ピンチベック   作:あほずらもぐら

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第45幕 : 研鑽

『……………』

 

男は、金槌と鋏を持ち、溶けた鉄をひたすらに打つ。生まれてから二十数年、ずっと続けて来た事だ。更に名誉を得る事も出来た。しかし、男はこの仕事が好きだった。この魔導炉の炎は自身が鍛治屋を始めてから一度も絶やしていない。何故なら一日の殆どは鉄を打って終わるからだ。

 

髑髏めいた鉄仮面に映る炎、そして新しい武器、男にそれ以上の幸せは無い。無名で終わるのならそれでも良い。同業者は世継ぎを作らないのかとしつこいが、自分を継ぐものは要らない。見合いの話もあったが、女たちは自分ではなく、自分の作る武器が欲しいのだ。それが嫌で仕方ない…皆、自分の事は二の次だった。小さい頃からそうだ。

 

『……用件を。』

 

『これ、誰が打ったか分かる?』

 

『…………知らん鍛治士ではない、とだけ言っておこうか……少しばかり手伝ってやった…明確に言えば八割程。銘が無くとも装飾で分かる。』

 

『……お客さん、少ないの…?飾ってある武器は皆、強そうなのに…』

 

『俺は武器が作れればそれで良い…武器は私に虐待や嫌がらせをしない。それに、食うには困らん。今月の売り上げはもう貰った筈だ……』

 

『…この武器、誰が受け取りに来た?その人を探してる。』

 

『………客の秘密は漏らさん主義でね。変な事に首を突っ込まない方が良い……仕事の依頼じゃないなら…』

 

『……何で鎧着けてるの?カッコいいけどさ…』

 

『……服と同じ時間着用しても大丈夫な鎧だからだ。そもそも試着しなければ重さが分からないだろう…あとは重さに慣れる為だ。』

 

『…一日中着けてる訳?』

 

『あぁそうだ……鍛治仕事は危ないからな………』

 

『何作ってるの?』

 

『……槍だ。薙ぎ払えるタイプの物。費用を抑えた上で、殺傷能力を重点しろと来た。他の鍛治士は皆嫌がった。良い金属が打てない上に、儲けが少ない。だから私がやる。年功序列で丸投げされるのだ。俺より若い鍛治士は、他の工房の見習いしか居らん。』

 

『喜ぶだろうね、依頼した人。あの剣、僕みたいな素人でも分かるくらい鋭かったから。』

 

『……依頼者にカネが無いだけだ。まだ新参の冒険者らしい。出世したら俺はお役御免だ。』

 

男は槍頭を水に浸し、素早く砥石にかける…それを何度も繰り返す。洗練された手際だ。刃には湖面を打ったような紋様が浮かび上がり、卓越した職人の技能を感じる。青みがかった鋼には、少量だが高価なミスリルが含まれている。これでは黒字とはいえ、稼ぎに見合わない仕事の筈だ。だが髑髏めいた鉄仮面の下で、男は笑っていた。

 

『……柄は……鋼では重過ぎる。竜骨では予算オーバーだな………余っていた黒檀にするか。色は悪いが、染色すれば……』

 

素早く素材を選別し、柄を作る専用の機械に黒檀の角材と金具を差し込む。だがその間も、細かい金具一つ一つを丁寧に磨き、ルーンを刻印していく。やがて柄が完成すると、これも細かいサイズ調整をしていく。ヤスリがけが終わると、完璧な濃度の樹皮塗料を型に満たし、そこに柄を漬ける。一切の無駄が無かった。

 

『1……2……3……4……5……6…』

 

密閉された型を勢いよく傾ける。

 

『1……2……3……4……5……6…』

 

また傾ける。数十回繰り返し、留め具を外す。専用の器具で柄を取り出し、乾燥棚に固定する。

 

『…つまらんだろう……何故見ている?』

 

『……面白いから。』

 

『…何故、面白いと?』

 

『その槍……普通の店に並んでるような見た目じゃないし……新参の人が使うには、少し素材が豪華だと思ったから……それに、君は使う人のために作ってる。何となくは分かるから…』

 

『……面白い指摘だな。そんな事を言われたのは初めてだ……しかし、こんなに人と話したのはいつ振りだろう。もう何年も昔に違いない。』

 

『…何か一つの事に夢中になれるって、凄いと思うよ、僕は。』

 

『……俺は鉄しか知らん…それだけだ。俺は戦に行くのが怖かったのだ。だが鍛冶屋になれば徴兵されない……結局、俺は向いていたようで、独り者だった俺は戦が終わるまで稼ぎ続けた。前の戦で女子供を殺された同業の奴に言いがかりをつけられて、半殺しにされた事もあった。俺はそれも恐ろしくて国から逃げた。その時は鍛治仕事の最中に襲われてな…それも怖くて鎧を着てる。』

 

『……逃げるのは賢い事だよ、多分……でも、鍛治からは逃げてないんだから、それは誇って良い事だと思う。』

 

『………面白い人だ。だが、帰った方が良い、もうじき……』

 

 

二人は、神聖な鍛冶場に殺気が近づくのを感じた。しかしペラドンナは逃げない!そして二人の冒険者が現れた!その胸には商人ギルドのバッジ!

 

『……どうもね!商人ギルドのシャイロックです。それで、土地売却の件、考えてくれました?』

 

アタッシュケースを携えた細身の男が頭を下げる。口には出さないが、その態度は尊大であり、決して低くない地位にいる事が伺える。

 

『…分かるか?立ち退けば誰も傷つかない。お前さんは仕事を貰えて裕福に、商人ギルドはここにレジャー施設を建設出来る。実際、他の皆は納得しているのだ。金も相場の5割増し支払う。住居も即金で支払える範囲の物を優先的に紹介してだな……』

 

続けて話すのは傭兵と思われる装甲タイルアーマーの冒険者、ディスコネクターだ!背中には板剣を下げており、その切断力は侮れない。フルフェイスの合金兜でくぐもった声が更に威圧感を倍増する。

 

『……だから言った筈だ……金の問題ではない。傘下に入っても上納金を支払えないと言っているのだ。』

 

『貴方の腕ならばギルドでも間違いなく出世出来ますよ。客層も富裕層にシフトして、上質な素材を提供すると言っているのです。』

 

『では誰が貧しい人間の為に安い材料で精巧な錠前を作ってやる?左利きの冒険者用の武器は数打ちの鈍ばかりだぞ……商売人の癖にニーズを分かっていないと見える。俺がここから消えればそういう奴等が不便な思いをするのだ。』

 

『……チッ…これだから職人は……我が国の経済に誤差以下の貢献しか出来ない貴方を、我々がわざわざ取り立てると言っているのだ!何故分からない!王国領はこれから技術者と鍛冶屋が必要不可欠なんだぞ!それを労働者の分際で…』

 

『落ち着け……これでは我々が悪人ではないか。すまないな、鍛治士殿。だがギルドは貴方を高く評価している……互いに面倒は避けるべきだな?』

 

『……早くサインしてくれよ全く!私の出世が掛かっているのだ!少しくらい破壊してくれ!後で揉み消せるくらいだ!破壊しろ!』

 

『…気は進まないが……やるしかないようだな。』

 

ディスコネクターの背中の鞘が一瞬で展開し、素早く板剣が飛び出す!閉所での抜刀すら容易に行える画期的な機構だ!ディスコネクターは重厚な板刀を片手で振り回す!冒険者の暴力を以ってすれば容易い芸当、しかし一般人からすれば、この世の終わりと同義だ!

 

『軽く……まぁペナルティと言う奴だ。早めに降参してくれ。さて、まずは鍛治が出来ないように…』

 

ディスコネクターが魔導炉に剣を向ける!そのまま振りかぶり……しかし雷の槍がそれを阻んだ!紫色の激しいスパークに紛れ、一つの影が飛び出す!

 

『……あー、見たからね。今の全部!』

 

『クソッ!何でこんな零細工場に用心棒を雇う金があるんだ!脱税か!?そうだ、脱税に決まってる!報酬は増額する!奴を痛めつけろ!その後は個人的に楽しませて貰う!』

 

『……チッ、おい、早く終わらせるぞ。適当にやって、さっさと退散してくれや…!』

 

『…貴方がね!』

 

ディスコネクターは板剣を盾にして突撃!彼女は武器の強度を補強する、特殊な防護魔法の使い手だ!銃弾はおろか、爆発魔法やクロスボウの直撃すら受け止める程の防御力を引き出す!

 

『私は無敵だ!このまま臓物を吐き出せ!』

 

『僕は天才だ!このまま電撃で内臓を焼いてやる!』

 

シールドスペルで相殺!しかし重戦車めいた大質量がペラドンナを吹き飛ばす!シールドスペル粉砕!突進の勢いで壁に叩きつける!背後にクレーターが発生する程の衝撃!常人ならばこれで挽肉になっていた!

 

『なッ!ぐわぁああっ!』

 

『いいぞ頑張れ!そのまま役得重点だ!潰せーッ!』

 

しかしペラドンナは生存!下手に動かず、壁に衝撃を逃したのだ!しかし割れたシールドスペルが帯電!半端な攻撃では間違いなく感電していた筈だ!それを見てディスコネクターの目が笑う。

 

『フン、雷頼りの雑魚ではないようで安心した。だが殺す!そういう契約になった。』

 

ディスコネクターは恐ろしいスピードで板剣を振り回す!工房の壁に凄まじい傷跡が刻まれる!ペラドンナは加速魔法で高速移動し、寸前で回避!刃が髪を掠め、視線がぶつかる。電撃と火花が交錯する激しい戦闘!若き鍛治士は震えるしかないのか!?

 

 

『ハーッ!貴様のような愚か者、今まで何人も殺して来たぞ!来世では依頼を選ぶんだなぁ!』

 

だがペラドンナは初撃のダメージが響いて満足に動けない!ディスコネクターはアドレナリンの過剰分泌体質を活かした猛撃で畳み掛ける!長物は下半身への防御が疎かになりがちだが、ペラドンナにそこを狙うような余裕は無い!回避に集中しなければ瞬く間に細切れだ!

 

『お、俺の工房が………何も出来ないのかよ、俺は……』

 

『早く逃げて!僕が足止めする!』

 

『…逃すか!奴を捕らえろ!』

 

しかしシャイロックは捕獲部隊を待機させていた!綱が発射され、男の身体を拘束……出来ない!隠し持った槍頭で綱を斬り刻む!鎧を着たまま逃走!重装甲に見合わないスピードで走る!鎧を着慣れている為、身体の一部のような一体感だ!

 

『追え!追えーッ!早く捕まえないと騒ぎになるだろ!』

 

 

『せめて…せめてこの槍だけでも!仕事を放り出すなど鍛冶士の名折れ!』

 

 

 

〜一方その頃〜

 

 

 

 

『…何処に逃げた!奴を探して査定の足しにしなければ!怪我人を背負っているのだ、遠くまでは行けない筈……!血の匂いはするが、一体何処に隠れている!?』

 

この冒険者の名はテイクポイント。優秀な嗅覚で敵を追い詰める獣人族の冒険者だ。”テロリスト”の追跡を依頼され、こうしてギルドから派遣された。しかしながら、”オイル漏れ事故”のせいで明確な場所が分からないのだ。仮に上が本当の事を伝えていれば、オイルの臭いを辿って追跡出来ただろうが、上層部の後ろめたい事情により捜査は難航している。

 

『………待て……感じるぞ……血だ、人類種、男!見つけたぞ!』

 

だがテイクポイントは優秀であった。僅かな空気の流れ、極限の集中、そして高い脚力を活かし、遂に敵の足跡を見つけたのだ!常人では到底不可能な超速度を発揮し、臭気をトレースする!敵が近いのだ!

 

『……近い!近いぞ!』

 

そして、路地裏にたどり着いたのだ!フードの下で思わず笑みが溢れる。幾ら貰えるかは知らないが、多額の報酬が振り込まれるのは間違いないだろう!

 

『…見つけたぁ!』

 

両手に持った連装クロスボウにマナを込めたボルトを装填し、血だらけで負傷している男にボルトを大量に射出!

 

『待っ…』

 

男はハリネズミめいた死体になり死亡!首を切り取る為に近づくが……何と、仮面の下は人類種ではなく人間の血を塗りたくったハーフエルフだ!罠……気づいた時には、凄まじい殺気が背後に!しかしテイクポイントは素早く向き直り距離を取った!飛んで来た鎖分銅をギリギリで回避!

 

『馬鹿な……貴様、死にかけの筈ではないのか!貴様ぁ!』

 

「雇われか…情報が古いな。それより貴様、仲間を殺したが大丈夫か?これは問題だな…大問題だ。どう落とし前をつけるのかね?私はクロスボウを持っていない…もっと慎重に行動しなければ。」

 

『な……』

 

その動揺がいけなかった。他に罠があったとしても、仲間を殺した事に意識が向いてしまう。壁に突き刺さった分銅から目を離してしまう。次の瞬間、激しい煙が路地裏に充満する!鎖分銅には何らかの煙幕が仕込まれていた!最初からそれが目的だったのだ!

 

「コヒューッ!」

 

そしてピンチベックの柔軟な関節を活かした短刀での鋭い突き!しかしテイクポイントはクロスボウのボルトで刺突!激しい火花が散る!クロスボウの引き金を引いてカウンター気味なゼロ距離射撃!しかし逆手持ちに素早く切り替えガード!互いに一歩も退かない激しい攻防だ!

 

『クソが!単なる不意打ち要員じゃねぇのかよ!地下闘技場で上位に名を連ねる俺がこうも攻められないとは!』

 

「……お前は私を知らない。私という肉の檻に住まう怪物を知らない。私が何の為に生きているか、それを知らない。だから殺す。殺す。殺せ。殺せ、哀れな子供達よ。」

 

この男の話はそれとなく上から聞いていた。だがここまでネジが外れた奴だとは。だがその不安定な言動とは真逆な隙のない戦い振りが、却って理性を感じさせる。

 

「あぁ、何故殺したのだ。何故、何故、何故!何故彼らが死んだ。何故彼女が死んだ。お前には分かるまい。分かってはいけないのだ。やめろ!その列の、その子が罪を背負っている!」

 

激しい火花の中、ピンチベックの右目が赤く染まる。動きが無機質に洗練されてゆく。仮面から硫黄色の吐息を吐き出す。テイクポイントの額に汗が浮かんだ。何かの呪文なのか、それとも……

 

「…憎悪。我は貴様であり、貴様は我だ。貴様が我を支配し、我が貴様を支配する。貴様は見出しつつあるが未だ不完全。故に今暫く力を貸そう。」

 

ピンチベックの両目が、赤く光った。しかし意識は渡していない。言ってしまえば悪霊の気紛れであった。

 

「……何だ?まぁ良い、その気紛れに乗ってやろう。」

 

(狂人め……だが油断出来んな……ここは素早く終わらせるべし!)

 

『口を開けば狂言ばかり……何があったか知らないが、死んでくれよ!』

 

クロスボウを油断なく構え、卓越した射撃制御で狙いを定める。本当は今すぐに逃げ出したい。しかしこいつを野放しにすれば何があるか分からない。別件に当たっている他のエリート級冒険者も危ない。

 

だがピンチベックも素人ではない!高い判断力を活かして壁を駆け上り、凄まじい弾幕を切り裂き、受け止める。ある程度動きを読まれているのは承知の上だ。戦場では死ぬ覚悟の無い同志から死んでいった。

ホルスターから拳銃を取り出す隙に、肩の肉をボルトが削り取る。

 

「狙いは見えた…」

 

拳銃の引き金を引く、撃鉄を起こす、引き金を引く、撃鉄を起こす、引き金を引く、撃鉄を起こす、引き金を引く、撃鉄を起こす、引き金を引く、撃鉄を起こす、引き金を引く。何度もやって来たファニングショット。だが、銃は二丁ある。そのまさかである。彼は片手でファニングショットを行おうというのだ!目にも留まらぬスピードで親指だけで撃鉄を起こせるよう、銃を持ち替え、引き金を引く!

 

手首が折れるかも知れない。親指が取れるかも知れない。だがここでこの技を物にするのだ!敵は強く、打開策の無い技で攻める。打開策を作らねば、勝ちは無い。

 

「…イヤアアァァァァァァァァァ!!」

 

絶叫で銃声は聞こえなかった。だが新たな技を編み出した”親友”の姿は、彼の中の何かを刺激した!反動を利用した蹴りや、銃身での近接格闘ではない。ただ引き金を引くという行為。極めた基本は奥義となる。

名前も覚えていないが、大切な誰か、最初に戦い方を教えてくれた誰かが言っていた。彼に思い出す資格は無かった。

 

12発の銃弾が一発の銃声で飛ぶ。眼前のボルトは全て撃ち落とされた!手首からは嫌な水音が鳴り、しかし敵は隙を見せた!拳を握りしめ、渾身のスクリューブローを内臓に叩き込む!

 

『ぐっはぁぁ!?』

 

空中に放り出したリボルバーをキャッチ、そのまま赤熱する銃身で突き!鈍い粉砕音!自分か、敵かは分からない。だが肉を潰し、骨を砕く、慣れ親しんだ感触は確かだ!

 

「コヒュウウウ!!」

 

更に左脚のサマーソルトキックを顎に当て、怯んだ隙に一瞬でリロード!更にスタンダードなファニングショットを放つ!敵は脳震盪で動けず命中!重傷を負い倒れ伏した!

 

 

『刺客……間違いなく強者。ス…ヒュペリオンは三人を運んで離脱……ペラドンナは…まずい……!』

 

赤い眼光はそのままに、ピンチベックはテイクポイントの首を掴み、壁に叩きつける!

 

「この辺り……潜伏している冒険者は!答えろ!」

 

『な……何だと……俺は商人ギルド傘下の』

 

ピンチベックの拳が唸る!驚くべき事に腕は無事であった!何という頑強かつ柔軟な関節か!何度も殴りつける!テイクポイントは拳を受け止めようとするが、跳ね除けられた腕が短刀で壁に縫い付けられる!

 

『ぐあっ!』

 

「知っている事を全て吐け!吐かなければお前の腸を引き摺り出して首を絞め、殺す!」

 

装束を切り裂き、露出した肌を短刀でなぞる。赤い筋から血が垂れた。

 

『言えば…殺される……金なら…』

 

ピンチベックはテイクポイントのフードを破ると乱暴に髪を引き抜き、口の中に拳ごと突き込み、拳を取り出すと同時に前歯を一本へし折る!

 

「それを食え!食えないなら死んで貰うまで!」

 

相手は本気だ。テイクポイントの目から涙が溢れた。嗚咽が路地裏に響き渡るが、助けるものは誰もいない。ピンチベックは雨水が溜まっている小さなゴミ箱をテイクポイントの口にあてがい、一気に傾ける!

 

『おボボボボボボアァァ…』

 

「さぁどうした!言えないなら今私が殺してやる!商人ギルドから逃げるか、この世から逃げるか選べ!」

 

『わがっだ言う!いぎまずからぁ!ギルド員のジャイロッグ、冒険者のディスコネクターぁ!二つ先の通りにある鍛冶屋の地上げだ!』

 

「…次。」

 

『へ…?』

 

ピンチベックの蹴りが脇腹にヒット!テイクポイントは激しく嘔吐し痙攣!太腿に投げナイフが生える!

 

「次だと言っているのだ!聞いているのか!?まだ死ぬんじゃない!ゴミではなく情報を吐け!ミストハンド!それからそのディスコネクターとか言う奴の能力を教えろ!」

 

『……分かっ…分かっ……ミストハンド……名前は…聞いたから……うちの………ギルド………アヴァの……三つ足狼団………ディスコネクターは…鉄壁………魔法だ、魔法で頑丈な剣を……違う……剣を頑丈にする。力が強く痛覚を抑制出来る……』

 

「次だ!誰の依頼で来た!そいつに家族はいるのか!家族の場所は何処だ!?」

 

『………依頼書……右のポケット………その装束……落ちてる…奴…』

 

ピンチベックは床に目をやる。だがテイクポイントは諦めていない!リストバンドに仕込んだ小型ナイフでピンチベックの首筋を狙う!危ない!

 

「……何だ?それは………急所に刺さったら痛いだろうが。」

 

だがピンチベックはこれを狙っていた!敢えて見当外れの場所に殺気を送り、敵の奥の手を誘った!そして咄嗟に手で受け止め、致命傷を見事に避けたのだ!

 

『い…あっ………』

 

 

 

 

第45幕 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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