ピンチベック   作:あほずらもぐら

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UA80超えました、完結までには100くらいは行くと良いですね!何より、継続して見てくれてる方がいるのが本当に嬉しい。新しいエピソードが投稿されてないか、毎日このページを覗いて確認してくれてる人が一定数いるんですよね。評価されてるって感じがして、とても励みになってます。さて、ネタ切れが激しい昨今、物語のスパイスとして、面白黒人枠のストゥーピスト、そしてノリで前回登場したペラドンナを出してみました。それでは、本編、ご覧ください…


第十幕: 陰謀のステージ

『退院おめでとー!』

 

『現場復帰は今日からなのか?』

 

「復帰と言うか、新しいキャリアのスタートだな。」

 

『つまり…』

 

「冒険者ギルドに加入しろと、上からの通達だ。輸送依頼を斡旋してるのが誰なのか、突き止める必要がある。末端や実行犯を捕らえるだけでは終わらないからな。」

 

退院当日、一人で用意された新居に向かおうとした所、この二人の待ち伏せに遭い、そのまま退院祝いと称して酒場に連れ込まれたのだ。

 

『だったらぁ、僕たちとパーティ組まない?』

 

「それもいいが…一体どうしてだ?」

 

『だって、ピンチベック君はいわゆるスパイな訳じゃん?一人で行動すると危ないし、無理してまた入院しそうだから、見張る必要があるよね?』

 

『そうだな、それに自治領の役人が一緒にいれば、面倒事もある程度減るんじゃないか?』

 

「成程、たしかに隠れ蓑と護衛が両方手に入る、合理的な判断だ。」

 

「確か、商人ギルドから依頼を受けたと実行犯は言っていたな。ならば商人ギルドとその関係者の依頼を受け、距離を縮めるのが先決だろうか?」

 

『決まり!じゃあ登録しに行こうか!』

 

「これから宜しくお願いしますよ、先輩方。」

 

 

 

〜一時間後〜

 

 

「私のマナとの同調率は後天的なものだが、それでも規定の数字を満たせば加入できるのだな。」

 

『後天的って、やっぱりあの変身能力もその時手に入れたのか?』

 

『変身!?あの生命力といい、キ○グストーンでも埋め込まれたとか!?』

 

「いや、何だろう、何と言えばよいのか…」

 

『新しい依頼ですよー!』

 

ペラドンナの疑問は、新たなクエストの登場によりかき消された。余計な詮索はされずに済みそうだな。

 

『よし!皆行くぞ!金貨が俺達を待ってるぜ!』

 

取り敢えず、商人ギルドの依頼を探してみる。「街道の安全確保」

「ワイバーンの鱗納品」出来れば商人ギルドの重役と直接顔を合わせられるような依頼…

 

『これは?』

 

ペラドンナが選んだのは、若手アイドルのイベント設営。確かに、人も集まるだろうし、商人ギルドの人間が視察に来る可能性も高い。吟遊詩人や道化師とはまた別方向のパフォーマンスで話題を集めつつあるアイドル業界は、裏で大量の金が動いているに違いない。成程、彼の観察眼を侮っていたようだ。何も冒険者の仕事は戦闘や護衛だけではない。ギルドとの距離を縮めるのにはうってつけの仕事。盲点だった。

 

『僕もアイドルしようと思って、勉強してた時期があったんだけど、やっぱりライブとかはそういう界隈の人、結構視察来るから。』

 

彼の容姿なら、かなり現実的だろう。しかも魔族、選手生命も長い。それこそ商人ギルドの方が先に寿命を迎えるかも知れん。

 

「失礼かも知れないが…何故その夢を諦めたのか、聞いても良いだろうか。」

 

『その…左利きだから、ダンス覚えるのが難しくて…ね?』

 

「その気持ちはよく分かる。私も左利きで、楽器が演奏できなかった。吟遊詩人を目指した時期があったからな。」

 

そこまで深刻な理由では無いと分かり、安堵すると同時に、同じ悩みを持つ人間と出会えて少し嬉しかった。

 

『本当それ!めちゃくちゃ分かる!鋏も持ちにくいんだよねー!』

 

「後は、鉛筆で手が真っ黒になる!」

 

『お前ら女子校みたいな会話してないで、さっさと行くぞ。これ以上話すと腐った奴らが左手ってだけで変な妄想をしそうで困る。』

 

「何故前回でそれを言わなかったのか、私には理解に苦しむね。」

 

 

ともかく、私たちは依頼を受けて、現地へ飛んだのであった。

 

 

 

 

「非戦闘任務は久しぶりだ。しかし、本当に人が多いな。」

 

『この集まりよう、終戦演説の時を思い出すな。立ち見の所も埋まりかけみたいだぜ。』

 

『どんな女の子が出てくるか、楽しみだね!』

 

『そうそう、俺たちはスタッフなんだし、サインの一枚くらい貰えるかも知れねぇなぁ?』

 

今回、我々三名は会場の警備と設営を依頼されている。代表者や演者の挨拶などを眺めながら、巡回や荷物運び、ビラ配りをしていく。子供連れやお年寄りもおり、いかにも地域の一大イベントといった感じだ。

 

ふと見ると、演者同士で何か揉めているようだ。どこの業界も世知辛いものだな。我々のように命のやり取りが無いのが救いか。

 

『そんな喧嘩なんて放っておけ。折角の晴れ舞台に、何やってんだか。』

 

ストゥーピストに私も賛成だな。まぁ、介入しても時間の無駄だろう。

暫くすると、楽屋裏にほど近い休憩所に通された。公演中は、他のグループと交代で警備をするようだ。視察のギルド員が来た際、どうアピールするか、ペラドンナと私は作戦会議中だ。横では、ストゥーピストが昼からビールの苦味を堪能しているが。

 

「私が考えたのは、楽屋に潜入して、衣装を汚す事で1グループ、出場出来なくし、代案として私が元アイドル志望の貴方を推薦する。これでどうだろうか?一番手っ取り早く重役に接近できる。」

 

『ダメだよ!そんな事をして、出場出来なくなった子たちはどうするのさ!この日の為に稽古を沢山して、青春を犠牲にしてる!』

 

「これは薬物根絶の為の第一歩、そして我々のパーティの重要な試金石だ。よく考えて欲しい、綺麗事で彼女達を守ったとしてもだ!そのせいで薬物に溺れる人間が必ず出る!」

 

『絶対他の方法があるって!』

 

 

その時である、休憩所の薄いドアが開き、三人の女性が姿を見せる。

 

『あっ、休憩中にごめんなさい!』

 

どうやら、演者のうちの一グループが挨拶に来たらしい。

 

「いえ、構いませんよ。」

 

『あ、あのっ、会場の運営を手伝ってくれた皆さんに、一度ご挨拶しておこうと思いまして!今日はスタッフさんに欠員が出たって聞いて、それで皆さんが急遽駆けつけてくれたと聞いています!本当にありがとうございます!お礼と言ってはなんですが、何か質問とかありますか?』

 

「その衣装は、誰の作品ですか?」 

 

『これですか?これは私たちの無名時代の応援団だった職人さんが作ってくれた物です!』

 

「成程、道理で似合う訳だ。」

 

『えっ?』

 

「私はアイドルに関しては素人だが、その職人の腕が良いことはすぐに分かりました。特に袖と胸元の縁部分の処理は、かなり時間をかけていますね。皆さんの鮮やかな髪色に合わせて、敢えて大人しいカラーリングにする選択も素晴らしい。何より、スタイリッシュなフォルムでありながら、窮屈さが無いのも、着用者を第一に考えている証拠です。服に着られる事なく、双方の美観を損ねない職人のバランス感覚には脱帽しましたよ。」

 

 

なんと彼は、一瞬で彼女達の衣装の特徴を捉え、評論家顔負けの、確実な目利きを見せたのである!戦場では敵の兵装を見誤れば死ぬ!冷静な分析と、多彩な武装を扱う戦士としての観察眼が、アイドルの個性を最大限活かす職人の、底無しの愛と情熱を見抜いたのである!

 

 

『ありがとうございます!この衣装、他のグループからは中々褒めてもらえなくて、でも、今のでやる気が出ました!』

 

「いえ、職人の方の腕前と皆さんの情熱あってこその賜物ですよ。私は偉そうに意見を述べただけ。皆さんのライブは職人である彼の晴れ舞台でもありますよ。それでは、応援していますよ。」

 

 

『はい!頑張ります!』

 

 

『頑張ってねー♡』

 

 

 

 

「やれやれ…まぁ…別の方法があるだろう。」

 

何と彼は、非合理的な方法を自ら選択した!単なる気紛れではなく、そこには確かに職人へのリスペクトが存在していた。彼の信条は、「職人なくして勝利なし」である。彼はまだ駆け出しの斥候だった頃から、現在の飛び道具を多用する戦法を使用していた関係上、職人に仕事を依頼する事が多く、彼らへの恩も大きかった。あの衣装にどれほどの情熱が注がれたか理解した以上、彼のプライドがそれを許さなかったのだ。

 

『ちょっと見直しちゃった♡…あれ、ストゥーピスト君はどこ?』

 

「トイレじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

…ったく、あいつ自分から作戦を白紙にしやがったなぁ。ま、気持ちは分かる。仕方ねぇ、俺が尻拭いをしてやるか…

 

 

屋台を回りながら、情報収集をしてみる。しかし、さっき休憩中に来た娘たちは正直タイプだな。田舎臭さが抜けきってない感じとか、衣装の話も泣けるねぇ。俺たちに挨拶に来たのもポイント高いぞ。しかし、ピンチベックの野郎、顔も褒めりゃ良かったのに。酒飲んでるの交代に来た奴にバレたと思ったが、隠れたのは間違いだったな。舞台終わりに、今度はこっちから行ってみるか。

 

『皆ー!今日は来てくれてありがとう!』

 

おっ、やってるな!観客には子供も沢山いる。ダンスはぎこちないが、結構歌が上手いな。歳食っても歌手になれそうだ。それか、老化止める為にゾンビか吸血鬼になって売り出してもいいな!事業の一環として、考えてみるかな…なんにせよ、子供から大人にまで愛される地域の有名歌手、素敵じゃねぇか。

 

 

『えぇ、ありがとう!』

 

『応援してます!これからも頑張ってください!』

 

 

おっと、人通りが少なくなって来たなぁ。ん?サインしてんのか?て事は、あの娘もアイドルなのか。色んなのタイプがいるんだな。まぁ客の好みに合わせるのはどの商売も同じか。よく見ると休憩室にあった雑誌で特集組んでたあの子か。結構派手な水着着てたのは覚えてる。てか、さっき喧嘩してたグループと同じ制服だな?他の演者はどこに行ったんだ?

 

 

『あ、貴方が今週の……ですか?』

 

『つまり?』

 

『えぇっと…商人ギルドの方ですよね?』

 

…よくわからねぇが、これは商人ギルドの内情を掴むチャンスじゃあないか?それに、可愛い娘と二人きりで、しかもピンチベックとペラドンナに恩を売る好機、この波に乗らない選択肢は無いな!

 

『あぁ、そうだな、そういう事だ。』

 

『…こちらです。』

 

俺は個室に通された。個人用の休憩室みたいだな…とりあえずソファーに腰掛ける。さすが大手雑誌に掲載される人間だけあって、VIP仕様だ。

 

『あの…シャワー行きますよね?』

 

あっ(察し)ふーん…役得どころか、大当たりだな。

 

旧時代のミームに汚染されながらも、彼は思考を巡らせる。ともかく、商人ギルドの重役が「視察」に来ている事は分かったんだ。だがもう後には引けん状況だ。どうする、ストゥーピスト!考えろ!

 

『先に浴びていて欲しい。俺…いや、私はほんの少しだけ仕事が残っている。』

 

『そうですか。では、先に失礼しますね。』

 

 

 

うおぉおぉーっ!走れ、俺!こうなったらヤケだ!作戦も任務も知らんぞ!罪の無い人間がカーテンの陰で涙を流してる!それが全てだ!確かに今の俺は下心丸出しだ!実を言えば、下半身も出そうか少し、いや、かなり迷った!だけどな!俺は仮にも、冒険者なんだ!俺はスーパーでもなければ、ヒーローでもねぇ!だけどな、真の男ってのは、困ってる奴の前なら、無理にでもスーパーヒーローになるもんなんだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第十幕 完

 

 

 

 

 

 




はい、どうでしょうか。いつもより少しだけ長めにしました。皆さんの感想も聞きたいので、ハードルは高いでしょうが、コメントを残していただけると嬉しいです。
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