ピンチベック   作:あほずらもぐら

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第35幕 : 霧払いし黄金の光 後編

『馬鹿め…かような子供一人、お前達の目的を達成する為には虫も同然の筈…何故そこまでして守る?』

 

『君には…きっと分からないよ。彼女は、彼が命懸けで守った人だから…彼に正義があると証明してくれたから…』

 

『たわけた事を抜かす…貴様も、この子も利用された結果と言う訳か…全く、救えん話よな。』

 

『そっちこそ…いつも誰かを犠牲にしなきゃ、幸せになれない訳…?それってとても悲しい事だよ…』

 

『私にはこれしかない…私を認めてくださったのは、あの御方だけだ…この命を以って尽くすのが我が忠義、誰にも来るべき新世界、そして王国の復活は邪魔させん…ここで死ね!』

 

蒼く輝く妖刀がペラドンナの首を狙う!しかし!

 

 

 

 

 

 

ギンッ!

 

激しいナイフ投擲が火花を散らす!

 

 

 

 

『……誰だ!』

 

 

 

「もう忘れたか...地獄では覚えておけ...」

 

「偉大なる我の名はアブホース...!これから貴様を殺す者の名だ!」

 

 

彼の目は右が赤く、左が金色に光っている。仮面の下で、理性と狂気が同居しているのだ!しかし赤目の輝きは金色の目を凌ぎ、一層彼を狂気に駆り立てる!今の彼は呪われた場所にて忌まわしい記憶と対峙し、その憎悪を利用されているのである!

 

『な…何!?貴様は…アイアンクロスが倒したのでは無いのか!?』

 

メテオリットの言う通り、彼は一度は斃れた。しかし、彼に取り憑いた悪霊、アブホースは彼の死を許さなかったのだ。墓地に埋葬され、静かに眠りについていたり、或いは辺りを漂っていた罪無き魂を全て喰らい、再び彼の心臓を、肉体を墓場に眠る血肉から再構築したのだ!そしてアブホースが再構築した肉体は、無論アブホースの支配下である!

 

「貴様も我が一部となり、永遠に苦しむのだ…この男のようになぁ!」

 

『やはり悪魔…簡単には死なんか…だが大義無き亡霊が、私に勝てる道理無し!』

 

「カス同然の虫ケラばかり集めて国を救うとは笑わせる!貴様の仲間は皆死んだ!」

 

『我々の苦しみなど、貴様ら自治領の犬には分かるまい…死ね…死ね悪魔が!』

 

メテオリットの刀が硫黄色の炎を纏う!そして勢いよく踏み込み、斬撃と炎を同時に飛ばす!斬撃が木を薙ぎ倒し、回避したアブホースの背後で大爆発を起こす!油断すれば間違いなく腕が吹き飛んでいた筈だ!

 

「馬鹿め!かような児戯、まぐれでも当たらぬわ!」

 

ピンチベックの右腕に異形の爪が生じ、一瞬で筋肉が異常発達する!悪霊と魂が半ば融合しているのだ!そのままメテオリットを切り裂く!ギリギリで致命傷は避けるも、腕から僅かに出血!

 

『くっ!やはり強い…やはり強大な悪霊が憑依しているのか!?』

 

「悪霊だと…我は人間を、尋常の生命を超越した存在!この力を以って只殺し尽くすのみ!」

 

『狂犬め…』

 

(あぁ、リディア、母さん、そして姉妹よ!俺は遂に心まで怪物になってしまったのか…最早人として暮らす事など許されない存在なのか?)

 

彼は燃える修道院を、首を斬り落とされる母親の最期を、虐げられる自分自身の幻覚をアブホースによって延々と見せられ、永遠に憎悪と悲しみを抽出されている。

 

(皆私が殺した!そしてこれからも殺すのか!偏見に抗い、生き抜いて見せると誓ったこの手で…私は一体幾人の命を奪うのだ!?)

 

「クハハハハハハ!!弱い!」

 

『悪霊如き…私はまだ戦えるぞ!』

 

 

(これより…摘発に抵抗した者の処刑を開始する!)

 

(母さん!止めろ!おい!)

 

(ば、馬鹿!お前まで罪人になりたいか!無駄な事で命を粗末にするのはよせ!)

 

(でも母さんが!)

 

(…自らの息子を洗脳し…違法行為の黙認及び隠蔽を…)

 

(処刑を止めてくれ!)

 

(摘発の際に抵抗し…)

 

(…詐欺幇助、及び公務妨害によって、被告人をギロチンによる死刑に処する!)

 

…止めろ!

 

(貴方は怪物でも、蔑まれる存在でもありません…こうして私とお茶を飲める人はそんなに悪い人ではないと思います。)

 

止めるんだ!

 

(兄様…もう食べなくても良いよ…それ焦げてるから…)

 

(ハハハ!折角妹が作ってくれたのだから、喜んで食べるさ!身に余る幸せだよ…何年か前であれば信じられない程幸せだ!)

 

止めてくれぇ!

 

(兄様…行かないで!きっと危ないよ…)

 

(だが行かねば取り残された皆が死ぬ…私一人分のリスクでであそこにいる数人を救えるならば…絶対に戻る。早く行け!)

 

(…約束だよ…戻って来て…)

 

(………あぁ。)

 

(シスター!何処にいるのだ!皆は!何処に居る!)

 

(貴様が邪教徒を匿っていたとはなぁ!)

 

(彼には何の咎もありません!今からでも遅くない、悔い改めるのです!)

 

(裏切り者め!問答無用!)

 

止めろおぉぉぉぉぉぉぉ!!

 

「クハハハハハ!やはりこの器の憎悪は素晴らしい!力が底無しに漲って来る!」

 

『まずい…押されているか…』

 

メテオリットは刀でアブホースの爪を弾き続けているが、少しずつ追い詰められていく。直前までペラドンナと戦っていた為に集中力が削られているのだ!

 

「このような手負い一匹にここまで時間を割くとは…奴の憎悪を完全には引き出せてはいないか…何という復讐心よ…我を飲み込むつもりか…」

 

(まだだ…この手で…私自身の手で復讐を…)

 

『動きが鈍っている…流石に疲弊したか!?ならば…』

 

メテオリットはアブホースの一撃を足の裏で受け止め、勢いを利用して距離を取った!仮に失敗すれば下半身が吹き飛ぶ致命傷を受けていただろう!そのまま刀を隕鉄の鞘に収め、強力な摩擦で火花を起こし、その威力で着火、蒼と赤が混ざり合う紫色の軌跡を描く居合斬りを放つ!

 

「むぅっ!?何という威力だ!このような威力を今の一瞬の構えから放つとは!」

 

アブホースの指摘は確かに間違っていない。通常、炎魔法や爆発魔法は魔力の多くを着火にも使う。だがメテオリットは特殊な鞘で居合斬りを行う事により刀に着火、通常の数段上の威力で火炎攻撃を放つ事が出来る!アブホースの身体に恐ろしい刀傷が刻まれた!そのまま湖に落下!

冒険者といえど助からないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の復讐心こそが我が力!貴様死ぬつもりか!下らぬ抵抗など無意味!」

 

(一度だけでいい…力を…私のこの内なる邪悪に打ち勝つ力を…!)

 

「馬鹿め…!何故力を受け入れない!お前の仇を討つ為にこの力を与えたのは我だぞ!」

 

(だが仇を討つのは私自身だ!私ならばお前よりも残虐に奴を殺せる!今だけで良い、お前も私を甦らせた事で限界の筈だ…此度は私が奴を…!)

 

「面白い!我を説き伏ようとする依代は初めてだ!面白い、ならば楽しませて見せよ!クハハハハハ!」

 

 

アブホースの声は消えた。だが湖に落ちて尚、忌まわしい記憶が続いた…だがそれは、彼の記憶ではなかったのだ。

 

(呪ってやる!呪ってやるぞぉ!神など!その信徒など!人間など!皆滅べばいい!呪ってやるうぅ!)

 

それは全身を縛られ、湖に沈められる男の声であった。だが自分の記憶では無いのに、何故か見覚えがあった。気づくと彼の目には、湖の水面が見えていた。胸には刀傷があったが、痛みは感じない。身体が軽い。まだ、死なない、死ねないのだ。全力で浮上し、メテオリットの眼前にピンチベックが現れる!

 

 

『ほう…あれで死なぬか…ならば幾度でも殺すのみ!』

 

「…だが貴様は一度で死ぬ…最早後は無い…もっとも、簡単に死ねるとは思わない事だ…」

 

『抜かせ…貴様は殺し過ぎる…ここで憂いを断ち、司祭様が作る太平の世を見届ける…神が作りし焔の塔の上でな…』

 

「そうか、ならばその塔に行けないように”下”に送ってやる。」

 

『外道め…』

 

「それは私にとって褒め言葉だ。我々は貴様のような屑に思い知らせる為、常に恐ろしい存在でいなければならない。お前も思い知る事になるぞ…お前達は10年前に踏み躙った虫に今日殺されるのだ…!貴様には分からないだろう…あの女がいかに醜悪な人間か…」

 

『呪われた悪魔が…貴様さえ、貴様さえいなければ我が同胞は…!』

 

『黙れ…”彼女”は背信者として死んだ!本来は列聖されるべき高潔な方だったのだ!我が復讐はあの方の弔いの為にあり!行くぞ!』

 

彼の目が仮面の下で赤と黄色に明滅した。それは血の涙か、それとも悪魔の囁きかは分からない。只、復讐心が、執念だけが魂を肉体に縛りつけ、紐のような手足を驚異的な力で動かしていた。

 

『死に損ないが笑わせる!正教は人々を救えなかったのだ!我らはその代わりに人の心を救う!邪魔はさせん!』

 

メテオリットは後ろに側転しながら大量の爆発魔法弾を放つ!ピンチベックは樹木に阻まれ逃げ場が無い!しかし高い判断力で発射音を聞き上空に回避!メテオリットはこれを狙っていた!炎の斬撃を飛ばし、ピンチベックを撃ち落とすつもりだ!霧の中では避けられない!

 

『…やったか!?』

 

しかしピンチベックは短刀で斬撃を受け止めた!熱で短刀が融解する!だがピンチベックは短刀を犠牲にして攻撃を回避!斬撃を相殺、熱を短刀で吸収した!融けた金属が地面に垂れる。自分に当たれば肉体が両断されていた。

 

(腕に傷を負った…?)

 

だがメテオリットは融けた金属が垂れるのを出血と取り違えたのだ!何という高度な読み合いだろう!ピンチベックは拳銃を胸の辺りで交差させ、斬撃を放った後の隙を狙う!

 

(だが切断には至らない…だが腕を負傷したなら足技か?)

 

だがメテオリットも手練れ、刀身を傾けて中段から下段を幅広く防御出来るように構える!未だ地の利は彼にあるのだ!死角から爆発魔法弾を連射し、飽和攻撃で止めを刺す!もし接近されても刀で防げば良いのだ!

 

 

 

 

 

…しかしそれは霧の出ている場合の話である。ペラドンナの予想外の奮闘や、ピンチベックの復活、ヴォルクの裏切りなど予想外の要素が重なった上にミストハンドの護衛に回していたスリーアンダーの死によってミストハンドは移動しながらの詠唱を諦め、一箇所に留まるしか無かった為に、霧が少しずつ薄くなっていたのだ!”蛇の目”は温度を視覚化することに特化した性能の為、霧が薄くなっている事に気がつけない!

 

 

『コヒューッ!』

 

万全な状態の両腕でピンチベックが投げナイフを投擲!メテオリットは寸前で回避するが”蛇の目”が破壊され、自分の間違いに気づいたのだ。そしてその間違いと状況の変化に気づくには遅かった。そしてメテオリットの脇腹にクロスボウが突き刺さる!

 

『何!?ミスト…ハンド…馬鹿な…』

 

『これで、借りは…返したかな…』

 

『だが…”巫女”は頂いた…目的は…果たしたぞ…!来い…バンディーア…来い!』

 

メテオリットは吐血しながらもその名前を呼んだ。そして巨大な影が姿を現した!

 

『…メテオ……ナに…?』

 

『奴を…足止めしろ…足止めでいい…頼んだ…』

 

『分カッ…た…やっテ…みる…』

 

『あぁ…頼んだぞ…!』

 

メテオリットは爆発を煙幕代わりに使い逃走!それに追い縋るピンチベック!重要な情報源を逃す訳には行かない!だが驚異的な身体能力のバンディーアに阻まれる!

 

『ダメ…行かセなイ…アアァー…』

 

「ならば貴様から殺す!」

 

『アァアアァーッ!殺さレなイ!』

 

「死人は大人しく死んでおけ…直ぐに仲間の後を追うがいい!」

 

『……でモ…そシタら…止めラれなイ…?』

 

「考える頭が腐っているか…拷問するのは無理だな…」

 

ピンチベックは拳銃を構える。例え相手が哀れな怪物だとしても躊躇はしない!

 

『待って…まずは一度体勢を…彼女を助けるのが先だよ…それに…』

 

「まさか”これ”が可哀想だとでも言うのか…あまり私を失望させるなよ…私がどう言う人間か、知らない訳ではあるまい。」 

 

『アァー…足、折レば…動けなイ…しバらく…じっとしてテ…その後…頭…潰すかラ…』

 

「悪いが捨て駒に時間を割く程、私の仲間は愚かでは無い…棍棒を持った冒険者が馬車の護衛をしている筈だ…行け。私はミストハンドとやらを探す。」

 

『でも君が…』

 

 

「一度死んだ身だ…気にするな。これで終わるのなら、それもまた良い機会だ…止めてくれるなよ。」

 

『…駄目だよ…』

 

「…何?」

 

『そうやって無理するから…だってまた会えたのに、また死ぬつもりなの!?僕は認めないよ…!』

 

「………五分だ…五分だけ待て…必ず戻る。君達が逃げる時間を稼ぐ。彼を連れて撤退しろ…」

 

『……絶対だよ…絶対帰って来て…!』

 

「…分かった!」

 

 

 

 

『話シ…終わッタ?殺シテ…いイ?』

 

「あぁ…今度こそ奪わせる訳には行かん。精々暴れて見せろ。」

 

『分かっタ…ガオォォォォォォォォン!』

 

目の前にいるのは恐ろしい怪物だ。病的に白い肌が、血走った目が、異常発達した巨躯が、そしてその肉体に反して少女のような顔と声が、それを証明していた。だが望まずしてその力を手にした事は明らかだった。

 

「…同情はしてやる…だが悪く思うな…恨めよ。」

 

バンディーアの拳が風を切り唸る!肉体のリミッターが外れ、桁違いの威力だ!ピンチベックはバックフリップで回避!しかし仮面が割れる!彼程の手練れでも反応が難しい拳速だ!ピンチベックはそのまま拳銃を支点にして側転!連射する!

 

『…アツイ…バくだン?』

 

だがダムダム弾はバンディーアの凄まじい筋力で握り潰され、本来の機能を発揮しきれない!僅かに拳を傷つけただけに終わった。

 

『カお…同ジゾんビ?ソれともビょうき?』

 

「…………………」

 

ピンチベックは無言で拳銃を連射した。いや、無言でないと撃てなかった。今言葉を交わせば狙いがブレる気がしたのだ。だが無慈悲に弾かれる。バンディーアの腕には鉄塊のようなガントレットが装置されている。内側からでないと骨格の破壊は難しいだろう。

 

「成程…優秀な兵器だな…」

 

これはあくまで時間稼ぎに過ぎない。だが後の災いを絶てるのなら、殺したかった。殺してやりたかった。だが殺せなかった。

 

「力が足りないか…あの時も、今も…私にもっと力があれば…」

 

(殺したいか?力を求めるか?ならば…)

 

あの時の記憶が蘇る。或いはアブホースの仕業か?その疑問を振り払うように彼はひたすらに撃った。何発かは当たっただろうが、大したダメージにはならない。アブホースに身を任せれば彼女を殺せるだろうか?一瞬、邪悪な考えが頭をよぎる。

 

『アァアァー…!!』

 

ピンチベックの体が吹き飛んだ。あえて受け身を取らず、木にぶつかって衝撃を逃す。だが肋骨が折れた。背骨にもヒビが入ったかもしれない。

 

『ナるべク…早ク…楽に…するカら…ゴ…めん…』

 

彼女は自我を消去されている訳では無い。抑制されているのだ。役目を終えればきっと彼女は殺される。だが死ねるのだ。

 

(もう、終わりにするべきだろうか?私の復讐は、多くの人間を犠牲にして来た…彼女は復讐を望んではいないだろう。)

 

(だが…彼女は背信者として死んだ。私はそれが憎い。それにこの少女を邪悪な怪物として死なせるのか?)

 

「…あと三分…私はまだ死んでいない!そしてこれからも死なぬ!」

 

『アァァ…』

 

(違う!彼女ならばこの子を見捨てない筈だ…これは二度目のチャンスだ…彼らは私を人間と言った…ならばこの子も人間だ!敵ではない!護るべき存在だ!)

 

ピンチベックはバンディーアの右腕での追撃をガントレットで防ぐ!そして鉤爪を展開、鉤爪に気を取られた隙に重い拳を押しのける!しかし本命は下半身だ!鋭い蹴りで関節を攻撃!踏み込んだ足が僅かにずれた!隙を突いて股を潜り抜ける!背後を取り鉤爪を突き刺す!しかし左腕に阻まれる!右腕でのカウンター!だが拳を蹴りで相殺、衝撃を活かして跳躍した!あと二分!

 

『何デ…逃げタら苦シいよ…』

 

「大人は…苦しい事を進んでやるものだ。子供が困っている時は特にな…!」

 

『ウゥー…分かラナい…ワたシ…困ったナい…はズ…皆…生きてテ苦シい…お腹スく、喧嘩すル…デも、塔ヲ見つけレバ、皆幸セ…』

 

「その人達の幸せで損をする人もいるのだ…難しいな。」

 

『デも…生きテたら、苦しイ…メテオト、司祭サま、裏切レなイ…あナた、殺ス…殺シたイ…苦シそウだカら…』

 

「そうか…」

 

『だかラ…貴方モ…殺シタい!』

 

彼女の体内に増設されたアドレナリン分泌機関が、彼女の減退した殺人欲求をブーストし、無慈悲なる殺戮マシーンと化した!ピンチベックをバラバラに引き裂くべく突撃する!アドレナリンにより加速した拳の連撃だ!あと一分!

 

『アァアァアァアー!殺ス…殺スウゥゥゥゥゥゥ!!』

 

「…!?」

 

『ガオォオォオォオォ!!』

 

「………潮時か…」

 

ピンチベックは木を蹴りながら移動し、掴まれる寸前で回避!拳銃を後ろに向け発泡しながら勢いを利用して加速!銃弾を弾きながらそれを追うバンディーア!

 

『アァアァア…!』

 

「まずい…」

 

再び掴み掛かるバンディーア!だが素早く地面に伏せて回避!しかしバンディーアに逃げ道を塞がれる形になった!

 

『…逃ガさナい…』

 

「……そう来るか…」

 

『……なンデ…怖ガラなイ?あナタ、これカら死ぬノに…?』

 

「……問題ない…やれ。」

 

次の瞬間、大鎌が足を切り裂き、サーベルが背中を貫いた!

 

『ぐあアァアァァァァーッ!!』

 

傷ついたバンディーアは状況を不利と見たか、何処かヘ去って行った。目的は果たしたのだ、恐らく撤退したのだろう。

 

「おっと、深追いするな…”足止めだけ”でいい、我々も撤退するぞ…」

 

『お前マジで蘇ったのかよ…死ぬだけじゃ終わらない奴だとは思ってたけどさ…』

 

「あぁ…ここで終わるつもりだったが…そう言う訳にも行かなくなった。」

 

『お前の葬式に参列したんだぞ…蘇ったなら香典返せよ…!』

 

『まぁまぁ、お前も疲れたやろ。積もる話も… 』

 

 

『うわぁあぁん!もう無理したらダメですよ…覚悟は出来てたけど…やっぱり…悲しいから…もう…』

 

「…申し訳ありません…しかし私は本当の名前すら捨てた身、同情は…」

 

『そんなの知らないよ!僕は君が帰って来てくれて嬉しい!そもそも僕は君に…』

 

「髪を…切ったのか?よく手入れされていたのに…」

 

『うん!もしかして長い方が好きだった…?』

 

「いや…私は白髪だから羨ましいだけだ。」

 

『えー…それも渋くて良いと思うけど…』

 

「とにかく、皆が無事で良かった。ペラドンナも問題なく任務に当たっているようで安心した。怪我は大丈夫か…?」

 

『それ…君が言う事?』

 

「肋骨が折れた程度だ…正直痛いが、銃の暴発で腕が飛んだ時に比べれば…』

 

 

 

そこで彼の意識は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

第35幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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