前回までのあらすじ
飛び降り自殺中に知らない場所に連れられた少年は、現状の確認と休憩を合わせてした後、その場所を縄張りだとしているだろう少女に刀を向けられ、打開策を色々と考えた結果、いつの間にかまた飛び降りしていた。
トットッと足音を立てながら、俺は石階段を登っていた。足音など普段はさほど気にしないものの、となりに音を全く立てずに同じ階段を登る人がいれば、自然と俺の足音は目立って気になるのは仕方が無いというものだ。
さっき俺を助けてくれた空を飛ぶ力の応用だろうか、体重を軽くする的な。もしかしたら3mm程度浮いていたり…。ドラえもんかな?
足音についての謎を考えていると、ふわっと彼女の周りを漂う白い半透明の物体が目に入った。…曰く、それは自分の半身だと。自分は半人半霊であり、半分は幽霊だと。
ここ幻想郷に来てから持った疑問点は概ね彼女に質問して、説明付きで解答が返ってきた。…ほぼほぼ納得と理解ができる範囲を超えてたけど。
はぁ、とひとつため息をついた。
「…妖夢さん、さっきの話は全部本当の事なんだよな」
「流石に無知で無一文という状況の貴方に誰も嘘はつけませんよ。まぁ、無理に信じようとするよりも、今は知識として覚えておくだけで十分です」
俺にこの世界の知識を与えてくれた魂魄妖夢さんは、俺を飛び降り(二回目)から救ってくれた命の恩人だ。…俺がそうなった原因も主にこの人だけど。
でも、身元不明の俺を窮地から救ってくれたことは素直に感謝した。知り合いと会う事もないだろうこの場所で、こういう優しさに触れる事ほど、精神が安らぐものは無いだろうから。
「ありがとう、そう言ってもらえると気分が楽になる」
どんな状況でも、"感謝と謝罪は相手の目を見ながら"が俺の座右の銘みたいなもので、それは階段を登りながらでも変わらない。
ただ、それを伝えた相手である妖夢さん自身は、少し照れたのか顔を薄い赤で染めて、俺から目線を逸らした。…マジでこの人可愛いな。
話が途切れて、階段上の方を見る。すると、いつの間にか階段はすぐ近くで途切れており、頂上が消えたかのように思えた。
変な勘違いを起こしている俺に、妖夢さんの声が響いてくる。
「もうすぐ頂上ですよ、長い階段お疲れ様でした」
「いえいえ、温かいご飯の為ならばどこへでも」
「…ご飯が主目的なんですね」
「冗談冗談、妖夢さんの頼み事完遂の方が主目的だよ。…ご飯を楽しみにしてるのは本当なんだけども」
頼み事というのは、彼女の主人である西行寺幽々子という人に会う事。…実は、妖夢さんもそこまでしか分からないらしい。曰く、"隙間"を通り冥界にやってきた外来人を招待しろと言われた、と。
そこから分かった事と言えば、俺が脳内で裂け目と呼んでいたそれは隙間という名称があったこと。…情報量少ねぇなぁ。
ちなみに外来人というのは、"外の世界から来た人"のことを意味していて、俺のように幻想郷の世界に"連れてこられた人"や"迷い込んだ人"の事を言うらしい。
あと、ご飯はお腹減ってるアピールをしたらいただける事になりました。俺物乞いの才能あるかもしれん。…無いな、無いであって欲しい。
「…まぁ、ご飯楽しみにしておいて下さい。私が作ったので良ければ」
思わず聞きかえしそうになった。まずい、頭がおかしくなりそうだ。
いや、料理が不味すぎるせいで頭がおかしくなりそうという意味では無い、まず食事の席にすら着いていない訳ですし。
それは、女の子(それもとびきり可愛い)に料理を作ってもらう機会が今までサッパリだった故に、楽しみすぎて発狂してしまいそうだという意味をもつ。
つまるところ、ご飯超楽しみと言いたいだけだ。…最初からこう表現すれば良いようなとは考えない。これはただの文字数稼ぎである。
ふざけた会話をした後に、ふざけた事を考えていたけれど、俺は一瞬で階段に隠れていたそれに魅了された。
昔からずっとここにいただろう貫禄と雰囲気を纏っているそれは、弱々しい枯れた大木を思わせないほどの大物感を漂わせ佇んでいた。
足を止めた俺の目線がそれに向いていることを理解した妖夢さんは、俺にその木の事を教える。
「あれは西行妖、咲かない桜ですよ」
「…なら、咲いたところを見てみたいもんだね」
俺は、そう呟きながら階段を登り切った。
勝手にやってたタイトル読点付き縛り解除。
下手にタイトルに縛りを入れ続けたら、タイトルを考えるのに時間かかってしまいそうだったし(言い訳)。…そう考えると、アニメこのすばとかのサブタイは凄いなぁと思います。