マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ   作:あぬびすびすこ

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 終!


50、エピローグ

「いや~、また来てしまいましたねぇ」

 

 しみじみとそう話すフクキタル。

 俺たちは今、神社にいる。

 フクキタルと初めて出会った神社だ。

 

「突撃取材から逃げんのに神社に来るってファンキーだよな」

「迷惑にならないかしら……?」

「大丈夫ですよ! パワースポットですから!」

 

 何が大丈夫かわからないが、とりあえず今は取材陣を撒けたらしい。

 フナボシがURAファイナルズで4部門独占というとんでもない成績を残したおかげか、もう凄いことになっている。

 学園でも先輩後輩問わず色々なトレーナーから祝福されたりトレーニングやウマ娘への対応を聞かれるし。

 みんなも凄い色々聞かれているとか。もう大スターだ。

 

 特にフクキタルは、ずっと伸び悩んで勝ち負けをしてきて、ようやく掴み取った栄光。

 しかも芝の花形中距離部門。現在校内人気がとんでもないことになっているとか。

 

 そんな活躍ができたお礼にということでパワースポット巡りに学園外連れ出されたら、あっという間に取材にきた人たちに囲まれかけたということだ。

 久々にゴールドシップ運送を使ったが、やはりあれは腰にくるな。いてて。

 

「ここもパワースポットなんデスネ!」

「そうです! ものすごーいところなんですよ!」

「そうなんだねぇ」

 

 先ほどから巡ってきたところは、タヌキの置物が塗り替えられて招き猫になった居酒屋。

 店員の対応が良いゲームセンターなどなど。

 パワースポット……? と首を傾げてしまうようなところばかりだった。

 フクキタル的パワースポットは自分にいいことがあったかどうかで決まっている気がするなぁ。

 

「うっし! それじゃあとりあえずおみくじ引いてくっか! 行くぜおめーら!」

「レッツゴー!」

「おぉー!」

「境内であまり騒いじゃ……」

 

 フクキタルを残してみんなおみくじを引きに行った。

 ゴールドシップは相変わらず好きだなぁ……凶ばっかり出るのに。

 

「神社と言えばおみくじですよね~。わかりますよ~」

 

 うんうんと頷くフクキタル。

 ところでここはどういうパワースポットなんだ?

 

「ふっふっふ。ここはですねぇ~、最近できたパワースポットなのです! しかも最強の!」

 

 両手をパッと上にあげて自信満々に話すフクキタル。

 ふむ、と聞く体勢を見せると、嬉しそうに語りだした。

 

「むかしむかしあるところに、神社に少女がいました」

「少女はずっと悩んでいたのです。どうすれば自分の夢をかなえられるか知らなかったから」

「どういう夢なのか、あんまりわかっていなかったんですけどね」

 

 そう言って頬をかくフクキタル。

 1つ頷いて続きを促す。

 

「しかし、そこに神の使い……運命の人が現れたのです!」

「その人は奇跡をくれました。天の川をともに駆け抜けて、星を掴むという力を」

 

 嬉しそうに体を揺らしながら、上にあげた手をきゅっと握る。

 

「天の川では色々な星といっしょに駆け抜けて……最後には大きな大きな星も掴めたんです」

「おかげで少女はハッピーカムカム! 自分が輝ける星となったのでした」

「その少女はとても感謝しているそうですよ! 風のウワサですけどね~」

 

 ニコニコと笑いながら嬉しそうにしているフクキタル。

 どうやらお礼を言ってくれているみたいだ。

 

「でもですね、トレーナーさん。私、思うのです」

「夢をかなえてくれたことに感謝しているのではないんじゃないかって」

 

 何に感謝しているんだ?

 そう聞くと、手を組んでもじもじと体を揺らす。

 少し恥ずかしそうだ。

 

「それは……それはですね」

「――幸せな時間をくれたこと!」

「勝っても負けても、悩んでたときも、くじけた時も!」

「どんな時でもいっしょにいてくれたから……だからとっても幸せだったんです! 私!」

 

 満面の笑みできゅっと胸の前で手を握るフクキタル。

 俺もフクキタルと一緒に駆け抜けることができて幸せだったよと話すと、えへへ、と照れたように笑った。

 

「あっ! えっと、少女です少女! 私じゃなくって!」

 

 急に慌てだしたが時すでに遅し。

 あはは~と少し困ったように目を細める。

 

「ぐちゃぐちゃになっちゃいましたけど、ここはそういうパワースポットなのです!」

「だから最強のスポットということで……いいですよね?」

 

 ちょっとだけ不安そうに上目づかいで見てくる。

 ……ここからチームが始まったんだなと思うと、ここは本当にパワースポットなのかもしれない。

 いいんじゃないかな。俺もパワースポットだと思う。

 

「おほー! そうですよね! いや~、トレーナーさんならわかってくれると思いましたよ!」

 

 嬉しそうにパチッと手を合わせる。

 せわしなく感情を表現するのもまたフクキタルの良さだ。

 

「それじゃあお参りでもしましょうか。あ! あんな話をしましたけど、お別れじゃないですからね! 私とトレーナーさん繋ぐ糸は鋼でできてますからね!」

 

 ちょっとやそっとじゃ切れませんよ~!

 俺の手を掴んでぐいぐい引っ張っていく。

 まだまだフクキタルとの関係は続いていくようだ。

 

 お賽銭を入れて手を合わせてお参りする。

 今年もまた、みんなケガ無く楽しく走れますように。

 

 お参りし終わると、フクキタルがあっと声を出した。

 

「そういえばトレーナーさん。みなさんとおみくじ引きに行かなくていいんですか?」

 

 フクキタルが不思議そうに首を傾げる。

 そもそもフクキタルが手を引いたからこっちに来たのではと言うと、まあそうなんですけど……と頬をかいた。

 

「だってほら……ちょっと話をしたかったんですよ~」

 

 えへへと目を細めて笑う。

 フクキタルはおみくじ引かないのか?

 そう聞くと、神妙に頷く。

 

「はい。今日はいいんですよ」

 

 思わずフクキタルを2度見してしまう。

 神社に来ておみくじを引かないなんて……本当にフクキタルか?

 

「ちょっと! 流石にひどいじゃないですか!」

 

 だっていつも真っ先に引きに行こうとするから。

 

「うぎぎ……今までの行いが返ってきてますね……」

 

 フクキタルはしょぼくれてがっくり肩を落とす。

 でも、本当にどうしたんだ?

 

「いえ、いつもは引きますよ? でも、今日はいいんです」

 

 穏やかな笑みを見せてそう話す。

 何かあったのか?

 

「あ、別になにかあったわけじゃないですよ。でもいいんです」

 

 え、でも……。

 

「いいんですよ~! ほら、お汁粉でも食べに行きましょう! みなさ~ん! お汁粉食べましょ~!」

 

 そう言ってフクキタルはみんなのところに走っていった。

 不思議なこともあるものだなぁと首を傾げながら俺も歩いていくのだった。

 

 

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 トレーナーさん。

 おみくじはもう、引かなくてもいいと思うのです。

 

 だって、何が出るかは分かってるから。

 

 今日は大安吉日。

 だって――

 

 

 

 

 

 幸せをわけあえる人たちが隣にいるから!




 フクキタルに幸あれ。

 ここまで読んでいただきましてありがとうございました!
 フクキタルたちの物語は一旦完結です。

 登場人物が多くなって描写しきれてないところもあったと思いますが、楽しんでいただけたでしょうか。
 少しでもフクキタルたちを好きになってくれたなら嬉しいです。
 読了ありがとうございました!

次回作
・アグネスタキオンは超光速の夢を見るか
https://syosetu.org/novel/265964/
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