川神のブラウニー   作:minmin

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まさかのクラウ爺視点。決戦、開幕。

先日0点でつまらないって評価がついに……うーん、視点の問題なのか、構成や文章力の問題なのか。まあこういうのをやってみたくて書き始めたので視点別形式は変更するつもりないので、苦手な人はそっとブラウザバックをどうぞ。


クラウディオ・ネエロから見た衛宮少年

 

 

 

 ——思えば、初めて会った時から不思議な少年でしたね。

 

 

 ある日突然最上幽斎に連れて来られたのは、彼の娘の友人であるという赤毛の少年。一時的でいいから従者服を貸してあげてほしいと言われ、仮にとはいえ九鬼の仕事着に袖を通す資格があるかどうか見極めることになったのがきっかけだった。

 

 

『これは……中々ですね。貴方はまだ川神学園の2年生でしたね。その歳でこれだけできれば十分です。どうです?卒業されたら従者部隊として就職してみるのは。紅茶の淹れ方、お教えしますよ』

 

 

『クラウ爺がそこまで言うほどですか?私も…………美味しい』

 

 

『よかったらどうぞ。川神のブラウニーが作ったブラウニーです』

 

 

『くっ……!!ふ、ふふ』

 

 

 初めて使う茶葉や茶器で、合格と言える味の紅茶を淹れた腕。九鬼の基準ではまだまだ甘いものの、従者として基本的なところは抑えた立ち居振る舞い。初対面の李を笑わせるジョークのセンス。そして――多くの死線を乗り越えた者のみが纏うことできる、独特の空気。

 

 

『いきなりのことにも動じない度胸もあるようですね。以前、どこかで従者の経験でも?』

 

 

『執事の真似事をしたことがあるだけですよ。フィンランドの人でしたから、本場の、というわけじゃありませんし。ただまあ……地上で最も優美なハイエナ、って言われるくらいに癖が強い家でしたから。トラブルとか、突然のイベントとか、緊急事態とかには慣れてます』

 

 

 肩を竦めながらそう語ったが、後ほど調べたところ彼に海外への渡航経験はなかった。九鬼の情報網を駆使して調査しても、彼が述べたような、従者を必要とするような家と接触した様子もなし。かといって、嘘をついていた風でもなかった。

 

 

 ――そして極めつけが、あの刀。

 

 

 いくら義経たちに直接手渡された贈り物だとしても、何の検査もなしに九鬼に持ち込むわけにはいかない。それが武器となれば尚更。当然のことながら、一度預かってありとあらゆるチェックが行われる。

 

 

『どうですか、マープル』

 

 

『特に変な仕掛けだのなんだのはなかったよ。正真正銘、ただの太刀だ。……あたしでも感じ取れるくらいの気を放ってる太刀を、ただのとは表現したくないけどね』

 

 

『……彼は、この太刀を薄緑と言ったとか。源義経の佩刀だ、と』

 

 

『ああ、その件も調べたさ。義経に九鬼が与えたあの刀は、あたしが星の図書館としてのプライドを懸けてあらゆる記録、伝承、現存する刀を調べ上げ、源義経の刀として相応しい逸品を現代最高の刀匠に打たせたもんだ。癪なのは、そんなあたしが一見して認めちまうほどに、()()()()()()()()()()()、ってことさ』

 

 

 正直驚いた。あのマープルが、若者を認めるようなことを言うとは。

 

 

『だからこそ、あたしゃこれを義経に渡すべきじゃないと思うがね。材質も、技術も、経た年月でさえもがまさしく本物の薄緑なんだよ、これは。まるで、鎌倉時代のそれをそのまま現代に持ってきたみたいにね。もしこれを創ったのが本当にあの小僧だっていうのなら――お人好しの妖精なんかじゃない、得体の知れない化け物さ。警戒しとくに越したことはないよ』

 

 

 ——そんな、マープルが『化け物』と称した少年が、今敵として弓を構えている。

 

 

 椎名京と並んで鋭くこちらを見据えるその眼光は、猛禽類さながら。感じるのは、恐らくまだこの場にいる誰も見たことがない、彼の本気。

 

 直後、椎名京の矢が放たれた。

 

 

「人質がいないポイントを狙って撃ってくるのはお見事。ですが、城の上空は我が糸の結界内ですので……一本の矢たりとも通すわけにはいきませんな」

 

 

 椎名京の矢は爆発物を切断して始末する。天神館との戦いで拝見した貴方の矢は中々の威力でしたが。さて、私の結界を突破できますか?などという浅はかな余裕は

 

 

 ——次の瞬間、文字通りズタズタに引きちぎられた。

 

 

「なっ――!!」

 

 

 張り巡らせた糸から伝わってきた予想外な感触に思わず声を上げてよろけてしまう。何が、起こった?慌てて糸を手繰るも――上空に伸ばした糸の大半が切断されて使い物にならなくなっている。それも殆ど同時に、広範囲が捻じ切られるような感触だった。

 

 直後に、重い着弾音。そして――爆発音と、配下の従者たちの悲鳴。こちらも爆発する矢ですか。

 

 

「どうしました?貴方らしくもない。次はしっかりお願いしますよ」

 

 

「……わかっています」

 

 

 桐山に返事をしつつ、今度は入念に、先ほどより強く糸を張り巡らせる。車を切断し、大型重機を拘束するほどの強度で強固な結界を作り上げる。

 

 

『——偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ )!』

 

 

 モニター越しに視認した、奇妙な螺旋状に捻じれた矢。いや、アレは矢ではなく――剣?……どちらでもいい。破壊が難しいのならば、逸らすか受け止めるか。糸を束ねて誰もいない場所に誘導するか――

 

 

 ——しかし、その矢は触れることすら叶わない。

 

 

 矢が接近すると同時に、周囲の糸が一斉にズタズタに切断されていく。まるで、矢が進むと同時に空間そのものを切り裂いているかのように。その上で、一射が戦車砲の如き威力。さらには、着弾後爆発する。お手上げだ。

 

 

「……申し訳ありません、前言を撤回致します。私では、アレを止められない」

 

 

「なんと!?」

 

 

「ははっ、いいではないか!少しはやる奴がいるではないか。まあ、俺には及ばんがな!」

 

 

 桐山の驚愕、項羽の評価、マープルの沈黙。反応は様々。そして――

 

 

『……衛宮、君……』

 

 

 モニター越し、沈痛な表情で迫り来る敵を見つめる義経。

 

 英雄同士の戦いの火蓋が、切られようとしていた。

 




糸で防がれるなら空間ごと捻じ切ればいいじゃない。
まあまともに糸にぶつかっても宝具なら強引に突破できそうですけど。


そしてKOOLのネタが通じなかったことがオジサン地味にショック……これがジェネレーションギャップ……!

源氏進軍!目標は――

  • 総大将!義経に進軍する!
  • ベン・ケーに決まってる!
  • 変態なお姉さんは好きですか?

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