マチカネフクキタルとの3年間 with ゴルシ 作:あぬびすびすこ
ブルボン育成のプロローグもそうですね。彼女を心配する声が非常に多いです。
みんな優しい人たちなのです!
「そういうことだったの……」
トレセン学園に戻り、スズカと一緒に先輩と話し合う。
先にどうして俺が連れて行ったのかを説明して、勝手に行動してすみませんと頭を下げた。
「あの、違うんです! 私が困っていたのを、トレーナーさんが……」
「大丈夫、わかっているわ。このトレーナーはちょっと……かなりおかしな人だけど、ウマ娘のことを誰よりも思いやっているトレーナーだから」
おかしな人とはどういうことでしょうか。ちょっとむすっとしていると、2人に笑われた。
変なことはそこまでしてないと思うんだけどな……。
「ごめんね、スズカ。たくさん悩ませてしまって。あなたも気にかけてくれてありがとう」
「いえ、そんな……」
俺のほうこそ、勝手に動いてしまいましたから。
そう言うと、うん、と先輩は頷いた。
「トレーナー。私、トレーナーが教えてくれた走りがいいってわかってます。でも、その走りは、私には……」
「ええ、そうみたい。調子を崩していたのは、私もわかっていたもの。けど、私はどうしても型通りに指導してしまうから」
困ったように笑う先輩。
先輩はビワハヤヒデを指導している凄腕のトレーナーだ。
レースにおいてセオリーとされる、先行抜け出しの戦法を指導する巧者。
しっかりと管理されたトレーニングをするし、その指導にも自信があるからウマ娘たちの信頼も厚いのだ。
先輩の指導法と相性がこんなにも悪い娘がいるものだなぁと思っていたら、先輩がこっちを見た。
……え、何故俺を見るんですか、先輩。
「だから、どう? スズカ。こっちのトレーナーに指導してもらうというのは」
「え……?」
えっ? 思わず声が出てしまう。
「あなた、とても伸び伸びと走らせるじゃない。あのゴールドシップがあんなにも走るなんて、最初は凄い騒ぎだったのよ?」
最近になって言われるようになったが、当時はあの芦毛の奇行子ゴールドシップをあんなにもうまく走らせるやつがいるなんてと話題になっていたらしい。
その後、夏合宿あたりから変なトレーニングばっかりしていたから俺も相当おかしいやつだと思われていた。というか今でも変なトレーナーだと思われている。
結果はしっかり出せたし、何よりゴールドシップが楽しく走ってくれたのだからいいだろう。
少しそっぽを向いて頬をかくと、また2人に笑われた。
「あなたは自分のことだし、わからないと思うけどね。スズカはきっと、あなたみたいに自分の好きなように走らせるトレーナーが合っているのよ」
「でも、いいんですか……? せっかくスカウトしてもらったのに……」
「ええ……正直に言うと、とても惜しいわ。でもね、スズカがスズカらしく走るのが一番だもの」
それに、あなたもあと1人いたほうがいいでしょう? 先輩はそう言って俺を見てきた。
そう言えば、この前あと1人でチーム結成できるんです、と話をしたっけ。覚えててくれたんだ。
思わず頭をかいて、すみません、と口にする。いいえ、とウインクされた。か、かっこいい……!
「移籍という形で、あなたのチームに入れてちょうだい。スズカはそれでもいいかしら?」
「は、はい……あの、トレーナーさんはいいんでしょうか? こんな私で……」
スズカが困ったように体を揺らし、こちらを見る。
楽しく走るって約束してくれるなら、ぜひ!
そう言ってスズカに手を伸ばす。
「……! ありがとう、ございます!」
嬉しそうに笑うスズカは、差し出した俺の手を握った。
こうしてサイレンススズカは、俺たちのチームへと移籍したのであった。
◆ ◆ ◆
というわけで、チームが5人になりました。
トレーナー室でみんなを呼んでそう話すと、おぉ~! と声が上がる。
ゴールドシップはどこからともなく取り出したクラッカーを凄い勢いで鳴らしている。紙が飛び散ってるから!
「おほ~! これで5人になりましたね!」
「コングラチュレーション! 早速パーティをしまショウ!」
「一緒に頑張ろう、スズカさん」
嬉しそうに体を揺らすフクキタルと、フンスと気合を入れるタイキ。
スズカが入ると聞いて一番喜んでいたのはこの2人だ。ソーラーレイも、実力者ぞろいのチームに入れて嬉しいと闘志を燃やしていた。
「うっし! それじゃあチームゴルゴル星の誕生を祝うとすっか!」
「そんなチーム名だったの!?」
「初耳ですよ~! あれ、トレーナーさん。そう言えば、チームの名前って聞いたことないですよ?」
だって決めてなかったからね。
そう言ってチーム申請の書類に書き込んでいく。
「それなら、みんなで決めまショウ!」
「決まってねーならゴルゴル星でいいじゃねーか!」
「あの、ゴールドシップ。その名前はイヤよ、私」
スズカのドストレートな発言にやるじゃねーかと出ていない額の汗を拭う。
先輩と話している時はあんなに困っていたのに、ゴールドシップに物怖じしないとは……。
「こんなのはどうでしょう! フクライマネキネコ!」
「フクキタルさんの願望が強すぎるよぉ」
「なら、チームファットボディなんてどうでショウ!」
「太っ腹かー。中々いいセンスしてんじゃねーか!」
こうして会話を聞いていると、全員個性的というか、我が強いな。
少し落ち着いて周りと合わせようとしているのはソーラーレイぐらいだろうか。
なんとも苦労する立ち位置にいるが、強く生きてほしい。
「チーム名って何かルールとかあるんでしょうか?」
1等星の名前を付けることが通例になっているな。
ゴールドシップが買ってきた星座の本を取り出して、みんなに見せる。
「それならアタシはスピカだな! すげー爆音出そうだしよ!」
「イットーセー……ムムム。あ、ワタシはこれがいいデス! リギル!」
「私はリギル……いえ、スピカもいいかしら……」
それぞれが自分のお気に入りの星を考えている。
フクキタルとソーラーレイも考えこんでいるが、中々決まらないようだ。
あーでもないこーでもないと話をしているところ申し訳ないけど。そう言って書類をみんなに見せる。
みんながそれを見て、ん? と首を傾げた。
「チーム、フォーマルハウト?」
「なんだそれ。どこの星だ? ゴルゴル星の別名か?」
当たらずとも遠からず、かな。
星座の本をめくって、目当ての星を指さす。
フォーマルハウトというのは、秋に1つだけ見える1等星。
みなみのうお座にある星で、大きな魚の口という意味の名前を持っているのだ。
「お、デカい魚か! カクレマンボウだな!」
「むむむ、お魚ですか。ちょっと占ってみましょう!」
「フクキタル、何を占うつもりなの……?」
フクキタルが謎のルーレットらしきものを取り出し、手を合わせて祈り始めた。
「ふんにゃかはんにゃか……天運よ、カムトゥミ~~っ!」
全身全霊でルーレットを回す! 気合を入れすぎて、額から汗が流れている。
でも、さっきスズカも言っていたが、これは何を占っているんだろうか。
くるくる回るルーレットの針が止まった先は、『8』だった。
「8ですね~、ふむふむ……おお! トレーナーさん、素晴らしいですよ! このお魚さんの星も8文字じゃないですか! それにスズカさんも8文字です! いや~、縁起がいいですねぇ!」
「オウ! それはグッド! スズカがラッキーフィッシュになりマシタ!」
「お魚の星じゃないと思うんだけど……」
「口だからね、お魚の口」
同期2人の勢いに困惑しながらストレートに返答するスズカとフォローするソーラーレイ。
納得してくれたようでよかった。うんうんと頷いていると、ゴールドシップが俺の肩を叩いた。
「なあ、トレーナー。適当に付けたわけじゃねーんだろ? もし適当だったらゴルゴル星に改名すっからな!」
適当ではないよと話して、本の中のある部分を指さす。
「んあ? 別名?」
フォーマルハウトには、日本の地域で別名があったのだ。
例えば秋に輝いているからアキボシ、1つだけ輝いているからヒトツボッサン。
そして、ポツンと1つだけ浮かんでいるので、船の目印となったことから、
ゴールドシップがリーダーのチームにぴったりだろ?
そう言うと、彼女はへへっと笑って背中を叩いた。
「相変わらずおもしれーやつだな! ま、豪華客船に乗ったつもりでいろよな!」
楽しそうにしながら4人に突撃していくゴールドシップを見て、今年もまた頑張ろうと思うのであった。
こうして、後年個性派の魔境と呼ばれるチームフォーマルハウトが結成されたのであった。
なお、ゴールドシップが常に自分たちのチームをフナボシと呼ぶため、チームフナボシだと思われているのはまた別の話。
というわけで、ついに結成しましたチームフナボシ(フォーマルハウト)!
この小説における、本当の意味でのオリジナル要素ですね。
ここからフクキタルの育成ストーリーが始まっていきます。
アプリ版主軸なのでifストーリーなわけですが、フクちゃんが楽しく走る姿をお見せできればと思いますのでお楽しみに!