インフィニット・ストラトス~~ロボッツハート~~   作:ユウキ003

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ISにメカニック系主人公をぶち込んだ作品です。


プロローグ

俺は、メカって奴が好きだ。昔っからロボット系のアニメとか特撮とかが好きだった。それに、車とか時計とか、何でも直せるじいちゃんが居て、俺はそんなじいちゃんの背中が好きだった。じいちゃんは言ってた。『整備士ってのは機械のお医者さんなんだ』って。

 

俺はそんなじいちゃんの言葉に感動した。昔から機械とかを触る事が多かった俺は、もう必然みたいな形で整備士やメカニックを志すようになった。じいちゃんに教えて貰って、色々な機械の直し方を教わった。時計にテレビ、音楽プレイヤーにドライヤー、自転車とか。中学2年になる頃には、もう大体の家電製品の修理が出来るようになった。この頃になると、ご近所のじいちゃんばあちゃんの壊れたラジカセとかラジオの修理までするようになった。

 

最初は無償でやってたけど、次第に小遣いを貰うようになった。もちろん最初は断った。でも、押し切られてしまったのもあるし、修理するにしても、メーカーのサポート期限が切れてる場合、パーツをどこかで仕入れるかもしくは自分で1から創り出すしかない。なので、お金はあって困る物じゃなかったから、ありがたく修理に使わせて貰った。

 

そして、俺は中学のクラスメイトや学校の備品の修理まで請け負う事が多くなった。

 

んでもって現在も……。

「これを元に戻して、っと」

ここは学校。俺の通う普通の中学校だ。そんなある日の昼休み。俺は別クラスの友人の友人から頼まれて古いCDラジカセを修理していた。こいつはとっくにメーカーの保障期間が切れた代物だ。問い合わせても、もう修理出来ないって言われたそうだ。問題の方は、何でもスピーカーが片方、音を出さなくなったらしい。

 

と言っても実際には中でコードが切れていただけなので、それを新しいケーブルで繋ぎ直し、絶縁体で保護しただけだ。その一連の流れを周りで見ているクラスメイト達。

 

今では俺は、学校の備品の修理とかも請け負うくらいで、簡単な修理なら俺でも出来る。おかげで『修理屋』なんてあだ名まで出来てしまった。まぁ気にしてないし誰かに頼られるのは悪い気分じゃない。それに、整備士は機械のお医者さんだ。『患者』が居るなら直してやらねぇとな。

 

今は修復作業を終えて、バラしたラジカセを元に戻した所だ。

「お、終わったの?」

依頼主の女生徒が戸惑ったような表情をしている。

 

「一応な。これで多分修理出来たと思うけど、ちょっと付けてみるぞ」

そう言って、俺は乾電池をセットしてスイッチをONにする。そして選局用のつまみを捻って調整すると……。

 

『……ん東地方の天気は今後』

 

ラジカセからラジオの声が聞こえてきた。もちろん壊れてたスピーカーからもだ。

「うっし。こんなもんかな。はいよ」

俺は電源をOFFにして依頼主の女の子にラジカセを返した。

 

「ありがとう中條君。これ、おばあちゃんが大切してるんだ。直してくれてありがとう」

「どういたしまして。あぁただ、あくまでも半人前の修理だから、今後も使うのならこう言う電化製品の修理を仕事にしてる人達にちゃんと見て貰った方が良いかもしんない。こう言うのは万が一にも漏電とかあっちゃいけないからさ。その子が大切なら、もっとちゃんとした人に見て貰った方が良いっておばあちゃんに言っといてくれ」

 

「うん。分かった。おばあちゃんと相談してみるよ。あと……」

女生徒がポケットの中から封筒を取り出して俺に差し出した。

「これ。おばあちゃんがもし修理出来たら渡してあげてって」

「あぁ。ありがと」

俺は封筒を受け取り、中身を確認する。

 

う~む。これだと……。

俺は頭の中で今回の修理に使った資材の補充や最近足りなくなってきたパーツや古くなったので買い換える道具の購入費用も含めて……。

「おぉ!すげぇ諭吉が入ってる!なぁなぁ中條!お前凄い儲かってるじゃねぇか!」

すると封筒の中をのぞき見ていたクラスメイトがそうまくし立てるが……。

 

「アホか。これだけ貰っても大半は他の修理に使う小物の補充費用で消えるよ。それに古い道具の買い換えとかもあるし。1割手元に残るかどうかだな、こりゃ」

「え?そ、そうなの?じゃあ私からも……」

そう言って財布を出そうとする女の子。

「あぁ良いよ良いよ!」

俺はそれを咄嗟に止めた。

 

「俺は別に金が欲しくて修理を請け負ってる訳じゃねぇし。だからそう言うのは良いから」

「で、でも……」

「良いんだよ。これは俺が善意で請け負ってるようなもんだ。だから、その気持ちだけ受け取っとくよ。ってか、もう報酬貰っちゃってるし。追加で貰うのも悪いからさ」

俺は別に金が欲しくて修理を請け負ってる訳じゃない。ただそこに患者がいるから直しているだけだ。

 

しかし……。

「何あれ、かっこつけてるの?無能な男のくせに」

「あれじゃない。かっこつけて女に媚びてるとか」

「あ~。『IS』にも乗れない奴隷らしい考え方ね」

その時、クラスの近くに居た女子グループから蔑むような視線と言葉が飛んできた。最も、すぐにクラス委員長の女子がその3人を注意している。

 

「彼奴ら、ふざけやがって」

「何が奴隷だ。中條がどれだけ学校や周りの奴らの助けになってるか知らない癖に」

そして、俺の傍にいた男子達が細々と不平不満を漏らす。

「あ、ご、ごめんね。中條君」

すると、依頼主の女の子が頭を下げた。

「いやいや。君が頭下げる事ないって。それに、何言われようと痛くもかゆくも 無いよ。それとお前等も。あんま怖い顔すんなって」

俺はすぐにそう言って周りの奴らを宥める。

 

「ったく。中條はホント優しいよな。陰口言われてもそこまで怒らねぇし」

「な~に。俺はただ、自分の意思でその子、ラジカセを直しただけさ。赤の他人にどう思われてようが、知ったこっちゃ無いっての。それよか、次って移動教室だろ?早く飯食って行かねぇと先生に怒られるぞ?」

「あぁそうだった!」

俺の言葉に、男子達が慌てて飯を食ったり準備を始める。

 

「あの、ありがとう中條君」

その時、残ってた女の子が俺にもう一度お礼を言ってきた。

「良いって事よ。……そのラジカセ、随分大事にされてるみたいだし、修理出来て何よりだ」

「分かるの?」

「そりゃもう。物を見れば相手の人となりくらい分かるさ。その子、随分古い型の物だけど傷も少ないし直したコード以外目立った損傷もない。よっぽど大事にされてきたんだろうな」

そう言って、俺は動物を撫でるように、優しくラジカセを撫でる。

 

「うん。おばあちゃん、これはおじいちゃんに貰った宝物なんだって、よく私に話してくれた」

「そっか。……大事にされてきたんだな。お前」

そう言って、俺はラジカセに優しく語りかけるのだった。

 

 

そんなこんなで、俺は日々周りの皆の手助け(主に家電修理)をしながら学生生活を送っていた。そして、3年にもなり受験シーズンになった頃。

 

「なぁ中條。お前受験はどうするんだ?」

「俺か?俺はもちろん、整備士関係の大学とか専門学校だよ。今は入試に向けて勉強中だ」

「あぁ。やっぱり中條はそっち系か~」

と、友人と駄弁りながら昼飯を食べていた。

「って言うかさ、中條はISの整備士にはなんねぇの?」

「あ~。そっちか。俺は行かねぇ。確かに俺気は長い方だけど、日常的に弄られるのは流石に好きじゃねぇから」

「あぁ。確かに。どっかの偉そうな女の整備士なんてなったら、それこそ奴隷の日々、か」

「ISか~。ま、俺等には関係無いか」

 

『IS』。それは、この世界を一変させた存在だ。今から10年ほど前。1人の女性天才科学者、『篠ノ之 束』によって発表された宇宙空間での運用を考え設計されたマルチフォーム・スーツだ。だが、当初IS、正式名称『インフィニット・ストラトス』は全くと言って良い程注目されなかった。

 

だが、そんな現状をひっくり返す事件が発生した。

 

IS発表の1ヶ月後に発生した『白騎士事件』だ。ある日、突如として日本を射程圏内に収めるミサイル、2341発が日本へ向けて放たれた。当然、日本の防空システムではこれら全てを迎撃する事は不可能だった。だが、そのミサイルの大半を撃ち落とした存在が居た。それが『白騎士』と呼ばれるISだ。更に各国はこの白騎士を捕縛、ないしは撃墜しようと軍隊を送り込んだ。しかし白騎士は逆にこれら兵器の大半を無力化してしまった。

 

この、白騎士事件を契機としてISは一躍注目を浴びるようになった。

 

個人的に言えば、いつの世も人が最も求めるのは『平和』ではなく『軍事力』なのだなと、俺はこの歳で既に達観していた。

 

しかし、ISには欠点があった。それは、『女性しか』ISに搭乗出来ない事。その理由は不明だが、結果、ISは女性達の間で神聖視までされるようになり、いつしか女の方が男より優れていると考える、『女尊男卑』の思想が世界にはびこるようになった。

 

何時だったか難癖つけてきた連中も、その主義に嵌まったって事なんだろうな。俺に言わせりゃ下らない、だな。誰が上だとか下だとか、心底どうでも良い。

 

だってそうだろ?女がISに乗れるからって、じゃあ医者になれるのか?政治家に?違うだろ。俺等には皆、目指してる物や得意な事がある。俺が整備士やメカニック志望みたいにな。

 

俺に出来る事もあれば、出来ない事もある。ただちょっと機械関係に詳しいだけ。この世界には俺の知らない事がたくさんある。皆何かしら、人よりちょっと出来る事がある。そうやって、他人より少しだけ知ってる事や出来る事で違いを支え合っていくのが、人の生み出した社会だろ?

 

そこに優劣なんて必要ない。ただちょっと他人より得意な事があるだけで良い。人は一人じゃ生きていけないし、例えISに乗れたからって、それで天才が生まれて人の持つ技術や文明が進歩する訳じゃない。

 

人類の文明は、トライ&エラーで創り出した技術の結晶だ。人は自分に出来る事で誰かを支え、自分に出来ない事を人に支えて貰う。そうやって生きていく存在なんだ。だから俺は、そうやって誰が上だとか下だとかどうでも良い事を考えてる女尊男卑主義が、嫌いだ。

 

けど……。だからって俺はISが嫌いって訳じゃない。むしろ好きだ。だってロボットだぜ?パワードスーツだぜ?カッコいいじゃん。

 

それに……。本当だったらISは、人間を宇宙に連れて行ってくれる、人類の新しい相棒、パートナーになるはずだったんだ。それをどうして恨む必要があるんだよ。

 

『お前たちは、戦う為に生まれてきた訳じゃないんだよな』

俺は、窓から見える空を見上げながら、ぼーっとそんな事を考えていた。

 

と、その時。

 

『ダダダダッ!!』

『ガラッ!』

何やら大きな足音がしたかと思うと、教室の扉が乱暴に開け放たれた。何だ?と皆の視線がそっちを向く。

「お、おいっ!大変だ!ぜぇ、はぁ!」

「お、おいおいどうした?落ち着けって」

入ってきたクラスメイトに、近くに居た男子が近づいて宥める。

 

「これが、落ち着いてられるかよ!ネット!

 誰でも良いから見て見ろ!」

「は?ネット?」

誰かが呟いたので、俺もスマホを取りだし、適当なニュースサイトを立ち上げたが……。

 

「は?……『男性ISパイロット、発見』?」

「え?」

俺は、驚きの余りニュースのテロップを読み上げてしまった。すると近くにいたクラスメイトが驚き、他の奴らも俺の方を見ている。

 

その視線に、俺はいたたまれなくなって、スマホからニュースの動画の音声を流し始めた。

 

「え~、緊急速報です。先ほど、都内で行われていたIS学園の試験会場に誤って男性が侵入。試験用に会場内へ運び込まれていたISを触れた所、それが起動してしまったとの事です。現在現場で情報が錯綜しており……」

と、その時画角の外から男性キャスターの前に原稿用紙が渡された。

 

「失礼しました。現在新しい情報が入りました。これは未確認情報ですが、ISを起動したとされる男性は、かつてISの世界大会、モンド・グロッソ第1回大会で優勝した『織斑千冬』さんの弟、『織斑一夏』君との事のようですが、 何分情報が錯綜しております。今後も確定情報が入り次第お伝えします」

 

俺達は、そんなニュースキャスターの言葉を、それこそ呼吸を忘れてるんじゃないかって位静かな状態で聞いていた。やがてニュース動画が終わると、周りの奴らがザワザワとざわめき出す。

 

そして耳を澄ませば、どうやらこのニュースは学校全体に広がっているらしい。あちこちからざわめきと慌てる声が聞こえてくる。やがて昼休みも終わって、先生方も午後の授業を始めたが、誰一人授業に集中している者はいない。いや、正確には俺以外は、か。

 

つ~か、俺としてはだから何だって話だ。元々女にしかISを起動できない理由だって不明なのに、男が起動出来たなんてなお意味不明。仮にだ、男にISの起動が可能だったとして、

それが百万分の1の確立だったとしても、それは俺には特に関係ないだろ。俺は、そう思っていた。

 

 

あの日までは。

 

 

男のISパイロットの話題は、凄まじい勢いで世界中に拡散され物議を醸し出した。この一報を誤報だと騒ぐ者。男の権利回復を狙った何者かの陰謀だと考え喚く者。その男性が実は男装した女性なのではと疑う者。世界はここ数日、実にホットだ。やがて、世界である動きが始まった。

 

それが、『第二の男性ISパイロット探し』だ。

 

各国の政府にとって、男のISパイロットは現在の女尊男卑主義をひっくり返す格好の材料だ。だから男達はその適性を試す機会を求め、逆に女たちは、これは偶然であって他にも男のパイロットがいるはずが無い、と言う考えを実証する為に、パイロット探しを行う事になった。

 

そして、俺もだ。ある日、政府から俺宛にIS適性検査を受けるようにとの手紙が来た。ご丁寧に検査をサボった者には罰則が与えられる、と言う脅し文句付きで、だ。

 

俺は仕方なく、大きな市民ホールで行われた検査に出る事になった。正直、俺にISの適性があるなんて思えなかった。だからこの検査を受けるのは、最初億劫だった。

 

 

男達の長蛇の列に並びスマホ片手に待つ事、数時間。やっと俺の番になった。

 

今、俺の前には日本の第2世代『打鉄』が待機状態で着席していた。

「はい。じゃあ触って」

検査の担当の女性は、どこか気怠げに促す。どうやら彼女達もこの検査に疲れているようだ。何せ、ISは数が少ない。だから検査に使うのだってあらゆる場所からかき集めなくちゃいけない。あの人達も色々忙しいんだろうな~。ちゃっちゃと終わらせるか。

 

などと考えながら俺は打鉄に近づいた。

 

「ん?」

しかし、あと少しで触れられると言う場所まで近づいて、俺はある臭いに気づいた。俺はじ~っと打鉄を見つめ、すんすんと臭いを嗅ぐ。

「ちょっと、何してるの。早くしなさい。後がつっかえてるのよ」

気怠げに促す女性。しかし……。

 

「あの、お姉さんIS動かせます?」

「は?」

俺の質問が理解出来ないのか、女性は呆けた声を出す。

「ちょっとこの打鉄、起動出来るか試して見てくれませんか?多分この子、動けませんよ」

すると……。

「はぁ?!何を言い出すかと思えば!素人が何を言い出すのよ!」

女性はどうやら鬱憤でも溜まっていたのか声を張り上げ、周囲の人達も何だ何だとこっちを見ている。

 

「この子に近づいたとき、ちょっと焦げ臭かったんですよね。多分、内部で電装系のコードか何か焼き切れてますよ、この子。俺、これでも整備士志望なんで。ちょっと試して見てくれません?この子が壊れてたら検査も何もあったもんじゃありませんよ」

しかし俺は冷静に声を掛ける。すると女性が舌打ちし、椅子から立ち上がって打鉄に近づく。

 

「これで動いたら、ただで済むと思わない事ね!男のくせに……!」

そう言って、舌打ちをした女性が打鉄に触れる。しかし……。

 

 

『……………』

 

打鉄は何も反応を示さなかった。

「な、なんで!?」

これには女性が狼狽し、何度も何度も打鉄に触れるが、肝心の打鉄はうんともすんとも言わない。しまいには女性が装甲板をバンバンと叩き始めた時。

 

「ど、どうしたんですか?」

別の列の検査を担当していたのか、緑色の髪色に眼鏡を掛けた、どこかおっとりした感じの女性がやってきた。

「や、山田先生」

打鉄を起動しようとしていた女性が、眼鏡の女の人の事を山田先生と呼んでいる。

 

「その子、どっか壊れてますよ」

「えぇ!?」

オロオロしている女性に変わって俺が山田先生とやらに報告すると、当の先生は驚いている。

 

「近づいた時、ちょっと焦げ臭い臭いがしたんですよ。多分、どっかのコードが焼き切れてますね。OS、ソフトじゃなくて機体、ハードの方の問題ですね、多分」

「そ、そんな。じゃあ、ここで検査してた人達って……」

「残念ながら検査になってませんね」

俺の言葉に山田さんの表情は瞬く間に青くなっていった。

 

その後、この列で検査を受ける予定だった男達は別の列へ。検査を終えたとされる男性達にもリストから調べて連絡を入れる事に。

 

「は~~。仕事が~~」

壊れた打鉄の傍で項垂れる山田さん。

「あの、ちょっと良いですか?」

「はえ?」

俺はそんな山田さんに声をかけた。さっきまでの担当官の女性はここには居ない。男達も別の列に行った。

「こんなの差し出がましいかもしんないんすけど、俺にこの子の応急処置やらせてくれませんか?」

「え?」

俺は打鉄を見ながら呟き、山田さんも驚いたように打鉄と俺を交互に何度も見ている。

 

「え、いや、その、これでも一応国の備品ですし、残念ながら勝手に触らせる訳には」

「それは重々承知してますよ。でも、この子を 壊れたままにしとくのは整備士志望としては、ちょっと見過ごせなくて。これでも家電の修理の経験は何十とありますし。男ですがISのメカニック系の本に何度か目を通した事があります。何より、壊れたままなんてこの子が可哀想で。お願いします」

 

そう言って、俺は頭を下げる。

「い、いや、でも、道具が……」

「それなら大丈夫です」

俺は背負っていたリュックを下ろして中から俺がいつも持ち歩いている工具を取り出した。

「自分のがありますから」

「え~~?」

 

何か、工具を持ち歩いてる俺にドン引きされてる気がするが……。

「ダメですか?」

俺の言葉に、山田さんはしばらく悩んだ後。

「ハァ。確かに、このままって訳にも行かないし、もう、好きにして下さい」

何だかとても疲れた顔でそう言った。

「ありがとうございます」

 

俺は山田さんに頭を下げた後、早速打鉄の装甲板を開いて中の様子を見始めたが……。

 

「こりゃ、もうオーバーホールレベルだろ」

そう呟くくらい、中はボロボロだった。これじゃ電装系のコードがいかれるのもうなずけるな。こうなってくるとコードを直しただけじゃダメそうだ。とにもかくにも、やれるだけやるか!そう意気込んで、俺は工具を握りしめる。

 

それから、俺は打鉄の修理に取りかかった。IS自体には興味があったので、そっち関係の本を熟読した事もあるし、いくら超兵器のISだって根本的な所は変わらない。、接触して

起動するなんてのは今のご時世ならありふれた、一般的な起動方法だ。だがそれが反応しないって事は……。

 

1、起動するために触る。

2、それによって起動指示がISのコアに

伝達される。

3、指示を受けたISが起動する。

 

これが起動プロセスを大まかにまとめたもんだ。そして、今回の問題は、2が上手く機能していないって事だ。つまりコアに指示が伝わってない。指示が伝わってないのなら、返しようも無いはずだ。

 

とにかく俺は問題の箇所を探しつつ、それ以外のヤバい部分も応急修理していく。

 

 

しばらくすると……。

「あ、あの~~」

後ろから山田さんの声が聞こえる。

「ど、どうですか?」

「あぁ。この打鉄ですか?」

俺は、ペンライトを口にくわえ、機体の絡まっていた配線を直しながら答える。

 

「正直、この子はオーバーホールを受けてても良い状態でしたよ。電装系を始め、駆動系にもガタが来始めてました」

そう言うと、俺はペンライトを手に取って

振り返った。

「半人前の応急処置なので、起動は出来るでしょうが、戦闘や飛行はNGでしょう。と言うか、どうやってこの子はここへ?」

「え?えっと、確か、誰かが操縦してこの会場まで飛行してきたような」

飛行だって?

「ハァ」

「え?」

俺は自然とため息をついて、山田さんは驚いて呆けている。

 

「……正直、この子はよく頑張ってたみたいですよ。ここに来るまで、必死に最後の力を振り絞って飛んできたんでしょうが、その無理がたたって動けなくなった、と言う事でしょう。とっくに限界を超えていただろうに」

俺は、静かに打鉄の装甲を撫でる。

 

「正直、この子はこんな場所に居るべきではないですよ。今すぐちゃんとした設備の在る場所で、入念に検査と整備、後は古くなったパーツの換装などをしてあげないと」

「な、何だか、お医者さんみたいですね」

俺の言葉に、先生さんはどこか引きつった笑みを浮かべている。

 

「当たり前じゃないですか?」

「え?」

「整備士は機械たちの医者ですよ。どこに目の前の怪我人を放っておく医者がいるんですか?」

「え……」

俺の言って居る事が分からないのか山田さんは少し呆けている。

 

まぁ良い。俺は装甲板を閉じて打鉄の方を向く。

「……ごめんな。俺がもっとちゃんとした道具とか知識があれば、応急修理なんかじゃなくて、ちゃんと修理してやれたのに」

 

そう言って、俺は打鉄を見つめる。

「けど、俺より凄い整備士なんて、きっとたくさんいるから、ちゃんと直して貰えるさ。じゃあ、元気でな」

そう言って、俺は最後に一回だけ、打鉄の装甲を撫でた。

 

 

と、次の瞬間。

 

『ピカァァァァァァァァァッ!』

「え?」

不意に、打鉄が光を放ち始めた。すると俺の中に、何かが流れ込んでくるような、そんな感覚が俺を襲う。その最中……。

 

 

≪私、貴方が良い!≫

 

 

どこからか、女の子の声が聞こえてきたような気がした。俺はあまりの光に目を瞑ってしまうが、やがて静かに目を開いたとき。俺は、『打鉄を纏って』いた。

 

その事実に、俺の傍に居た山田さんも呆然としている。そしてそれは俺もだ。

「マジ、かよ」

そんなもん、俺には無いって思ってた。自分は普通の人間だって思ってた。関係無い。そう思って居た俺が、まさか……。

 

そして気がつけば、別の列の男達や女性達が、俺の方を見ている。

 

「は、ははっ。俺、IS適性、あったみたいです」

俺は、そんな状況に引きつった笑みを浮かべながらそう言う事しか出来なかった。

 

この日を境に、俺の人生は一変した。

 

     第1話 END

 




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