好き放題書いてるので寛大な方向けです。読んで判断いただければ嬉しいです。
01 フラれちまった中二の夏
皆、一度冷静になって考えてみて欲しい。
いや、もしかしたら同じ境遇の人がいるかも知れないけど
もしも、例えば―――。
君の周りに、一番近くに
可愛くて、優しくて、真心に溢れていて
桜にように可憐で、清楚で、
そんなフィクションから飛び出てきたような理想的な女の子がいたら
―――君ならどうする?
「―――歩夢が好きだ!俺と付き合って欲しい!」
―――俺はこうする、そうしたんだ。
中学生の夏、木漏れ日揺れる暑い日
ずっと心の奥底に秘めていた思いを伝えた。
今にして思うと結果なんて分かりきっていたことかも知れないけど
あの時の俺は夏の暑い日に当てられて、熱が上がって、冷静な判断が出来なくなってしまっていたのかも知れない。
「―――ごめんね」
その言葉を聞いた時、いつも感じていたドキドキとは違う、胸が張り裂けそうなドキドキを感じたっけ。今はもうそんな詳しく思い出せねえけど。
「―――だからね、今まで通り幼馴染3人で仲良くしていたいなって」
聞けば心が温かくなる大好きな彼女の鈴の音のような声も、あの時は胸のドキドキを早めるだけで辛かったってこと、それだけはハッキリと覚えてる。
もう一人の幼馴染がいない今が絶好のタイミングだって、服装も髪型もバッチリ決めた勝負の日に俺は負けた―――負けたんだ。
その後のことはよく覚えてない。
へったくそな嘘と愛想笑いでもして逃げ帰ってきたんだと思う。冷房もかけずに汗だくになりながら自室で倒れていたことが、その何よりも証拠なのだろう。
若かりし頃の中学二年の夏。
俺こと“
物心ついた頃からそばにいて、初恋の相手だった彼女“
―――フラれちまったのである。
◇
春が来て―――桜が咲いた。
家のそばの桜の木が嬉しそうに揺らめいて、桜の葉が舞い降りる姿が目に入った。
背中に背負ったギターケースにも桜の葉が降り立ち
温かな春の心地の良い風情を感じさせる。
それだけなら確かに良かったんだけど
綺麗に咲き誇る桜の花びらは、桜のように可憐で、温かい眼差しと優しい声音の初恋の彼女を思い起こさせる。
「さて、寮に戻ろう」
そんな
―――今日は帰って、せつ菜の曲を詰めなきゃな。
そんなことを考えていた、その時。
「―――コウ!!」
俺の名前を呼ぶ声に進んでいた足が立ち止まった。
そのまま歩き出しても良かったのだが、それはあまりにも彼女に対して心象が良くないと思い、俺はゆっくりと振り返る。
息を切らしながら、チャームポイントであるツインテールを揺らしながら近づく影が一つ。彼女は振り返ったこちらに気付き足を早めた。
日頃運動をしているのだろうか?そんなことは今はもう分からないけど
肩で息をしながら俺の目の前に立った彼女に声をかける。
「どうしたんだ、高咲」
「ハァ……ハァ……つれないな、昔みたいな侑って呼んでよ」
歩夢と一緒で物心ついた時からそばにいた相手
もう一人の幼馴染、それが彼女―――
息を整えながら顔を上げた侑はクシャっと笑いながら、言葉を返した。
「いや、俺たちもうすぐ高校二年生だろ、未だに名前で呼ぶとか」
「―――でも、この間廊下で見かけた時、他の子呼び捨てにしてたじゃんか」
したり顔で言い返してきた侑。相変わらずこういう所は昔から変わらない。
「あれは別だ、ちょっと特殊なパターンだ」
「それは幼馴染より、優先されるパターンなの?」
「まああれは芸名というかキャラ名というか……」
「?」
売り言葉に買い言葉のような感じで言葉を返す侑に、わずかに面倒臭さを感じつつその言葉に答え―――って言うか
「それよりお前あの時いたのかよ、全然気づかなかったわ」
「うんっ、ちょうど図書室で歩夢と勉強してた帰りだったから」
「ああ、一緒だったのか」
侑の口から出た歩夢という言葉に少々身体が硬直するが、もう二年以上前のことだと自分に言い聞かせるように、肩から垂れてきたギターケースを背負いなおす
侑は少し気まずそうな表情で、おずおずと上目遣いでこちらを見上げながら口を開く
「歩夢、もう気にしてないと思うよ?」
「俺も気にしてないよ」
侑の言葉にそう答えると、彼女の表情がぱあっと明るく花開いた。
開いた花はその言葉に応えるように「じゃ、じゃあ!」と言いかけるが。
「だけど、俺たちももうお互いを意識する年頃だろ、昔みたいに幼馴染ずっと仲良くってのは難しいだろ」
開いた花を摘むのは躊躇われるが、侑にそんな言葉を吐きかけて俺を背中を向ける。
「……コウ」
悲しそうな声色の侑に気の利いた声をかけれるほど、俺はイケてるメンズでもないし、そんな立場の人間でもない。わずかに感じた罪悪感から逃げるように俺は急ぎ足でその場から離れようと歩き出す。
幼馴染なんてそんなもんだ、いつまでも一緒にいられるわけもない、同性ならまだしもそれが異性なら尚更だ。それが―――普通なんだ
「で―――でもっ!!!」
自分で自分に言い聞かせるように呟いた心の声かき消すように、後ろから侑の声が聞こえた。
振り返らない、だからどんな表情をしているかは分からない。だけど彼女は昔と変わらぬ真っ直ぐと強い瞳でこちらを見つめているのだろう。
幼馴染のよしみだ、そんな彼女の言葉を聞くぐらい罰は当たらないだろう。
「”難しい”、だけだよね!!―――”無理”じゃないよね!」
風が吹くように叫ばれた彼女の言葉に思わず身が震える。
相変わらずカッケェなアイツ。
俺が女なら惚れてるわ。
侑の言葉に返すように、背を向けながらも軽く手を振り返し答える。
「なら、絶対大丈夫!!」
自信満々に応えた侑に次は少し笑ってしまった。
本当何なんだろうねアイツ、俺のこと好きなのかな?
なんてふざけた妄言を呟きながら、俺はその場を後にする。
確かに―――無理とは言ってなかったしな。まあそんな機会があれば、だろうけど。
細かな設定や説明などは省略してます。知りたい方は原作を見てね。