川神のブラウニー   作:minmin

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というわけでまずは一番多かった小雪ルートから行くぞー!

作者は女心に疎いから、デートパートが陳腐だったら鼻で笑って次回に期待してくれよな!


The snow melts his heart
榊原小雪から見た正義の味方


 

 

 

 ――土曜日、川神駅前。

 

 

「士郎ー!!お待たせー!!」

 

 

 キキーッってブレーキ。士郎の前でピッタリ!

 

 

「ユキが足が速いのは知ってるけど、スピード出しすぎちゃいけないぞ。あと、スカートでそんなことしたら下着見えちゃうからやめておきなさい」

 

 

 士郎がなんでか僕の方を見ないままそんなことを言った。

 

 

「んー?士郎になら、見られてもいーよー?」

 

 

「ンンッ!!それでも、他の人もいるんだから外ではやめておきなさい。あと、はいこれ」

 

 

 ポスって僕の頭に柔らかい何かがのった。取ってみたら、紫色の、帽子?

 

 

「まだまだ暑いし、今日はよく晴れてるからな。プレゼントだ。日射病とかには気を付けないとだぞ。ユキは肌が白いし、余計に心配になる」

 

 

 僕の頭を優しく撫でてくれる士郎。……ああ、やっぱり。士郎がこうしてくれるのは嬉しいな。……あれ?さっき、プレゼントだ、って。

 

 

「プレゼント!?士郎、これ僕にくれるの!?」

 

 

「お、おう。その為に買ったんだし」

 

 

「ありがとう士郎!!」

 

 

 嬉しくて、つい思いっきりギューってしちゃう。士郎も、軽くだけど背中をポンポンってしてくれた。

 

 

「そんなに喜んでくれて嬉しいけど、荷物が潰れちゃうからそこまでな。それじゃあ、出発しようか」

 

 

「うん!!今日はどこ行くの?」

 

 

「ああ、まずは――」

 

 

 

 

「わーい、お寿司屋さんだー」

 

 

「水族館です。お魚さん怖がっちゃうでしょ」

 

 

 士郎が笑いながら言う。学校で先生とか先輩とかにしてた笑顔じゃなくて、僕たちに見せてくれてた本当の笑顔。最近は、学校でもよくしてくれるようになった。それが嬉しくて、ちょっと寂しい。

 

 

「んー。でも、士郎なら大丈夫じゃなーい?」

 

 

「大丈夫って、何がさ」

 

 

 例えば、えっと……さっき、水槽のこっち側に……あ、見つけた!

 

 

「あれ!準、じゃなくてタコさん。士郎なら、料理できるでしょ?」

 

 

「今サラッと酷いこと言ったなユキ。いやまあ、できなくはないけど」

 

 

 おおー、やっぱりタコさんも料理できるんだ。

 

 

「じゃあ、あれは?サメさん!」

 

 

「コバンザメだな。ユキ、あれ実はサメじゃなかったりする」

 

 

 僕が指さしたサメさんを見て、そんなことを言う士郎。そうだったの!?

 

 

「大きく分けるとスズキの仲間で、白身魚で普通に美味しいらしい。昔、木でできた船で海を渡ってた頃は、船の底にくっついてるのを釣ってよく食べてたらしいぞ」

 

 

「そ、そうだったんだ……じゃあ、あの蛇さんは?」

 

 

「……ウツボな。あれは料理したことはある。結構旨かったな」

 

 

 半分くらいはじょーだんで言ってみたんだけど。

 

 

「士郎だったら、本当にこの水族館のお魚全部料理できそうだねえ」

 

 

「いや、流石に全部は無理だろう。今日の弁当にもお魚入ってるから、それで我慢しなさい」

 

 

 士郎のお弁当!?

 

 

「士郎がお弁当作って持ってきてくれたの!?やったー!!ウェーイウェーイ!!」

 

 

 

 

 水族館を出て、海沿いのベンチで士郎と並んで座ってお弁当を開ける。久しぶりの士郎のお弁当だ!

 

 

「おおー……おにぎりとー、唐揚げとー、卵焼きとー……あ、鮭!プチトマトと、ポテトサラダ?美味しそう!いただきまーす!」

 

 

 準の作ってくれるお弁当も美味しいけれど、やっぱり士郎のが一番美味しい。トーマも、準も。この前の歓迎会の時だって、士郎の料理を食べた人は、みーんな魔法みたいに笑顔になるんだ。英雄が食べるものを作ってる人にだって負けないくらいに!

 

 

「士郎は、お料理を作る人になりたいの?」

 

 

 気になって聞いてみたら、士郎はびっくりした顔をした。そんなに変なこと聞いたかな?

 

 

「職業、かあ…………考えたことなかったなあ」

 

 

「そうなんだ?士郎はしっかりしてるから、トーマと準がお医者さんになるって決めてるみたいに、ぜーんぶ決めてるのかと思ってた」

 

 

 僕がそう言うと、士郎は少し寂しそうな顔で、じっと海を眺めてた。……胸が、少しズキリってする。士郎はたまにこんな顔をするけど、僕は好きじゃない。何もかも諦めてた、あの頃の僕の顔に似てるから。

 

 

「……子どもの頃、俺は正義の味方になりたかったんだ」

 

 

 士郎が、突然ぽつりと言った。

 

 

「……なりたかった、って。諦めちゃったの?」

 

 

「ああ。ヒーローは期間限定で、大人になると難しい、どころじゃなかった。俺はただのニセモノで。何もかもが足りなくて。それでも、正義の味方の真似事だけはしなくちゃいけないんだ、俺はそうしなくちゃいけないんだって――最近まで、そう思ってた」

 

 

 士郎は前を向いたまま、僕の方を見ようとしない。

 

 

「でも、英雄に叱られてさ。ちゃんと俺として生きようって決めたのに――今まで、何もしてこなかったから、何も見ようとしてこなかったらさ。何をすればいいのか、何をしたいのか、自分でもわからないんだ。俺はずっと、空っぽだったから」

 

 

「――じゃあさ、一緒に探そう?」

 

 

「――え?」

 

 

 士郎が、驚いてこっちを見る。その顔を、そっと両手で包んだ。士郎が、あの時僕にしてくれたみたいに、そっと。

 

 

「空っぽってことは、今からなんでも好きなものを入れられる、ってことでしょ?一緒に好きなものを探そうよ。……僕の中身は、士郎と、トーマと、準が埋めてくれたんだ。だから、今度は僕たちが士郎を助ける番だよ」

 

 

 士郎は、ぼーぜんとしたまま僕の話を聞いて――すっごく、すっごく綺麗な顔で、笑った。

 

 

「そっか、そうだよな……ありがとう、ユキ」

 

 

「う、うん……」

 

 

 顔があつい。胸が、変な風にドキドキする。僕、どうしちゃったんだろう。でも、これだけは言わないと。

 

 

「それとね、士郎。士郎の夢は、もう叶ってるよ?」

 

 

「もう叶ってる?それってどういう……」

 

 

「……あの時、士郎は僕を助けてくれた。士郎がいなかったら、今の僕はいなかったんだよ。だから――あの時からずっと、士郎は僕にとって正義の味方なんだもん!」

 

 

 士郎をギュっと抱きしめる。どれだけ言葉にしたって足りないこの想いが、少しでも士郎に伝わるように。

 

 

 ――あの時のことを思い出す。

 

 

 首を絞められていたあの時。僕はすぐに気を失っちゃったから、きっと1秒もなかったのかもしれないけれど。

 

 

『だ、誰……?』

 

 

『正義の、味方だ』

 

 

 僕を助けてくれた正義の味方の姿は、どれだけの時間が経ったって。きっと僕が地獄の底に堕ちたって、ずっとずっと、忘れたりしないんだから。

 

 

 




次回からSでいうあの展開に突入する予定……
原作だと彼女は退きましたが、槍兵が来るということは……!?

源氏進軍!目標は――

  • 総大将!義経に進軍する!
  • ベン・ケーに決まってる!
  • 変態なお姉さんは好きですか?

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