インフィニット・ストラトス~~ロボッツハート~~   作:ユウキ003

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楽しんでいただければ幸いです。


第5話

~~~前回のあらすじ~~~

引き続き行われる総当たり戦の最終試合である一夏VS鋼司の試合は、鋼司の勝利で終わった。その後、セシリアは密かに鋼司の事が気になり始めていた。そんな中でふとした事からばったり遭遇した二人はお互いの話を続ける内にいつしか打ち解けるのだった。

 

 

ピットにある薄暗い部屋。そこに千冬と真耶が残っていた。

「まさか、こんな結果になるなんて。予想外ですね。殆ど同レベルで初心者の織斑君はともかく、まさか代表候補のオルコットさんまで倒してしまうなんて。これも、中條君の持つ適性の高さ故、なのでしょうか?」

改めて戦闘データを見返して真耶は、そう言って隣に立つ千冬に目を向ける。

 

「確かにそれもあるが、オルコットに勝ったのはアイツの慢心も理由の1つだ。とは言え、やはりあの適正値は伊達ではない、と言う事だろうな」

「どういうことですか?」

「奴は試合中に、バックパックのサブアームを動かして織斑やオルコットの攻撃を迎撃していたが、あれをやっていたのは中條ではない。黄匠の方だ」

「ッ。それはつまり、ISが自らの意思でパイロットをサポートした、と?」

 

「ISのコアには、意識らしきものがある。それが確認されているのは知っているな?」

「はい。しかし、これまでISが自発的にパイロットを守った例などありません」

「そうだ。だが、その前例を壊すのが中條だ。恐らく奴は『ISと対話』しているのだろう」

「対話、ですか?」

 

「あぁ。もし、仮にだが。……黄匠のコアは元々アイツが修理した打鉄の物だ。そしてそのコアに『感情』と呼べる物があったとしたら?『喜怒哀楽』を感じていたのしたら?もっと言えば、あのコアが中條に対し『親愛』や『友情』のような思いを抱いていたとしたら?その結果、中條という存在を『完全に受け入れている』としたらどうだ?」

「まさか、コアが中條君に心を開いていると?」

「あくまでも推測だがな。だが、その仮説を考えた場合、アイツと黄匠の相性がSSSなのも少しは頷ける」

千冬の言葉を聞き、しばし考える真耶。

 

「確かに、その推察が間違ってるとは思いませんが。……ですがそうなると、中條君はかなり特殊な子になってしまいますね」

「……あぁ。たった二人のIS操縦者でありながら、初めてISと対話出来る、世界最高のIS適性を持つ存在。私の愚弟以上に狙われるな、これは」

そう言ってため息をつく千冬。

 

「真耶、今私が言った推察に関しても……」

「分かっています。他言無用、ですね?」

「あぁ。すまないがそうしてくれ。私は先に戻る」

「はい。お疲れ様です」

 

真耶は部屋を後にする千冬を見送った。そして1人残っていた真耶は、中條の戦闘の様子を収めた動画を見つめていた。

「……適性値、SSSかぁ」

どこか関心したような、しかし困ったような表情を浮かべながら真耶は呟き、考えていた。

『うっかり口を滑らせないように注意しよう』と。

 

 

翌日、朝のSHRにて。

「あ~。それでは昨日の試合結果から決定したクラス代表を発表、と行きたい所だが。その前にオルコットからお前達に謝罪があるそうだ。オルコット」

「はい」

名を呼ばれたオルコットさんがスクッと立ち上がる。

 

「皆さん。つい先日、私は皆さんの祖国を侮辱する言葉を言ってしまいました。IS学園は日本にある学校ですから、当然日本で育った方が多いでしょう。そんな皆さんの祖国を侮辱した事は、到底許される事ではありませんが、改めて謝罪したいと思います。申し訳ありませんでした」

 

そう言って、頭を下げるオルコットさんに皆戸惑っている様子だ。う~ん、ここはフォローしておいた方が良いかな。

「あ~その」

ふと俺が立ち上がると、皆の視線が俺に集まる。うぅ、緊張する。

 

「本人もこう言ってる事だし、まぁ皆それぞれあの発言に思う所はあったかもしれないけど、出来れば寛大な心で彼女を許してやって欲しい。俺からもこの通りだ」

そう言って俺も頭を下げると、皆更に驚いた様子だった。

 

「ほう。まさかお前がオルコットを擁護するとはな。何かあったのか?」

すると織斑先生が問いかけてきた。

「昨日の試合の後に、ちょっとオルコットさんと話しまして。その時色々あっただけですよ」

「そうか」

何やらニヤニヤしてる織斑先生に嫌な予感を感じつつも、俺は席に戻り、オルコットさんももう一度頭を下げてから席に着いた。

 

「さて、話を戻すがオルコットは今朝の段階でクラス代表を棄権している。本人曰く、自分のしでかした事に対する罰だそうだ。すると残ったのは織斑と中條だが、クラス代表は織斑一夏。お前だ」

「え、えぇっ!?」

突然の事に一夏は驚いて立ち上がった。

「ちょっと待ってくれよちゆ、お、織斑先生っ!」

危うく言いかけて訂正する一夏。

「オルコットが降りたのは分かるけど、どのみち勝率が一番高かったのは鋼司だろ!?それでなんで俺がっ!?」

「落ち着け馬鹿者。今からそれを説明してやる」

そう言って一夏を座らせる織斑先生。

 

「確かに勝率の点で言えば中條がクラス代表であっても可笑しくは無い。だが、中條の専用機である黄匠は、本来戦闘や、もっと言えばIS同士の試合のために作られた物では無い。当然、試合などで黄匠を使えば戦闘用のISとそうで無い黄匠が戦う事になり中條は最初からハンデを背負う事になる。となれば公平な試合にはならない。故にこちらの判断で中條はクラス代表から外した。で、残った織斑が代表という訳だ」

「そ、そういうものなのか?」

「そう言う物だ。だが納得出来ないのなら更に理由を付けてやる。お前はあの二人に負けた。それは変わらぬ事実だ。代表候補であるオルコットはともかく、ISに関してはお前とほぼ同じ素人の中條にもだ。この3人の中でお前は一番弱い」

 

織斑先生の言葉を聞き、一夏が拳を握りしめているのは側に座っていた俺は気づいた。

「クラス代表となれば当然試合に参加しなければならない。だがそれは逆にチャンスだ。いくつもの試合を経験し、それを糧にレベルアップしろ。レベルアップの機会を貰えた事は、お前にとっても悪いチャンスではないだろう?」

「ッ」

織斑先生の言葉に、一夏は一瞬息を呑んでからも納得したような表情で席に着いた。

 

「では、クラス代表は織斑一夏とする。以上だ」

 

こうして、一夏がクラス代表になったのだった。

 

 

~~~

しかし中條は知らなかった。一夏のクラス代表決定の裏に、中條の適性値やISと対話出来ている事実を隠すために、必要以上に中條が注目されないよう配慮していた千冬と真耶の手回しがあった事を。

 

 

~~~

その後、授業の時間になり俺達はIS用のスーツに着替えてグラウンドへ。しかし、ホントに女子のISスーツってスクール水着みてぇだよなぁ。これは男の俺には色んな意味で悪い。思わずため息が出る。やがてジャージ姿の織斑先生と山田先生がやってきて俺達は整列。授業が始まった。

 

「では、これよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、中條、オルコット。試しに飛んでみろ」

 

おっと、先生からの指名だ。まずはオルコットさんがISを纏う。おし。じゃあ俺も……。

「行くぞ、黄匠」

呼びかけるように声を掛けると、俺の体を覆う黄匠。

≪おはようコージ。今日は何するの?≫

『今回は簡単な飛行訓練だそうだ』

相も変わらず黄匠の声が聞こえる。声色からしても問題はなさそうだ。

 

しかし、一夏はイメージがまだ固まっていないのか白式の展開に少し時間が掛かっているようだ。

「よし、飛べ」

俺等3人がISを纏った直後に飛ばされる指示に従って、オルコットさん、俺、一夏の順番で飛び上がる。飛び上がった俺達は、そのまま飛び回る。って言うか、先を行くオルコットさんを俺と一夏が追従してる形になってる。

 

しかし、一夏は何やら織斑先生に言われてるようだ。どうやら、速度が遅いって怒られてるみたいだな。聞いてる感じだと、出力ではこの3機の中で白式がトップらしい。

「ハァ。なぁ鋼司、お前は分かるか?自分の前に角錐を生み出すイメージって」

「俺?まぁ一応は。俺としては目の前に透明のシールドを生み出して、空気抵抗を限りなくゼロにしつつ、背中にロケットエンジンとかを背負ってるイメージか?一夏ってゲームはするだろ?ロボットゲームとか」

「あぁ。一応な」

「だったら一番覚えやすいのは、そのゲームのブーストだな。よくコントローラーの×ボタン押すとジャンプしたり、スラスター吹かして加速するだろ?俺のイメージはそれに近いけどな」

 

「成程。ゲームで言う加速か。よぉしっ!」

一夏は何かを掴んだのか、数秒すると俺を追い越していった。どうやら少しは加速のコツを掴んだらしい。すると、先を飛んでいたオルコットさんが減速して俺の傍に寄ってきた。

「大丈夫ですか?鋼司さん」

「あぁ。とりあえず飛べているが、やっぱりスペックとかが違うのか二人ほど早くは飛べないわ。って、それよりブルー・ティアーズの調子はどうだ?」

「はい。昨日の内に整備を受けておきましたので、大丈夫ですわ」

「そうか」

 

俺は頷くと、その時自然と右手が隣を飛ぶブルー・ティアーズのカスタム・ウィングへと伸びた。そして俺はその右手でブルー・ティアーズの装甲を撫でた。

「元気になって良かったな」

 

俺はその言葉をブルー・ティアーズに投げかけた。すると何故か、オルコットさんが顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。更に……。

≪コージッ!それ浮気っ!ダメだからねっ!≫

『うぇっ!?浮気って!?俺は別にそんなつもりじゃっ!?』

何故か黄匠の不機嫌な声が聞こえてしまった。

 

『3人とも。これから急降下と急停止をやってみせろ。目標は地上から10㎝だ』

そこに届く織斑先生からの言葉。

「では、まずは私から」

 

そう言うと、オルコットさんは急降下していった。そして地表スレスレで停止してしまった。流石代表候補って所か。

「んじゃ次はどうする?」

と、そこへ戻ってきた一夏の声が聞こえた。

「じゃあとりあえず俺から行くわ」

「分かった。じゃあ俺が最後だな」

 

一夏にそう言って、二番手は俺だった。出来るだけ加速し降下したのだが……。

 

「うわっ!やっぱ怖っ!」

 

俺は地上から数メートル離れた地点で停止してしまった。

「何をやっている。目標は10㎝以内だぞ?」

「す、すみません」

急に地面が迫ってくるのは思いのほか怖く、俺は途中で急ブレーキを掛けてしまった。

「まぁ、初心者ならこんな物か。次は最後だ。織斑」

 

俺が着地してる傍で指示を出す織斑先生。

「よぉしっ!俺もっ!」

で、一気に降下してきた一夏は……。

 

『ドォォォォォォォンッ!』

 

爆音を上げながら地面に激突し大きなクレーターを作った。ってこれは流石に不味いか!?

 

「お、お~~い!一夏~~!生きてるかぁぁっ!」

 

俺は黄匠を纏ったままクレーターの斜面を下る。何やら顔面が地面に埋まってるが、俺は黄匠のパワーを調節して白式を纏ったままの一夏を救出した。

 

「た、助かった~。死ぬかと思ったぜ」

そう言って息をつく一夏。

「あぁ一夏、ちょっと待て動くな。念のためスキャンする」

「え?スキャンって何?」

「この黄匠には簡易的なスキャン装置が搭載されてるんだよ。もちろん人間用のな。こいつは被災地などで負傷者や急病人、あとは外傷が無いのに動けない人とか、そう言う人の病気とか損傷を調べるシステムがあるんだよ」

 

そう言いつつ俺は黄匠のゴーグルで一夏の体を調べるが……。

「ん~~。よし。問題無し。顔が汚れた以外打撲や骨折などは無し。大丈夫そうだな」

そう言って俺が息をついていると……。

 

「お前は心配性か中條。ISを纏っていたんだ。早々怪我などする物か」

織斑先生の声が聞こえてきた。

「いや~すみません。分かっては居るんですが、やっぱり機械の医者たるメカニック志望としては、見た目だけで大丈夫と楽観視は出来ませんから。それは人間も同じでしょうし」

「ハァ。お前はホント、メカニックや医者に向いてるよ中條」

織斑先生が、苦笑を浮かべながらそう言ってくれた。

 

その後、俺と一夏は飛び上がってクレーターを出る。

 

「さて。どうせだ。お前達は武装をどれだけ早く出せるか見てやる。まずは織斑、やってみろ」

「は、はいっ」

一夏は少しばかり集中して、武装、雪片弐型を展開したが……。

「遅い。0.5秒で出せるようにしろ」

織斑先生はそう言うばかりだ。0.5秒かぁ。

 

ちなみにオルコットさんの方も、何やらレーザーライフルである『スターライトMkⅡ』の出し方を直すように言われたりしていた。

「では次、中條」

「あっ、はいっ」

俺は咄嗟にネイルガンをイメージし、更にそれを掴むイメージを浮かべた。直後俺の右手に握られるネイルガン。……一応一夏よりは早く出来たと思うが……。

 

「……織斑よりは早いが、やはりまだまだだな。お前も織斑と同様、0.5秒を越えられるようにしておけ」

「はい」

やっぱりダメらしい。

 

「さて、ここで1つ講義をしておこう。諸君等は今後、ISを使う機会があるとして、ISには織斑の白式のような特殊な機体を除き、多種多様な装備がある。特に、この3機の中では黄匠が様々な装備を持っているが、中條。お前に質問だ」

「あ、はいっ」

咄嗟に話を振られ俺は姿勢を正す。

 

「お前は織斑との試合で使った、およそ戦闘には使わないであろう、あのシートらしき物は何だ?」

「あれは、耐火・耐熱シートです。本来は火災現場などで要救助者をアレで包むなどして保護します」

「成程。では何故それを織斑にぶつけた」

 

「あの時、俺がやりたかったのは一夏の視界を奪う、或いは一時的にでも混乱させる事です。そうする事で次の攻撃への『繋ぎの一瞬』を創り出すのが目的でした」

「成程。では何故あのシートを使った?」

「まぁ意表を突けるかなと。それにシートや布であれば大きく広げる事も出来ますし、小さな物とかだと避けられる可能性もありました。かといって重い物をぶつけても、一時的に視界をそちらに向けるなりは出来ますけど、完全に視界を塞ぐ事は出来ませんから。空気抵抗でシートが広がれば、俺は一夏の『視覚の外』に出られますし」

「確かに。如何にISのハイパーセンサーがあれど、シートを壁にする事でお前は一夏の視覚から逃れた。更に突如視覚を奪われた事で織斑はパニックになったと。お前はそこまで織り込んでいたのか?」

 

「いえ。正直、シートをぶった切って追いつかれる事も考えてました。耐火・耐熱シートを選んだのも、少しでも雪片弐型のエネルギーブレードモードを警戒して、でしたから。耐性があればほんの僅かでも切断の時間を延ばせるんじゃ無いかと思って」

「追いつかれた場合の対策は考えていたのか?」

「一か八かでしたが、左手のパワークローで一夏のブレードを掴んで封じ、ドリルクローでぶん殴るか、ゼロ距離からネイルガンをぶち込む考えでした。まぁ、そうはならずに決着を付けられたので良かったと言えば良かったんですが」

「成程な」

 

と、織斑先生は頷く。

「中條」

「はい?」

「お前のその発想力は元々持っていた物か?それとも勉強を通して学んだ物か?」

「う~ん。それは、多分後者だと思います。知っての通りメカニックとして勉強してましたけど、玩具1つとっても故障箇所1つで全く別の修理が必要になりますからね。ここが壊れたらあの方法で。こっちが壊れてたらこの方法で。って具合に修理する前から、修理する相手の状況、故障具合からどこが怪しいかとか考えるようにしてましたし。それに、どうして壊れたのとか、『頭使って理由を考えろ』ってじいちゃんに結構言われてましたから。『手を動かす前に頭で考えろ』。『それが出来るようになったら今度は手を動かしながら頭で考えろ』とか言うじいちゃんでしたから」

 

「そうか」

そう言って頷くと、先生は皆の方へ向き直った。

「お前達は中條の試合を見ていただろうが、はっきり言うとこいつのIS操縦技術に関しては特筆すべき所は無い。織斑と大差は無い。だが、武器では無い物さえも行かしてチャンスを生み出す『発想力』。二手三手先を考える『思考力』。これらの能力は将来お前達が代表候補を目指す上で確実に必要になる力だ。ただ剣技や射撃技術、操縦技術を学んだだけで強くなったなどと思うなよ?『学び続けろ』。『貪欲に知識を貪れ』。それが、お前達が強くなるために必要な事だ。良いな?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

織斑先生の言葉に皆の元気な返事が返される。

 

その後も、専用機持ちである俺等を交えた野外講義が行われるのだった。

 

ちなみに一夏が開けた穴は俺と一夏で埋めた。黄匠からスコップ取り出してやったけど、やっぱりこっちが本職のISだけあって早い早い。

 

その日の夕方、って言うかほぼ夜。俺はアリーナのピットで黄匠の定期メンテをしていた。俺は黄匠を動かした日は決まって最低限のチェックをしていた。同じ部屋の清香からは『大袈裟じゃない?』って言われたが、機械だって人間と同じで見た目に反して繊細なんだ。それに、黄匠は大切なパートナーだ。だから俺はその『大切』に見合う事をしているだけのつもりだ。

 

「さてと」

俺は展開していた黄匠を待機状態に戻すとアリーナを出た。事前にクラスメイトから、夕食後の自由時間に食堂で一夏のクラス代表就任パーティーをやるって聞いてたし、俺は足早にアリーナを出たのだが……。

 

「あれ?」

俺はふと、暗がりの中でボストンバッグを掛けたIS学園の制服を纏った女の子を見かけた。彼女はくしゃくしゃの紙を手にキョロキョロと周りを見回している。

『もしかして、転校生か?新学期も始まったばかりのこの時期に、珍しいな』

 

なんて事を俺は思いながら彼女に近づいた。

「あの~。こんばんは」

「ん?」

俺の声に気づいたのか女の子が振り返った。

「は?……何でここに男が居るの?」

そして次いで飛んできた言葉は疑問と、猜疑心を含んだ視線と言葉だった。と言うか何か、完全に怪しまれてないか!?下手すると、不味い事になるかも

「あなた一夏、じゃないし。誰?」

「あ、えっと。俺は中條鋼司です。世界で二番目の男性ISパイロットの」

とりあえず下手に刺激しないようにしようと考えながら自己紹介をすると……。

 

「ん?あ、あ~。そう言えばテレビでアンタみたいな顔見たことあるけど、そっか。アンタが二番目なのね?」

「そ、そうです」

彼女の目から幾ばくか猜疑心は消えたようだ。良かった、信じて貰えた、かな?

 

「けどちょうど良いわ。ねぇ、アンタ総合事務受付って場所知らない?」

「総合事務、受付。あぁ。それなら何とか分かるけど」

「良かった。じゃあ案内してくれない?アタシ道分かんなくてさぁ」

「まぁ良いけど。こっちだよ」

 

何の因果か、俺は彼女を案内する事になった。で、その道中。

「えっと、その……」

「ん?何?」

「あぁその、名前を聞いても良いかな?ちょっと聞きたい事があって」

「名前?アタシは『凰 鈴音』よ。よろしくね」

「ファン、リンイン?あれ?もしかして君、中国人なの?その割には日本語ペラッペラだけど……」

 

「これでもアタシ、一時期日本に居たのよ。で、何?」

「さっき、凰さんは一夏の事を下の名前で、『一夏』って呼んでたでしょ?もしかして、一夏と知り合いなの?」

「知り合いって言うか、幼馴染みね。こっちで暮していた時に知り合った仲よ」

「へ~~。そうだったのか」

「そういうアンタこそ、一夏を下の名前で呼んでるけど知り合い?」

「うん。まぁこの学園に入ってからの付き合いだけどね。たった二人の男だからかもしれないけど、一夏と同じ1組に居て、席も近かったから。すぐに話して、仲良くなってね」

「そうなんだ。……アイツは、元気にしてる」

その時、凰さんはちょっとだけ顔を赤くしているみたいだった。もしかして一夏の事が気になってるのかな?

 

「まぁ、一応はね。まだ女性ばかりの環境には慣れてないみたいだけど。あ。そう言えばこの後食堂で一夏がクラス代表になった就任パーティーがあるけど、どうする?顔を出す?」

「う~ん。折角のお誘いだけど、止めておくわ。あっ、後一夏にはアタシが転校してきた事は話さないでよね。どうせなら、感動の再会にしたいから」

「分かった。っと。あぁ。あそこだよ。窓口は」

 

やがて俺は彼女、凰さんを無事窓口まで連れてきた。

「ありがとね。んじゃまた」

って事で、俺は彼女と別れて食堂へと向かった。

 

そして食堂に着くと、俺は一夏とオルコットさんがいる席へと案内された。食堂の一角には垂れ幕まであるは、誰が持ち込んだのかクラッカーまで。そして始まったパーティー。って言うか、クラスメイト以外も混じってるなぁ。なんて思いながらお茶を飲んでいると……。

 

「はいは~い新聞部で~す!話題の男子2人に突撃インタビューに来ました~!」

そう言って新聞部の『黛薫子』先輩がやってきた。タイの色からして相手は2年生だ。

 

早速一夏とオルコットさんにインタビューしてるが、色々信用ならないな。ねつ造とか言ってるし。とか考えていると……。

「じゃあ最後、中條君はどうかな?」

「えっと、俺ですか?」

 

「そうそうっ!中條君は将来メカニック志望って聞いたし、相棒のISを大事にしてるって聞いたけど、君にとって黄匠はどんな存在?」

「どんな存在、ですか」

 

俺はふと、自らの左手首の、黄色い時計と言う待機状態の『愛機』を優しく撫でる。

 

「この子は俺にとって大切な、唯一無二の、かけがえのないパートナーですよ」

 

と、本心を語ってみたのだが……。

 

直後に周りの女子達が『キャーキャー』言い出した。な、なんぞ?と思ってると……。

「聞いたっ!?ねぇ今の台詞聞いた!?」

「あ~~~!私もあんな優しい声であんな甘い台詞言われた~~い!」

そう言ってキャーキャーと黄色い歓声を漏らす女子達。

 

「これは良いサウンドを取れたけど、もう一声欲しいな~!」

そう言って再びボイスレコーダーを俺に近づける先輩。

「え、え~?これ以上何を言えと?」

 

「何かカッコいい台詞を!女の子がキャーキャー言うような台詞を一言!」

「え~~~?」

そんなの俺に求められても困る。しかし周囲を見回せば、無数の女子達が『やって?言って?』みたいな顔で俺を見ている。あ~もう仕方無い。

 

俺はしばし考えたあと。

 

「……俺、メカニック志望だから、この手は油とかでいつも汚れてばかりだけど、こんな俺の手を取って笑ってくれる人が居るのなら、そんな人と一緒に歩んでいきたいな」

 

とりあえず、考えついた台詞を語ってみた。言ってて自分でも恥ずかしくなって顔真っ赤になったけど……。

すると再び女子から『キャーキャー』と黄色い悲鳴が。

 

「いや~!良い台詞をありがとねっ!じゃあ最後に3人で写真を一枚っ!」

「え?写真ですか?」

先輩の言葉に一夏が首をかしげる。

「そ~そ~!なんてたって、注目の専用機持ちだからね~!あっ!折角だから3人でこう、手を重ねる感じでっ!」

「は、はぁ」

ちょっと曖昧な返事をしながらも、俺達3人は並ばせられ、一夏、俺、オルコットさんって感じに右手の片を重ねる。ふと右隣のオルコットさんを見ると、何やら顔が赤い。あぁ、もしかして異性の俺に触ってるから緊張してるのか?いつか握手してた清香もこんな感じだったし。

 

「は~い、それじゃ撮るよ~」

 

って事で写真を撮ったは良いのだが……。

 

「え?」

いつの間にか俺達の周りに集まるクラスメイトの皆が滑り込んでいた。

 

「何故全員入ってますの!?」

「まぁまぁ」

「セシリアだけ抜け駆けは無いでしょ~」

何故か憤っているオルコットさんに対してクラスメイト達はそう言って笑みを浮かべていた。って言うか箒さんもちゃっかり一夏の傍に立ってるし。

 

もしかして箒さん、一夏に気があるのかな?何て事を思いながら、俺はパーティーを楽しんだ。……しかし、いかん。さっきの台詞を思い出すだけで恥ずかしい。あれはもう黒歴史だなぁ。なんて、思って居た。

 

その後、俺は清香より先に自分の部屋に行こうとして、皆に一言言ってパーティー会場の食堂を離れた。

 

そして寮に向かっていると……。

「鋼司さん」

声を掛けられ振り返ると、そこにはオルコットさんが。

「オルコットさんか。どうかしたの?」

「いえ。お姿が見えたので」

「そっか。オルコットさんも今戻るところ?」

「え、えぇまぁ。パーティーは十分楽しみましたし」

そう語っているが、何やら彼女の顔が赤い。何でだろ、と思いながらも一緒に歩いて寮に向かう。その時だった。

 

「あ、そう言えば、名前を」

「え?あ」

俺が問いかければオルコットさんも気づいた様子だ。俺も今気づいたんだけど、オルコットさん今朝から俺の事を下の名前で呼んでいた。

 

「あ、その、お嫌、ですか?」

「ううん。そんな事無いけど。俺の事は中條でも鋼司でも好きに呼んでくれて良いよ」

「で、でしたら私の事も、どうぞセシリアとお呼び下さいっ!さん付けなども不要ですわ!」

「そっか」

 

俺は足を止めて、改めてセシリアに向き直る。

 

「最初はまぁ、色々あったけど。改めて1年間よろしく、セシリア」

そう言って右手を差し出す。

「ッ!はい、鋼司さんっ!」

セシリアは俺の右手を取った。俺達は握手を交わす。その後、寮の廊下で別れた俺達はそれぞれの部屋に戻る。

 

その途中で……。

≪ねぇコージは、どうしてそんな風に皆に優しいの?≫

『ん?俺が優しい、か?まぁ、その理由はあれだ。『繋がり』だ』

≪繋がり≫

 

『あぁ。俺達人間は1人じゃ出来ない事がある。俺達が生活してるのだって、黄匠と同じように機械のパートナー達に支えられてるからだ。そして、人間も同じ。どこかで誰かと繋がってるのさ』

≪そう言うものなのかな~≫

『あぁ。そう言うもんさ。それにな』

 

≪何?≫

『じいちゃんが言ってたんだ。『他人と殴り合う拳と、他人と助け合う手。拳と手。どっちが大事なのかは、猿でも分かる』ってさ』

≪コージのおじいちゃんって、変わってるね~≫

『ははっ、まぁ昭和生まれの頑固なじいちゃんだからね。……でも、俺にとっては祖父であり、師匠みたいな人なんだ。だから、俺はじいちゃんの教えを大事にしたい』

 

じいちゃんにはホント世話になってるし、俺の誇りでもある。それに……。

 

『それに俺自身思うんだ。誰かと傷付け合うよりは、誰かと手を取って一緒に進みたいって』

 

それが、俺の意思なのだから。

 

≪そっか。コージならきっと、色んな事が出来る気がする。だから私は、これからもずっとコージと一緒だよ≫

『あぁ。ありがとう黄匠』

 

そんな、誰にも聞こえない会話をしながら俺は部屋に戻った。

 

しかしふと、夜の眠りにつく中で不安に思った事があった。一夏の幼馴染みがやってきた事で、また何か起こるんじゃ無いかなぁ、と。

 

そして、その予感が当るのだが、今の俺には知る由も無かった。

 

     第5話 END

 




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