川神のブラウニー   作:minmin

18 / 22
うだうだ気にしてもしょうがないのでご都合主義満載で突っ走ることにしました!
ワイのくだらない妄想を出力したものを楽しみにしてくれる人が1人でもいてくれたらまあいっか!

というわけで小雪ルートボス戦その1です。


源義経から見た赤い弓兵1

 

 ――衛宮君と接して、語らってみて。義経と似ているな、と思った。

 

 

 純粋すぎて騙されやすそうとよく言われる。負の感情がなさそうだとか、怒っているところが想像できない、とも。実際、弁慶にはよくらかわれているし、心の底から怒ったことはまだないかもしれない。でも、そういう感情が全く無いかと言われればそうでもなくて。それは、主に自分に対してのものだったりする。

 

 義経は、英雄のクローンだ。英雄『源義経』のクローンとして、その名を名乗るに相応しい英雄でありたい。でも、まだまだ足りなくて。至らない自分が申し訳なくて。そういう時は、自分を責めて悩んでしまったりもする。

 

 きっと、衛宮君もそうなんだろう。まだ知り合って間もないけれど、衛宮君が人に負の感情を向けるところを見たことがない。1度だけ見てしまった衛宮君の怒りは、どこまでも自分に対してのものだった。

 

 

『――ついて来れるか、か。追いかけるどころか、その背中さえ見えているかどうか。ガワだけ真似たってどうしようもない。俺は……英雄なんかじゃ、ない』

 

 

 薄緑を貰ったお礼を改めて言おうと、休日に訪ねた衛宮家の庭。汗だくで膝を付きながら、心の底から絞り出した叫び。その後も、只管に双剣を振るい続けたその姿。人から見たら、いや、もしかしたら本人からも無様とすら思えるかもしれないその姿を――綺麗だな、と思ったことを覚えている。

 

 

 目指す人がいて。至るべき場所があって。そこに辿り着けない自分を不甲斐なく思いながらも、それでも前に進むその姿に。似ているな、なんて思ったんだ。

 

 

 ……その衛宮君が、明確な敵意をその瞳に宿して義経の前に立っている。九鬼から貰った薄緑の鞘が割れてしまいそうなほど、握る手に力が入るのが自分でもわかってしまった。

 

 

「今日は俺が渡した薄緑は持っていないんだな、義経」

 

 

「義経には……義経には、その資格はない。けれど、親代わりであるマープルの命令だから……戦うのが、義経のすべきことだ」

 

 

 義経がそう言うと、衛宮君はフッと笑った。衛宮君の笑顔は、いつも柔らかかったけれど。……あんな、冷ややかな笑みは初めてだ。

 

 

「義経らしい生真面目さだな。それはとても好ましいが――生憎と、こっちは手心を加えるつもりはないし、その余裕もないぞ?」

 

 

 即座にほぼ同時に弓から放たれる3連射。その全てが砲撃と見紛うほどの威力を誇る。

 

 

「ふっ!!」

 

 

 1振り1振りにしっかり気を載せて矢を切り伏せる。叩き落とすことはできたが、それでも腕に衝撃が残る。無造作に、と言いたくなるほどの速射でこの威力。間違いなく、与一に匹敵する射手だ。

 

 

「おっしゃあ!任せたぜ、士郎!」

 

 

「ああ、任された。行って来い、キャップ!」

 

 

 風間君たちが侵入を開始する。本当なら、それを少しでも食い止めるのが義経の役割だ。でも、初めての我儘を、心の中で叫ぼう。義経は、衛宮君と戦いたい――!

 

 

「はあっ!!」

 

 

 一息で距離を詰め、衛宮君に向けて真正面から刀を振り下ろす。正中線をなぞる一撃は、弓に変わって突然現れた、中華風の双剣の交差に受け止められた。

 

 

「これだけ近くで、一瞬で攻撃しても武器を取り出す予備動作がわからない。怖いな、衛宮君は」

 

 

「それなら、それらしい顔をしてから言ってくれ。俺には、ちっとも怖がっているようには見えないぞ?」

 

 

 ……こんな状況なのに、何故だか思わずふふっと笑ってしまった。それでも、お互い一切気は緩めない。語源とはちょっと違うけど、鎬を削るように双剣と押し合う刀に力を込めていく。衛宮君の腕が、僅かに下がった。

 

 

「……衛宮君は強いな。武人としても、心の在り方も。でも――義経は英雄だ。義経の方が、もっと強い」

 

 

 

 

 

 戦場は、少しずつ城内部への入り口に近づきつつあった。城門から内側、本丸へと辿り着くまでに何重にも用意された塀と塀を、時には植えてある木の幹に水平に着地しては、衛宮君に向かって跳ね回る。

 

 

「ええい、相変わらず無茶苦茶だな君等は!キン肉マンでもないのに足場のない空中で方向転換したり、剰え加速するんじゃあない!――ぐっ!」

 

 

 すれ違いざまに斬りつけた一撃は右手の剣で受けられたが、勢いまでは殺せずに衛宮君が吹き飛ばされる。好機と見るも、振り返って加速しようとした時には、既に空中で、それも吹き飛ばされながらも弓と矢を構える衛宮君がいた。溜めを作る一瞬の隙をついて放たれる矢。流石に最初の戦車砲のような威力はないけれど、受けて無傷で済むものでもない。矢を叩き落とした時には、衛宮君はもう立ち上がって再び双剣を構えている。こんなことが、戦いが始まってから十数度も繰り返されていた。

 

 

「先程の剣で、17。いや、18だろうか?何回消えてもまた現れるのは凄いし、義経にはどんな仕組みかはわからないが、何も消耗しない、なんてことはないはずだ」

 

 

 トン、トンとその場で軽く跳ねながら言う。義経は無傷。対して衛宮君は義経の攻撃を辛うじて凌いではいるけれど――それなりの力を込めた斬撃をずっとほぼ片手で受けているし、先程みたいに受けきれずに飛ばされることもあった。見た目に大きな傷はなくとも、それなりに消耗しているはずだ。

 

 

「…………」

 

 

 衛宮君は、無言。表情も、動かない。速さは、義経がいくつも上。力も、義経の方が少し上だ。

 

 

「何も策がないなら、このままなら義経の勝ちだ。時間稼ぎが目的ならそれでもいいけれど――城から引き離されないように、入り口近くまで押し込ませてもらう!」

 

 

 頭の天辺から、足の指の先まで全身に気を巡らせる。思いっきり踏み込んで正面から斬り伏せる。衛宮君は、これまでと同じように双剣を交差させて受け止める。けれど、違和感。

 

 

 ――受けはしたけど、勢いに逆らわずに敢えて吹き飛ばされた?

 

 

 追いかけながら考える。狙いはなんだろうか。矢を射る間を確保するため?確かに、十分な距離と時間さえあれば、最初の砲撃のような矢以上の威力を出せるのかもしれない。けれど、そんな暇は与えないし、撃たれたとしても、義経なら躱せる。いや、躱す!

 

 果たして衛宮君は、弓に矢を番えていた。一目でこれまでと格が違うとわかる、真っ黒い『剣』。そして、何よりも予想外だったのが――

 

 

「後方注意だ、悪く思え。――――赤原猟犬!」

 

 

 衛宮君と義経を結ぶ射線、その延長線上。義経の背後に、城外から衛宮君が射た攻撃で倒れた従者部隊の人がいたことだ。

 

 

 ――避けられない。躱せば、確実に後ろの人は死んでしまう。

 

 ――受けられない。斬れば、義経の腕は壊れてしまう。

 

 

 選択肢は1つしかない。刀を矢の下の潜り込ませ、無理やり頭上に軌道を逸らす!

 

 

「はあああぁぁぁぁっ――!!」

 

 

 渾身の力を込めて矢を流す。追撃が来るかと思ったが、衛宮君は何もしてこなかった。大技は続けて撃てないのか、それとも最後の切り札だったのか。…………答えは、そのどちらでもなかった。

 

 

「衛宮、君……?」

 

 

 刀を構え直して向き直った先にいたのは、見知った赤毛の少年ではなくて。浅黒い肌に、白い髪。赤い外套を羽織った青年だった。

 

 

「……霊基再臨。まあ、石田の光龍覚醒と似たようなものだ。あれ以上に時間がかかり、時間は限られている上に燃費も悪いがね。未来の可能性の一時的な先取り、とでも言えばいいか」

 

 

「つまりそれは、衛宮君の未来の姿、なのか。凄いな、義経よりよほど英雄然としているぞ」

 

 

 威圧感は3倍増しだ。義経は素直にそう思ったが、衛宮君は苦笑いして否定した。

 

 

「私は自分のことを英雄だなんて思ってはいないし、その資格もない。これも、本当は使う気なんてなかったんだ。だが――マープルたちは、冬馬や準に手を出した。ユキを、悲しませたんだ」

 

 

 ……胸がズキリと痛む。クラスメイトの2人。そして、もう1人。

 

 

『士郎!トーマ、トーマと準が……!』

 

 

「『俺』の――俺の家族は、絶対に返してもらう!決着をつけようか、義経!」

 

 

 

 




初めて同じ視点が続いていくことに。そろそろルートもクライマックスに……

源氏進軍!目標は――

  • 総大将!義経に進軍する!
  • ベン・ケーに決まってる!
  • 変態なお姉さんは好きですか?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。