虹を繋いで   作:うめ茶漬け

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17 小悪魔な先輩

 ライブでやりたいことリスト

 

 ・かすみちゃん 全国ツアー

 ・エマさん 皆と輪になって踊りたい

 ・しずくちゃん 曲の間にお芝居(寸劇?)

 ・彼方さん お昼寝タイム

 ・せつ菜ちゃん 皆の大好きを爆発させたい(火薬使用)

 ・歩夢 可愛いライブ

 

 

「うーん、こりゃまた……」

「皆言ってること全然違うんだねー」

 

 侑から渡されたメモを手に、そこに書かれた内容に首を傾げ唸る俺。

 その左隣を歩く宮下は、その用紙を覗き込むように顔を近づける。

 

 今日、俺が二人を連れてくる前に話し合っていた内容らしいが、見事に全員やりたいことが違うようで、その内容に彼女も感心したような驚いた様子を見せていた。

 

「でも皆、スゴイやる気……」

 

 右隣を歩く璃奈ちゃんもそのメモを覗き込み、そう呟く。

 

「やる気があるのはいいことなんだけど、ここまで違うとな……」

 

 自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方―――侑が以前話していたことだけど、蓋を開けてみれば全員が全員叶えたい一番がここまで違うときたもんだ。

 

「やっぱり……方法は一つしかないか」

 

 同好会に戻ってきた手前、この問題を見過ごせるわけはなく、講堂ライブの後に一度だけせつ菜と話し合いはしていた。

 しかしそれはせつ菜にとって即決出来るものではなく、その日の話し合いでは保留という形で終わっていた。

 

 結局、今日の話し合いでも考えがまとまらず、俺を除いた全員で話し合った結果―――。

 

「―――いやあでもスクールアイドルの特訓(・・)って何やるんだろうね!すっごく楽しみ!」

 

 全員が出した結論は、一先ずどんなライブをするにしてもパフォーマンスの向上は必要だということだった。

 言い出しっぺはかすみらしいが、俺もその意見には賛成だ。

 

 今はその方法(自分なりの一番をそれぞれ叶えるやり方)を模索するより、同好会全体のパフォーマンスの向上が最優先だろう。

 

 そう結論付けた彼女たちもしばらくの間は「歌」「ダンス」「座学」という三つのグループに別れ、それぞれのやりたい練習に励むということになった。

 

 そして新入部員の二人には、とりあえず三つのグループその全てに参加して貰うことになった。まあそれを言い出したのも新入部員である宮下本人なのだが。

 

 その後、二人には練習着に着替えてもらい、案内役の俺と共にそれぞれのグループが待つ録音スタジオ、西棟の屋上、部室へ向かうことになっていた。

 

 一番最初に向かったのは西棟の屋上

 ここは先日、せつ菜―――菜々と言い合いをしたのが記憶に新しい場所だ。

 

「あ~コウくんに愛ちゃん璃奈ちゃんいらっしゃ~い」

「三人とも待ってたよ~!」

 

 そこには練習着に着替え、並べられたストレッチマットのそばで手を振る二人―――エマ先輩と彼方先輩の姿があった。

 

 ここでは主にダンスの練習を行うということだったが、二人には最初の柔軟にだけ参加してもらうという話になっている。本格的な練習の前に身体の柔らかさとかも先に確認はしておきたいし。

 

 二人に手招きされた宮下と璃奈ちゃんもストレッチマットのそばへ移動し、そんな二人に遅れるようにその後ろを追おうとした―――。

 

 ―――次の瞬間。

 

「―――はぁい♡久しぶりねっ」

 

 耳元で囁かれた甘い声と、背中に感じた柔らかい感触に思わず背筋が真っ直ぐと伸びる。

 

 その場から逃げ出そうとして踏み出した足は、抱きしめるように絡められた腕に止められ、その声の主の策略通り捕まってしまう。

 

「調子はどう?女の子にモテモテの虹くんっ♡」

 

 甘い声が耳の奥でこだまし、その度にゾクゾクと背筋に甘い痺れを感じ、足が震え思わずその場で崩れ落ちてしまいそうになる。

 その声の主の顔はまだ見えないが、漂う柔らかい香水の香りと背中に触れる豊満な胸の感触で相手が誰かということは容易に想像出来た。

 

「あ、ああ、朝香―――先輩っ!」

 

 苦し紛れに出た声とその名前に身体の拘束が弱まり、逃げ出すように勢いよく彼女の身体から離れる。

 

 すぐさま振り返ったその先、妖艶な笑みを浮かべ立っていたのは、先日俺が腐っていた時にせつ菜の正体を聞き出そうと色仕掛けをしてきた、ライフデザイン学科の三年生で読者モデルも務める彼女―――朝香果林先輩、その人だった。

 

「そんなに必死に逃げなくてもいいじゃない。お姉さん傷付いちゃうわ」

「必死に逃げるようなことをしたのは先輩でしょ……」

 

「あら、そうかしら」なんておどけた様子で笑う朝香先輩。

 そんな彼女に警戒心が解けるわけはなく、すぐに動けるよう肩に力が入る―――が。

 

「もう果林ちゃん~、コウくんに悪戯しちゃ可哀そうだよ~」

「ごめんなさいエマ。それに虹くんも」

 

 後ろから聞こえてきたエマ先輩の声に、下をペロッと出しウインク混じりに謝る朝香先輩。

 彼女はそのまま未だ警戒する俺の横を通り、エマ先輩の横に並んだ。

 

「皆あらためて紹介するね。私の親友で同級生の朝香果林ちゃんっ。今日は果林ちゃんに柔軟を教えてもらおうと助っ人に呼んだんだ~」

「おお~モデルをやってる果林ちゃんに教えてもらえるなんて贅沢だね~」

 

 エマ先輩の紹介にのほほんとした様子で喜ぶ彼方先輩。

 

 本人の怪しさは置いといて、現役の読者モデルも務めるそのプロポーションは一朝一夕では作れないもの。

 美容、運動、食生活など―――彼女の日々の努力の賜物と言い切って差し支えないだろう。そんなプロの現場を経験している彼女に柔軟を指導してもらえるというのは、こちらとしてもありがたい。

 

「ねえ虹くん、そんな熱い視線で見つめないで頂戴、照れちゃうわ」

「は、はあ?!み、見てないですぅ!!」

 

 しかし先日の一件もあり、彼女の男を手慣れたその感じがどうにも苦手だ。

 思春期の青少年の教育に良くないし、やっぱり規制するべきだと思う。教育委員会に言えばやってくれるかなあ。

 

 だけどそれでも彼女があの時、菜々と話すキッカケをくれたのは事実だ。

 だから彼女自体が別に嫌いというわけでなく、むしろ好き寄りだ。というかえっちなお姉さんが嫌いな男子はいないんですぅ~(煽り)

 

「ねえしもみーしもみー」

「ん?なんだ宮下」

 

 そんな中こちらに近付き、こそこそと俺に話しかける宮下。

 彼女は柔軟を始める四人を横目に、内緒話のように口に手を当て話を続けた。

 

「しもみーってさ、モデルの朝香先輩とどういう関係なの?」

「どういう関係も何も知り合いってだけだろ、単に遊ばれてるだけだけどな」

 

「さっきの見ての通りな」そう付け加え彼女の質問に答えると、宮下は満足したように笑みを浮かべ、意気揚々と用意されたストレッチマットの方へ駆けて行った。一体何だったんだ……。

 

「ほらほら見て見てしもみー!愛さんの身体っ」

「うわっ柔らかっ、もうT字になってんじゃん……」

 

 その後、前屈を見せた宮下の身体は足を180度広げたまま、マットにお腹が付くよう90度背を曲げており、その身体の柔らかさに他の四人からも感嘆の声があがった。

 さすが色んな部活で助っ人をしてるだけのことはある。

 

「えへへ~、愛さんスゴイでしょ~しもみー」

「ああ、スゴイ柔らかいな……」

 

 身体を曲げたまま嬉しそうに笑う宮下。

 俺も前屈は出来る方だが、彼女はそれより曲がるようで素直にその柔らかさに感動する―――が。

 

「……」

「……しもみー?」

 

 ―――なんかエロイな、その体勢。

 

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