げてくる! シンボリルドルフとの差がどんどんなくなっていく! しかしシンボリルドルフ粘っている!』

『メジロマックイーン伸びないか!? ライスシャワーも苦しい! ビワハヤヒデが外から上がっていく! ナリタブライアンは苦しそうだ!』

 

 ドォン! ドォン! と爆音を鳴らしながら突っ込んでくるゴールドシップ。

 何度も聞くが、この爆音は俺にとって勝利への鐘の音だ。いつだってこの音が俺とゴールドシップを勝利へと導いてくれる。

 

「ゴールドシップさ~ん! 全勝しましょ~!!!」

「ゴールドシップー! 勝ってぇー!」

「ゴーゴー! ゴールドシップ!」

「ゴルシちゃーん! いっけえー!」

 

 ゴールドシップがどんどんスピードを上げてルドルフへと肉薄する。

 スタミナ勝負では圧倒的に分がある。他のみんなは道中ゴールドシップのプレッシャーや、それに伴う強制ペースアップを受けているからな。

 中距離では大丈夫だろうが……長距離では致命的だ。

 

 おかげでヒシアマゾンとハッピーミークは道中で完全にやられてしまった。

 マックイーンとライスシャワーはスタミナは大丈夫だが仕掛け時が遅くなってしまったせいで伸びきれていないし、ハヤヒデとブライアンは互いに牽制しすぎてさらに遅くなっている。

 これはチャンスだ!

 

『ゴールドシップがシンボリルドルフに並ぶか!? 並んだ! ゴールドシップ並んだ! しかしシンボリルドルフも負けていない! 前には行かせない気迫の走り!』

『残り100mを切った! どちらが前に出るのか! どっちだ!? 並んだままだ!』

 

 ――勝つぞー! ゴールドシップゥーーーッ!!! 全勝だァーーー!

 

 ゴールドシップがフッと笑い、ヒュッと一瞬前に出た。

 勝つには、それで十分だった。

 

『どっちだ! どっちだ!? 並んでゴールインッ! どちらが先着したのか! 写真判定です!』

 

 場内は最高の盛り上がりを見せ、どっちだ!? とざわめきが聞こえてくる。

 フクキタル達も固唾を呑んで見守っていたが、俺はもう既に泣きそうだった。

 ゴールドシップも乱れた息を整えてからこちらを見て、汗を拭いながらニッと輝かしい笑顔を見せてくれる。

 俺がぶわっと涙があふれるのと、掲示板が表示されたのはほとんど同じタイミングだった。

 

『結果が出ました! 1着は18番! ゴールドシップ!!!』

 

 わあああああああ!!! 歓声を浴びながら、ゴールドシップは思い切り腕を突き上げた!

 フクキタル達はやった~! と大喜び。周りの観客たちはおめでとう! と祝福してくれる。

 こうしてフナボシことチームフォーマルハウトは、URAファイナルズ各部門で優勝できたのだった。

 

 いつも以上のパワーでドロップキックを受けて、体に蹄鉄の跡がついたのはご愛敬。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 都合4度うまぴょいを見ることになったわけだが、URAと理事長たちから提案を受けた。

 何かと言うと、チームで最高の成績を出したということで、チーム全員をメインにしたライブを最後にやろうということだった。

 当日なわけだができるかなと思ったが、全員が必ず覚える曲が1つだけあった。

 みんなに提案してみると、全員ノリノリでオッケー! となったので、最後のアンコールでの1曲で披露することとなった。

 

 ライブ会場でアンコールをしながら待っていると、準備ができたのかライトが輝きだした。

 この集大成の時に聞く曲がアレかと思うと……なんだろう。胸が熱くなるな。

 曲が流れて、うっすらと見える。フクキタルと、左右にスズカ、タイキだ。

 

響け ファンファーレ

届け ゴールまで

 

輝く未来を

君と見たいから

 

 Make debut!

 一番最初に聞きたいライブの曲であり、全てのはじまりの曲だ。

 笑顔で段差を降りてくるフクキタルたち。ゴールドシップはセンターを後輩に譲った。ソーラーレイも、フクちゃんたちがメインのほうが盛り上がるよぉ! と譲っていた。

 

 メロディーが聞こえてくるとともに、みんなと最初に出会った時の記憶がぽつぽつと出てくる。

 

駆け出したら

きっと始まるstory

 

いつでも

近くにあるから

 

 フクキタルはゴールドシップと神社に行った時に突撃してきたんだっけ。

 またすごい個性派なウマ娘だと思ったものだ。

 今は少し落ち着いたかな?

 

手を伸ばせば

もっと掴めるglory

 

1番目指してlet's challenge

加速してゆこう

 

 タイキはトレーニングしようとしたらついてきたんだっけ。

 それから急にチーム入りしたんだよな。それと一緒にソーラーレイもついてきた。

 ゴールドシップと似て感情に正直な娘だなぁと感じていたし、ソーラーレイは思ってたよりも図々しい娘だった。ゴルシちゃんって呼び始めた時はすごいと思ったよ。

 今もそれは変わらない。2人とも真っすぐだ。

 

勝利の女神も

夢中にさせるよ

 

 スズカは最初はフクキタルと一緒にいて出会った。

 その後あった時に悩んでいたからゴールドシップと誘拐したなぁ。

 あれはうん、相当な問題行動だったな。後々エアグルーヴにすごい怒られたし。

 今ではチームのエース的存在だ。

 

スペシャルな明日へ繋がる

 

Make debut!

 

 最初はみんなトレーニングについていけなくて大変だったなぁ。

 ゴールドシップ用のものから改良して強度を下げていって。

 それでもみんな頑張ってくれていたから、メイクデビューは全勝だった!

 ゴールドシップも宝塚記念3連覇という歴史的偉業を成し遂げたしな。

 

響け ファンファーレ

届け ゴールまで

 

輝く未来を

君と見たいから

 

 ゴールドシップとは違った苦労がたくさんあったな。

 フクキタルはずっと占いに固執していて自信はないし。

 スズカは走りたがりだし。

 タイキは集中力は足りないし。

 ソーラーレイは1番体ができていなかったし。

 

 それでも、常にその存在感をみんなに見せつけていたと思っている。

 

駆け抜けていこう

君だけの道を

 

 クラシックは色々あったなぁ。

 ダービーでの惨敗、シャインフォートからの願い、フクキタルの成長、そして菊花賞の勝利。

 タイキはもうこの辺から明らかに強すぎて存在感がおかしかったな。未だに無敗のマイル王だし。

 ソーラーレイは唯一のダート路線で必死に駆け抜けてくれた。おかげでたくさんの勝利を見ることができた。

 

もっと 速く

 

I believe

夢の先まで

 

 シニア級に夢は続いていった。

 スズカの覚醒が始まったのはここからだったなぁ。

 タイキの海外遠征を考えていたのもこのころだったっけ。

 

響け ファンファーレ

届け ゴールまで

 

輝く未来を

君と見たいから

 

 未だに思う。

 スズカにお守りを持たせて本当に良かったって。

 オカルトかもしれないが、きっとスズカを守ってくれたんだって思っている。

 フクキタルの影響かもしれないけど。シラオキ様本当にありがとう。

 

駆け抜けていこう

君だけの道を

 

 タイキは海外に行って歴史的な勝利をお土産にしてくれた。

 勝てると思っていたけど、本当に強すぎるよあの娘。

 集中力も大事な時はしっかり発揮できるようになったし。

 

走れ 走れ 誰より速く

 

 ソーラーレイはダート3連戦、よく頑張ってくれたと思う。

 故障せず、楽しく、そして燃えるような戦い。

 ダートの星として、後輩たちから尊敬されるウマ娘になるだろうなぁ。

 

いつか笑える

 

最高だけ目指して

 

 フクキタルはずっと悩んで、色々な人たちから勇気をもらって。

 有マ記念でその全てを出すことができた。

 あの自信がなくて、姉にコンプレックスをもっていた女の子はもういない。

 

 いるのは、マチカネフクキタルという最高のウマ娘だ!

 

ゆこう

 

 キラキラと輝く笑顔で踊るフクキタル。

 ふわりとクールで可愛らしい笑顔のスズカ。

 元気いっぱい動いて笑うタイキ。

 満面の笑みでファンサービスをするゴールドシップ。

 控えめに微笑んでみんなを目立たせようとするソーラーレイ。

 

 みんなよくここまで走ってくれたなぁ……。

 

I believe

夢の先まで

 

 バッチリポーズを決めて、拍手と歓声を送られるチームのみんなを見て。

 みんなの担当トレーナーとして駆け抜ける機会を与えてくれて。

 

 本当によかった……本当にありがとう。

 その言葉しか出てこないぐらい、暖かなもので胸がいっぱいになるのだった。




 というわけで、影も形も見せていなかった始まりの曲で締め!
 うまぴょいと一緒で、絶対にみんなが歌う曲ですよね。

 ここまで読了ありがとうございました。
 ……もうちょっとだけ続くんじゃよ。

 最終話は18:00更新です!
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