ピンチベック   作:あほずらもぐら

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皆さん、ご無沙汰しております。投稿者のあほずらもぐらです。最近は夏休み前という事もあって忙しく、前書きが書けませんでした。最近はシ○ニアの騎士を見ています。アクションシーンや、前半の得体の知れない存在と戦ってる感じとか、仲間がバタバタ死んでいく無慈悲な世界観とかが本当に好き。声優の鬼気迫る演技も好き。それでは、本編、ご覧下さい…


第18幕: 悪魔降臨

『やめて…止めてくれぇ!』

 

「人を見下し、無慈悲に虐げておきながら、慈悲を乞うとは面白い!まずは目玉からだ!二度と人を見下せないようにしてやろう!」

 

エルバルドは後悔でも怒りでも無く、ただただ恐怖を味わう。そして、今は苦痛も味わうのだ。

 

 

『ファイヤーマグナムパンチ!』

 

「な、何だと!?」

 

 

その非道を三人の冒険者が阻む!

 

『へぇ…もう片付いたんだ…でも、その人は渡せないな…♡』

 

『チッ…化け物呼ばわりされて、ガチのバケモンになるかよ普通…』

 

『さっき戦った時とは、覇気が桁外れだ…彼は何故ここまで…』

 

 

「わざわざ殺されに来たか!これは奴が望んだ事だ!何故邪魔をする!」

 

『だからだよ…彼が間違ってるなら、僕が止める!僕が間違った時は、彼が助けてくれたからね…♡』

 

『まぁ…コームとかいう女から、迷惑料として金貨500枚くらいは貰えんだろ…生きて帰って、美味い店でも探すかねぇ…』

 

『ぼ、僕は…』

 

 

ビクトリーマグナムは正義のヒーローだ。だが、彼を突き動かすのは強迫観念だった。マナの適合率が非常に高い彼にとって、冒険者はまさに天職だっただろう。しかし、若くして名声と地位を得た彼は、素の自分と、ビクトリーマグナムとしての自分にギャップを感じ始めていた。ヒーローで無ければ、自分に価値は無いとすら考えていた。

 

『勿論僕も戦います!たとえこの命に換えても街を』

 

だが、ストゥーピストの平手打ちに、言葉は遮られた。

 

『馬鹿野郎…そんな事言うんじゃねぇ…そういう事は…もっと大人になってから言え…』

 

『…?』

 

『俺はさ、元々はダビテ砂漠の出身だった。あそこは、つい数十年前までオアシスを巡って紛争が絶えかった。ガキだった幼馴染も大勢死んださ…だから、今生きてるんなら命に換えて、なんて言うな…』

 

『…はい!』

 

『坊主…俺は生きて帰るぞ。俺は生きたいと思って死んだ奴らの分、死ぬまで贅沢して、美味いモン食って、イイ女と遊んで、戦争しようとしてる奴らを殺す。』

 

『僕も…僕は目の前で危険に晒されている人を見て見ぬふりは出来ません!僕は、ピンチベックさんと、街の人を助けて、彼を救い、罪を償わせます!愚かだと、単なる理想かも知れない!でも、僕はやりますよ!』

 

『チッ…これだから青いンだよ、お前ら若手はな…俺は12の頃から砂漠でやって来た…ま、”初体験”は17の時だがな…ってそんな事はどうでもいいか、行くぞ…』

 

『さて、僕が憧れた君に戻って貰うよ…♡』

 

ペラドンナも、マジックポーションを飲み干し、臨戦態勢に入った。三人は、決意を固める。戦友を、恩人を討つ。

 

 

「厄介な相手が控えているのでな…貴様ら蛆虫には消えて貰う!」

 

『蛆虫より、毒蛾の方が好きなんだけどねぇ…』

 

「抜かせぇ!」

 

アブホースの赤錆の様な血に濡れた爪が、ペラドンナに迫る。だが、ペラドンナはダガーでこれをいなした!

 

『覚えてるかな…このダガーには”また”助けられちゃった…』

 

なんという運命!このダガーは、脱走兵の手からペラドンナを救った、ピンチベックのダガーである!

 

『やっぱり貰っておいて良かったよ…君は…これを渡す時、少し嫌そうにしてたけどね…手を汚さないで欲しいって。』

 

「…クッ!小僧!調子に乗りおって…」

 

『中身までバケモンになったワケじゃねぇよなぁ?えぇ?』

 

反撃を試みるアブホース!そこにストゥーピストがブランダーバスで接近射撃!戦闘で生じた土煙に乗じて一瞬で敵に近づく、卓越した足捌きだ!

 

「カァーッ!貴様ぁ!ますは貴様から引き裂いてくれる!」

 

アブホースのカウンターだ!銃弾を防いだ直後にも関わらず、高い身体能力を発揮し、ストゥーピストの肉を切り裂く!

 

『……痛ぇ…だが、”コレ”があれば、やっぱ幾分かはマシになるかな…』

 

なんと!?ストゥーピストの傷口が超常的スピードで塞がり始めているではないか!これは聖魔術の高位呪文、継続治癒(リジェネ)ではないか!何故、暴力と金貨をこよなく愛する彼がこの聖職者の呪文を行使しているのか!?

 

『マトモな坊さんを馬鹿にしてる気がして、今まで使いたくなかったンだが…使えるモンは使わねぇと、アンタには勝てないからな。』

 

「小癪な真似を!無意味な抵抗はよせ!」

 

『無意味じゃない!行くぞ!ボルケイノ・スマッシュ!!』

 

赤熱化するビクトリーマグナムの拳!そして!さらに白熱化!炎魔法の熱エネルギーを片腕に込め、必殺の拳は白い軌跡を描き、アブホースの胴体に直撃!発生した衝撃波で周囲の瓦礫が粉塵と化す!

 

「ガァアアアアアアッ!許さん!何故そこまで我の邪魔を…」

 

『君が大事だから…ね?まだ、君に何も出来てない…だから君と一緒に、成し遂げたいんだ♡』

 

『ま、見殺しにするのも忍びない!ハッパはもう見たくないし、何よりアンタが居ると、俺らまで無理しちまうんだよ…』

 

『誰かが困ってるなら、同じヒーローとして、人生の後輩として、放って置けないだけです!』

 

致命傷とはいかないが、ビクトリーマグナムは確かな手応えを感じた!暴走状態にあるとはいえ、元々彼は手傷を負っていたのだ。全力は出せないはず。

 

「貴様らクズどもが!何故我が!何故私が!ガアアアアアアアアアッ!」

 

アブホースは凄まじい勢いで跳躍!血の雨を降らせながら、彼らの追撃を回避!そのまま壁を蹴り、何処かへ消えていった!

 

「一対三では分が悪いか…ならば一人ずつ叩き潰すのみ!精々逃げてみるがいい!ムハハハハハ!」

 

 

『早い…!あれが、人間の動き!?』

 

『少なくとも、心は人間だよー!だって、僕たちに逃げろって言ってくれたでしょ?』

 

『ポジティブだなぁ、お前。でも、一人称が”私”だったからなぁ…確かに、僅かだが可能性があるかもな….』

 

 

その時だ!

 

 

『おーい!お前ら無事かー?敵の増援が来たってハナシ聞いたんよ、生きとりまっかー!?』

 

『あ、来た来た!遅ェぞー!』

 

『あれ、コームさん!?』

 

『来てくれたんだ…♡』

 

コームである!どうやら撤退を指示しに来たようだが…

 

『おっ、ヒーローのボウズやないか!元気しとったかー?』

 

コームがビクトリーマグナムの頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

『や、やめてくださいよ、コームさん!』

 

『……ピンチベックはんはどないしたんや?さっきから姿が見えんようやが…?』

 

コームの目が鋭くなり、声が威厳のあるものに変わった。

 

『…それが、彼は…その…』

 

 

 

 

『負傷した俺たちを庇って、たった一人で増援と戦い、結果重症を負った挙句アブホースとかいうバケモンに取り憑かれて、トチ狂ってどこかに行きやがったぞ…どういう事だ…増援が来るなんて、聞いてねェぞ…!』

 

 

怒気をはらんだ声で、ストゥーピストが話す.

 

『何故もっと早く来なかった!アンタがもっと早く来てさえいれば、あの馬鹿が無理して闘う必要も無かったンだよ…化け物になる必要もな…』

 

『化け物やと…!?あの阿保…無理ばっかする上、そないエラい爆弾抱えとったのか…道理で余裕のない声しとった訳やなぁ…』

 

『…もう、過ぎた話はいいよ…お願いします、彼を助けるのに協力して…』

 

『あぁ…こちらとしてもあの戦力を失う訳にはいかん、全面的に協力させてもらいます。』

 

コームは複雑な表情を浮かべ、装甲馬車を指差した。

 

『乗りぃ…作戦立てる。あの(アホ)が更に暴走して力を増したなら、対策を練らんとアカン。勝てるかも知れへんが、救う事は出来へんぞ…』

 

 

『…僕も、行かせて下さい!』

 

『んあ?お前にはまだ早いて!大体お前商人ギルド所属やろ。裏切るんか?応援してた子供達全員の夢、壊す事になるで!』

 

『で、でも…』

 

『こら身内で解決せなアカン問題や!ボウズが首突っ込んでええ事ない。いいか、こいつらの仕事はお前みたいな”表舞台”の人間が手伝ったらアカンねや!』

 

 

 

 

 

『……ボウズは近くの街でサイン会でもなんでもして人集めろ。追手も人通りの多い所は通らん、迂回した奴らをウチの私兵が叩く。頼んだで。』

 

 

『………はい!』

 

 

 

『作戦開始は明日の早朝や。お前ら、絶対助けるで!じゃないと、自治領との契約、カラドリウスに打ち切られてまう。』

 

 

『…ま、やるだけやるかな…金は全部終わってから纏めて請求すれば良いか…』

 

『…………絶対、絶対助けるから…待っててね…』

 

 

 

 

 

 

第18幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

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