川神のブラウニー   作:minmin

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ようやく仕事が落ち着いたので投稿再開です。
いやあ、決算関係の事務仕事でかなり疲れました……みなさんも夏バテには気をつけてね。


源義経から見た赤い弓兵2

 

 ――背後から、何か恐ろしいモノが来る。

 

 

 背筋がぞっとするほどの恐怖に慌てて横っ飛びすると、一瞬前まで自分が居た場所を赤黒い『矢』が物凄い速さで通り過ぎていった。あれは……さっき、義経が上空に逸らしたはずの!?

 

 その驚きも一瞬で途切れてしまう。慌てて飛び退って不安定な体勢でいるところに、衛宮君から放たれた矢。躱せない。刀に気を込めて無理やり叩き落とす、けど……!!相変わらず戦車砲のような衝撃――どころじゃない。確実に、先程より威力が上がっている。

 

 

「悪いな、どんどんいくぞ?」

 

 

 再び弓を構え、何もない手の中に矢を生み出す衛宮君。そして、予想通りではあるけれども、驚きに満ちた光景。

 

 

 ――あれだけの威力を保った矢が、ぐるりと向きを変えて義経目掛けて戻ってくる。

 

 

 あれはだめだ。躱すか、流すしかない。なのに――絶妙なタイミングで、衛宮君から矢が放たれる。結果、どちらかは無理して受けなくちゃならない。……ジリ貧だ。敵ながら、衛宮君は強い。何より、戦い方が上手い。それに、あの『矢』。

 

 刀のように常に手に持ったまま、そこから気を込め続けるなら兎も角。一度矢を放ってしまえば、放つ前に込められた気はやがて消えてしまうはず、なんだ。それなのに、義経が受けきれないほどの威力のままで、何度躱しても義経を自動で狙い続けている。

 

 

「無茶苦茶だな、衛宮君は!まるで武神、川神先輩みたいだ!」

 

 

「無茶苦茶なのは私ではなく、あの『矢』自体だよ。私自身は武神とは比ぶべくもない――そら」

 

 

 義経の言葉に、衛宮君はいつの間にか弓を消し、両手を空に向かって広げて答えた。

 

 

「瞬間回復なんてデタラメな技はない。一太刀浴びせれば、君の勝ちだぞ?」

 

 

 ……明らかな、挑発。そして、きっと罠だ。どうする?

 

 ――あの面倒な『矢』は、先程躱した。距離を詰める余裕はある。

 

 ――衛宮君の手に、弓はない。矢を放つまで、二呼吸の隙はある。

 

 ――きっと罠だ、間違いない。それを乗り越えるのが、英雄だ。

 

 

「…………」

 

 

 無言で刀を正眼に構える。衛宮君も、両手を広げたまま、その中に同時に双剣を出現させた。接近戦を受けて立つ構え。……まだ、動かない。

 

 遙か上空で、矢がくるりと向きを変えたのが僅かに見えた。戻ってきたとき、衛宮君を巻き込めるように、タイミングを調整する。それは、きっと衛宮君もわかっている。

 

 

 ――――静寂。

 

 

「はあっ!!」

 

 

 先に動いたのは、衛宮君。今までは明らかに違う、渾身の力で双剣を投擲してきた。流石にそれなりの力だ。石田君を超えているかもしれない、けれど――弁慶には、力も速さも及ばない!

 

 姿勢を低くし、地を這うように迫ってくる双剣の下を一気に潜り抜ける。それを見て衛宮君は即座に新たな双剣を両手に構えた。気配を探ると、先程投擲された剣はまだ背後にある。もしかしてとは思っていたけど、衛宮君は色々な武器を複数同時に、弾き飛ばした数から考えるとそれこそ無限に思えるほど生み出せるらしい。なんて、デタラメ。

 

 義経をしっかり見据えて片手で黒い剣を振るってくる衛宮君。……そこで、違和感。この、気配は――背後?

 

 

「うわわっ!?」

 

 

 振るわれた衛宮君からの斬撃を受け流しつつ、この前テレビで見たフィギュアスケートの選手みたいに上体を反らす。かなりのギリギリで、義経の背後から戻ってきた白い剣を回避した。その剣は通り過ぎていったところで消えてしまったけれど、衛宮君が今度はその手に持った白い剣を振るってくる!

 

 先程衛宮君は黒い剣を振るって、白い剣が戻ってきた。なら今度も――まずい。

 

 

「くっ……はぁっ!!」

 

 

 上体を反らせたまま、後方宙返りの要領で真上に跳び上がって斬撃を躱す。衛宮君が振るった剣の腹に着地して、更に上へ!上へ、上へ。十分に飛び上がって……義経を見上げる衛宮君に向けて、急加速する。これで――決める!

 

 衛宮君はそんな義経を静かに見つめて――両手に構えた剣が、羽のような形に巨大化した!?

 

 そのまま、与一が好きそうなかっこいいポーズで義経目掛けて跳び上がってくる。……衛宮君も、これで決着をつけるつもりみたいだ。望むところ!

 

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

「おおおおぉぉぉぉっ!!」

 

 

 交差された双剣と、その中心に合わされた刀が空中で火花を散らす。拮抗は、一瞬。加速の勢いと重力が合わさり、すぐに義経の刀が衛宮君の双剣を圧し始める。

 

 

 衛宮君の両手は塞がっている。新たな剣は生み出されはしない。これだけ密着していれば、あの『矢』が戻ってきても2人とも巻き込む。爆発しても同じだ。

 

 地面が迫る。決着が近い。

 

 

「はあぁぁぁっ!!」

 

 渾身の気を込めて刀を押す。これで、終わりだ!

 

 

 

 着地。そして、轟音。

 

 

 衝撃で舞い上がった砂埃が晴れると、衛宮君はもとの年相応の姿に戻っていた。その手にもう剣は握られていない。義経の刀は、袈裟斬りの太刀筋で――皮一枚を斬って、止まっていた。

 

 あと少し。あと一息。ほんの少し力を込めるだけでいいのに。……義経の体は、自分のものじゃなくなったみたいにピクリとも動かなかった。

 

 

「手の中以外にも、剣を出せたんだな、衛宮君は。それに、今の刀は……」

 

 

 じわり、と左腕から血が浮かぶ。着地寸前、突然空中に現れた禍々しい刀。猛烈に嫌な予感がして、刀の軌道を正中から袈裟に変えて身を捩るも、避けきれずに皮一枚を斬られてしまった。そのたった皮一枚で、今こうして動けなくなっている。

 

 

「態々手の内を明かすこともないからな。さっきの刀は、痣丸。平景清の佩刀で、源氏に対して特攻を持つ『源氏殺し』の刀だ。……いっとくけど、かなり劣化はさせてるぞ。そうじゃないと、下手したら義経は触れただけで死んじゃうからな」

 

 

 肩を竦めながらあっさりとそんなことを言う衛宮君。敵わないなあ。あれだけ素敵な薄緑が創れるんだ。そういう刀も……ああ、目が霞んできた。

 

 

「やっぱり、衛宮君は、無茶苦茶だ、な……」

 

 

「気軽に自力で物理法則を無視してくる人たちに言われたくはないな」

 

 

 そんな言葉を最後に聞いて、義経は意識を失った。

 

 

 

 




痣丸を使うってバレてたよコンチクショー!笑
一応ボス戦ひとまず終了。ちなみに一子ルートは当然ボスも違ってきます。


本編に関係ない話
最近CoC短編シナリオで「赤いマントのメリーさん~あたしキレイ?~」ってシナリオ書いたんですが、タイトルから何が混ざってるのかわかる人って今どれくらいいるんだろう……もう過去の遺物ですかねえ?

源氏進軍!目標は――

  • 総大将!義経に進軍する!
  • ベン・ケーに決まってる!
  • 変態なお姉さんは好きですか?
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