ピンチベック   作:あほずらもぐら

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どうも皆さん、M○ST2の発売が楽しみな投稿者のあほずらもぐらです。体験版やったけど、初期装備の露出度が結構高いですね。それでは、本編、ご覧ください…


第15幕: 偽りの正義 前編

エルバルドの精神は破綻寸前であった。この街では、俺が一番だったのに。この街では、何をしてもお咎め無しだったのに。この街は、俺の庭なのに。痛み、恐怖、屈辱。支配される者しか知らぬ感覚を、エルバルドは全身で実感する。

 

 

『あ、あ、あぁ…』

 

負の感情の波に押され、もはや叫ぶ事すら放棄した。

 

 

『よし。この民間人を人質にし、ショーを中止させるぞ。その後、バンブー・ルーの公演を代替開催だ!』

 

何という卑劣な作戦か!商売敵を潰す為には、民間人の犠牲すら厭わないのだ!まさに旧時代的な、搾取と犠牲による非道な利益追求!

 

『お前たちは会場に向かい、この人質を連れて、ショーを破壊し、暴徒化した観客を装い演者を拉致せよ!セットはダリア様が使われる。くれぐれも破壊するな。』

 

『了解!』

 

メテオリットの命令に、一糸乱れぬ動きで敬礼し、作戦を開始する緑服達!

 

『見上げた行動力、そして信仰心よ。任務が終わり次第、教団に引き入れても良いな。』

 

『そんな事にはならないさ。インドルジェンス。』

 

『何故だ?彼らの行動力は賞賛に値するだろう?』

 

『だからだよ、じき分かる。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜数分後〜

 

「いつ仕掛けてくるんだ…」

 

『緑の人、来ないねぇ…』

 

『どうやら、取り越し苦労だったようだな…』

 

 

『えー、それでは、休憩時間に入りますので、暫くお待ち下さい。次は一時間後で…何だ君達は!?』

 

 

 

 

『行け!早く連れて行くんだ!急げ!』

 

 

『や、やめて!何をするの!?』

 

『おっ、おい!離せ!』

 

『きゃっ!何ですか!?』

 

 

アイドルの悲鳴と、観客のどよめきが聞こえる。外に顔を出して見ると、何と、緑服の集団が、彼女達を攫おうとしている!

 

『何だ!?これも演出か!?』

 

『でも緑服だよ!?止めた方が良くない?』

 

「そうだな!行くなら今だ!」

 

三人は走り出す!

 

しかし、隕石の如し爆発魔法で緑服の企みは阻まれた!炭化した死体が複数個、辺りに散らばる!

 

『な、何で…』

 

『金はもう…払った筈…』

 

『彼女達を解放しろ!悪の秘密結社め、姿を表せ!』

 

そして、タイミングよくピンチベック達が現れる!

 

『出たな悪の怪人!戦闘員は皆倒したぞ!このメテオリットが成敗してくれる!』

 

「成程…私達は一杯食わされたようだ。」

 

『なら、実力でどちらが悪で、どちらが正義か分からせるだけだ!』

 

『やっと僕の出番だね♡』

 

 

『敵は三人も居るのか!どうやって倒せば…!』

 

メテオリットの苦戦は必至といった話し方とは裏腹に、彼はマスクの下で不敵な笑みを浮かべる!何故なら…

 

 

『諦めないで!変身!』

 

 

客席から助っ人が現れると、分かっていたからだ。

 

 

『秘密騎士ビクトリーマグナム、参上!』

 

 

何という事か!特撮作品めいたヒーロースーツに身を包んだ少年が、客席から飛び出した!彼こそは、子供達から絶大な人気を誇る、実力派冒険者、ビクトリーマグナムだ!

 

 

『ビクトリーマグナム!?やったー!』

 

『負けるな!ビクトリーマグナム!』

 

『そんな奴らやっつけろ!』

 

 

純粋な子供達すら騙し、真の正義を陥れ、悪に仕立て上げる、これが商人ギルドの手口である!

 

『悪人め!浄化されるべし!このインドルジェンスが相手だ!』

 

更に加勢だ!三対三の決戦、会場は熱気と、それを軽く上回る狂気に支配された!今、正義を決する激戦が繰り広げられるのだ!

 

 

「面白い余興だな…商人ギルドの犬が…」

 

『子供達に無様な死に様を見せて貰おうか、正義のヒーローさんよぉ…そっちの方が数字も取れるよなぁ、えぇ?』

 

『二人とも!これじゃ僕達が悪役みたいじゃないか!』

 

「正義など無い。どちらの悪を選択するか、私達にはそれしか無いのだから。」

 

『詩的だねぇ…そんじゃ、スーパーヒーロー退治と行きますか!』

 

 

男たち(The boys )は、覚悟を決める。この手で、ヒーローを倒す。彼らは、悪人と言う自分達の称号を、嫌というほど気に入っていた。正義が勝つのでは無い。正義というエゴを、最後まで張った者が勝利する。復讐の為、恩人に忠を尽くす為、金と闘争の為。ある者は剣を構え、ある者は魔術の印を結び、ある者は型遅れの拳銃を敵に向ける。まさに臨戦態勢。観客は歌を聴くより、美しい踊りを見るより、これから行われる殺戮と流血の祭典に、一瞬で釘付けになった。

 

 

 

 

『行くぞ!ファイヤーマグナムパンチ!』

 

先手を打ったのはビクトリーマグナムだ!炎を纏った拳が、パワーを最大限活かす姿勢から繰り出された!

 

「コヒューッ!」

 

ピンチベックも負けてはいない!道化師めいた宙返りで華麗に回避!しかし、ビクトリーマグナムの拳に伴う衝撃波で吹き飛ぶ!

 

「バン!バン!バァン!」

 

何と!ピンチベックはリボルバーの反動で、体勢を立て直した!放たれた弾丸が、ビクトリーマグナムに向かう!これぞ攻守一体、必勝の型だ!

 

『うわっ!』

 

銃弾を受け止めるビクトリーマグナム!しかし、不意を突かれたからか、僅かに体勢が崩れる!

 

「コヒュッ!コヒュッ!コヒューッ!」

 

素早く側転で移動し、ガントレットから黄銅色の鉤爪を展開し、無慈悲な一撃を放つ!短い爪だが、急所を抉るには充分な硬度と柔軟性だ!

 

『ぐッ…!』

 

「……浅かったか。」

 

ビクトリーマグナムのバトルスーツから火花が散り、脇腹に血が滲む。彼のスーツは、オリハルコン繊維が編み込まれている!だが真に恐れるべきは、それすら切り裂き、幼いながらも鍛え上げられた冒険者の肉体をも傷つけるピンチベックの技量だ!彼は拷問官時代の経験で、人体構造を知り尽くしている!

 

『まだまだ!ブレイズマグナムキック!』

 

オリハルコン製バトルスーツが赤熱し、次の瞬間、ピンチベックに向けて渾身の蹴りが繰り出された!

 

「成程……強い…惹かれるな…」

 

しかし、これを受け止めるのもピンチベックだ!しかし、声には余裕がない。受け止めた両腕が痙攣し、骨が悲鳴を上げる。目の前に居るのは少年ではない、正義を騙る、自分と同じ殺人者だ。彼はそう実感した。仮面の下の乱杭歯を食いしばり、ピンチベックは死闘の予感に震えた。

 

『何ッ!?』

 

「こちらの手番で宜しいか?”ヒーロー”」

 

ピンチベックは、リボルバーを構え、ファニングショットを放つ!

 

『バァァン!』

 

一発の銃声で、三つの銃弾が飛ぶ!しかし、強靭なバトルスーツに阻まれ、有効打には至らない!

 

『マグマ・マグナム・レーザー!』

 

強力な炎属性の魔力を束ね、レーザーめいて射出し、薙ぎ払うビクトリーマグナム!セットや機材が熱線で焼き切られる!しかし、これをペラドンナがシールドスペルで相殺!

 

「なんてデタラメな威力だ…!」

 

『本当にねぇ…僕のシールドスペルで一発しか防げないなんて…ゾクゾクしてきちゃう♡』

 

 

見ると、インドルジェンスが二つに分かれて転がっている。一体彼の身に何が起こったのか!?時間を巻き戻して見てみよう!

 

 

 

 

『お前も殉教者になるんだよ!』

 

『抜かせ!死ぬのはお主一人よ!』

 

 

剣と剣が激しくぶつかり合い、溶接工場めいて激しい火花を散らす!しかし、膂力と武器のリーチでインドルジェンスが優勢だ!

 

『この勝負、貰った!』

 

『あっ、やべッ!』

 

サーベルが弾かれ、体幹を大きく崩すストゥーピスト!大剣を薙ぎ払うインドルジェンス!しかし、これを地面に寝そべる様に回避!しかし、もう一撃を見舞う!

 

『斬捨て、御免!』

 

インドルジェンスの大剣が、処刑めいて振り下ろされる!このまま彼は、死んでしまうのか!?

 

 

 

 

 

 

否!

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、ステージの一部が大きく陥没する!インドルジェンスの大剣の重さに、ただでさえ戦闘で摩耗したステージは耐えきれなかったのだ!インドルジェンスは落下し、動けない!これを狙ったストゥーピストは、全ての集中力、精神力を使い、素早く回転して回避していた!全ては彼のシナリオ通りだったのだ!

 

『これぞ砂漠の戦士の兵法!お前は蟻地獄に落ちた哀れな昆虫だ!』

 

環境(バトルフィールド)を最大限利用する、戦場で培った知恵と、ピンチベックの残忍かつ狡猾な戦法に倣った逆転劇だ!

 

『天国行きだ!お前が行けると本気で思ってんならな!』

 

ブランダーバスが火を吹き、赤熱した銃弾が、次々と放たれインドルジェンスの屈強な肉体を穴だらけにし、サーベルがインドルジェンスの首を刎ね飛ばした!

 

『ありがとう、ありがとう。』

 

拍手を静止するように、手を挙げながら、客席に見える様に、サーベルを構える。そして、そのサーベルに、今しがた刎ね飛ばしたインドルジェンスの首が突き刺さる。拍手ではなく、悲鳴がそこかしこから聞こえるのは気のせいだろうか。

 

 

『二人とも、こっち終わったぞー。あ、演出的には最後の一人になるまで待った方がいいかな?』

 

 

 

 

 

第15幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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