ワイのくだらない妄想を出力したものを楽しみにしてくれる人が1人でもいてくれたらまあいっか!
というわけで小雪ルートボス戦その1です。
――衛宮君と接して、語らってみて。義経と似ているな、と思った。
純粋すぎて騙されやすそうとよく言われる。負の感情がなさそうだとか、怒っているところが想像できない、とも。実際、弁慶にはよくらかわれているし、心の底から怒ったことはまだないかもしれない。でも、そういう感情が全く無いかと言われればそうでもなくて。それは、主に自分に対してのものだったりする。
義経は、英雄のクローンだ。英雄『源義経』のクローンとして、その名を名乗るに相応しい英雄でありたい。でも、まだまだ足りなくて。至らない自分が申し訳なくて。そういう時は、自分を責めて悩んでしまったりもする。
きっと、衛宮君もそうなんだろう。まだ知り合って間もないけれど、衛宮君が人に負の感情を向けるところを見たことがない。1度だけ見てしまった衛宮君の怒りは、どこまでも自分に対してのものだった。
『――ついて来れるか、か。追いかけるどころか、その背中さえ見えているかどうか。ガワだけ真似たってどうしようもない。俺は……英雄なんかじゃ、ない』
薄緑を貰ったお礼を改めて言おうと、休日に訪ねた衛宮家の庭。汗だくで膝を付きながら、心の底から絞り出した叫び。その後も、只管に双剣を振るい続けたその姿。人から見たら、いや、もしかしたら本人からも無様とすら思えるかもしれないその姿を――綺麗だな、と思ったことを覚えている。
目指す人がいて。至るべき場所があって。そこに辿り着けない自分を不甲斐なく思いながらも、それでも前に進むその姿に。似ているな、なんて思ったんだ。
……その衛宮君が、明確な敵意をその瞳に宿して義経の前に立っている。九鬼から貰った薄緑の鞘が割れてしまいそうなほど、握る手に力が入るのが自分でもわかってしまった。
「今日は俺が渡した薄緑は持っていないんだな、義経」
「義経には……義経には、その資格はない。けれど、親代わりであるマープルの命令だから……戦うのが、義経のすべきことだ」
義経がそう言うと、衛宮君はフッと笑った。衛宮君の笑顔は、いつも柔らかかったけれど。……あんな、冷ややかな笑みは初めてだ。
「義経らしい生真面目さだな。それはとても好ましいが――生憎と、こっちは手心を加えるつもりはないし、その余裕もないぞ?」
即座にほぼ同時に弓から放たれる3連射。その全てが砲撃と見紛うほどの威力を誇る。
「ふっ!!」
1振り1振りにしっかり気を載せて矢を切り伏せる。叩き落とすことはできたが、それでも腕に衝撃が残る。無造作に、と言いたくなるほどの速射でこの威力。間違いなく、与一に匹敵する射手だ。
「おっしゃあ!任せたぜ、士郎!」
「ああ、任された。行って来い、キャップ!」
風間君たちが侵入を開始する。本当なら、それを少しでも食い止めるのが義経の役割だ。でも、初めての我儘を、心の中で叫ぼう。義経は、衛宮君と戦いたい――!
「はあっ!!」
一息で距離を詰め、衛宮君に向けて真正面から刀を振り下ろす。正中線をなぞる一撃は、弓に変わって突然現れた、中華風の双剣の交差に受け止められた。
「これだけ近くで、一瞬で攻撃しても武器を取り出す予備動作がわからない。怖いな、衛宮君は」
「それなら、それらしい顔をしてから言ってくれ。俺には、ちっとも怖がっているようには見えないぞ?」
……こんな状況なのに、何故だか思わずふふっと笑ってしまった。それでも、お互い一切気は緩めない。語源とはちょっと違うけど、鎬を削るように双剣と押し合う刀に力を込めていく。衛宮君の腕が、僅かに下がった。
「……衛宮君は強いな。武人としても、心の在り方も。でも――義経は英雄だ。義経の方が、もっと強い」
戦場は、少しずつ城内部への入り口に近づきつつあった。城門から内側、本丸へと辿り着くまでに何重にも用意された塀と塀を、時には植えてある木の幹に水平に着地しては、衛宮君に向かって跳ね回る。
「ええい、相変わらず無茶苦茶だな君等は!キン肉マンでもないのに足場のない空中で方向転換したり、剰え加速するんじゃあない!――ぐっ!」
すれ違いざまに斬りつけた一撃は右手の剣で受けられたが、勢いまでは殺せずに衛宮君が吹き飛ばされる。好機と見るも、振り返って加速しようとした時には、既に空中で、それも吹き飛ばされながらも弓と矢を構える衛宮君がいた。溜めを作る一瞬の隙をついて放たれる矢。流石に最初の戦車砲のような威力はないけれど、受けて無傷で済むものでもない。矢を叩き落とした時には、衛宮君はもう立ち上がって再び双剣を構えている。こんなことが、戦いが始まってから十数度も繰り返されていた。
「先程の剣で、17。いや、18だろうか?何回消えてもまた現れるのは凄いし、義経にはどんな仕組みかはわからないが、何も消耗しない、なんてことはないはずだ」
トン、トンとその場で軽く跳ねながら言う。義経は無傷。対して衛宮君は義経の攻撃を辛うじて凌いではいるけれど――それなりの力を込めた斬撃をずっとほぼ片手で受けているし、先程みたいに受けきれずに飛ばされることもあった。見た目に大きな傷はなくとも、それなりに消耗しているはずだ。
「…………」
衛宮君は、無言。表情も、動かない。速さは、義経がいくつも上。力も、義経の方が少し上だ。
「何も策がないなら、このままなら義経の勝ちだ。時間稼ぎが目的ならそれでもいいけれど――城から引き離されないように、入り口近くまで押し込ませてもらう!」
頭の天辺から、足の指の先まで全身に気を巡らせる。思いっきり踏み込んで正面から斬り伏せる。衛宮君は、これまでと同じように双剣を交差させて受け止める。けれど、違和感。
――受けはしたけど、勢いに逆らわずに敢えて吹き飛ばされた?
追いかけながら考える。狙いはなんだろうか。矢を射る間を確保するため?確かに、十分な距離と時間さえあれば、最初の砲撃のような矢以上の威力を出せるのかもしれない。けれど、そんな暇は与えないし、撃たれたとしても、義経なら躱せる。いや、躱す!
果たして衛宮君は、弓に矢を番えていた。一目でこれまでと格が違うとわかる、真っ黒い『剣』。そして、何よりも予想外だったのが――
「後方注意だ、悪く思え。――――赤原猟犬!」
衛宮君と義経を結ぶ射線、その延長線上。義経の背後に、城外から衛宮君が射た攻撃で倒れた従者部隊の人がいたことだ。
――避けられない。躱せば、確実に後ろの人は死んでしまう。
――受けられない。斬れば、義経の腕は壊れてしまう。
選択肢は1つしかない。刀を矢の下の潜り込ませ、無理やり頭上に軌道を逸らす!
「はあああぁぁぁぁっ――!!」
渾身の力を込めて矢を流す。追撃が来るかと思ったが、衛宮君は何もしてこなかった。大技は続けて撃てないのか、それとも最後の切り札だったのか。…………答えは、そのどちらでもなかった。
「衛宮、君……?」
刀を構え直して向き直った先にいたのは、見知った赤毛の少年ではなくて。浅黒い肌に、白い髪。赤い外套を羽織った青年だった。
「……霊基再臨。まあ、石田の光龍覚醒と似たようなものだ。あれ以上に時間がかかり、時間は限られている上に燃費も悪いがね。未来の可能性の一時的な先取り、とでも言えばいいか」
「つまりそれは、衛宮君の未来の姿、なのか。凄いな、義経よりよほど英雄然としているぞ」
威圧感は3倍増しだ。義経は素直にそう思ったが、衛宮君は苦笑いして否定した。
「私は自分のことを英雄だなんて思ってはいないし、その資格もない。これも、本当は使う気なんてなかったんだ。だが――マープルたちは、冬馬や準に手を出した。ユキを、悲しませたんだ」
……胸がズキリと痛む。クラスメイトの2人。そして、もう1人。
『士郎!トーマ、トーマと準が……!』
「『俺』の――俺の家族は、絶対に返してもらう!決着をつけようか、義経!」
初めて同じ視点が続いていくことに。そろそろルートもクライマックスに……
源氏進軍!目標は――
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総大将!義経に進軍する!
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ベン・ケーに決まってる!
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変態なお姉さんは好きですか?