川神のブラウニー   作:minmin

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ルート選択のお話。ちょっと短めですが、多い方から書いていきます。


榊原小雪、川神一子から見た川神のブラウニー

 

 

 ――僕にとって、士郎はいつだってかっこいいヒーローだった。

 

 

 僕が虐待されていた時、手を伸ばして助けてくれたのは士郎だった。トーマや準の親のことで悩んでいた時、気づいてくれたのも士郎だった。他にも色々、小さい頃からいっぱい。いーっぱい僕を助けてくれたんだ。

 

 トーマや準みたいに、いつも一緒にいるわけじゃない。それに、僕は『何を考えてるのかわかりにくい』って皆からよく言われる。だけど、士郎はいつだって気づいてくれる。僕が嬉しい時も。僕が悲しい時も。いつだったか、士郎に聞いてみたことがある。

 

 

『ねーねー士郎。士郎はどうしてそんなに、僕のことわかってくれるの?』

 

 

『桜――ユキと似てる子を識ってるから、かな。よく似てるよ』

 

 

『ふーん、そうなんだ』

 

 

 士郎がサクラって名前を言った時、とっても優しそうな顔をしてて。なんだか胸がチクってした。病気かな?と思ってトーマと準に相談したら、笑いながら心配ないって言われちゃったけど。それから、士郎がサクラって子の話をすることはなかったら気にしてなかったけど――最近、また胸がチクチクしてる。

 

 最近、士郎が明るくなった。前は、小さい頃の僕みたいに、ずっと悩んでる顔をしてたけど、今はそうじゃない。色んな人に囲まれて、楽しそうで。賑やかで嬉しそうだ。士郎が嬉しそうで、僕も嬉しい。嬉しいのに――義経とか、心とか。それに、一子とかが士郎と一緒にいると、なんだか、胸がもやもやする。僕、どうかしちゃったのかな。それで、またトーマと準に相談したら――

 

 

『それでしたら、士郎にユキとだけの時間を作ってもらうのはどうですか?例えば、そうですね。今度の土曜日、一緒に遊びに行こうと誘ってみる、というのもいいかもしれませんね』

 

 

『そうだな。行くのはユキだけだから、俺や若は誘うの手伝わねーぞ。自分で、誘ってこい』

 

 

『――うん、行ってくるね!』

 

 

『……なあ、若』

 

 

『なんですか、準』

 

 

『上手くいくといいよな』

 

 

『……そうですね』

 

 

 士郎と一緒に遊びに行く。想像するだけで、嬉しいな、楽しいな。どこにお出かけしようかな――

 

 

「士郎ー!!今度の土曜日、一緒に遊びに行こ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 ――アタシにとって、シロ君はいつだって大切な家族だった。

 

 

 アタシがまだ岡本一子で、施設にいた頃から。シロ君はずっと、大人みたいな子どもだった。子どもにとって、特に小学生にとっては、たった1学年上の子でも、すっごく大人に見える。そんな中で、シロ君は――なんていうか、大人がそのまま子どもになったみたいに、静かで頼りがいのある人だった。

 

 アタシはよくキャップと一緒に風間ファミリーの突撃担当だなんて言われてるけれど。それは、いつだってシロ君が後ろにいてくれたからだ。皆で遊びに行く時も。アタシが川神一子になって、お姉さまの妹になった時も。いつだって、シロ君が皆の後ろで支えてくれるから怖くなかった。アタシが、川神院の師範代を目指すって言った時だって――

 

 

『ねえ、シロ君。アタシ、師範代になれるかな?』

 

 

『……なれるさ、なんて無責任には言えないな』

 

 

『そう、よね。でも――』

 

 

『お姉さまの力になりたい、だろ?いいじゃないか、それで。だって、誰かの為になりたいって思いが、間違いのはずはないんだから』

 

 

『……シロ君』

 

 

『それでも、どうしてもつらくなったら。自分に負けそうになったら、いつでも俺を頼ればいい。だって、兄貴は妹を守るもんなんだからな』

 

 

 シロ君に妹って言われた時、凄く嬉しくて。でも、ちょっと残念って思っちゃう自分もいて。その時の気持ちは、いつの間にか忘れていたけれど。

 

 最近、シロ君は明るくなった。今まで、アタシたちだけに見せてくれたあの優しい顔で、学校でもよく笑うようになって。色んな人がシロ君のことをカッコイイ、って言ってて。胸が苦しくなって――だから、お姉さまと大和に相談して。

 

 

『まあ、まずはそこからだよな』

 

 

『ああ。お前は前からずっと言ってたし……ガクトやモロロも、クリスやまゆまゆの前に誘うべき2人がいるでしょって言ってたしな。キャップは言わずもがなだ。反対するやつなんていないさ』

 

 

『だけど、今回俺は助けないぞ。自分で考えて――ワン子、お前が誘ってこい』

 

 

『――ええ!!行ってくるわ、勇往邁進よ!!』

 

 

『……姉さん』

 

 

『なんだー、弟?』

 

 

『上手くいくといいね』

 

 

『……そうだな。寂しいっちゃ寂しいが、そっちのほうが絶対いいさ』

 

 

 川神一子、行きます!!

 

 

 

「シロ君!!今日の金曜集会、一緒に行きましょ!!」

 

 

 ――シロ君と、いつか本当の家族になれたらいいな。そんな気持ちは、まだお姉さまや大和には言えなかったけれど。

 

 

 




というわけで先ずは小雪ルートか一子ルートか。その他のルートは番外編で気が向いたら更新していきます。

ただ、一ヶ月後が締め切りの新クトゥルフ神話TRPG短時間シナリオ作成企画に参加したので、ちょっとの間そっちが優先になります。のんびり更新をお待ちください(待ってる人いたら)

そのお誘いに、俺は――

  • 明日出かける準備があるんだ(小雪ルート)
  • 今夜大事な用事があるんだ(一子ルート)
  • 明日から九鬼でバイトなんだ(番外ルート)
  • 源氏進軍!源氏進軍!(番外ルート)

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