インフィニット・ストラトス~~ロボッツハート~~ 作:ユウキ003
~~~前回のあらすじ~~~
一夏、鋼司、セシリアの3人によって行われたクラス代表を決める試合の結果、鋼司が2勝した。しかし、IS適性SSSと言う鋼司の並外れた適性を隠すために千冬と真耶によって一夏がクラス代表に決定するのだった。そんなある日、鋼司は一夏の幼馴染みである中国人の少女、『凰 鈴音』とばったり遭遇。転校してきたが迷子になっていた彼女を助ける形で知り合うのだった。
パーティがあった翌日の朝。俺は清香と、ばったり遭遇したセシリアと、更に同じくばったり遭遇した一夏と箒さんと一緒に教室に入った。
「ねぇねぇみんなも聞いた?転校生が来るんだってさ~!」
「転校生?新学期も始まったばかりなのにか?」
一夏がクラスメイトの女の子と話している。俺も一夏も、ここに来てまぁ数週間は経ってるから女子と話すのは慣れた物。……まぁ俺は清香との同衾に今も慣れてないけど。
しかし、その転校生って十中八九、昨日俺が遭遇した凰さんだよなぁ。なんて考えてると。
「おっ?中條君も転校生に興味があるのかな?」
傍に居た清香が興味ありげに俺の顔をのぞき込んでくる。
「あぁいや、興味って言うか。えっと、確か転校って入学より色々条件厳しかったよな~って思ってさ」
俺は咄嗟に言い訳を放つ。ここでは凰さんの事を一夏にバレないようにしないと。
「あぁ。そう言えばそうだったね~」
と清香は俺の言葉に相槌を打つ。
「確か、転入って国の推薦が必要だったんでしょ?」
「うん。私が聞いた話だと、その子中国の代表候補生らしいよ?」
俺が話題を持ってきた子に聞くと、答えてくれた。うん、やっぱり凰さんの事だ。
なんて事を考えていると、話題はいつの間にか近々あるクラス対抗戦の話題になっていた。クラス対抗戦は、文字通りクラスの代表が戦う試合だ。1組の代表は、当然クラス代表である一夏だ。そして、この対抗戦で1位になったクラスには学食のデザートの半年フリーパスが貰える。そのため女子は俄然やる気だ。まぁ戦うのは一夏なんだけど。
「頑張ってね織斑君!私達のフリーパスのためにっ!」
「でも大丈夫だって。今1年で専用機を持ってるのは私達1組と四組だけだし。余裕余裕~♪」
そう言って笑みを浮かべる女子達。……まぁ、一夏の場合まだまだISは初心者だから専用機じゃなくても安心は出来ないだろう。……かく言う俺もだけど。と考えていると……。
「その情報、古いよ」
おっと。この聞き覚えのある声は……。俺は声が聞こえた入り口の方に目を向ける。見るとそこには、何やらかっこつけた立ち姿の凰さんが。……あれが凰さんの言ってた感動の再会なのだろうか?女の子の考える事は俺には分からん。
で、話をしていたのもほんの数秒。やってきた織斑先生の出席簿攻撃を食らって凰さんは二組の方に帰って行ってしまった。加えて……。
「一夏っ、今の女は誰だ?知り合いなのか?」
箒さんがメッチャ一夏を問い詰めていた。まぁ、恋の相手にあんな親しそうな女性がいれば戸惑うよなぁ。なんて思いながら俺は一夏と箒さんを見つめていたのだった。
ちなみに箒さんは授業中、凰さんの事を考えていたのか授業に集中出来ておらず、織斑先生の出席簿攻撃を食らっていた。
そしてお昼休み。俺は一夏に誘われて、清香とセシリア。それに箒さんも入れた5人で学食に向かった。んだけど……。
「待ってたわよ、一夏!」
食堂に着くと、既に料理を載せたお盆を持った凰さんが居た。
で、結局俺達5人と凰さんを入れた6人で座れる場所が偶々空いていたので、6人揃ってそこに腰を下ろした。ちなみに俺はラーメンにした。……決して凰さんが持ってたのを見て、『あっ、ラーメンも良いなぁ』って思った訳じゃないぞ?
で、俺がラーメンを食しているすぐ傍で、凰さんと一夏が話している。すると……。
「一夏、そろそろどういう関係なのか説明して欲しいのだが?」
箒さんが鋭い視線を一夏と凰さんに向けている。それはまるで抜き身の刀身のようで、俺は極力関わらないようにしようと思った。
で、一夏から説明がされた。そもそも箒さんが引っ越して一夏と別れたのが小4の頃。で次に一夏と凰さんが出会ったのが小5の頃。で今から1年ほど前の中2の時、凰さんは中国に引っ越してしまったため、一夏とこうして再会するのは1年ぶりらしい。
で、更に……。
「お前はそいつとかなり親しそうだが、ま、まさか、つつ、付き合っていた事もあるのか!?」
「ふぇっ!?」
顔真っ赤な箒さんの問いかけに、凰さんも顔を赤くする。……あぁ、これはあれだ。凰さんも一夏に気がある感じだね、うん。
俺は静かにラーメンを食いながら3人の様子を伺っていた。ちなみに、俺の右隣には何故かセシリアが座り、左隣には清香がいる。2人も、一夏たちの話に興味津々の様子。
そして……。
「付き合うって。そんなこと無いぜ?ただの幼馴染みだよ」
「「………」」
一夏の奴、結構ドストレートに言いやがったなぁ。見ろよ凰さんの『こいつはホントにもうっ!』って言わんばかりの形相に、箒さんの『良かった。違うのか』と言わんばかりに安堵した表情。
で、俺とセシリア、清香は……。
『『『うわぁ……』』』
3人揃って一夏の鈍感ぶりにそんな顔をしていた。
そして改めて、一夏から紹介されつつ自分達でも自己紹介し合う凰さんと箒さん。しかし2人は笑みを浮かべながらも、目は笑ってない。あれはバチバチに火花を散らしてるって絶対。
更に話は進み、凰さんは一夏にISの事を見てあげても良いよ、なんて言い出した。ちなみに凰さんも専用機を持ってるらしい。なので訓練の際に一々打鉄とかを借りなくても良い。しかしこれに反応したのは箒さんだ。『一夏の訓練相手は私の相手だ』とか、『クラス対抗戦も近い今、敵に教えを請う事などない』と言っている。まぁ、色々並べても一夏の練習の相手、と言う一夏との時間を凰さんに取られたくないんだろう。
見え見えだなぁ。こう言うの。……まぁ、肝心の一夏は気づいて無いみたいだけど……。
なんて考えながら俺は残っていたスープを飲み干した。あ~美味しかった。……って言うか、俺飯食い始めてから何にも話してなかったなぁ。なんて、考えていたのだった。
そして放課後。俺はセシリアと一緒に一夏のトレーニングの相手をしていた。一夏と箒さんがトレーニングするって聞いてたので、『良ければ手伝おうか?』って言ったら箒さんが少し悩んだ後、『男の中條なら問題無いか』と、小さく呟いた後にOKしてくれた。ちなみにセシリアの参加は少し戸惑っていたが、セシリアが箒さんに何かを耳打ちすると、安心したような表情でOKしてくれた。何があったのか気になるけど、2人とも俺と一夏に教えてくれなかった。
訓練ではもっぱら、白式を纏った一夏と、訓練用の打鉄を持ち出した箒さんが戦っていた。そこに加えて、箒さんが『射撃系の敵と距離を詰める訓練だっ』とか言って俺とセシリアを一夏と戦わせた。
一夏の持つ白式は『雪片弐型』という近接戦闘用のブレードしかない。加えて白式の持つ『ワンオフ・アビリティー』、『単一仕様能力』と呼ばれる能力も『零落白夜』と呼ばれていて、めちゃくちゃヤバい。これは、自分のシールドエネルギーを消費して相手のシールドエネルギーに直接ダメージを与えられる能力。つまり、ハイリスクハイリターンな能力だ。
ちなみにワンオフ・アビリティーは本来、『セカンドシフト』と呼ばれる第2形態で発現する事が多い。なので、第1形態からアビリティーが使える白式は結構特殊だ。まぁ、武装からアビリティーから、色々ぶっ飛んでるのが白式だが……。
とりあえず、色々あって訓練は終了。俺と一夏は慣れないISに結構疲れてるが、箒さんとセシリアはそうでも無いらしい。あ~~、俺ももっと体力付けないとなぁ。
なんて考えながら、俺達はアリーナからピットに戻る。で、ISを装着解除。するとISのサポートが無くなったから疲れがどっと襲ってくるが、そうも言ってられない。俺は深呼吸をするとピットを出ようとした。
「あっ、鋼司さん?どちらへ?」
すると、俺に続いて同じピットに来ていたセシリアから声が掛かった。
「ん?あぁちょっと黄匠の検査をしようと思ってさ。模擬戦とは言え戦ったあとだし。まぁ俺の日課みたいなものだから」
「そ、そうなのですね?で、でしたらその、お願いがあるのですが……」
「ん?どうしたの?」
何やらモジモジしているセシリア。な、何だ?と内心首をかしげていると……。
「その、私のブルー・ティアーズも見ていただけませんか?」
「え?いやでも、ブルー・ティアーズはイギリスの最新鋭機でしょ?俺みたいな外国の1民間人が見るのは色々不味いんじゃ無いの?」
最新鋭機ともなれば、機密の塊だ。おいそれと見る事は出来ないと思って居たが……。
「か、構いませんわ。鋼司さんが情報を漏らすような方とは思っておりませんし、鋼司さんの黄匠はISの修理なども出来るとお聞きしていますし」
「そう。まぁ、そう言う事なら良いけど……」
って事で、場所を移した俺達は、それぞれ待機状態の黄匠とブルー・ティアーズを並べるとまずは俺が黄匠の検査を始めた。
「あっ。俺検査してるときとか、基本無口だけど良いかな?」
「えぇ。構いませんわ」
そう言ってくれたので、俺は早速黄匠の検査を始めた。いつものように装甲板を開いて中を確認する。幸い、部品の破損や摩耗は確認出来なかった。次にシステムエラーが無いかどうかもチェックする。もっとも、こっちはそこまで経験が無いので自己診断プログラムを走らせたりするのが関の山だ。
俺もハードの修理経験ならあるが、流石にプログラムとかソフト面の経験は殆ど無いからな。
まぁ、特に問題は無かったので黄匠を腕輪に戻すと、俺は黄匠のもう一つのフォームを発動して纏った。
それが『黄匠・メカニックモード』。これを発動すると、俺の頭部に黄匠のヘルメットが装着され、背中にサブアームが展開したバックパックも出現しそれを背負う。普通ならかなりの重さだけど、ISのPIC、簡単に言うと重力を制御するシステムのおかげで重さは感じない。
更に左手には内部を検査するためのスキャン装置や有線接続するためのコードが内蔵された端末、大型のガントレットみたいなのが装着された。こっちも見た目は重そうだがPICのおかげで全然そんな事は無い。
これが、黄匠のメカニックモード。必要時、ISの検査や簡易的な修理を行うときのモードだ。
「さて、それじゃあ始めますか」
って事で、俺は早速ブルー・ティアーズの検査を始めた。まずは内部を検査するが、これと言った問題は発見出来なかった。けど……。
「あ~~。これは」
「鋼司さん?どうかなさいましたか?」
「あぁ、えっと。問題って事じゃないんだけど、ちょっとね」
「と、言うと?」
「右手首の関節部が摩耗し始めてるね。今すぐどうこうしなきゃって問題じゃないんだけど、このまま摩耗し続けてるといずれ射撃精度とかに影響が出るから、そうなる前にパーツの交換をお勧めしたいかも。特にブルー・ティアーズは射撃よりの機体だから、射撃精度に問題が出るのは致命的でしょ?手首関節部分の予備パーツってある?」
「えぇ。一式、既に本国から送られてきていますわ」
「そっか。なら今の所問題無いけど、近いうちに交換を検討しておいた方が良いかも。まぁ急ぎで必要って訳でも無いから、様子を見つつで良いと思うけど」
「分かりましたわ」
って事で、あとあと問題になりそうな箇所を発見。でもまぁそれだけ。他には問題無し。とまぁハード面は問題無かったので次はソフト面だ。俺はブルー・ティアーズに左手の端末から有線で接続。あとは黄匠が内部システムを精査して問題を調べてくれるけど、まぁ結構時間掛かりそうだった。
だからかもしれないけど……。
「あの、鋼司さん」
「ん?どうしたの?」
「い、いえ。実はその、一つお聞きしたいのですけど、鋼司さんは将来的に、IS関連のお仕事に就く予定はありませんの?」
「え?それって、ISの整備士とかって事?」
「は、はいっ。如何でしょうか!?」
と、食い気味に聞いてくるセシリアに俺は内心ハテナマークを浮かべていた。
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鋼司は気づいていないが、セシリアにとって今の鋼司は意中の男性。そんな中で今の彼女の理想は鋼司と結ばれる事。そして彼女はそんな中で一つの未来設計図を描いていた。それが、『鋼司と結婚し、更にISパイロットの自分と機体を整備する整備士の鋼司と言う、公私ともにするパートナー』というものだった。
『も、もし仮にこれが叶えばっ!オルコットの家で共に生活し、仕事場でも常に一緒っ!仕事に疲れて2人一緒に帰宅したところを、『おかえり』なんて迎えて貰ったりしてっ!良いっ!良いですわっ!』
と、内心そんな夢を抱いていたセシリアだった。
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正直、俺はセシリアの言葉に悩んでいた。
「……IS学園に来たばかりの頃の俺は、正直ISに触れて学べてラッキー、みたいな感じだった」
「ッ、と、と言う事は、やはりIS関係の整備士になる気は無いと?」
と、何やら絶望したみたいな顔で俺に問いかけてくるセシリア。なんでそんな表情なのかは分からないけど……。
「いや。でも今はちょっと違うんだ」
「え?」
「本音を言うとね、迷ってる。……ここで黄匠や、セシリアたちと出会ったのも、ある種の運命かなって思ってる」
「ふぇっ!?そそそそ、そんなっ!私達の出会いが運命だなんて、そんなっ!」
何やら顔を赤くするセシリア。あぁ、あれかな?女子だから運命的な出会いって単語にドキドキしたとか?まぁ今はいいや。
「だから、かな。……以前の俺だったら、早く整備士としての資格を取って、じいちゃんの修理屋で一緒に働くのが夢だった」
「鋼司さんの、お祖父様のお店で、ですか?」
「うん。大きくは無いけど、自営業で車の修理工場をやってるんだ。ほんの少し前まで、俺の夢はそんなじいちゃんの隣で一緒に働く事だった。……でも、ISの適性が見つかって、こうして専用機まで貰っちゃって。……だからかな、IS関係の仕事に就くのも悪く無いんじゃないかなって思い始めてるんだ。……それに、俺がIS関係の仕事を続けていれば、もしかしたら男がISに乗れるようになるかもしれないでしょ?」
「ッ。それはつまり、女尊男卑主義の今の世界を変えるため、ですか?」
「まぁそれも理由の一つではあるけど、ちょっと違うかな?」
「違う、と言うと?」
「多分、俺だけじゃないと思う。純粋に、ISに乗って空を飛んでみたいって思ってる男は」
「何故、鋼司さんはそう思われるのですか?男性がISに憧れているなんて。今の社会は、その、私が言うのもあれですが女尊男卑主義が横行しています。そんな中で男性が女性の力の源でもあるISに憧れるなんて……」
「確かにね。多分、ISに悪感情を持ってる男は、少なくは無いと思う。でも、だからってそれだけで男の性が覆るものじゃないと思うけど」
「男性の性、ですか?それは一体?」
「簡単だよ。それは、『カッコいいへの憧れ』だよ」
「……へ?」
俺の言葉を聞いて戸惑ったのか、セシリアは首をかしげている。でも、同じ男だからこそ俺には分かる。
「男って生き物はさ、『カッコいい』が大好きなんだよ。いい歳した大人が特撮ヒーロー好きだったり、給料でロボットのプラモデル大人買いしたりさ。俺もそうだよ。この歳になっても戦隊ヒーローのロボットがカッコいいなぁって思ったり。ロボットアニメが大好きだったりして。……だから、俺みたいな奴は絶対居る。『カッコいいIS』に乗って、『かっこ良く空を飛びたい』。女の人からしたら、子供っぽいとか大人げないとか思われるかもしれないけど、でもさ」
俺は笑みを浮かべながら語る。
「カッコいいが大好きなのが、男なんだよ」
「そ、そう言う者なのでしょうか?男性と言うのは?」
「まぁそれも一部だと思うけど、多分多いと思うよ?カッコいいのが大好きな男ってさ。だから、そんな誰かのカッコいいを後押しできたらな、って思う」
「だからIS関係の仕事に就くことも考えていると?」
「うん。……でも、さっき言ったみたいに、男がISに乗れるようになったら、今の女尊男卑主義の世界もちょっとは変わると思うんだ。だから、かな」
「そうですか。……ですが、そんなに簡単に世界は変わるでしょうか?」
「まぁ、簡単じゃないと思うよ。世界を変えるのなんて、それこそ歴史に偉人として名を残すような偉業を達成しないとまず無理だと思う。それに、人はそう簡単には変わらない。変われる人も居れば、変われない人も絶対居る。……例え男がISに乗れるようになったとしても、女尊男卑を掲げる女の人は消えないだろうし、やっぱり男が偉いって、保守的で古くさい考えを持ち出す男の人だって出てくる」
正直、達観してるとは思ってない。俺はまだまだ人生経験の足りない子供だ。でも思ってしまう。
「人間は結局、どこまで行っても人間のままなのかもしれない」
時に人を傷付け、他者を蹴落とし、嘲笑い。そして自らの利益を求める。人間の醜い一面。俺が言いたいことを理解したのか、セシリアも気まずそうに俯いている。多分、セシリアも分かってるのかもしれない。
この前、聞いた話を俺は思い出していた。両親が他界したセシリアは、家の財産を守ろうとして必死だったと。だから多分、彼女も見てきたんだ。財産目当てで自分に近づいてくる、汚い人間の一面を。
でも、俺はそれだけが人間の全てじゃ無いって思いたい。人間を信じたい。だから……。
「でも、俺は最初から諦めたくない」
「え?」
「……前にさ、じいちゃんに言われたんだ。『ネガティヴな事考えてる暇が1秒でもあるのなら、その1秒で良い事を考えろ。悪い事考えても良い事なんて起きねぇ。んな暇があったら頭ん中の知恵振り絞って、自分に出来る事を考えろ。ネガティヴになっても良い事なんて一つもありゃしねぇっ!』ってさ」
「だから、最初から諦めないと?」
「まぁね。それに、もう一つじいちゃんに言われたことがあるんだ。『諦めてうじうじしてる暇があったら覚悟決めて問題に玉砕覚悟で突っ込めっ!』ってさ」
「ぎょ、玉砕覚悟は不味いのでは?」
と言って苦笑を浮かべているセシリア。
「まぁそうかも。……でもさ、じいちゃんの言うとおり悪い事ばっか考えて後ろ向きになってたら、変えられるものも変えられない。だからせめて俺は、どれだけ無謀でも前を向いて居たい。『変えられない』って最初から諦めるくらいなら、いっそのこと『世界変えてみせるぜこの野郎っ!』ってくらいの気持ちで行かないとね」
そう言って俺は笑みを浮かべる。すると……。
「ふふっ、でしたら私も鋼司さんと一緒に、世界を変えてみるために頑張るのもありですわね」
「えっ!?」
セシリアの言葉に戸惑っている俺。だって今の言葉、ちょっと告白みたいで……。
と、俺が顔を赤くしていると……。
「ッ~~~~~~!?!?」
『カァァァァァァァッ!』
セシリアも自分が何を言ってるのか理解したのか耳まで顔を真っ赤にしてしまう。そして俺達が言葉に迷っていると、どうやらブルー・ティアーズの検査が終了したみたいだ。
「あ、あぁぁぁセシリアッ!?ブルー・ティアーズの検査終わったよ!?」
「そそそそ、そうですわねっ!では機体を戻さないとっ!」
結局、俺達はお互い顔真っ赤のまま、手早く機体を片付けて別れた。
でも、この羞恥心のせいか、俺もセシリアも気づかなかった。部屋を出た時、1人の人影が足早に出て行く俺達を見送っていた事を。
うぅ、まだ顔が熱い。俺は寮へと向かって歩いていた。
≪ねぇコージ?≫
『ん?』
≪コージって、あのセシリアって子が好きなの?≫
『ぶっ!?はっ!?えっ!?』
突然の黄匠の言葉に、俺は戸惑った。
≪だってコージ、さっきからず~っと顔赤いままだし?≫
『い、いやいやいやっ!?好きとかそんなんじゃないってっ!さっき言われたのが告白みたいだから恥ずかしいだけだよっ!そりゃぁ、出会って数日だし、最初はお互い険悪だったし、今は仲良くなってるつもりだけど、そんなの……』
俺に、今まで恋愛経験なんてものは無い。仲の良い女子がいなかったって訳じゃないけど、それはただの友人関係に過ぎなかった。告白だってされた事は無いし、して振られた事も無い。……だから。
『俺には、まだよく分かんないよ。誰かと恋をするって』
俺は黄匠にそう言うことしか出来なかった。結局、黄匠は≪ふ~ん、そっかぁ≫と頷くだけだった。
そして寮の廊下を歩いていた時、俺はたまたま一夏の部屋の前を通り掛かったのだが……。
「ふ、ふざけるなっ!出て行けっ!ここは私の部屋だっ!」
うぉっ!?びっくりしたぁ。今の声、箒さんか?
しかし、何だ?まさかまた一夏と揉めてるのか?少し気になった俺は部屋のドアをノックした。
『コンコンッ』
「一夏~?箒さ~ん?何騒いでるんですか~?」
と、俺が声を掛けると……。
何やら一夏が慌てた様子でドアを開けた。
「あぁ良かった鋼司!悪いけどちょっと手ぇ貸してくれ!」
「え?お、おぉ」
と、俺は一夏に導かれるまま中に入ると、そこでは何故か竹刀を手にしている箒さんとボストンバッグを抱えた凰さんの姿があった。
「え、え~っと、状況が理解出来ないんだけど、何があったの?」
と、俺は一夏に聞いてみた。
すると、一夏曰く、凰さんがいきなりやってきて箒と部屋を変わってくれと言い出したんだとか。しかし箒さんも部屋を変わる気は無いらしく、箒さんが力尽くで凰さんを追い出そうと竹刀を手にしたとき俺が来た、って事らしい。
「え、え~っと、とりあず箒さんは竹刀をしまって下さい。いくら何でも暴力沙汰は問題になりますし。あと凰さんも。部屋を変えるって言いますけど、先生や寮長の許可は取ってあるんですか?あとで無許可だって織斑先生に知られたら、何されるか分かりませんよ?……って言うか、そもそも問題起こすと織斑先生に何をされるか」
「「うっ」」
どうやら2人は、織斑先生が苦手なのか揃って呻くと、箒さんは竹刀を収め凰さんも肩を落としている。さて、これでとりあえず問題は解決したかな。と俺が思った時だった。
「そ、そう言えばさ、一夏は覚えてる?あの『約束』」
「ん?約束って確か……」
記憶を掘り返しているのか一夏は数秒してから……。
「あ。もしかしてあれか?確か、鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を……」
「そ、そうそうっ!」
「奢ってくれるって奴か?」
「……………はい?」
一夏の言葉に、ほんの数秒前まで嬉しそうな表情を浮かべていた凰さんだったが、最後の言葉を聞いて表情が見る見る変わって行く。そして……。
『パァンッ!』
凰さんは思いっきり一夏の頬を張り手でひっぱたいた。
「最っ低!女の子との約束をちゃんと覚えて無いなんてっ!男の風上にも置けない奴!犬に噛まれて死ねっ!」
そう言うと、凰さんは持ってきていたボストンバッグを手に、ドアの近くにいた俺を押しのけて部屋を出て行ってしまった。でも、俺は気づいていた。去り際、凰さんの目に涙が浮かんでいた。
「ちょっ!?凰さん!?」
俺はドアの所から声を掛けるが、凰さんは廊下を走り去っていく。その後ろ姿を見て俺は、凰さんは一夏に気があるから、最初は慰めに行くべきか迷った。でもやっぱり、女の子が泣いてるのを黙って見てるのは悪い気がしたから……!
「あぁもうっ!」
俺は慌てて凰さんを追って駆け出した。
この前の嫌な予感が的中した事に、俺は内心冷や汗を掻きながら、凰さんを追って走るのだった。
第7話 END
感想や評価、お待ちしてます。
それと、作中で登場した人影ですが、その前の鋼司の話、男がどういう生き物かについて話していた事を考えれば、多分大体の人は分かると思います。
『彼女』に関しては、読者様の意見もあって鋼司のヒロイン候補になっておりますが、決定ではありませんので。