川神のブラウニー   作:minmin

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川神城攻略準備会議。若干ご都合主義入ってますがご了承くださいませ。


クリスティアーネ・フリードリヒから見た錬鉄の英雄

 

 

 ——自分にとって、衛宮士郎という人はまさに「義の人」だった。

 

 

 困っている人を見過ごせない。評議会議長だったか。そこの最上先輩の頼みで学園中の備品を直して回り。自己鍛錬も怠らず、空いた時間で街で人助けをして回る。家事も得意で、特に料理は絶品だった。あのマルさんが「特に問題はありません。褒めてやってもいいくらいです」と父様に報告したそうだから凄い人だ。うん、凄い人なのは間違いないんだけど……

 

 

「なあ、大和。自分の目が疲れてるのかな。衛宮殿の手から、どんどん矢が突然出てきているように見えるんだが」

 

 

「安心しろ、クリス。俺にもそう見えてるから」

 

 

 川神城が出現し、マープルたちの狙いが明らかになってからの作戦会議。攻城と防衛を同時にこなさなくてはならない方針が決定すると、衛宮殿が『なら、防衛戦の武器の用意は任せろ』と言い出した。直後、突然その掌から青白い光が出たと思ったら……いつの間にか、矢が存在していた。わけがわからない。

 

 

「んー、士郎。もうちょっと長いのも欲しい」

 

 

「ん、そうか。……これくらいか?」

 

 

「そうそう、それくらいで。数は……かなりの遠距離狙撃用だし、100もあったら十分じゃないかな」

 

 

「了解した。鏑矢なんてのはいるか?」

 

 

「あー、少しあってもいいかもね。乱戦になるだろうし、意思疎通に使えるかも」

 

 

 衛宮殿と京が打ち合わせをしている。……京がファミリー以外の男とこれだけ気安く喋るのは初めて見た。まあ、半分ゲストメンバーみたいなものだったと聞いたし、同じ弓兵同士話が合うんだろう。目の前で矢がポンポン出てくる光景は心臓に悪いけど。

 

 

「では、武具の用意は衛宮殿に任せよう。次は敵戦力だ。梁山泊は林冲が衛宮殿によって、史進がルー先生によって倒されたという話だったが――」

 

 

 軍師である大和、紋白たちと相談しながら戦力を割り振り、計画を練っていく。この戦、絶対に勝つ!

 

 

「――そして義経、弁慶、与一の源氏軍だ。まず義経だが」

 

 

「あ、あの!義経さんのお相手は私が!」

 

 

「いや、俺が行こう」

 

 

 まゆっちの言葉を遮って声を上げた衛宮殿に皆の視線が集まる。チラリと横目で軍師を見ると、大和も困惑気味だった。

 

 

「士郎が?でも、それは……」

 

 

 正直、厳しいだろう。士気を下げる恐れがあるからと、大和が飲み込んだ言葉を心の中で続ける。衛宮殿は弓兵だ。接近戦ができないとは言わないし、ひょっとしたら自分よりも上かもしれない。それでも、義経が相手では分が悪い。

 

 

「士郎……大丈夫?それなら、僕も一緒に……」

 

 

 榊原小雪が心配そうに声をかける。衛宮殿は、その頭にポン、と手を置いて――

 

 

「大丈夫さ。黛も、義経より弁慶の方が相性が良いだろう。片付いたら助けにきてもらえばいい。それぐらいの時間は稼げるさ。ユキは、冬馬や準のところへ行ってやってくれ」

 

 

 とても綺麗な笑顔だった。女生徒の中にも、ちょっと顔を赤らめている者がいる。

 

 

「うん……うん!トーマと準は僕に任せて!」

 

 

「……わかった。潜入の件は俺に任せろ。士郎も、時間稼ぎ頼んだぜ」

 

 

「ああ。ところで大和、1つ質問していいか?」

 

 

 なんだ?と大和が首を傾げたところで飛び出したのは、予想外の言葉だった。

 

 

「時間を稼ぐとは言ったが――別に、義経を倒してしまってもかまわないんだろう?」

 

 

 一瞬の静寂。誰もが呆然とした後に、最初に笑顔に戻ったのはやはりというか大和だった。

 

 

「ああ!ガツンとやってくれ、士郎!」

 

 

「了解。せいぜい、期待に応えるとするさ」

 

 

 仲良いんだなあ、この2人。……自分も、ちょっとカッコイイと思ってしまったのは内緒だ。

 

 

「よし、できた。一子は――自分の愛用の武器の方がいいかもしれないけど、他の薙刀使う人に渡してやってくれ」

 

 

「ん、なになに?」

 

 

 そう言いながら衛宮殿が犬に渡したのは、各所に施された龍の装飾が見事な、年月を感じさせる重厚な朱塗りの薙刀。刃引きはしてあるようだが、これは――

 

 

「セイリュウエゲツナイトウ!」

 

 

「「青龍偃月刀だっ!!」」

 

 

「あうあう」

 

 

 大和と京の突っ込みが被る。自分が使ってる武器のことくらい勉強したらどうだ、犬。

 

 

「しかし、見事なものだな……なんというか、オーラを感じる。確か中国の関羽が使っていた武器だったか?」

 

 

「ああ。というか、その関羽が使ってたものの贋作だ。刃引きはしてあるけどな」

 

 

 自分の言葉に、そんなこと軽く返してくる衛宮殿。……まて、今なんと言った?関羽が使っていた武器の贋作?じゃあ、なんかオーラっぽいものを感じるのは気のせいじゃなかったりするのか?そこの、床に転がってる綺麗すぎる剣も?怖いけど、試しに拾ってみる。

 

 

「そ、そうか。じゃあこっちの剣も有名なやつの贋作だったりするのか?」

 

 

「ああ。そっちは不毀の絶世(デュランダル)だな」

 

 

「そうか。デュランダル……デュランダルぅ!?」

 

 

 ちょっと待て!自分でも知ってるくらいの伝説の武器じゃないか!それが――どう見ても大量生産されてるんだが!?

 

 

「と言っても、ランクはCまで下がってるし、概念強度も殆どないガワだけだけどな。ただ、不毀属性だけは付けたから、大ダメージで無理やりとかじゃない限り壊れたりしないから安心して使ってくれ。あ、もちろん刃引きはしてある」

 

 

「あ、危なくはないのか!?というか、なんでそんなものがポンポン出せるんだ!?」

 

 

「大丈夫さ。真価を発揮できるのは俺か……ローランか、ヘクトール。それとマンドリカルドくらいだ。……マガイモノでも、一応俺も『錬鉄の英雄』だからな。これぐらいはさせてくれ」

 

 

 え、えぇ……そんな英雄の名前を気軽に出されてもどうしろと。そ、そうだ軍師だ!こういうときこそ軍師に相談だ!

 

 

「や、大和……」

 

 

 横を向くと、大和が諦めろという笑顔で首を振っていた。や、やまとぉ……

 

 

 ……とりあえず、この武器を部隊にどういうふうに振り分けるか考えよう、うん。

 

 




ちなみにこのデュランダルは「宝具としてはおろか概念礼装としての能力は全くないけど壊れない剣」という感じ。
まあ普通の矢をポンポン出せるだけつおいんだけどネ!

源氏進軍!目標は――

  • 総大将!義経に進軍する!
  • ベン・ケーに決まってる!
  • 変態なお姉さんは好きですか?

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