ピンチベック   作:あほずらもぐら

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このページを開いて頂きありがとうございます。
投稿者のあほずらもぐらです。宜しくお願いします。
さて、38度の熱を出して、学校に行けないので初投稿です。
こういった活動は初めてで、粗製もいいところの駆け出しですが、
皆様、応援の程宜しくお願いします。この小説には、暴力、暴言、薬物などがいっぱいいっぱい出てきます。そういったものが苦手な人は、
私より文才があって、ハートフルなストーリーを掲載している方が、このサイトには山ほどいますので、そちらをご覧いただく事をお勧めします。前置きが長くなってしまいましたが、構わないヨ!という方、
それでは、本編、ご覧ください…


第一幕 ピンチベックと怪しい荷馬車

 

 

 

国境から少し離れたテム山脈の西、とある冒険者のパーティーは、物資の輸送と護衛を依頼され、険しい山道を移動中だ。

 

『ねぇ、結構歩いてるけど、あと何キロくらいな訳?』

 

三角形の耳に、長身長髪の女性が、額の汗を拭いながら訊く。『地図によれば、後5キロって所だなぁ』

 

返答した男性は、短髪にチェーンメイル、腰にはブロードソードと、いかにも冒険者といったいでたちだ。

 

『魔物もレッサースコルピオンくらいしか居ない見たいだし、これなら一般人でも何とかなるんじゃないの?』

 

不服そうに三角耳の女性が呟く。

 

レッサースコルピオンは、昆虫型の低級な魔物だ。毒に注意すれば、モンスター退治の専門家である冒険者でなくとも、容易に撃退出来るだろう。

 

『まぁ、この辺りは国境に近いからな。盗賊もこの辺りでは下手に騒ぎは起こせないだろう。大事な品物みたいだし、念には念を入れてって事だろ』

 

今度は褐色で、プレートアーマーを着込んだ背が低く、 筋肉質な女性が答える。

 

『大体ここは……』

 

しかし、言葉が続くことは無かった。

 

 バシュッ。 鈍い音と共に、

『ゴボッ』という断末魔。気道を貫かれ、悲鳴すら出なかった。

 プレートアーマーの首元、鉄板が途切れた箇所を狙われたのだ。

 

『わぁぁっ!…』『……クソ!誰だ!出てこい!』

 

 一瞬の動揺の後、素早く戦闘の構えを取る。

 だが、以外にも襲撃者は素直に要求に応じた。

 

「いやはや、申し訳ありません。驚かせるつもりは無かったのだが。今日はお二人に耳寄りなお話があり、是非聞いて頂きたいのです」

 

男は高帽子に、コートの様な形状の、独特な防具を身に付けており、いくつも穴が空けられた、不気味な仮面を被っていた。

 

『で、その話ってのは何だぁ? 仲間をクロスボウで撃っておいて、許して下さいってお願いしに来た訳じゃねぇだろ?』

 

何かを察したのか、チェーンメイルの男は反撃には移らず、会話に応じるようだ。数で有利なのだ。 いざとなれば彼をサソリの餌にするつもりだろう。

 

「勿論、蘇生代はお支払い致しますよ。さて、早速本題に入らせてもらいますが、我々のリーダーが、皆さんのお仕事にとても興味を持たれています。そこでお二人には、その荷物を全てお譲り頂きたい。損害を全て賠償した上で、相応の報酬も払うとの事です。身の安全も保証致します。そちらにとっても、悪い話では無いのでは?あ、これは前金になります。どうぞ遠慮なさらずに」

 

そう言うと、仮面の男は、武器を捨て、ずっしりと銀貨の詰まった袋を

二人に投げ渡す。

 

『へぇ、中々気前がいいねぇ。ありがとよ!』

 

『そうだ、親切なお兄さん、リーダーさんに伝えてくれる?』

 

二人は一度、顔を見合わせてから話し出す。

 

『報酬は要らない、こんなに良くしてくれた人に失礼だからね』

 

『え、えぇ、貴方の首だけで嬉しいわ! そ、それで満足よ!』

 

二本のブロードソード、そして弓が、奇妙な男に向けられる! 

薄暗く、冷たい空気が流れる山道は、一瞬の内に戦場と化した。

 

最初に仕掛けたのは剣士だ!隙の無い二刀流の構えから、ガレー船に襲いかかる白鯨の如き突進!そして、木々の合間を縫い、剣士の頭上を通過し、ヘビめいた曲線を描いて矢が襲う! これが彼らの必殺の形である!三箇所からの恐るべき攻撃は、さながら勇者に襲いかかる、地獄の番犬のようだ! 

 

しかし、鹿を思わせる身軽な跳躍で回避!そのまま木を蹴り、突進をギリギリで躱す! ここが闘牛のステージであれば、割れんばかりの拍手が響いた事だろう!しかし、もう一匹の牛、すなわち矢が再び曲線を描き彼を追い詰める!だが、彼はあえて剣士の懐に飛び込んだ!そのまま矢が剣士と男目掛けて飛来! 矢は慌てて横に逸れ、木に突き刺さる!矢が標的を追い回すとは、一体どうしたことか!これは妖精の隣人とも、神の末裔とも呼ばれるエルフ族の生み出した戦いの知恵、すなわち魔術である。矢に魔力を込め、一時的に意思を持たせる、いわば一種のゴーレムを彼女は作り出したのだ。

 

『くっ! ではこれなら!』

 

ダガーに素早く持ち替え、剣士の援護に向かうが、強力な魔術を使用した後では集中力が鈍り、あっさりと回避される。

 

「仲間に気を遣ってしくじるとは、全く泣かせるな」

 

『下がってろ! 俺が相手だ!』

 

二刀流で、スコールのように激しく敵を打ちつける! だが、男もいつの間にか短刀を両手に持ち、これを防ぐ! しかし武器のサイズ差によって、徐々に押されていく!  次の瞬間、男の体幹が大きく崩れる! 

 

『貰った!』

 

「ぐぅっ……!」

 

やった。確かに手応えはあった、切断とまでは行かなかったが、それでも有効打を与えた、勝てるぞ。

 

だが、その慢心がいけなかった。剣先に体重を掛けすぎていたのだ。

 

「コヒュウッ!」 

 

『げぇぇっ!』

 

剣が木の幹に浅く突き刺さり、反撃に対応しきれなかった。腹を狙い澄ました鋭く直線的な蹴りが直撃し、体を二つに折って三メートル程吹き飛んだ。しかし、追撃はせずに、射手の元へ、木を蹴りながら跳ぶ! 蹴られた木の幹に次々と矢が突き刺さる! 

 

「コヒュ! ヒュ! ヒュ! ヒュ!」

 

独特な呼吸法で、体幹を整えながら木から木へ飛び映る! 見よ! 深手を負ってなお、軽快なステップだ! そして遂に、射手の目前まで迫る! 

 

しかし、敵は三本の矢を矢筒から取り出し、矢につがえる! なんという妙技! 彼女は三本もの矢を一つの弓で、一度に射るというのか! 

 

今やお互いを遮るものは無く、彼は三本の矢を身に受け、 ウナギのかば焼きになるしか無いのか! 彼の身を守る物は、何もないというのか! 

 

 

 否! 

 

「落とし物だ!」 『ジャララ! バラララ!』

 

そう! 銀貨である! いくら卓越した弓の使い手でも、束ねた銀貨の入った袋ごと敵を貫くなど不可能である! 

 

『なッ…….!』

 

空中から胴を捉えた回し蹴りが炸裂し、後ろに回り込んで背後から心臓を一突き。即死だった。

 

「人の厚意は、素直に受け取った方がいいですよ。相手によっては、侮辱になりかねませんからねぇ」

 

『手負いの癖して粋がりやがって!』

 

負傷した男は攻撃をなんとかいなすが、やはり無理があったのか、態勢を崩して片膝を付いた。

 

周囲の木は、ほとんど矢が刺さっていて、蹴って移動するのは無理だろう。しかも相手は負傷している。やれる。やはり俺が負ける訳がなかったんだ。蘇生代二人分は痛い出費だが、積荷は無事なんだ。不意打ちを食らったのがあのドワーフなのは不幸中の幸いだった。まだ積荷の詳細を教えてないからだ。この任務を成功させれば、もっと金を稼げるんだ。

 

『おわぁぁぁー!?』

 

どうやら、算段をするにはまだ早かったようだ。剣士の渾身の一撃は不発に終わった。転倒したのだ。地面に這いつくばって、初めて気づいた。小さな鉄球がそこら中にバラ撒かれていたのだ。

 

「ギュルル…バン!バン!バァン!」

 

『えっ、熱い!痛いぃ痛い痛いぃ!』

 

剣士の身体に次々と穴が空く、銃だ。旧時代の遺物。冒険者なら、名称くらいは知っている。エルフによって魔術が編み出される前の戦争では随分と活躍した兵器だという。だが、棒切れ一つで詠唱できる魔術に比べて、攻撃にしか使えず、魔物相手に使うなら、魔力が込めやすいクロスボウや弓の方が威力に優れる上、銃は手入れにも時間がかかり、弾もコストが高い。今では競技位にしか使われていない。だが、詠唱も必要無く、連射が効く。自分を殺そうとした男が転んだ時、足を撃ち抜いて無力化するくらいには。

 

『や、やめてくれ!誰に雇われたか知らんが、その5割増し、い、い、いや、2倍払おう!』

 

「無理だな、一度チャンスはあったのだ、お前はそれを踏みにじった挙句、安いプライドとはした金の為に仲間を巻き込んで殺した。」 

 

『そ、そうだ、雇い主を知りたくはないか?俺の知ってる事なら何でも話そう!』

 

「積荷を見れば分かるだろう。それに、君の友人を教会で蘇生させて、それから聞けば済むことだ。」

 

『嫌だ!やめてくれ!何でもする!』

 

「死んで貰おうか。私の馬には三人も積めないからな。特に下賤な人間は。」

 

『待て!』

 

「見苦しいぞ!お前が運んだもので何人苦しんだと思ってる!お前は今まで食べたパンを数える道理はないかも知れんが、お前にパンを数えさせたい人々が大勢いるのだ!」

 

男は短刀で銃弾を抉り出すと、剣士をレッサースコルピオンの巣穴に放り込んだ。凄まじい叫び声が巣にこだまする。

 

「白パンばかりでは飽きるだろう?たまには黒パンを堪能するといい。」

 

男は荷馬車から緑がかったレンガ状の塊を取り出すと、スコルピオンの巣に次々と投げ込む。男は松脂に火を付け、証拠品の一つを残して、大きな炉の蓋を閉じ、この厄介な香草をみんな焼いてしまった。パンは焼けないが、もっといいものが焼けるだろう。

 

剣士の声が聞こえなくなると、男は大きな溜息をついて、二人の女性を重そうに持ち上げ、乱暴に馬に載せると、馬の首を撫でて、麓の教会へと向かった。

 

 

 

 

 

 

第一幕、おしまい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さぁ、私の処女作は、いかがでしたでしょうか。
第ニ幕以降は、第一幕ほど暗くならないよう、調整して行きます。
この世の終わりみたいなモラルのピンチベック君、彼がどのような過程を経て、どんな風に変貌して行くか、楽しみにして頂ければ幸いです。
ピンチベックは、金に似せた合金の事を指します。
第二幕は、彼の周辺人物についてお話しますよ!
アドバイス、批評、応援メッセージなど、励みになります!
それでは、皆さん、第二幕でお会いしましょう!

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