ピンチベック   作:あほずらもぐら

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第80幕 : 夜の始まり

傷はいつの間にか塞がっていた。この地獄を終わらせる為に、誰かが自分を治療したのだ……そこかしこで雄叫びや悲鳴が聞こえる。

 

 

『ぐぅわ……』

 

目の前で冒険者が火花を散らしながら転がる。機械化された両腕を引きちぎられ、身体はミイラのように萎び……その身体が一瞬で崩れた。

 

『酷く不味いな……君で口直しをしたいのだが?』

 

「分かった。だがまずは武器が欲しい……頼めるか?」

 

 

『んっ………やはり君の血が一番美味だな。上質な血で傷が塞がっていく……』

 

既に首筋に噛み付いているデスペラードを無視しながら、辺りに落ちた武器からまだ使えそうな物を漁る。

 

『………ぷはっ!あぁ………傷口がまだ塞がっていないね……牙を深く入れすぎてしまった。大丈夫かい?』

 

「大丈夫だ、吸血鬼にはなっていない……これは使っていいか?」

 

 

彼が手に持っているのは二振りのクリスナイフ……波打つ刀身を持つ片刃の短刀だ。

 

『君、やはり私好みのセンスだね……だがそれだけでは心許ないだろう、これも持っていくと良い……その靴もこれに履き替えなさい。』

 

 

デスペラードは床下から黒い布の包みと墨染めの古いブーツを取り出してピンチベックに投げ渡す。

 

『そのグローブは着けるだけで勝手に最適なサイズになる。あとこのブーツは私が人に贈る目的で持っていたものだ……飛竜の皮を貼り合わせて自分で作った。』

 

「そんなものを……本当にいいのか?」

 

『誰にも使われずに朽ちていくのは見たくなくてね……友人からの贈り物だと思ってくれ給え。』

 

「この埋め合わせは後で必ずする……」

 

ピンチベックはグローブとブーツを装備し、軽く辺りを走り回る。まるで彼の為に作ったかのような一体感だ……

 

『中々似合っているよ。腕に力を込めてくれるかい?』

 

言われた通りにすると、ピンチベックの指先から鋭利で長い爪が飛び出した。

 

「これは……」

 

『ライカンスロープの毛皮で作った、簡単な魔道具だ。常人が身につけると発狂することがあるから誰も使おうとしなくてね……君なら使えるみたいだ。』

 

「確かに買い手はつかんだろうが、良い品だ……大切にする。」

 

黒い布を包帯代わりに首に巻き付け、その上から仮面と帽子を被る。

 

『いいね……歴戦の暗殺者って感じだ!ペラドンナ君たちはあっちで見た、直ぐに向かおう!』

 

「暗殺者か……昔は随分と汚れ仕事をやったものだが、よもや自分の仕事を誇れる日が来ようとはな。」

 

デスペラードも手術道具のような形状のナイフで敵の人肉を切り取って口に運ぶと、瓶に入ったドス黒い血を飲み干した。

 

 

 

 

ーその頃ー

 

 

 

 

 

 

 

既に数人の冒険者が足元に転がっており、激しい戦闘が起きているのは明白だった。敵味方入り乱れる激戦の中、彼はサーベルで白装束の脛を斬り落とし、心臓にショットガンを叩き込んで殺した。

 

『くっ……うおぉっ!』

 

白装束の冒険者がマシンピストルを腰だめに乱射しながら突撃!その腕が突如吹き飛ぶ!

 

「貰うぞ……」

 

腕ごと吹き飛んだマシンピストルを奪い取り、すれ違いざまに頭部を蜂の巣にして殺す!更にマシンピストルを掃射しながら横一閃!数人が被弾!

 

『凄ぇな……気配が全く分からなかったぜ?』

 

「ペラドンナは?最後に見た時は不利な状況だった……」

 

『まぁ見てろよ……アイツも成長してるから大丈夫だろ………”テスト”も合格したしな!ここの掃除を手伝ってくれよ、正直30人殺した辺りからキツくなって来たんでな。』

 

「了解した……デスペラード、ここは我々に任せて他の吸血鬼を!」

 

『無理はしないでくれ給えよ?無理な話だろうが……』

 

「これ以上貴女の庭で無様は晒さん。」

 

 

デスペラードはそれを聞くと牙を剥いて笑い、城の方向へ飛んだ。彼女がいれば相当数の吸血鬼を後方支援や負傷者の救護に回せる筈だ。

 

 

『あの女誰だ……?お前も隅に置けないなぁ、えぇ?』

 

「戦闘に集中しろ……新手が来るぞ!」

 

 

 

 

 

キィィィィィィィィィィィンッ!

 

 

翼を広げた巨大な影が衝撃波を破壊しながら突っ込んで来る……甲冑を装備したハーピー族と、その上に騎乗したゴブリン族の冒険者だ!

 

『ファイアァーッ!』

 

ゴブリンがアサルトライフルを乱射!更にハーピーが金属の翼でピンチベックを切り裂きに行く!

 

「コシューッ!」

 

クリスナイフが火花を散らしながら翼を受け止めた!ピンチベックは蹴りで迎撃するが、翼でガード!再びゴブリンが銃撃!

 

『ファイアァッ!』

 

「コーシュシュシュシュシュシュ!」

 

 

一秒間に何発もの銃弾が射出されるが、ダガーで全て切断して叩き落とす!

 

『ピンチベック……同胞の仇、死ぬが良い!』

 

ハーピーが独楽のように回転しながら斬撃を繰り出す!

 

『シルフよ、我が斬撃に風を乗せ敵を滅せよ!』

 

 

風の刃が全てを破壊する!二人は倒れていた敵兵を掴み、盾代わりにして凌いだ!次々と死体を放り投げては風の刃を止め、血の嵐が周囲を真っ赤に染まる!

 

 

「コイツらはお前のせいで死んだ……同胞の仇はお前自身だな?」

 

『そうだそうだ!ブーメランみたいな羽根しやがってよ……身体を張った渾身のギャグかぁ?』

 

 

『黙れ……我々を侮辱するか!テロリストに雇われた野良犬の分際で……教団を、このシュトルモビクを!』

 

 

「貴様らも所詮、組織に属する犬だろうが……最期に噛み付いた毒蛇は偉大だったぞ?」

 

『フン、裏切り者同士馬が合うという訳か。ならば奴の後を追わせてやろう……行くぞ、トリガーハッピー!祖国を裏切った売国奴に我々の愛国心を思い知らせてやる!』

 

『了解した!』

 

 

「元王国兵か………貴様の同胞と同じ末路を辿らせてやろう!」

 

『仕事が変わってもコレとは、軍人は辛いねぇ……上に乗ってるゴブリンはお前にやるからよ、俺がそのハーピー貰って良いか?』

 

「構わん、徹底的に屈辱を与える……煮るなり焼くなり好きにするんだな。」

 

 

『お前は鳥鍋と焼き鳥どっちが好きだ?それとも鳥刺しか?』

 

「揚げ鳥だ………奴等を生きたまま油の入った釜で煮込んでやる!家族の目の前でだ!奴は死者を侮辱した……生かして帰すな!」

 

『そういう事なら、ガチで行かねぇとなぁ………!』

 

 

ストゥーピストは血塗れのサーベルを威圧的に振り回し、風の力を纏わせた。血混じりの嵐が炎のように燃え上がる!

 

『さぁ、どっちから死にたい?なんてな………死ぬより酷ぇ目に遭って貰うぜ……!』

 

「無論だ……全てを喪失する痛みがどれ程のものか、貴様らはこれから知る事になる。」

 

ピンチベックもグローブから鉤爪を伸ばし、打ち合わせて火花を散らす……敵は義体化の度合いが非常に高く、失血死させるのは難しい。蹴りによる打撃と、鉤爪の強度が頼りだろう……

 

 

『データにない武器……貴様、吸血鬼に魂を売ったな!醜い化け物が、内面まで腐ったか!』

 

「何とでも言え……人間では化け物に勝てん。」

 

『では化け物として死ね!』

 

 

シュトルモビクは真空波で周囲を破壊しながらピンチベックに突進!背中のブースターに着火して更に加速!回避に専念せざるを得ないスピードだ!

 

『ファイアァァア!!』

 

トリガーハッピーの正確な支援射撃でストゥーピストも迂闊に動けぬ!この二人は王国軍の頃から全く同じ戦法で敵を狩り尽くして来た手練れであり、シュトルモビクはマナ適性も非常に高い。

 

 

『見たか!これが我々の団結力と愛国心が可能にする合理的戦略よ!大義なき傭兵と、たった一人の子供の為だけに多数を犠牲にする狂人では到底真似出来まいて!』

 

『たった一人の子供に無理矢理犠牲を強いるような奴等には言われたくねぇなぁ!?』

 

「……主体性を放棄した者が良く言う台詞の典型だな、貴様は他者の掲げる理想に追従しているだけだ。」

 

『口だけの犯罪者が!この翼で八つ裂きにしてやる!』

 

 

だが依然としてシュトルモビク達は優勢だ……瓦礫を吹き飛ばし、更に自身の移動能力を最大まで活かすつもりなのだ!翼のブレードは非常に鋭く、直線的ながらスピードの乗った突進は衝撃波を伴い接近は困難。まさに隙の無い必殺の型……

 

『おわっ!なんて速さだ……正面から当たったら即死だぞコレ!』

 

「閉所に誘い込むにしてもスピードで負けている以上難しいな……」

 

 

『今だ……死ねぇ!』

 

シュトルモビクはブーストを最大出力で噴射!ストゥーピストの背中を刃が抉る!反応すら出来ない超スピード!

 

『痛ってぇ!脊髄まで行きかけたぞ……』

 

背中から大量に出血するが、何とか回復魔法で耐える。しかし連続で受ければ幾ら彼でも危ないだろう!

 

「コシューッ!」

 

ピンチベックは拳銃をリロード、素早く三連射!反動で斬撃を回避した!衝撃波を蹴って真上から更に連射!

 

『無茶はよせ、幾らお前でもそんな矢面に立てば……!』

 

刃が命中!しかし防具により傷は浅い……だが再生能力が無い彼が痛手を負えばどうなるか!

 

「効かぬぅ……効かぬぞぉ!その程度でこのピンチベックが討てると思うたかぁ!コシューッ!」

 

ピンチベックは投げナイフを取り出して正面から投擲!腰に銃弾が命中!しかし構わず投擲を継続する!

 

『囮のつもりか。だが貴様を殺せば……!』

 

 

 

『馬鹿野郎!本当に死んで………ん?』

 

ストゥーピストの目に発光する物体が飛び込んだ。これは……

 

 

『ファイアァアーーッ!』

 

銃弾の回避と同時にその物体を拾う!そして……彼は布に包まれた口元を歪ませた。

 

『そういう事かよ……そろそろお嬢に殺されるぜ、お前!』

 

ストゥーピストは瓦礫を踏み砕き、砂嵐を巻き起こして完全に姿を眩ませた……ピンチベックも範囲に飛び込む格好で敵の斬撃を回避!

 

 

『やはり撤退するのが目的か!だがセンサーは誤魔化せんぞ、死ねぇ!』

 

「が……ぁ……!」

 

ストゥーピストを蹴り飛ばしたピンチベックの身体が、上下二つに分かれた。

 

『今だ、奴の頭を狙い撃てぇ!』

 

『了解した!ファイアアァァァッ!!』

 

ピンチベックは……腕で地面を掴み、走って銃弾を回避!上半身だけで跳躍し、呆気に取られるトリガーハッピーの両腕をファニングショットで削り取る!

 

 

『な……』

 

「まだ終わりではないぞ……」

 

更にピンチベックの下半身が、落下したトリガーハッピーを飛び石代わりにして上空へ!予想外の事態と、仲間の落下による重心の変化でバランスを崩したシュトルモビクの翼を蹴りでへし折る!

 

 

『あれは……バラバラに動くなどあり得ない、何故!?』

 

シュトルモビクは体勢を立て直す為に風魔法を使おうとするが……

 

『待ってたぜ、クソ野郎ォ!』

 

ショットガンを乱射して妨害!ブースターが暴発して墜落!

 

 

『おい、こっちに落ちて来い!』

 

ストゥーピストがピンチベックの下半身を持ち上げ、上半身が見事その上に着地する!すかさず治療魔法で傷を塞いだ。

 

『下半身に魔石ぶち込んでゴーレム化とはな……その発想力だけは褒めてやるよ。だが一番驚いたのは、切り離された上半身だけでお前が一人倒した事だ……』

 

 

「ペラドンナから受け取ったポーションには止血作用があったからな、出血で力が抜ける事がない。だから殺せると判断した……」

 

『奴等の化け物って言葉に、今回ばかりは賛成だぜ……あんな分身魔法みたいな芸当をシラフでやられたら堪ったもんじゃない。』

 

「敵が嫌がるのは良い事だ。この辺りも大分片付いた、後はインドルジェンス……見せしめに首だけ送りつけた筈が、何故か生きている……脳はくり抜いて捨てたのだぞ?焼却処分だ………カラドリウス様にすら伝えていない。」

 

『ペラドンナと同じようなコピー人間か……それにしても、何であんなオッサンを複製したよ?もっと他に複製する物あんだろ……女の子とかさぁ!』

 

 

「彼の死は公にし難いのかも知れん。カリスマ性がある人間がいなくなれば、信奉者がそれを機会に組織と縁を切ってしまう事も考えられる。そうでなくとも士気は下がるだろうな……」

 

 

『確かに、奴は俺たちを下級の魂がどうのとか言って演説してたな……慣れているようだったし、組織としては前線に出張って士気を上げられる幹部を失うのはキツいだろう。』

 

 

 

『聞こえるか………必ずや、同胞が貴様を……!』

 

シュトルモビクが千切れた羽根をばたつかせながら叫ぶ……ピンチベックはその胸に足を乗せ、肋骨を踏み割る。

 

 

『がふぅっ!?貴様はただの殺人鬼だ………人間の真似事など、やめ』

 

 

そこまで聞くと、彼は心臓を踏み潰して殺した……その死体を瓦礫に埋め、首を切り取って袋に入れる。僅か数秒間で完全に処理を終わらせると、彼は跳躍して深部へ向かった。

 

 

「城はまだ落ちていないが、時間の問題か。日が昇れば彼らの力は少なからず弱まる、そうなる前に始祖と合流するぞ……」

 

 

今の所は吸血鬼と崇拝者達が地の利と連携で押しているが、持久戦に持ち込まれては此方が不利だ。後陣にも敵が控えている以上、最終的に籠城戦は必至だろう……

 

『奴は封印されているらしい……俺たちで拘束を解いて、その後すぐに数を集める!』

 

「了解した……教団に彼女を渡す訳にはいかんな。」

 

 

((おい……こっちじゃ、早う致せ!もう肉体が維持出来ん!))

 

「幻術を使って戦うのは無理なのか?」

 

((馬鹿を言え、お前達を出迎える為にどれだけ労力を使ったと思うておるのじゃ!念話も不明瞭になって来た………あまり年寄りを待たせるでない!血が足りないせいで数千年の命が終わりかけておる!))

 

「すぐに向かう!」

 

『あった、その扉だ!結界が張ってある……割と強めのやつが!』

 

「解除は出来るか!?」

 

『一応理屈は分かるが、ある程度弱体化させる必要がある……ドアを傷つけてみろ!』

 

「分かった!」

 

 

ピンチベックは鋼の盾すら容易に破壊する勢いで渾身の蹴りを放つ!巨大な石の扉が揺れた!

 

「頑丈な扉だ、ヒビ一つ入らない!」

 

『闇魔法があればどうにかなるが……婆さん!内側から闇魔法が使えないか!?』

 

((やってみよう……しかし一度だけだ、それ以上は死んでしまう……行くぞ!))

 

『ハアァァァァァァァァァァァッ!』

 

赤黒いオーラが扉から漏れる!激しく震えるが、未だ扉は開かない!

 

『やはり………駄目か……!』

 

 

「………諸刃の剣だが、やってみる価値はある。アブホースの力を無理矢理に呼び起こせば、あるいは……」

 

『本当にやるのか、お前……この儂の為に、本当に……!』

 

 

「私はアブホースの力を借りた状態での攻撃で、敵の魂を直接傷つける事が出来る。出来るが、反動は大きい……マイナスエネルギーが逆流して、精神に負荷が掛かる……全力で呪詛を放てば………或いは結界ごと封印を破壊する事が出来るかも知れん。」

 

『だが、お前はどうなる!』

 

「四度も奪わせる訳にはいかないのでな……」

 

 

『やはり……止めるべきじゃ!お前が死んだら、儂はお前の仲間たちに申し訳が立たん!』

 

 

「人は死に方を選べんが、生き様は選べる筈だ………少なくとも、私は後悔のない生き様を選んで行きたい………目の前で死んでいった家族達のように。」

 

 

ピンチベックの左腕が槍に変形する……その腕に、大量の呪詛が纏わりつく!

 

「………久しく無かったな、これ程の痛みは……!」

 

彼自身の魂も呪詛により蝕まれ、穢れていく。真っ黒な骨の槍が、一瞬だけ金色に輝いた……

 

 

 

「捻れ槍」(ゲイボルク)

 

 

螺旋の刻まれた大槍が彼の腕ごと扉を跡形もなく吹き飛ばし、鎖がバラバラに自壊した……ズタズタのローブを纏った少女が、剣で磔にされている。

 

『マジかよ……やりやがった………!』

 

 

 

「………今……助け…………に……………」

 

その剣を引き抜き、彼は少女を片腕で受け止める。呪詛が全身に逆流し、輝く目から黒い血が溢れた……抜け落ちた歯を吐き出しながら、彼は倒れた。

 

「……よかっ……た………」

 

『喋るでない!何故ここまで……』

 

「早く私の血を飲め、心配は後だ……がはぁ……ぁっ、ぁあ……早くしろ!仲間が死ぬぞ………」

 

大量に吐血しながら、始祖の傷口を片手で押さえる。

 

『………うっ……んっ!』

 

ローブから覗く、萎びてひび割れた肌が一瞬で10歳児のような艶を取り戻す!

 

「……年寄りにしては…………ぐっ!中々、若く見える……」

 

 

『なんと美味い血だ……数百年封印された甲斐があったというものよ……ここまで一瞬で力の殆どが戻るとはなぁ!』

 

 

少女の身体からは冗談のような魔力が溢れ、ローブが変形して巨大な翼となった。

 

『ふむ……ここでは少々手狭じゃな。』

 

『此処より先は夜の国、我らが庭なり……不敬なるぞ定命の者よ!ドラクルの始祖たる、このスカアハに平伏すが良い!』

 

 

昇り始めた太陽が逃げ出すように沈み、代わりに真っ赤な月が空の中央で固定された……暗闇が辺りを覆い、彼女を封じていた聖堂の天井が崩れ落ちた。

 

『…………もう一回封印した方が良くね?』

 

「……時は戻らん。」

 

ピンチベックはそれだけ言い残して倒れた。

 

 

 

 

第80幕 完

 

 

 

 

 

 

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