ピンチベック   作:あほずらもぐら

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皆さん、ご無沙汰しています、投稿者のあほずらもぐらです……投稿が遅くなった理由…もとい言い訳ですが、中間テストの予習をしており、満足に時間を取れなかったのが原因です。大変申し訳ありません……無事に単位を取得出来たので今後はペースを戻して行きたいと思っておりますので、ご了承下さい。


第53幕 : 陰謀の狂宴 後編

『まだまだ行くぞぉ!』

 

『……やって見せろ。』

 

既に地面は歪な金属片で覆われ、ソードオフショットガンの銃身も赤熱している。エルカッサムは素早くリロードし、ワイアードも特殊な構えを取り魔力を腕に集中させる。

 

(残弾は後30発程度……敵はまだ余裕があるようだな。どう攻める…?)

 

『切り刻まれて臓物を吐き出せ!』

 

ワイアードは地面を踏みしめると、大量の刃が地面から突き出る!だが威力が弱い!しかしワイアードはそのままエルカッサムに向かって突撃する!エルカッサムは蹴りで迎え撃つが……

 

『これならば殴れまい!』

 

何という事か、捨て身である!ワイアードは自身の血中の鉄分を一部利用して自分の肉体に刃を生成、そのまま跳び上がり懐に入り込む!内臓をズタズタに切り裂くつもりだ!

 

『ぐぅおあぁぁぁ!』

 

エルカッサムの腹部から血が流れる……が!何とエルカッサムはハリネズミめいた虐殺形態のワイアードを空中で掴み落下!腕を切り刻まれるも力は一切緩めず、組み付いた姿勢のまま自分諸共床に叩きつける!凄まじい衝撃が会場に走り、観客の悲鳴が飛び交う!

 

『……やはり……大した事は…無かった………か……』

 

エルカッサムは膝をつき、何とか立っているが……ワイアードは血を流しながらも直立!頑丈な金属の殻が致命傷を避けたのだ!

 

『……勝った。中々悪くない腕前だったが、この僕には……』

 

『………イヤッ!』

 

だが、エルカッサムは肩口に刺さった刃の一つを引き抜きながら掲げる。瞬く間に血の水溜りが出来るが、問題はそこでは無かった。火花を散らすワイアードのガントレットである!エルカッサムはそれを容赦なく踏み潰し、よろよろと立ち上がる。

 

『な、何で……』

 

『どうした?後もう少しだな……さっさと止めを刺したらどうだ。』

 

『……馬鹿にするな……馬鹿にするなぁぁ!』

 

ワイアードは拳で壁を打ち、大量の鉄線を生やす!そして懐からベアリングボールを取り出し、放り投げる!そして張り巡らせた鉄線を巧みに操り、ベアリングボールに鉄線を絡め、一気に鉄線を引く!そのまま魔法を解除!鉄線が崩れ落ちると同時に解き放たれたベアリングボールがエルカッサムを襲う!恐らくは跳弾で仕留めるつもりだろう。

 

『ハ…ハハハハ!これで終わりだ!死人に口無し!』

 

だがエルカッサムはソードオフショットガンを構え、ワイアードに突撃する!二連装の銃口が梟の目のようにワイアードを睨みつける。刺し違えるつもりか!?ワイアードは男の執念に目を見開き、腕を構えて銃弾の飛来に備えた。

 

 

おかしい。いつまで経っても銃弾が来ない。そして背中が…やけに冷たい。そして全身が痛い。打撲だろうか?身体が動かない。意識が遠のく。辛うじて首を上げると、蜂の巣になった肉塊が自分の首の下にあった。

 

『え…』

 

そして冷たい鉄の梟と目が合い、そこで彼の意識は完全に途切れた。

 

 

『勝負あり!勝者、エルカッサム!』

 

『……………』

 

エルカッサムはガントレットの裏側を見て、溜息を吐いた。魔力回復薬の入った注射器だ。回復薬の使用は禁止の筈…エルカッサムはそれをわざと見えるように鉄塊の柱が聳え立つ石畳に投げ捨て、ふらふらと去って行った。そろそろ他の選手も倒れ始める頃だろう……少しでも敵の情報が欲しい。エルカッサムは控室に駆け足で向かった。

 

 

 

〜数分後〜

 

 

 

 

『クソが!何て滅茶苦茶な威力の雷だ!』

 

『…まぁ鍛えられてるから……そっちこそ、本当はまだ策があるって顔だね……♡』

 

『お、兄ちゃん中々勘が良いな!じゃ、そろそろ本気出すかね……強いのは念入りに叩きのめす必要があるからよ……』

 

ワークレイフィッシュの身体から骨が軋むような音が鳴り、鈍色の装束が禍々しい形に隆起する!そして、おぉ、何という神秘的光景か!ワークレイフィッシュの両腕が腕帯を突き破り鋭い鋏に変形する!

 

『ちょっ……えぇえぇぇ!?』

 

『クキキキィキィキイィィィ………』

 

シュノーケルめいた仮面の下から現れたのは……泡を吹く巨大なザリガニである!上半身が、ザリガニに変化しているのだ!鋏のサイズは人間の足を太腿ごと切断出来る程の大きさであり、甲殻は溶岩にすら耐える程の分厚さ。

 

『うわ……うわぁ………!』

 

『フン、調子に乗せた後に”コレ”をやると大抵の奴は腰を抜かすんだが……中々骨のある奴じゃないか。だがこっちもスポンサー様は裏切れないんでなぁ!』

 

 

ワークレイフィッシュの腕が伸び、スワッシュバックラーの動脈から僅か数ミリの空気を切り裂く!凄まじい速度と破壊力の刺突!肉体そのものが凶器と直結している為、正確な攻撃が可能なのだ!

 

『馬鹿め!俺はこの状態でも二刀流だ!』

 

腰溜の姿勢で追撃!直線的な攻撃ではあるが、それ故に恐ろしい破壊力!ミスリル製カイトシールドですら貫通する一撃!スワッシュバックラーは腕輪からシールドスペルを発生させて致命打を回避!しかし一撃でシールドスペルは砕け散り、自身も数メートル吹き飛んだ!

 

『フン、今のは本気で殺そうと思っていたんだが……ここまでしぶといのかよ……全く、面倒臭ぇなぁ!』

 

『……僕よりしぶといのも出場してる……今驚いてるようだったら、彼には勝てないよ。まぁここで敗退する人に教えても無駄かな?』

 

『言うじゃあねぇか。兄ちゃんが認めた男、そりゃあ相当だろうな……だがよ、勝つのは俺だ!そいつも俺が倒す!』

 

ワークレイフィッシュは泡を噴き出し、髭を靡かせて回転突進!殺人アリゲーターめいてスワッシュバックラーの肉を千切り、骨を引き裂くつもりだ!

 

 

『ヒャーハーッ!』

 

『いいぃやぁ!』

 

ワークレイフィッシュの爪がスワッシュバックラーの心臓を捉える!だがスワッシュバックラーは紫色の風になり回避!フルーレで甲殻の隙間を突く!紫色の火花を散らしワークレイフィッシュは堪らず距離を取る!

 

『ぬぅう!まだカードを隠してやがったよ!』

 

『君のよりは対策のしようがあると思うけど?』

 

『クソッ……こんなのが後何人も…おいミスティ、まだ行けそうか?』

 

『ミスティ?』

 

『ミスティってのはだな……まぁアレだ、魂だな。俺の二つ目の魂。ザリガニのライカンスロープは世界広しと言えど俺一人だぜ?』

 

『えっ……ロブスターじゃないの!?』

 

『かかったり!』

 

 

敵の一瞬の動揺を見抜いたワークレイフィッシュの鋏がスワッシュバックラーを襲う……否、不意に鋏を地面に突き立て、人間の形状を保っている下半身での蹴りだ!

 

『な……うぅぁあ!?』

 

『これで終わりだ!その憎たらしい顔から引き裂いてやろう!』 

 

何という卑劣な戦術か!しかしここで終わるスワッシュバックラーではない!追撃を加速魔法でギリギリ回避、シールドスペルで鋏を逸らし、フルーレで腹部を突き刺す!

 

 

『……カハッ……熱ちぃ…だが浅い…浅いぞぉ!その程度の実力で……奴を…ましてや……あの人を……』

 

『……へぇ。まだ諦めてないんだ……どの道、彼の下には行かせないよ…』

 

『フン、アンタも中々無理してるようじゃねぇか……ダメだ、何も分かってねぇ。』

 

『………また陰謀の話?そういうのを真剣勝負に持ち込むの、止めにしない?』

 

 

軽口を叩いてはいるが、蹴りのダメージは無視出来ない。かなりの実力者……”不幸な事故”が起きかねない。当然のように急所を狙って来ている以上、自分の正体もバレていると踏んで間違いないだろう。問題は何故バレたかだ……

 

『……陰謀か……そんな単純な物かねぇ?』

 

『いいよ、もっと偉い人に聞くからさ♡』

 

『あぁそうかい、好きにしろよ!あの世でなぁ!』

 

ワークレイフィッシュは爪にエンチャントし、エビ反りめいた挙動で空中に跳び、鋏を開いて水の弾丸を射出!敢えて無防備な空中に身を晒す事で注意を引き、捨て身で魔法を放ったのだ!強化煉瓦ですら粉々に粉砕する殺人水鉄砲がスワッシュバックラー目掛けて放たれる!その数、何と数十発!

 

『ガガッアババーッ!』

 

発射した本人ですらその凄まじい水量に溺れる!しかし回避は不可能だ!血混じりの弾丸が降り注ぎ、スワッシュバックラーの身体を削り取る!

 

『な……』

 

スワッシュバックラーはそれだけ言うのが精一杯だった。夥しい量の水と血が辺りに散らばる。ワークレイフィッシュもザリガニ形態を解除し、目と耳から血を流して立つのがやっとだ。

 

『………チッ……』

 

水流で吹き飛ばされたフルーレが地面に刺さり、スワッシュバックラーの装飾的な装備に赤い斑模様が浮かび上がる。彼はぴくりとも動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ここまでやって、勝てねぇかよ……』

 

 

 

 

 

 

フルーレを中心に、凄まじい落雷が競技場を襲った。いや、落雷と言うより紫色の”柱”に近いだろう。ワークレイフィッシュは両手を広げ、それに飲み込まれ、倒れた。

 

『……勝者、スワッシュバックラー!』

 

『…………チッ…割に合わん仕事だぜ。あの人はどう動くかね……』

 

『ほら、肩貸すから!』

 

『……中身までイケメンかよ……世の中不公平だな。』

 

『正直、変身はカッコ良かったけど?』

 

『へへっ……ミスティはよ、卵から俺が育てたんだ……川で親に捨てられてるのを拾って来て………10歳の誕生日の夜に死んだ……それからだ、俺がこうなったのは。可愛い妹だった……背中を洗ってやると、猫みたいな声で嬉しそうに笑うんだよ……』

 

『……家族か……君、何となく僕の友達に似てるね♡』

 

『………そうか…ハハハ……』

 

 

 

 

喝采の中、スワッシュバックラーの心は沈黙していた…今はただ、仲間を信じるのみ。だがこの時、既に戦況は覆りかけていたのだ。

 

 

 

 

第53幕 : 完

 

 

 

 

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