ピンチベック   作:あほずらもぐら

5 / 123
皆さんこんにちは。UAが30を超えたあほずらもぐらです。今回からコメント無しで評価をつけられるように設定を変更しました。引き続きコメントの方も、世界観に関する質問や、執筆の際の参考になるアドバイス、一言だけの感想まで、お待ちしています。最初の10件くらいは必ず執筆活動に反映したいですね。まだ一件も来ていないので、是非お願いします。他にも、こんなキャラを出して欲しい、こんな武器を使って欲しい、外伝でクロスオーバーして欲しい作品なんかのご要望も大歓迎です!それでは、本編、ご覧ください…


第五幕: 初めての対話

『お前のような障碍者の言う事は誰も信じないぞ!』

 

『誰に養って貰っているんだ!』

 

『そこを退け!マルグレット!この不細工なガキを殺してやる!』

 

『お前を殺して、俺も死んでやる!』

 

『謝れだと!?あいつが口答えをするのが悪いんだ!』

 

 

 

もう嫌だ、やめてくれ…

 

 

 

 

父親が息子の首を絞める。

 

 

息子を投げ飛ばす。

 

 

グラスを持って、殴りつける。

 

 

 

やめてくれ…やめてくれ…

 

 

 

 

痛い、痛いよ、父さん…

 

 

 

 

 

目が覚めた。痛い。肩の筋肉が切断されて、欠けているのを感じる。全身がヒリヒリする。めまいがする。動けない。

 

 

『気がついたようだな、愚か者が。久方ぶりの人間狩り、中々楽しめたぞ。お前を休ませた甲斐があったというものよ!屋敷で肥えた豚どもが逃げ惑う姿は、まさに痛快そのもの!やはり人間が一番無様な死に様を晒してくれる!殺し甲斐があるわい!お前もそうは思わんか?』

 

 

 

「…一体、何人殺した。なぜ私は病室で鎖に繋がれている。何をしたのだ!答えろ!」

 

 

 

 

『我はただ、お前との約束を果たしただけだ。下衆な人間供を殺して殺して殺す。これでも、お前の肉体を破壊しないよう、気を遣ってやったのだぞ。』

 

 

 

「お前は何を望む、アブホース。お前は誰なんだ、何故、私を選んだ。」

 

 

 

『我が望みは人間というカスどもの脳裏に、我の偉大なる力を、我の恐ろしさを100世紀先まで刻み込む。ただそれだけだ。』

 

 

 

 

 

「何故私だったんだ!答えろ!」

 

 

 

『無論、あの湖に身を投げたからよ!それも人の世を恨みながらな!』

 

 

「あの湖だと?お前は何故あの湖に居た?人を恨む者など、幾らでも」

 

 

『お前には未だ理解は出来ぬ…我が何者かも、何故..私が…人を憎むかもな…』

 

 

 

 

 「どういう事だ!説明しろ!」

 

 

 

 

 

 

『護民官様』

 

カダだ。複雑な表情であるが、怒っている事は確かだ。今なら分かる。分かった所で、もう遅いが。

 

 

 

 

この少女の言う通りだった。私は、人間への私怨で、大局を見失っていた。人々を護る立場でありながら、恥ずべき事だ。

 

 

 

「何で、何で!こんな事したんです!何が職務よ!何が使命よ!私には、貴方が死のうとしているようにしか見えません!もう…もう二度とこんな事しないでください!」

 

 

 

 

 

「認めよう、君が正しかった。だが、きっと次は無いだろう。君ともここまでだ…残念だが、今回の失態は大きい。もしかしたら私は王国領に連行され、処刑されるかも知れん。それだけの事をした。」

 

 

 

『次はありますよ、それは私が保証します。』

 

 

 

カダの空気が変わった。

 

 

「ゑ?」

 

 

『ですから、今回の任務内容は、最高議会の決定です。つまり、最悪のタイミングで貴方を指名した結果、今回の事態が発生致しました。なのでこの件の責任は、最高議会に存在します。よって、今回の任務失敗を受けて、貴方に万全のコンディションで捜査を再開して頂く為、「休暇」を与えます。これは最高議会側が責任を認めた上で、既に決定している事項です。変更はありません。それは、この私、最高議会威力捜査部門議長、カラドリウス・フォルが保証します。』

 

 

 

「つまり、貴女は…」

 

 

『今まで隠していてごめんなさい。でも、こうでもしないと貴方は抜け出して捜査を単独で続行しそうだったから。』

 

 

そう言うと彼女はマスクを引き裂いた。甲殻の色が変わり、牙が閉じ、段々と懐かしい顔が目の前に現れる。ピンチベックは素早く平伏した。

 

 

「今までの非礼、心よりお詫び申し上げます。知らない身とは言え、最高議会の議長にあの様な発言、到底許されるものではありません故、処罰は謹んでお受け致します。」

 

 

『だ!か!ら!』

 

 

『貴方に責任は無いって議会が決めたんです!』

 

 

『それに、貴方が破壊した貴族の屋敷は、違法取引の真っ最中だったから、王国側は黙認するしかなかったみたいですよ。』

 

 

「左様でございますか。しかし、貴族にまで腐敗が広がっているとは。すぐに他の護民官に通達し、自治領の冒険者ギルドとも連携を取れる態勢で有事に備えるべきでは?」

 

 

『駄目です。そんな体じゃ無理ですよ。一ヶ月の間、休暇を命じます。捜査以外の好きな事して過ごしなさい。』

 

 

 

「…承知致しました…。」

 

 

「あと、鎖を解いて頂けますか?無理に拘束すると、「彼」が暴れる可能性が高いので。」

 

 

『あとで一杯付き合ってくれるなら。』

 

 

 

「…分かりました…。」

 

 

 

〜数日後〜

 

 

「はぁ………。」

 

何もする事が無い。そういえば、私は自治領の拷問官になってから、今の地位を与えられるまで、人類種への怒りと任務への使命感で行動してきた。好きな事と言われても思いつかない。まさか彼女が私に直接会いに来るとは…この醜貌を晒すのは非礼だと断じ、今まで手紙でのやり取りであったが、心境の変化でもあったのだろうか…?

 

地下で鞭を振るい、一体どれほどの王国軍人から情報を聞き出した事だろうか。漆を体に塗り、痒みで発狂寸前になるまで放置したり、睡眠薬を食事に混ぜて、寝ようとしたら殴って起こすのを繰り返した事もある。我ながら尊厳の欠片も無い行為だ。だが人類種に似せた紛い物には尊厳など必要は無い。そう自分に言い聞かせて来た。

 

とにかく、ここで腐っていても話にならない。一時凌ぎに過ぎないと知りながらも、自宅からふらふらと外に出て、時間を潰そうと歓楽街に向かう。改めて見ると、亜人種専門の風俗店や、冒険者の溜まり場になっているであろう、大きな酒場、各地の郷土料理の屋台など、様々な店舗が並んでいる。

 

「ええい、ここだ、入ってしまえ!」

 

私は大きな門をくぐり、酒場に入る。これでも、私にしては勇気を出した方だ。斥候だった頃、ゲリラ戦の増援へ向かう武装機関車に乗る時と同じくらいには緊張していたと思う。

 

中は、深夜という事もあって、賑わってはいるものの、いくつか空席があり、すぐにカウンター席に通された。

 

周りを見ると、やはり冒険者の数が圧倒的だ。ここは冒険者の依頼を仲介する、いわば集会所としても機能しているようで、掲示板には大量に依頼を書いた紙や、賞金首の布告が貼り出されている。内容も様々で、村祭りの設営の手伝いといったものから、山賊団の取り締まりまである。

 

メニューを見てみると、意外にもかなり安い。恐らく、冒険者ギルドが運営している為、酒場自体の収益は副次的なものなのだろう。しかも、冒険者であればさらに割引されるという。私は鹿肉の串焼きと、ルートビアを注文した。

 

 

『おい皆!こいつ、湿布味のサイダーなんか注文してるぜ!』

 

 

『おい小さいの!ママのミルクでも飲んだ方がいいんじゃねぇか?』

 

 

なるほど、こういった輩はどこにでもいるようだ。まぁ、無視していればそのうち諦めるだろう。

 

『無視してんじゃねぇぞ!ガキが!俺様はトロルすら叩きのめすシャーク様だぞ!』

 

かなり酔っているようだが、周りは止めるどころか、囃し立てる者すら居る始末。どうせ仲間に乗せられて飲み過ぎたとかそんな所だろう。流石に冒険者相手には何も出来ず、店員は憲兵を呼ぶかどうかで話し合っている。

 

「なるほど、食前の運動までさせてくれるとは、この店が繁盛する訳だ。鹿肉を冒険者の血にたっぷり浸して食ってやろう、三下が。」

 

『抜かせ!』

 

やはりこうなるか。まぁ、店員が憲兵に通報したようだし、時間を稼いで…………まずいな。病み上がりで冒険者とやり合ったなんて最高議会に知れたら、またお叱りを受けるぞ。ここは手早く終わらせるべきだ。

 

『食らえ!メガトンアタック!』

 

「コヒュッ!」

 

敵の攻撃は大振りだが、その分破壊力が高い。恐らく対魔物用の型だろう。グレートメイスの一撃を躱し、鋲付きのグローブを構える。元は決闘用の武器だ。華はないが、目立ちもしないだろう。得物の差は歴然だ。だが逃げる訳にはいかない。命令は遵守する。最高議会の威厳も守る。両方やらなくっちゃあいけないのが、護民官の辛い所だな。

 

 

 

 

第五幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい。長くなりそうだったので、今回は少し短めです。次回も早めの投稿を目指します。しかしピンチベック君、本当に運が無いですね。さて、次回はあの人が再登場しますよ。それでは、またお会いしましょう!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。