3時の怪   作:灯火011

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その星が、託した先は

 や、トレーナーさん。どうしたの?

 

 緊張しているかって?そりゃあ、もちろん。緊張しないわけがないって、こんな大舞台。

 

 うん。そうだね。頑張ったもん。トレーナーさんと、アタシ。二人三脚で。

 

 あ、そうだ。ちょうどいい機会だからさ、少し、話、聞いてくれる?

 

 ほら、ちょっと前に話題になったじゃない?3時の怪っていう怪談話。そうそう。キラキラしてるテイオーとかが体験したっていう。

 

 実は、アタシもね。それ、体験してたんだ。

 

 

 ほら、懐かしい話なんだけどさ。トレーナーがアタシのことをスカウトして少し経った後に、商店街からのみんなの手紙を届けてくれた時のこと、覚えてる?今の道を進むって決めた、あの時のこと。トレーナーさんは覚えてるかな。

 

 そうそう。「なんだよ三着って!」って叫んだとき。…って、あー!思い出したら恥ずかしくなってきた!って、トレーナーさんも笑わないでよ!まったく!

 

 それでさ、その夜。アタシ、舞い上がってて寝れなかったんだ。それで、実はフジさんの目を盗んでちょっと河川敷に走りに行ってたの。

 

 えへへ、驚いた?トレーナーさんでも知らなかったでしょ?ま、でも、あとでバレてものすごい怒られたんだけどねぇ。あははは…。え?あ、もちろん今はしてないわよ?その点は心配しないでよ、トレーナーさん。

 

 で、話を戻すけどさ。河川敷には他の学園の子とか、入る前の子とか、あとは趣味で体を鍛えている子とかがいて、その中に混じって練習していたの。数は多くなかったけど、今思えば…学園で見た顔もいたかもね。

 

 それでね。トレーナーさん。丁度、12時…そう、日付が変わって少し経って…ぐらいだったと思う。

 

 急に、発バ機の音が響き渡ったんだ。

 

 え?って思って、振り返ったの。そしたら。

 

 そこにあったのは。真っ青な青空。その下に、アタシたちが使う発バ機よりも大きなやつが置いてあってさ。うん。そう。深夜だったのに、急によ?

 

 最初は疲れて河川敷で寝ちゃったかなって思ったのよね。でも、しばらくその場で佇んでいたんだけど何も起きなくて、途方にくれちゃって。

 

 そうねー。不思議と怖くは無かったのよね。今思っても不思議なんだけどさ。

 

 それで、さ、やっぱり気になるじゃん。こんなところに発バ機があるって何?それで近づいていったんだけど、その、なんにもなかったの。

 

 そ、なんにも。本当に、大きな発バ機が置かれていただけだったんだよねぇ。そ、拍子抜けよね。うーんって思って、じゃあ、どうやって起きようかなーとか考えながら周りを歩いてみたりしていたんだけど、そうしたらまた。

 

 ガチャンって大きな音がしたのよね。もちろん、振り返ったわ。

 

 そうしたら、居たのよ。噂の、四足の何か。確か…「馬」?だったっけ。そ、馬。四足で、キリンみたいな顔をしているっていう。…それそれ!いやぁ、今見てもゴールドシップの書いたイラスト、再現度たっかいわぁ。

 

 うんうん。で、その馬が発バ機に収まっていたの。それでね。呆気に取られていたアタシを迎え入れるように、発バ機が開いたのよね。

 

 そ。確か…この前の有マ記念と一緒の12番だったと思う。そうそう、毎度おなじみ三着!…って、何言わせるのよ、トレーナーさん!

 

 でも、その時はなんで12番っていう番号だったのかはもちろん判らなかった。ちなみにね、その馬は9番だったの。

 

 そうなのよねー。今までの馬の話ってさ、なんっていうか、見た本人の経験とかち合う、はずなんだけど…。まだ、9番っていう枠番はアタシの経歴にはないでしょ?今日のレースだって、それじゃないし。

 

 それでねトレーナーさん。その時は何にも思わなかったんだけど、自然と脚がゲートに向かったのよ。入るのが、当たり前だって。今思うと不思議な感覚だったわ。で、9番をちらっと見たら、上に人が乗ってた。うん。そう。ゴールドシップ、テイオー、会長さん、マックイーン。彼女たちと同じなのかな?多分だけどね。

 

 なんっていうか…その。上に乗っている人から感じた感情はその。すごく、愛おしそうだった。

 

 うん。それに、その、馬のほうも、なんかすごく信頼しきっている感じがしてさ。ちょっと、良いなって思っちゃった。

 

 それで、彼ら…って言って良いのかな。こっちを向いたんだ。

 

 ―走ろうか―

 

 そう言われた気がしたんだ。だから、アタシも頷いて前を向いた。それで…少しの静寂の後。

 

 ガチャン!って、ゲートが開いたの。その時は不思議と負けたくないなって思ってて、思いっきり地面を蹴ったんだ。

 

 ゲートから飛び出たアタシの前に広がっていたのは、とても広い草原だった。そう。草原。レース場でもなくて、河川敷でもなくて、ダートでもなくて。青々とした草原がずーっと広がっていたの。思いっきり走っても、先が見えないくらい広大な草原が。

 

 それで、ちらっとその馬を見たんだ。そしたらね。

 

 まるで弓のように弾き飛んでいくの。まるで此方を見ていない。すごい勢いで、どんどん、どんどん、加速していったんだ。気づいたら、その背中がみるみるその草原に消えていってさ。

 

 その上には、虹が出てた。まるで、祝福されてるみたいに。その姿に、思わず見惚れちゃった。なるべく、長くそれを見ていたいって、アタシも必死に脚を動かしたんだけど、でも、どんどん、どんどん、その背中は草原の先に小さく、小さくなっていく。

 

 …気がついたら、また、真っ暗な河川敷に立ってたの。他のウマ娘たちはもう居なかった。もちろん、ゲートもなかった。星明かりがアタシを照らしているだけ。

 

 それでね。我に返ってウマホで時間を見たら、0時40分っていう時間だった。あ、いけない。遅くなりすぎたって思って、急いで学園に戻ったの。

 

 

 っていう話。ま、信じるか信じないかはトレーナーさんにまかせるよ。

 

「ネイチャ!何してんのー!そろそろ行かないと!」

 

 あ、うん!わかったよ、テイオー!

 

「あ!ごめん!トレーナーと話してた!?」

 

 ううん。大丈夫。すぐに行くから、先に行ってて!

 

「うん!判った!じゃあ、先にお披露目いってるよー!」

 

 あはは。うん。よし。…じゃ、そろそろ行くとしますか。

 

 うん。大丈夫。

 

 だって、トレーナーさんはアタシを信じてくれているんでしょ?

 

 そうだよね。アタシは、トレーナーさんの自慢のウマ娘なんだから。

 

 じゃ、星を掴み取ってくるね。トレーナーさん。




『フォルスストレートを抜けて最後の直線にウマ娘たちが入る!おおっと!ここで飛び出したのはトウカイテイオー!しかし、ここロンシャンの直線は長いぞ!スタミナが持つのか!残り3ハロン!さあ単独で逃げるトウカイテイオー!しかししかし、海外のウマ娘たちも追いすがる!その背中に迫る迫る!』

『おおっと!?ここで動いたぞナイスネイチャ!重いバ場をもろともせずに!バ群のど真ん中を割って凄まじい末脚で一気に駆け上がる!残り1ハロン!勝利の栄光は誰の頭上に輝くのか!』
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