ピンチベック   作:あほずらもぐら

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第103幕: 最終決戦 パート3

 

 

 

ー某所、地下闘技場ー

 

 

 

 

『さぁやって参りました、企業対抗冒険者バトル!実況は私、バーテックスアイでお送りします!』

 

 

『そして解説はヴォイドヴォイスだ!』

 

 

鉢金で目を覆った若い女性と、

吹き矢の射出機構を備えたフェイスガードを

装着した少年が観客席に向かって手を振る。

 

 

 

観客席から拍手が上がると同時にモニターに参加者の一覧が映し出され、歓声にどよめきと悲鳴が混じり始めた。

 

 

『先ずは今大会二番人気!元キャナー・ファミリー二番手、”史上最悪の破戒僧”ヒュペリオンが曰く付きの聖剣を携えての参戦です!』

 

 

白銀の鎧に蠍が描かれた黒いフード、銀仮面に

身を包み異様な気配を放つ長剣を携えた冒険者が

観客席に向かって火を吹く!

 

 

『親分……じゃなくてヒュペリオン、意気込みは?』

 

 

「まず一回戦で俺に賭けた奴等へ…おめでとう、

ご近所にバレないように気をつけろよ!それから

俺以外に賭けた奴等へ……今のうちにその紙屑を

ゴミ箱に捨てろ!」

 

 

ヴォイドヴォイスに差し出された拡声器を

奪い取り、ヒュペリオンが絶叫する。

 

 

「ビクトリーマグナムはこの俺が倒す!」

 

 

凄まじい声援とブーイングが飛び交う中

ヒュペリオンはわざとらしい礼をした後、

サイン入りの免罪符を何枚か客席へ投げつけて

控室へ戻っていった。

 

 

『次は一番人気!ビクトリーマグナ』

 

 

彼は控室のモニターの電源を切ると

バスカールの顔が描かれた広告を散弾銃で

五回ほど撃ち抜き、火を吹いて燃やした。

 

 

「待ってろよ、(バカ)……」

 

 

ー2分後ー

 

 

『魅力と財力ならどこの貴族でも持っている!暴力がなければ一流のレディじゃない!Aランク冒険者最年少にして大剣豪、スワッシュバックラーの妹、レッドラムが殴り込みだァッ!』

 

 

豪奢なドレスを身につけた見上げるような少女は

観客席に向かって一礼すると、黒い薔薇の花弁を

満載した巨大な鉄の籠を振り回して会場全体に雨を

降らせた。

 

 

『初出場にしてはハードルが高いのではという声もありますが、自信のほどは?』

 

 

ヴォイドヴォイスは何度か飛び上がりながら

背の高い彼女にマイクを差し出す。

 

 

『必ず勝つと分かっているようなヌルい戦いで満足していては決して強くなれませんので、限界に挑戦するつもりですわ…皆様方、賭けをお楽しみになって下さいまし!』

 

 

貴族とは思えない程に飾り気がない率直な演説に

多くの観客席から割れるような拍手が鳴り響く。

 

 

 

『続いて初陣ながら破格の4番人気!嘘か真か、恐怖の聖職者100人斬り伝説が我々の目の前に現れたッ!無双の外道騎士、デスペラードォ!』

 

 

吸血コウモリの群れが会場の周囲を飛びながら

徐々に人間の形を取り始め、会場の中心に集まると

そこにはデスペラードがいた…

 

 

『群体型の獣化魔法!?こ、この入場方法で実力は推して知るべし、今我々の前に立っているのは本物の吸血鬼ですッ!』

 

 

観客席から再び悲鳴と歓声が上がり、

その中の何割かは会場で売っていた吸血鬼避けの

十字架を震える手で構える。

 

 

『だはは、ぼろい商売だな全く!』

 

 

特別席に座ったエルフの老人がワイングラス片手に

高笑いし、小切手と札束を数えているのを傍目に

近くに座っていたバスカールは歯軋りした。

 

『クソが……呑気にしていられるのも今だけだぞ。』

 

 

 

 

『さっすがお爺ちゃん!』

 

 

『行かなきゃ駄目か?これ……』

 

 

『今行ったら貴方ヒーローよ、頑張って!』

 

 

『わ、分かったよ……』

 

 

ヴォイドヴォイスは震える手で拡声器を持ち、

慎重にデスペラードに近づくと、腰の短剣を

確かめながら話しかけた。

 

 

『あ、あっ、あの……一言お願いします!』

 

 

『強いて言うなら、苦痛に満ちた美味しい血を飲みたいかな。その為なら何百人でも斬るつもりだよ……』

 

 

『お、お手柔らかに……』

 

 

ヴォイドヴォイスは宙返りして実況席に戻ると、

額に浮いた汗を布で拭き取って解説を再開した。

 

 

『次も有力候補だ、Aランク昇格を間近に控えた豪傑!』

 

 

歓声に包まれた観客席から一際黄色い声が上がり、

二本の刺剣を携えた美形の青年がリングに現れる。

 

 

『その剣技はまさに電光石火!剣の雨は最高峰に届くのか!?レインピアサーの登場です!』

 

 

青年の優雅な一礼により、黄色い歓声は更に増す…

 

 

「中々強そうなガキが来たな、退屈しねぇ……上手くいけばあの顔が原型なくなるまで腫れ上がるんだ、胸が躍るぜ!」

 

 

 

『三番人気はやはりこの娘!新参ながら泣く子も黙るAランク冒険者、聞いて驚け見てたまげろ!新たなレジェンド候補、ヴォーパラーの出陣だぁッ!』

 

 

熱い実況とは裏腹に、非常に冴えない外見をした

分厚い眼鏡を掛けた妙齢の女性がリングに現れる。

 

 

『実力、来歴、一切が謎!その正体は全身に暗器を仕込んだ暗殺者か、怪力で全てを破壊するパワーファイターか!?私も彼女の正体が明かされるのが非常に楽しみです!』

 

 

彼女は観客に向かって控えめにVサインを決めると

差し出された拡声器を受け取り、緊張した様子で

話し始めた。

 

 

『あの、普段は偵察とか護衛任務とか、皆さんの目に触れない裏方の仕事ばかりなのでこういう舞台に立てた事自体が嬉しいですね。期待に添えるように頑張ります。』

 

 

『ようやくまともな人が来ましたね、ありがとう。』

 

 

『フフフフッ……どういたしまして……』

 

 

『……ちょっと視線が怖いけどね。』

 

 

 

「長ったらしいな……少し寝るか。」

 

 

ヒュペリオンはモニターのケーブルを引き抜き、

深い眠りについた。

 

 

 

ー57分後ー

 

 

 

 

『勝者はレインピアサー!見事な剣の雨は向かう所敵なし!』

 

 

「あぁ〜ァ……もう直ぐだな。」

 

 

 

ヒュペリオンは二振りの剣を携え、

重々しい扉を蹴破って歓声の中へと飛び込むと

彼を待ち受ける冒険者に鋭い視線を向けた。

 

 

 

 

第103幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

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