川神のブラウニー   作:minmin

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達人サイドから見たブラウニーのお話。
エミヤの投影魔術もこのお人たちから見たら「ちょっと珍しい異能」程度になっちゃうね、不思議!


川神鉄心から見た川神のブラウニー

 

 

「総代、終わりましたヨ!」

 

 

「おお、お疲れさん、ルーよ。皆もの。それで、どうじゃった?」

 

 

 ルー、鍋島、ヒューム、クラウディオ……並ぶとやはり壮観じゃな。身が引き締まる思いがするわい。

 

 

「九鬼従者部隊立ち会いのもと、川神学園、天神館双方同時に確認しましタ。回収された矢は全て川神学園が用意したレプリカと同一のものデス。間違いありませン!」

 

 

 ヒュームとクラウディオの方を見やると、2人同時に頷いた。

 

 

「九鬼の名において、不正はなかったと保証しましょう」

 

 

「すまねえなあ。うちのやんちゃどものせいで、手間かけさせちまってよ」

 

 

 鍋島が頭を下げる。交流戦後、衛宮君が放った矢に対して、何らかの不正があったんじゃないか、という申し立てが天神館の一部の学生から出た。そこまで気にすることではないんじゃが、手間がかかったぶんは正式に謝罪せねばなるまい。立場があるというのは面倒くさいもんじゃ。

 

 

「ま、気持ちはわからんでもないからの。明らかに残弾とか補給とか無視して、景気よくバンバン撃ちよったしの。実際、回収された矢の数も、予め用意したのより多かったんじゃろ?」

 

 

「ハイ。しかしそうなると、総代の『顕現』と同じような『気の具現化』でスか……。強さの壁を超えた者や、そうでなくとも気の扱いに長けた者はできなくもないでスが。それでも短時間が精一杯のはず。今までカタチを残しているのは、驚異的でス」

 

 

 ルーがしきりに感心しておるが、それだけじゃないんじゃがの。儂が解説しようかと思ったが、ヒュームがそろそろ喋りたそうにしておるので我慢しておくか。

 

 

「甘いぞ、ルー。ここから……この辺りまでが、あの妙な赤子の放った矢だ。よく見てみろ。妙だとは思わんのか?」

 

 

 ヒュームが地面に並べられた矢を指す。ルーは一瞬訝しげにしておったが……気づいたかの。

 

 

「これは……もしや、全て『同じ矢』なのでスか?」

 

 

「ああそうだ。木目や僅かな歪み、傷まで『全く同一』の矢が100本以上……具現化したというよりは、複製したという方が正しいだろうよ」

 

 

「衛宮君は確か、弓も矢も事前に持ち込んでいなかったはずじゃからの。おそらく、椎名京あたりの矢から複製したんじゃろ。ま、どちらにせよ自力で用意したもんなら問題無しじゃ。施設を壊さないなら、その場にあるものは何でも活用してもよい、武器を即席で作ってもよい、と予め言ってあるしの」

 

 

 儂の言葉にその場にいる全員が頷く。よし、これでこの件は仕舞じゃな。

 

 

「コピペで負けたなんて聞いたらまーたうちの奴らが騒ぎそうだな……詳しいことは黙っておくか」

 

 

「元気で良いではありませんか。しかし、興味深いことをなさる方がいらっしゃいますね。将来が楽しみです」

 

 

「ふん。興味深かろうが、所詮は赤子よ」

 

 

 衛宮君か……彼も変わった、いや、元に戻ったみたいじゃし、これからが楽しみじゃの。

 

 

 

 

 

 

 川神院に引き取られてから、初めて一子が友人を連れてきた時、門下生たちは皆大いに喜んだ。彼に感謝し、これからも仲良くしてやってくれと皆が言っていた。年齢に似合わず、礼儀正しい物静かな少年だった。

 

 

 何度目かの訪問の際、一子にせがまれて彼が弓を引くことになった時は、修行僧たちがこぞって見物しにいった。そして――

 

 

 一矢で感心した。二矢で魅せられた。そして――三矢で、羨望と驚愕の眼差しが彼を包んだ。

 

 

 前者は、彼の腕に対して。後者は、年端も行かぬ子どもがそこまでの境地に達するために、どのような経験をしたのか、どのような精神を有しているのか、ということに対して。……勘の良い者は、察していたのだろう。翌日から、彼への態度が腫物を扱うようなものになったのだから。

 

 彼もそれをわかっていたのか、以降はあまり長居をしなくなった。それでもなお礼儀正しいまま振る舞う少年の背中に、声をかけてみたことがある。

 

 

『見事な腕じゃの。武道とは道を求めその先の境地に至ることだとするならば――お主は既に、ある種の境地に間違いなく至っておる』

 

 

 階段を降りようとしていた少年が、ゆっくりと振り返った。その瞳は――驚くほどに、空虚。一体どんな人生を歩めば、この歳にしてこのような目ができるのか。

 

 

『……そんな大したもんじゃないです。あれは副産物のようなものだし。俺が弓を引くのは、単に衛宮士郎ならばそうするだろうってだけの、真似事です。……俺自身は、からっぽだから』

 

 

『そうじゃの。別に弓でなくともよいのじゃろう。お主は既に会心に入る術を心得ておる。もっと言えば、そもそも何かを持つという行為が余分じゃ。毎日引こうが、数年ぶりに引こうが、お主は変わらず命中させるじゃろう』

 

 

 儂がそう言うと、驚きで表情がほんの僅かだけ動く。ちーと、お節介を焼いておくかの。

 

 

『じゃがの、弓はなるべく引いておくとええ。お主はまだまだ若いし、人生は長いんじゃ。今はまだ何も入っていなくとも――その中身が満たされる時がきっとくる。その時、想いを込めて弓を引けるように、準備だけはしておくんじゃの』

 

 

『……そんな時が、くるんでしょうか』

 

 

『お主より何倍も生きとる爺が言うんじゃ、間違いないわい』

 

 

 お主の中身を満たすのが、一子や百代であることを、儂も祈っておるよ。

 

 

 あの時、敢えて口に出さなかったあの言葉が、実を結びつつある。川神に生じつつある、若者たちの熱と波。それに揉まれて、衛宮君も一皮向けてくれるはずじゃ。爺としては、その隣に一子がおれば尚の事良い。

 

 

 ――若者たちの未来に幸あれ。

 

 

 心から、そう思った。

 

 

 




ちょっとかっこいいおじいちゃんを書きたかった。
前回の小島先生のお話と同じくらいの時間のお話で、前回と合わせて幕間のお話って感じです。
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