ピンチベック   作:あほずらもぐら

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どうも、最近ソシャゲのニ○国をやり始めた投稿者のあほずらもぐらです。やはり原作同様、BGMやグラフィックは目を見張るものがありますね。まだチャプター2くらいで、レベルも20とかですが、ガチャを回す時に原作キャラが登場したり、なかなか楽しめそうです。映画?さぁ何のこった。(現実逃避) 話が脱線してしまいましたが、今回は前回とは真逆のシリアス路線です。それでは、本編、ご覧下さい…


第三幕: 十字架の裏で

自治領へ向かう馬車に揺られ、自分に与えられた任務を思い出す。荷馬車を襲撃し、捕虜と証拠品を回収しろ。輸送部隊の主導者の男は蘇生が出来ないよう、完全に肉体を破壊し、なるべく惨い方法で、現地にて処刑せよ。既に多くの人々が被害に遭っている。彼がのうのうと生き延びる様な事態になれば、民と我々議会の間に溝が生じるだろう。戦後間もないこの時代に、王国につけ込まれる隙を作ってはいけない。

 

…分かっている。

これしか道は無い。だがどうしても、彼らの事情を考えると、これが自然な流れだと思ってしまう。上によれば、あの剣士は元王国兵だったか。王国は、先の戦争で自治領に敗れ、あからさまな軍縮を余儀なくされた。彼らの大半は、軍縮で職を失い、山賊や密猟者に身をやつした者も多いと聞く。…彼も、そうだったのだろうか。別に同情ではない。彼は仲間を巻き込んで違法行為を行った。それは事実なのだから。そして私は何よりも人間が憎い。

 

 

…だが理解は出来た。

 

私も流され、狂った一人だったのだから。

 

父の暴力から私を守ってくれ、だが父を愛してもいた母。父が早くに亡くなり、父の棺桶に縋る母。怪しげな会合に出席する母。次第に私を伴って会合に出席するようになった。私の顔は醜い。そのせいで友人も、恋人も、暖かい家庭も諦めた。

 

母と外出した時に会った、司祭とかいう若い女が、私の顔を見るや、祝福だとか、選ばれた子だとか言い出し、事実、私は嬉しかったし、母はもっと嬉しそうだった。

 

今思えば皮肉な話だ。その日を境に、私は見世物小屋で働き、日銭を稼いだ。司祭に、そうすれば自分で、親に頼りきりにならずに生活出来ると言われた。無論、寄進を巻き上げる為の方便だ。客は意外にも行儀がよく、感覚で言えば動物園に近かった。確かに、気味悪がる客もいたし、たまに罵声や囃し立てる声が飛んでくる事もあった。しかし、父に言われた事はこれの比では無かったし、石はガラス越しには飛んで来ない。何より、見世物小屋を経営していたオークの男性は、私が酷い事を言われた日には、給金を少し増やしてくれるので、むしろ楽しみですらあった。こんな日々がずっと続くと思っていた。

 

1年ほど経ったある日、すっかり馴れた会合で、いつものように寄進を済ませる。そこでドアが蹴破られ、甲冑に身を包んだ騎士たちが私たちを取り囲んだ。どうやら、内部にスパイが潜り込んでいたらしく、司祭が美少年へ乱暴を働いたり、寄進を私的なものに使い込んでいた事が筒抜けだった。

 

 

 

 

 

それからは早かった。70名余りが邪教徒と判決を受け、事前に何らかの予兆を察していたのか司祭をはじめとした中心人物は揃って行方不明、母親も私の目の前で処刑された。

 

思わず目を覆ったが、断末魔ははっきりと脳裏に刻み込まれた。確か、司祭様を探してとしきりに叫んでいたと思う。私は当時10歳ほどで、処刑は免れたが、母親や神様の元まで行けないと、子供ながらに絶望したのをよく覚えている。自殺は罪で、寿命で天国に行くまで、神に選ばれし者としてその教えを広めよ、と聖書に書いてあったからだ。その後、騎士団によって改宗させる為に、正教の修道院に送られた。そこでは目を疑う事ばかりだった。

 

まず、貯金した金を、ここを仕切るシスターに渡そうとした。それが大人に、神に敬意を払う事だと教わったからだ。しかし、彼女は、それは大人になるまで取っておけと言った。

 

次に、畑仕事だ。いつも見世物小屋で座っているだけだった上に、元々体もそこまで強くなかった私には、骨の折れる仕事だったが、何とか目標の数、野菜を刈り取ると、皆が私に労いの声を掛けてくれた。今までの仕事とは段違いに達成感があった。

 

 

最後に、シスター。

彼女は足が悪かったが、子供達や、警備の為寝泊まりしている騎士達、皆に好かれるような好人物だった。いつも彼女の周りには、彼女を手伝う為に子供達がついていったし、厳つい甲冑を着込んだ騎士達も、自然と笑顔になるのだった。実を言うと、私は彼女に対して特別な感情を抱いていた。叶わない事だと知りながら。

 

 

ある日だった。

『………………さん、ここに来てもう五年、ここには慣れましたか?きっとまだ、辛いでしょうが、あなたはとても頑張っていますね。お母様もきっと喜ばれていますよ。いつでも相談に乗りますから、困った時は話して下さいね。』

 

「そう言ってもらえると嬉しいです。シスター。実を言うと、たまに思い出してしまいます。でも、シスターや皆のお陰で、毎日が楽しいですよ。」

 

『そうですか…それなら良いのです。辛かったら無理せず、私に遠慮しないで相談してください。』

 

 

 

やめろ、もう見たくない。

 

 

 

やめろ、やめてくれ、頼む!

 

 

 

炎に包まれる修道院。

子供達の叫び声。

 

 

『邪教徒はどこだ!匿っているのは知っているぞ!』

 

『彼は貴方達に何もしていません!彼に罪はありません!』

 

 

 

 

私のせいだ。

全部、私のせいだ。

 

 

『なぜ奴の肩を持つ!俺の弟はあいつらに….』

 

『お前も邪教徒だ!そうに違いない!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焼け跡から彼女の首飾りが見つかった。焦げて、性別も種族も分からない、ほとんど灰に近い死体が握っていた。

 

 

 

もはや、認めるしか無かった。

 

私が、殺したのだ。

 

私も死のう。

 

罪を償う時が来たのだ。

 

 

 

 

呪われた湖、彼女の首飾りを持って、飛び込んだ。ここに身を投げた人間は、全身を湖に住む悪魔に喰われて死ぬと言う。

 

 

それでいい。

 

邪教徒にはお似合いの最期だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それがお前の本心か?』

 

 

 

 

 

誰だ?

 

 

 

 

 

 

 

『お前が望めば、お前を狂わせ、あの女を殺したカスどもを引き裂かせてやろう!』

 

 

誰だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんな事を聞いて何になる?このまま野垂れ死ぬのがお前の本望か?どの道、お前にはもう何も無いのだ!最期の機会だ!死ぬのか、生きて復讐を果たすのか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分かった。このまま死ぬくらいなら、この悪魔に賭ける……せめて、家族を、友を殺し、名誉を辱めた者達に復讐を。

 

 

 

 

 

 

 

兄弟姉妹に贖罪を!

 

 

 

 

 

 

『よくぞ言った!褒美に名前を教えてやろう!我の名は!』

 

 

 

 

 

 

 

 

       アブホース!

 

 

 

 

 

 

〜数十分後〜

 

 

『さっき身投げしたあの邪教徒のガキ、何で浮かんで来ないんだぁ?』

 

『本当に悪魔に喰われたんじゃ無いのか?魔物を見てみろ、悪魔がいたって何もおかしくねぇぞ?』

 

 

 

『いる訳ないだろう。いい加減現実を観ろ。』

 

 

 

その時、激しく水面が波打ち、

 

 

「あ”ぁ”ぁ”あ”あ”ッ!!」

 

 

凄まじい慟哭と共に、神話の悪魔に死肉を貼り付けた様な、冒涜的怪物が二人の前に降り立つ!

 

 

『な、なんだぁ!くそッ!魔物かよ!こいつがあのガキを食いやがったのか!』

 

 

 

『えぇい!大してでかくもねぇんだ!やっちまえ!』

 

 

 

『そ、そうだ!こんな奴、叩き斬ってやる!』

 

 

威勢よく、軍刀を持った男が突撃する!

 

 

次の瞬間、軍刀が根本からへし折られ、次に男の腕は叩き潰され、ミンチ肉になった!男は泡を吹いて卒倒!

 

 

「虫ケラが!その錆びついたなまくらで何をする気であった!全く!人類種風情が笑わせてくれるわ!」

 

 

 

男の首を踏み砕きながら、怪物は愉快で堪らないといった調子で嘲笑う。

 

 

 

『こ、こいつ、言葉が話せるのか!』

 

 

 

「左様!」男の首を捻じ切り、手足をもぎながら、怪物は目を輝かせる。錆びた血の色に光る目がもう一人を見据える。

 

 

止めろ!止めろ!

 

 

『うわぁ!来るな!わ、悪かった、やめてくれ!、許してくれ!』

 

 

尿を垂れ流しながら、男は許しを乞う。

 

 

 

 

止めろ!

 

 

 

 

「数に頼って子供と女一人をいたぶり、修道院を焼いた上、ふてぶてしく許しを乞う!それも糞を漏らしながら?ムハハハハハ!笑止!これだから人間は殺し甲斐があるというもの!」

 

 

 

 

 

 

『あっ…ああっ…』

 

 

 

 

「貴様を八つ裂きにした後は、お前たちを送り込んだ街に行き、年寄りと子供を人質にし、無能な騎士を殺した後、お前達の娘の躰を喰らわせて貰おうか!地獄で指を咥えて見ておるがいい!」

 

 

『あひっ..ひひひっ…』

 

 

男は正気を失っているようだ。無理もない。

 

 

 

 

 

次の瞬間、男の体は半分に分かれ、凄まじい叫び声は頭が潰れた事で掻き消された。

 

 

 

第三幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、完全なる回想シーンです。本当に、申し訳ない。(メ○ルマン)
言い訳をさせて頂くと、次の話が思いつきませんでした。許してにゃん。しかし、皆さんに早く彼の過去を知って欲しく、このような形になりました。見てくださる方がいるのは承知ですが、なかなか伸びないものですね。アドバイスなどあれば、コメントお願い致します。それでは、次のお話でお会いしましょう。

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