インフィニット・ストラトス~~ロボッツハート~~   作:ユウキ003

9 / 10
遅くなってしまいました。すみません。実は労働時間の変化で執筆時間が激減していて。愉しんで頂ければ幸いです。


第8話

~~~前回のあらすじ~~~

飛び出した鈴さんを追って行った俺は、何とか彼女を宥める事に成功した。そんな中で彼女と相談し、どうしたら一夏に告白出来るかなどのアドバイスをした。結果的にやる事は決まったものの、一夏のふとした発言から鈴さんは大激怒。そんな中でクラス対抗戦の初戦、それは一夏と鈴さんの戦いとなった。

 

 

~~~~

観客席で戦いを見守る鋼司。一方のセシリアはと言うと……。

 

「うぅ、残念ですわ。私、鋼司さんと一緒に試合を見たかったのに」

「……まだ言っているのかお前は」

 

場所はピットにある管制室。そこで愚痴を漏らすセシリアに箒は気怠げに声を掛けた。

 

実はセシリアは、鋼司と試合を見たかったのだ。しかし会場周辺で彼とはぐれてしまい、席も取れなかったので泣く泣くこちらに来た、と言う事だ。そして今は試合開始を待っていた所だった。

 

「そんなに気になるのなら、探して連れて来ればいいのではないか?曲りなりに中條も関係者なのだからな」

「それもそうなのですが、もうすぐ試合も始まりますし、探すのも大変ですから。それに私、曲りなりにも一夏さんの練習相手ですし。せめて一夏さんの試合の様子くらいは見ておきたいのです。……加えて、中国の第3世代ISの動きも気になりますし」

「ッ。……成程な」

『代表候補らしいな』、と箒は思いながらも改めてモニターに視線を移した。

 

そして、ついに試合は開始された。

 

 

鈴の纏うIS、中国の第3世代IS『甲龍』は、その手にした青龍刀らしき近接武器と、両肩の非固定浮遊部位に搭載された『衝撃砲』で、一夏の白式を相手に、優勢な立ち回りをしていたのだった。

 

~~~~

試合が始まった直後、一夏の白式が突如として吹き飛ばされたっ。

「な、何だあれっ!?鈴さんの甲龍のユニットが稼働したと思ったら、急に一夏が吹き飛ばされて……」

まさか、目に見えない攻撃?と俺が思った直後。

 

「あれ、多分『衝撃砲』だと思う」

「衝撃砲?」

隣に居た清香の言葉に、俺は彼女の方へと視線を向けた。

 

「それって、どういう兵器なの?」

「えっと、私も詳しくはないんだけど、確か、空間その物に圧力を掛けて砲身を作って、衝撃波を砲弾として打ち出す、とか何とか。確か、オルコットさんのブルーティアーズと同じ、第3世代型の最新兵器だったはずだよ。」

「衝撃を、砲弾として打ち出す、か」

 

清香の言葉をリピートしながら考える。つまりは、バカみたいな威力の空気砲って所かな?けど、砲身も砲弾も目に見えないのなんて、戦闘経験の少ない一夏じゃ苦戦するかもしれない。

 

普通の銃なら、銃口で大よそどこを狙っているのかわかる。ISのハイパーセンサーがあれば、敵ISの指先の動きで引き金を引くタイミングくらいは分かる。……でも、鈴さんの甲龍にはそのどちらも無い。

 

だからこそ、一夏は序盤から劣勢を強いられていた。俺はそれを見守っていた。

 

そんな中で……。

「ねぇ、中條君はどう思う?」

「え?」

「この試合、織斑君が勝てると思う?」

「……」

清香の言葉に俺はしばし黙り込んだ。状況はどう見ても一夏の劣勢。技術はおそらく鈴さんの方が上。もちろん経験も。ISそのもののスペックは、正直分からない。ただ、『どれだけ機体を乗りこなせているか』、と言う点でも、恐らく軍配が上がるのは鈴さんだろう。

 

以前、対抗戦に向けた練習の最中、一夏に白式について色々聞いた事がある。一夏の持つ白式の武装は、近接ブレードである『雪片弐型』のみ。そして白式の持つワンオフアビリティ、『零落白夜』は自らのシールドエネルギーを引き換えに、相手に大ダメージを与える事を可能にする、ハイリスクだがハイリターンが望めるアビリティだ。……が、それも当てられなければ意味が無いし、使うだけで自らのシールドエネルギーを削ってしまう。……とても素人に使いこなせるアビリティには思えなかった。加えて、鈴さんの甲龍の衝撃砲は射角も広く、連射も出来るようだ。……いざとなれば、引き撃ち。距離を取りながらの一方的な射撃戦に持ち込めば、射撃兵装を持たない一夏の白式には勝ち目が無くなる。……鈴さんの性格を分かり切ってるわけじゃないから、彼女がそんな戦法で来るのかは、分からないけど。

 

でも状況を整理するだけで、一夏がどれだけ不利な状況なのか理解してしまう。素人の目から見ても、鈴さんが有利なのは分かる。……それでも……。

 

「『分からない』」

「え?」

「正直、どっちが勝つのか、俺には分からない。確かに鈴さんは有利だけど、でも……」

 

アリーナを見上げる。視線の先には一夏の白式がいる。そして一夏は、まだ諦めてないと言わんばかりに、闘志を燃やしているような表情を浮かべている。

 

「一夏はまだ、諦めてない。だからこそ、分からない」

「そっか」

俺の言葉に、清香は静かに頷くと彼女もまた視線を挙げた。

 

そして俺たちは、戦いの行く末を見守っていた。

 

 

 

 

 

 

だが………。

 

 

 

≪コージッ!今すぐそこから逃げてっ!≫

『……え?』

 

戦いを見守っていた俺の頭の中に響く、黄匠の声。だが、突然の警告に理解が追いつかず俺はただ、茫然と呆ける事しか出来なかった。

 

≪良いから早くっ!未確認のISが、こっちにっ!≫

『ズドォォォォォォォォォォンッ!!!!!!』

 

黄匠の言葉を遮るように響き渡る爆音。しかしそれは、白式と甲龍の戦闘で発生した物ではない。

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」」」」

悲鳴を上げる生徒達。俺は咄嗟に、傍にいた清香を庇ったっ。

 

咄嗟に伏せていた視線を上げ、視線をアリーナに向ける。

 

視線の先、アリーナの中央。そこでは、まるで隕石でも落ちたかのように濛々と砂煙が立ち込めていた。

 

『何だ、何が起こって……っ!?』

理解が追いつかない。何かが、落ちて来た?いや、でも可笑しい。アリーナを覆うシールドは、ISのそれと原理は同じ。つまり、『ISのシールドを一撃で突破できるほどの物が落ちて来た』と言う事実でもあるっ。

 

隕石っ!?いや、そんな訳ないっ!大体、ここに、今日ここに、この時間に隕石が落ちてくるなんてどんな確率だよっ!と、その時。

 

『ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

鳴り響くアラート。観客席とアリーナの間にあった隔壁が展開され、同時に観客席は薄暗い、非常灯によって仄かに赤く染め上げられた。

 

「何っ!?何がどうなってるのっ!?」

 

突然の事で皆パニックになってるっ!クソッ!状況の変化が性急過ぎるっ!理解が追いつかないが、周りの皆は混乱し、観客席を出るドアの方へと向かっているが……。

 

『ガンガンッ!』

「なんで開かないのっ!?」

「ねぇどうしたのっ!?」

「ドアが開かないのっ!なんでっ!?」

 

聞こえる声に耳を傾けてるが、ドアがロックされてるのかっ!?クソっ!これじゃあ、檻に閉じ込められたも同然だっ!

 

どうする?俺に何が出来るっ!?考えろっ!俺には、専用のISだって与えられてるだろっ!?黄匠は災害救助用のISだっ!何か、何か出来る事があるはずだっ!

 

と、その時。

 

≪落ち着いて。コージ≫

 

脳裏に響いてきたのは、黄匠の声だ。

 

『黄匠?』

≪大丈夫。コージには私が居るから。私が、コージの力になるから。だから、落ち着いて。ね?≫

 

『…………あぁ、そうだな』

 

俺は彼女の言葉に頷くと、その場で深呼吸を始めた。

「ちゅ、中條君?」

隣に居た清香の声が聞こえるが、俺は彼女を一瞥すると、前を向いて目を閉じ、考える。

 

『黄匠、とにかくまず、分かる範囲で状況を教えてくれ。その情報から、出来る事を考える』

≪分かった。さっきの攻撃は、未確認のISの物。今はアリーナで、白式と甲龍がその未確認ISと戦ってる≫

『戦況は分かるか?』

 

≪……良くは無い。2対1でも押されてる≫

『鈴さんは代表候補生だ。しかも素人とは言え一夏と一緒に戦ってるんだぞ?数的有利を覆してるのか、そいつは。……厄介だな。他に何か情報は?』

≪アリーナがハッキングを受けてる。シールドの設定がレベル4になって、あっちこっちのドアもロックされてる。学園の人達も対応してるけど、まだ時間が掛かりそう。これじゃあ白式たちに応援も出せないし、避難も出来ないよ≫

『ハッキングってのは、そのISが?』

≪うん。……それと、もう一つ、あのISはね、『無人機』だと思うよ≫

 

『ッ!?無人機だってっ!?』

≪うん。あの子には、人が乗ってない。分かるの。あの子から、人の存在の兆候が、感じられない≫

『マジかよ……っ!?』

まさかの情報に、流石に俺は驚いたっ。なぜなら、ISは基本的に有人兵器だからだ。無人ISなんて、どこも開発していないはずっ。いや、民間人の俺が知らなかっただけかもしれないが、だからって、無人のISなんて簡単に開発出来るもんじゃない。……一体、誰が?

 

一瞬、そんな事を考えてしまうが俺はすぐに思考を切り替えた。

 

『どの道、俺と黄匠が一夏達の応援に行ったって大した効果は期待出来ないだろう』

≪……≫

俺の言葉は、暗に黄匠が弱いと言ってしまっているような物だ。相棒には申し訳無いと思うが……。

 

『だからこそ、俺は俺達に出来る事をやるぞ、黄匠!』

≪ッ、うんっ≫

続く俺の言葉で、彼女は元気よく頷く。

 

『まずは、ここから生徒の皆を逃がす。黄匠、ロックされてるドアをどうにかする方法はあるか?この際ドアの破壊も考慮に入れて良い』

≪分かった。まず、ハッキングによるコントロールの奪取は無理。出来ても時間が掛かる。逆に、私の背中にあるレーザートーチやヒートチェーンソーを使えば、扉を溶断出来る≫

『となると、物理的に扉を破壊するしかない、か』

 

数秒、俺は考え込んだ後。

『黄匠、織斑先生とかに連絡は取れるか?』

≪うん。やってみる。少し待って≫

 

黄匠が通信回線を開いている間。

「清香。悪いけどここでじっとしててくれ」

「えっ?中條君は、どうするの?」

「俺は俺に出来る事をやる。俺には相棒の黄匠が居るからさ。いざとなれば、扉を……」

と言いかけた時。

 

『こちら織斑。中條か?』

っと、繋がった。織斑先生だっ。手首の端末から先生の声が聞こえる。

 

「はいっ中條ですっ。実は折り入って相談がありましてっ」

『何だ?悪いが状況は逼迫している。手短に頼むぞ』

「では、単刀直入に。現在俺は他の生徒達と一緒に観客席に閉じ込められてるんです。なので、扉を破壊する許可が欲しいんです」

『……物理的に破壊するのか?』

「はいっ。……事態は一刻を争います。これからどうなるかも分かりませんし、『アリーナで一夏たちと戦ってるIS』がこっちを攻撃してこないとも限りませんしっ、お願いします」

 

『ッ。ちょっと待て。何故お前が未確認ISの事をっ』

あっ、やっべっ!つい口が滑ってしまった。隣に居る清香も、『IS?』と呟いて戸惑い気味に首をかしげている。しかし……。

 

『いや。今はそんなことはどうでも良いか。…………分かった。中條、扉の破壊は許可する。責任はこちらが取るから、好きにやれ。生徒達の避難経路を確保しろ』

「ッ!はいっ!」

 

よぅしっ!これでやる事は決まったっ!

「清香はここに居てっ!俺が避難経路を確保してくるからっ!」

「う、うんっ」

 

若干戸惑った様子の彼女にそう言い聞かせ、俺はドアの方へと向かった。

 

「ごめん通してっ!」

「あっ!?ちゅ、中條君っ!?」

「えっ!?」

俺がドアの方に行けば、皆が俺の方へ視線を向けてくる。だけど好都合だっ。

 

「皆聞いてくれっ!俺は1年で専用IS、黄匠の相棒の中條鋼司だっ!皆ドアから離れてくれっ!俺の黄匠の溶接機で、ドアを溶断するっ!」

「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!」

すると声を上げた生徒がいた。タイの色からして、3年生だな。

「何をいきなりそんなっ!いくら非常時とは言えっ!」

「分かってますっ!でも織斑先生から許可は貰ってますからっ!」

「ッ!?」

 

流石はブリュンヒルデ。その名を出しただけで先輩は黙り込んだ。

「皆今すぐドアと俺から離れてくれっ!作業中は火花が散る可能性があるからっ!」

俺が声を張り上げると、皆いそいそとドアや俺から距離を取る。よしっ、これくらいなら良いかっ。

 

「行くぞ、相棒っ」

≪うんっ!≫

 

目を閉じ、相棒に声を掛ける。そして目を見開いた直後、俺の体を黄匠が覆う。

 

パーソナライズされたISには拡張領域にISスーツが格納されていて、緊急時には着替える事無くISスーツ毎、機体を纏う事が出来る。エネルギーの消耗が激しいので、緊急時以外は使う事を推奨されていないが、今が正にその『緊急時』なのは言うまでも無い。

 

『黄匠、センサーで扉の向こう側を調べてくれ。誰も居ないか?』

≪センサースキャンを実行。……うん、誰も居ないよ≫

『よしっ、ならサブアームを展開してくれっ。扉を焼き切るぞっ!』

≪うんっ!≫

 

次の瞬間、サブアームが肩越し、脇越しに展開され先端のバーナーが火を噴いた。高温のジェットが噴射され、扉を溶かしていく。

 

ジジジッと音を立てながら、少しずつバーナーを動かす。そして、それがある程度まで行くと……。

 

「うらぁぁぁぁぁぁっ!」

 

『ドゴンッ!!』

 

黄匠の右足で繰り出した蹴りが扉を吹き飛ばした。

「っしっ!避難経路を確保っ!」

これで避難経路は確保出来たっ!俺はすぐに拡張領域から、火災時などに使う消化器を取り出してバーナーで焼いた部分を冷却する。万が一人が通ってる時に火傷したら事だからなっ!

 

「皆っ!扉を破壊したから落ち着いて並んで前に進んでっ!」

俺が声を張り上げると、皆次々と開いた出口から外へと向かっていく。そして慌てないように、何度も声を荒らげて皆を落ち着けていた時だった。

 

『中條、聞こえるか?』

「ッ、はいっ、織斑先生っ」

先生から通信が届いた。

 

『そちらの状況はどうなっている?』

「現在扉の破壊に成功。生徒たちを避難させています。けど、開けられたドアがここ一つなので、生徒達が殺到していて、避難にはまだ時間が掛かりそうです」

『分かった。観客席から出た生徒達の避難誘導は学園の教師陣が請け負う。とにかくお前は生徒達を観客席から外に逃がせ。良いな』

「はいっ」

って、そうだっ。

 

「あ、あの、アリーナの様子は?一夏達は、大丈夫ですか?」

『無事だ。今の所はな』

「…………。救援は?」

『突入させたいところだが、まだ無理だ。システムがハッキングされ、手間取っている』

「そう、ですか」

『……お前は、援護に向かうとは言わないのだな。オルコットなどは援護に行くと息巻いていたが』

 

「黄匠は戦闘用ISじゃありませんからね。出来る事も限られてますから。……俺は俺に出来る事を相棒とやるだけです」

『……そうか。ならば、可能な限りで良い。他のドアの破壊も許可する。責任はこちらで取るから、遠慮無く壊して生徒達の避難経路の確保を頼む』

「了解っ!」

 

それから俺は、追加で2箇所ほどドアを破壊して行った。脱出口が3箇所に増えた事で、1箇所に集まっていた生徒達も分散され、スムーズに人の流れが生まれた。よしっ、後は先生達が何とかしてくれるだろう。

 

「あのっ!」

俺は近くにいた先生に声を掛けた。

「な、何かしらっ?」

「俺、これからアリーナのあちこちを回って逃げ遅れた子が居ないか探してきますっ!先生達はこのまま避難誘導をお願いしますっ!」

「……良いのね?アリーナの中ではまだ、戦闘が続いているのよ?」

少し迷った様子の先生の言葉だが、問題無い。

 

「大丈夫です。俺には相棒の黄匠が居ますから。少しくらいの危険なら、どうって事はありませんっ!」

「……分かりました。なら、お願いします」

「はいっ!」

少し迷いつつも、頷いてくれた先生の言葉に返事を返すと、俺は黄匠を纏ったままその場を離れた。

 

それから俺はアリーナのあちこちを見回る。戦闘の影響か、断続的な微震をハイパーセンサーが検知している。一夏たちは、まだ戦ってるのかっ。……一夏、鈴さん。無茶だけはするなよ?いざとなったら、逃げてくれよ。

 

一夏はIS学園に入って出来た友人だ。鈴さんとだって、そこそこ仲良くなったと思ってる。……頼むから、死なないでくれよ。二人とも。

 

実戦では何が起るか分からない。そんな不安から、俺は内心祈ってしまう。二人の無事を。

 

と、その時。

 

≪コージ、足音が聞こえるよ≫

「えっ?」

 

滑るように移動していた中、黄匠の言葉を聞き俺は足を止めた。すぐさまハイパーセンサーで音の聞こえる方を探る。

 

『タッタッタッタッ』と走る誰かの足音が聞こえる。だが、不思議だ。足音は出口に向かっていない。こっちの方角にあるのは、放送室?なんでそっちにっ!?

 

「どうして逃げないんだっ!?」

俺は訳が分からないまま足音の主を追った。そして見えてきた放送室。ドアは大きく開け開かれていた。

 

「一夏ぁっ!!!」

 

「ッ!?箒さんっ!?」

 

放送室の方から聞こえてきたそれは、箒さんの声だったっ!?こんな所で何してるんだっ!?と思った。

 

「男なら、男なら、それくらいの敵に勝てなくてなんとするっ!」

 

それは箒さんなりに、戦う一夏への激励だったのかもしれない。でもっ!!奴が何をするか分からないんだっ!これは、危険行為以外の何者でもないっ!

 

 

そしてハイパーセンサーが捉えたっ!黒い、歪なISが箒さんを狙っている所をっ!腕に搭載されているビームの砲口を向け、今にもぶっ放しそうだっ!?

 

一瞬、俺は黄匠のエネルギー残量を確認する。緊急展開もしたせいで、エネルギーを消耗してるけど、やるしかないっ!

 

「箒さんっ!」

「ッ!?ちゅ、中條っ!?」

俺はすぐさま箒さんの傍に駆け寄り、彼女の前に立つ。そして、あのISに対して背中を向ける。

 

『黄匠っ!残りのエネルギー全部、背面のシールドバリアーに回せっ!』

≪う、うんっ!≫

 

直後。

 

『カッ!!』

 

ハイパーセンサーが背後からの閃光を検知する。そして……。

 

『ドウッ!!!』

「ぐぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」

 

シールドバリアー越しでも背中に感じる熱量。それでも、今ここで体勢を崩せば箒さんが危ないっ!!!」

 

「ぐっ!おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 

必死にその場で踏ん張り続ける。体を大の字のように広げて、箒さんの盾になるっ!!

 

「中條っ!!」

「箒、さんっ、に、逃げっ!」

 

逃げて、そう言おうとしたその時。

 

『ビシッ!!』

ビームの一部がシールドを貫通する音が聞こえた。背筋が一瞬で凍り付いた、直後。

 

『ジュッ!!』

 

細い一筋のビームが、俺の左腕を、貫いて……。

 

「ぐっ!?うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!??!」

 

文字通り、焼けるような痛みで視界が明滅するっ。意識が飛びかけるっ。

「中條っ!!!」

≪コージッ!コージしっかりしてっ!≫

 

悲鳴のような箒さんの声と、黄匠の声が聞こえる。と、次の瞬間。

 

「っざけんなテメェっ!!!!」

 

一夏の、激怒したような咆哮が聞こえる。

 

そして俺の意識は、ハイパーセンサーで一夏の白式が、謎のISに斬りかかるところを見た次の瞬間、途絶えた。

 

 

 

 

『うぅ、うぐっ、えぐっ』

 

泣いてる。女の子が、泣いてる。真っ暗な空間でただ1人。その子の事を、俺は知っている。

 

「黄匠?」

 

それは、相棒だ。俺の唯一無二の相棒だ。

 

「どうした?黄匠、泣いてるのか?」

『ごめん。ごめんね、コージ。私が、私がもっと強かったら』

 

彼女は泣きながら振り返った。その表情は、涙でグシャグシャになっていた。……泣くなよ、相棒。

 

俺は静かに右手で黄匠を抱き寄せる。左腕は、『なぜか動かない』。

 

「大丈夫だよ、黄匠。俺は生きてる。だから、大丈夫だ」

『……う、うぅ』

 

俺が抱きしめると、黄匠は小さく嗚咽を漏らす。少しは安心したのだろうか?と思ったが。

 

『それだけじゃ、ダメ』

「え?」

 

突然聞こえた彼女の声は、怒っているような、悲しんでいるような。とにかくそんな感覚を覚えた。

 

『……私は、もっと、もっと強くなる……っ!コージを、守れるようにっ!』

 

決意とも取れる叫び。だが、それは黄匠本来の目的とは違うっ。何より、黄匠のその目に浮かんで居たそれは、『怒り』だった。

 

誰に対する怒りなのかは分からない。だが、次の瞬間。黄匠は俺の手から離れ、どこかへと歩んでいこうとする。

 

「ッ!?待て黄匠っ!お前は、お前は戦う為に生み出された訳じゃないんだっ!戦う力なんていらないんだっ!お前は、誰かを守り助ける為のISなんだっ!!!」

 

戦うばかりが全てじゃないっ!

「今日だってお前がいたから、俺は箒さんをっ!皆を助けられたんだっ!だから黄匠っ!」

『それでもっ!!』

 

黄匠の叫びが聞こえ、彼女は足を止め、俺の方に振り返った。

 

『それじゃあ、ダメだよコージ。だって、私が一番守りたいのは、大好きなコージだもん』

 

彼女は、泣いていた。大粒の涙を流していた。

 

「黄匠」

 

俺は静かに、彼女に歩み寄ろうとした。が……。

 

『ドパァッ!』

「なっ!?うわっ!!?」

 

次の瞬間、足元から黒い、粘度のある液体が噴き出し俺の体に降りかかる。

「くっ!黄匠っ!黄匠ぉっ!!」

 

俺は必死に相棒の名を呼ぶが、黄匠は答えず、動かない。泥のようなそれに右手が取られる。あと少し、手を伸ばせば黄匠に触れられるのに、左腕は何故か動かない。

 

そして、泥が俺を飲み込んで行く。

 

「クソっ!黄匠ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

俺は、漆黒の泥の中に沈んでいった。

 

 

 

「はっ!?」

そして、俺の意識は覚醒する。

 

ガバッと体を起こし、周囲を見回す。そこは、病室か何かだった。ベッドに周囲を仕切るカーテン。

「ゆ、夢?」

さっきまでの、脳裏に焼き付いた不気味なイメージ。気がつけば体中汗びっしょりで気持ち悪いったらありゃしない。しかし、どうして俺は、こんな所に。

 

そう思って周囲を見回した時、違和感に気づいて視線を下に向けた。すると気づいた。左手がデッカいギプスに覆われていたのだ。……そうだ、俺はあの時。謎のISのビームから箒さんを庇って、でもビームに腕を撃ち抜かれて。それで……。

 

と、その時。

「お前も気がついたか、中條」

「ッ。織斑先生」

 

シャッと音がしてカーテンが動き、現れたのは織斑先生だった。そして、その姿を目にして、思いだした。

 

「そうだっ!先生!謎のISはっ!?一夏たちは大丈夫なんで、いっ!?!?」

 

身を乗り出そうとした時、左腕から鈍い痛みが走る。

 

「落ち着け。今から状況を簡潔に説明してやるから」

 

そう言うと、先生は近くにあった椅子に腰を下ろした。

 

「まず、謎のISについては問題無い。織斑が全身に打撲を負う程度の負傷はしたが、無事に討伐された。織斑も今別室で休んでいるところだし、凰、そして篠ノ之にも目立った怪我は無い」

「そ、そうですか。良かった~~」

皆が無事だと分かると、俺は安心感から脱力したのだが……。

 

「いっ!?!?」

次の瞬間、左腕の痛みが蘇る。

 

「お前は他人の心配をしている場合か。今回、一番ダメージを負ったのはお前なんだぞ?中條」

「そ、そう、ですよね」

「そうだ。…………あと少し、ビームの熱量が大きく、またビームが太かったら、骨と神経をやられていたそうだ。そうなれば、お前の左腕は肘から下が使い物にならなくなっていただろう」

「……………」

 

ゾッとするような話題に、俺は何も言えなかった。

「幸い今回は、ビームが腕を貫き肉と皮膚を焼いた程度だった。今の医療なら、少し傷跡が残る程度までは治せるそうだ。……しかし、痛いとなると痛み止めが切れてきたようだな。あとで誰かに持ってこさせよう」

「すみません。ご迷惑をおかけして」

 

「気にするな。とにかく、今は休め。その腕と傷では授業もままならないだろう。しばらくは、療養に専念しろ。聞きたい事もあるが、それは後日にする。ではな」

俺の言葉にそう言うと、織斑先生は立ち上がった。

 

だが……。

「あぁそうだ」

「はい。まだ、何か?」

「中條、お前の働きで生徒達と篠ノ之は助かった。教師として、1人の人間として、礼を言っておく。ありがとう」

 

肩越しに振り返った織斑先生が見せたそれは、優しい微笑みだった。

「い、いえ」

普段見せないそんな表情に俺が戸惑っていると、先生の表情がいつものそれに戻る。

 

「とにかく。今は休め。休んで傷の治癒に専念しろ。良いな?」

「は、はいっ」

 

俺の返事を聞くと、織斑先生は部屋を出て行った。それを確認して周囲を見回すと、窓の外はすっかり暗くなっていた。もう、夜になってたのか。そんなに眠ってたんだな、俺。

 

少しして、山田先生が痛み止めを持ってきてくれた。俺はそれを飲んだのだが、すぐに眠くなってしまった。山田先生に、出て行く時部屋の明かりを落として貰う。そして俺はすぐに横になったのだが……。

 

ふと、あの時の夢が気になった。しかし、今の俺の左手首に黄匠は居ない。じゃあさっき見た夢は?やっぱりただの夢なのか?……まぁ、明日黄匠と話をすれば何か分かるだろう。

 

俺は、そんな事を考えながら眠りに付いた。

 

 

~~~~

一方その頃、ピットの格納庫に、一時的に置かれていた黄匠なのだが……。

 

『強く、強くなるんだ。私は……』

 

彼女の言葉に気づく者は、誰1人としていない。

 

『コージが傷付かないように、私が……』

 

それは彼女の大切な人を守りたいと言う決意の言葉なのだろう。

 

私が、コージを守るんだ……っ!

 

だがそれは、彼女の想いの暴走に近い物であった。

 

 

鋼司は、黄匠に戦う力など望まない。彼女は戦う為の存在ではないのだから。

 

黄匠は、鋼司を守る力を望む。鋼司は、彼女にとって何よりも守らなければならない存在なのだから。

 

2人の、とある戦いから始まってしまうすれ違い。それが大きな『(わざわい)』をもたらす事になるのだが、それはまだ、少しだけ未来のお話。

 

     第8話 END

 




はい。って事で鋼司と黄匠の間でちょっとすれ違いが発生しつつあります。これは今後への布石、と言う事です。

感想や評価、やる気に繋がりますので、良ければお願いします。お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。