川神のブラウニー   作:minmin

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ルート選択の前振り。今回は実験的に士郎が殆ど直接登場しない感じで。


※実験的な形式で書き始めたので、合う合わないがあると思います。苦手な方はそっとブラウザバックをどうぞ。


井上準から見た川神のブラウニー

 

 

 ――ある日の校内ラジオにて。

 

 

『はーい、それでは次のお便り。柿はパキッとしたやつが好き、さんから。いいですねー、個人で好みは別れるところでしょうが、俺は好きですよ』

 

 

『私はどっちも好きだなー。硬めのやつをパクパク食べるのもいいし、すんごい柔らかいやつをスプーンで食べるのもいいよな』

 

 

『ああ、ジュクジュクのやつをスプーンで掬って食べる人とかいますよね!エフッ、オフゥッッ!!……ジュクジュクって言葉に拒否反応が……』

 

 

『ほんっとブレないなお前……』

 

 

『えー、気を取り直してお便りの内容いきますよ。最近義経ちゃんがますます凛々しくなって尊みがつらいです。どうしたらいいですか?ですって』

 

 

『わかるぅー!!私もつらーい!!つらすぎて義経ちゃんの太ももナデナデしーたーいー!!』

 

 

『先輩も先輩でブレませんよね……』

 

 

『まあ本気は置いといて、だ。学園に来たばかりの頃より強くなってるから、それが表情とか振る舞いにも表れてきてるんだろうな。仕方ないさ』

 

 

『おや。歓迎会とかもあったし、大分馴染んできてメンタルとか良くなってるんだろうなー、とは思ってましたけど。武神から、或いは武人から見てもお強くなっていらっしゃる?』

 

 

『ああ。動きや技のキレが明らかに良くなってるからな。例えるなら、レベル上限が10開放されて、同時にレベル自体も5上がったくらいは変わってる。しかも学園に来てからのこの短期間でこれだろ?多分まだ強くなるぞ』

 

 

『そう言われるとすんごいですね。それじゃあ見惚れちゃうのも仕方ない!なんの力にもなれなくてごめんなさい!はい、それでは次のお便り――』

 

 

 

 

 

「あう……あうぅ……(もじもじ)」

 

 

教室に戻ってみたら、クラスの皆がチラチラ義経を見ていて、義経は顔を赤くしてもじもじしていた。うーん、あと5年若ければ。まあ、俺が気を遣うのも変というか、義経にとっちゃ有難迷惑かもしれんしな。特に何も言わず自分の席に座って、弁当を取り出す。

 

 

「いただきます。いやあ、早弁ならぬ遅弁ってのもいいもんだね。我慢した分余計に美味く感じるよ」

 

 

 ……それに、少し前まで飯を美味いと感じる心の余裕もなかったからな。

 

 

「ほ。意外と悪くなさそうな中身じゃの。もしや自作しておるのか?」

 

 

 不死川が声を掛けてくる。こういう、何気ないとこ見てると、根は素直なんだけどな。不死川っていう生まれの影響で損をしてる、とも言える。……ある意味、俺たちと同じか。

 

 

「そ。若やユキの弁当だって、俺が作ってるんだぜ」

 

 

 あ、ユキがこっち来た。予想通りというかなんというか、俺の頭をぺちぺちしてくる。

 

 

「ハゲの料理は、士郎直伝なのだー。校内放送、お疲れ様―」

 

 

「おう、ありがとうな。って人の頭をはたくのはやめなさいよ!!」

 

 

 まあ、ユキなりの愛情表現なのはわかってるからそのまま弁当食うけど。食いにくいけど!!

 

 

「士郎、とはあの衛宮士郎か。確か、お主らは幼い頃からの友人じゃったの」

 

 

「そーそー。ユキが士郎の味に慣れちゃってたもんだからさー。苦労したんだぜ?ユキの満足する弁当作るの」

 

 

 いやもうホント大変だった。ユキは不味かったらハッキリ言う。そのおかげで『不味くはないけど満足はしてません』っていう微妙な表情をされるのって結構ダメージくるのよね。

 

 

「ふうむ……去年あやつが文化祭で淹れた紅茶も中々のものじゃったし、芸達者なやつじゃのー」

 

 

「ああ、家は思いっきり和風なのに、何故か紅茶はやたらと淹れるの上手いんだよな。本人は『ただの器用貧乏だ』って言ってたけど。……っと。ご馳走様でした」

 

 

「にょほほ。よくわきまえている庶民ではないか。しかしまあ、あれなら不死川の従者にしてやってもよいぞ」

 

 

 あ、そんなこと言うと。

 

 

「えーい♪」

 

 

「にょわああぁぁ!!いきなり人を蹴り飛ばすでなーい!!」

 

 

 ユキが不死川を廊下まで蹴り飛ばす。……あ、廊下を通りがかった士郎が不死川をお姫様抱っこでキャッチした。それを見たユキがすぐに廊下に飛び出す。士郎と一緒に歩いてたのは、川神一子か。最近、前にも増して一緒にいるなあ。俺や若としては、ユキを応援してやりたいんだけどどうしたもんかね。

 

 

「井上君は……」

 

 

「うん?」

 

 

 掛けられた声に振り返ると、いつの間にか義経が立っていた。あらま、ちょっと意外。

 

 

「井上君は、衛宮君を尊敬しているんだな」

 

 

「――――」

 

 

 一瞬、なんと返事をしようか詰まる。義経の瞳が真剣だったのと――何より、士郎について嘘はつきたくなかったから。

 

 

 

 

『ユキ!?士郎には知らせるな、と……!!』

 

 

『ごめん、トーマ』

 

 

『ま、俺は言うか言わないか半々だと思ってたがね。どうする?若』

 

 

『……そうだ、トーマ。いや、葵冬馬。お前は、どうしたいんだ』

 

 

『わ、私は…………私は。助けて、欲しい……助けてください、士郎…………』

 

 

『任せろ、冬馬』

 

 

 

 

「――ああ、尊敬してるぜ。お人よしの馬鹿だの、偽善者だの言うやつもいるけどな。俺にとって、俺たちにとって。士郎は、間違いなく英雄(ヒーロー)なんだよ」

 

 

「英雄……」

 

 

 廊下で、ユキや川神、不死川と騒いでいる士郎を見る。……士郎は、最近明るく、前向きになった。その影響で、色々なことが少しずつ、少しずつ変わってきている。俺たちの人生の岐路があそこだったというのなら、士郎の人生の岐路はそう遠くないうちに来るんだろう。俺としては、ユキが幸せになってくれるなら嬉しいが。どうなるのかねえ……

 

 

 川神の夏が、すぐそこまで迫っていた。

 

 

 




次回の最後にルート選択に入ります。まずは2択。どっちも書くけど、どっちを先に書くか。
なんかアンケートを付ける機能があった気がするので、次回(万が一)待っててくれる方がいらっしゃいましたらお気軽に投票をば。

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