3時の怪   作:灯火011

8 / 8
その星が、託した先は

 や、トレーナーさん。どうしたの?

 

 緊張しているかって?そりゃあ、もちろん。緊張しないわけがないって、こんな大舞台。

 

 うん。そうだね。頑張ったもん。トレーナーさんと、アタシ。二人三脚で。

 

 あ、そうだ。ちょうどいい機会だからさ、少し、話、聞いてくれる?

 

 ほら、ちょっと前に話題になったじゃない?3時の怪っていう怪談話。そうそう。キラキラしてるテイオーとかが体験したっていう。

 

 実は、アタシもね。それ、体験してたんだ。

 

 

 ほら、懐かしい話なんだけどさ。トレーナーがアタシのことをスカウトして少し経った後に、商店街からのみんなの手紙を届けてくれた時のこと、覚えてる?今の道を進むって決めた、あの時のこと。トレーナーさんは覚えてるかな。

 

 そうそう。「なんだよ三着って!」って叫んだとき。…って、あー!思い出したら恥ずかしくなってきた!って、トレーナーさんも笑わないでよ!まったく!

 

 それでさ、その夜。アタシ、舞い上がってて寝れなかったんだ。それで、実はフジさんの目を盗んでちょっと河川敷に走りに行ってたの。

 

 えへへ、驚いた?トレーナーさんでも知らなかったでしょ?ま、でも、あとでバレてものすごい怒られたんだけどねぇ。あははは…。え?あ、もちろん今はしてないわよ?その点は心配しないでよ、トレーナーさん。

 

 で、話を戻すけどさ。河川敷には他の学園の子とか、入る前の子とか、あとは趣味で体を鍛えている子とかがいて、その中に混じって練習していたの。数は多くなかったけど、今思えば…学園で見た顔もいたかもね。

 

 それでね。トレーナーさん。丁度、12時…そう、日付が変わって少し経って…ぐらいだったと思う。

 

 急に、発バ機の音が響き渡ったんだ。

 

 え?って思って、振り返ったの。そしたら。

 

 そこにあったのは。真っ青な青空。その下に、アタシたちが使う発バ機よりも大きなやつが置いてあってさ。うん。そう。深夜だったのに、急によ?

 

 最初は疲れて河川敷で寝ちゃったかなって思ったのよね。でも、しばらくその場で佇んでいたんだけど何も起きなくて、途方にくれちゃって。

 

 そうねー。不思議と怖くは無かったのよね。今思っても不思議なんだけどさ。

 

 それで、さ、やっぱり気になるじゃん。こんなところに発バ機があるって何?それで近づいていったんだけど、その、なんにもなかったの。

 

 そ、なんにも。本当に、大きな発バ機が置かれていただけだったんだよねぇ。そ、拍子抜けよね。うーんって思って、じゃあ、どうやって起きようかなーとか考えながら周りを歩いてみたりしていたんだけど、そうしたらまた。

 

 ガチャンって大きな音がしたのよね。もちろん、振り返ったわ。

 

 そうしたら、居たのよ。噂の、四足の何か。確か…「馬」?だったっけ。そ、馬。四足で、キリンみたいな顔をしているっていう。…それそれ!いやぁ、今見てもゴールドシップの書いたイラスト、再現度たっかいわぁ。

 

 うんうん。で、その馬が発バ機に収まっていたの。それでね。呆気に取られていたアタシを迎え入れるように、発バ機が開いたのよね。

 

 そ。確か…この前の有マ記念と一緒の12番だったと思う。そうそう、毎度おなじみ三着!…って、何言わせるのよ、トレーナーさん!

 

 でも、その時はなんで12番っていう番号だったのかはもちろん判らなかった。ちなみにね、その馬は9番だったの。

 

 そうなのよねー。今までの馬の話ってさ、なんっていうか、見た本人の経験とかち合う、はずなんだけど…。まだ、9番っていう枠番はアタシの経歴にはないでしょ?今日のレースだって、それじゃないし。

 

 それでねトレーナーさん。その時は何にも思わなかったんだけど、自然と脚がゲートに向かったのよ。入るのが、当たり前だって。今思うと不思議な感覚だったわ。で、9番をちらっと見たら、上に人が乗ってた。うん。そう。ゴールドシップ、テイオー、会長さん、マックイーン。彼女たちと同じなのかな?多分だけどね。

 

 なんっていうか…その。上に乗っている人から感じた感情はその。すごく、愛おしそうだった。

 

 うん。それに、その、馬のほうも、なんかすごく信頼しきっている感じがしてさ。ちょっと、良いなって思っちゃった。

 

 それで、彼ら…って言って良いのかな。こっちを向いたんだ。

 

 ―走ろうか―

 

 そう言われた気がしたんだ。だから、アタシも頷いて前を向いた。それで…少しの静寂の後。

 

 ガチャン!って、ゲートが開いたの。その時は不思議と負けたくないなって思ってて、思いっきり地面を蹴ったんだ。

 

 ゲートから飛び出たアタシの前に広がっていたのは、とても広い草原だった。そう。草原。レース場でもなくて、河川敷でもなくて、ダートでもなくて。青々とした草原がずーっと広がっていたの。思いっきり走っても、先が見えないくらい広大な草原が。

 

 それで、ちらっとその馬を見たんだ。そしたらね。

 

 まるで弓のように弾き飛んでいくの。まるで此方を見ていない。すごい勢いで、どんどん、どんどん、加速していったんだ。気づいたら、その背中がみるみるその草原に消えていってさ。

 

 その上には、虹が出てた。まるで、祝福されてるみたいに。その姿に、思わず見惚れちゃった。なるべく、長くそれを見ていたいって、アタシも必死に脚を動かしたんだけど、でも、どんどん、どんどん、その背中は草原の先に小さく、小さくなっていく。

 

 …気がついたら、また、真っ暗な河川敷に立ってたの。他のウマ娘たちはもう居なかった。もちろん、ゲートもなかった。星明かりがアタシを照らしているだけ。

 

 それでね。我に返ってウマホで時間を見たら、0時40分っていう時間だった。あ、いけない。遅くなりすぎたって思って、急いで学園に戻ったの。

 

 

 っていう話。ま、信じるか信じないかはトレーナーさんにまかせるよ。

 

「ネイチャ!何してんのー!そろそろ行かないと!」

 

 あ、うん!わかったよ、テイオー!

 

「あ!ごめん!トレーナーと話してた!?」

 

 ううん。大丈夫。すぐに行くから、先に行ってて!

 

「うん!判った!じゃあ、先にお披露目いってるよー!」

 

 あはは。うん。よし。…じゃ、そろそろ行くとしますか。

 

 うん。大丈夫。

 

 だって、トレーナーさんはアタシを信じてくれているんでしょ?

 

 そうだよね。アタシは、トレーナーさんの自慢のウマ娘なんだから。

 

 じゃ、星を掴み取ってくるね。トレーナーさん。




『フォルスストレートを抜けて最後の直線にウマ娘たちが入る!おおっと!ここで飛び出したのはトウカイテイオー!しかし、ここロンシャンの直線は長いぞ!スタミナが持つのか!残り3ハロン!さあ単独で逃げるトウカイテイオー!しかししかし、海外のウマ娘たちも追いすがる!その背中に迫る迫る!』

『おおっと!?ここで動いたぞナイスネイチャ!重いバ場をもろともせずに!バ群のど真ん中を割って凄まじい末脚で一気に駆け上がる!残り1ハロン!勝利の栄光は誰の頭上に輝くのか!』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

本当は怖いウマ娘プリティダービー(作者:電動ガン)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

与太話と本当に言えるか?力の強い女の子との付き合い方。


総合評価:811/評価:7.89/完結:17話/更新日時:2026年05月04日(月) 12:07 小説情報

目無し足無し夢も無し 心を救う永遠の帝王(作者:ルシエド)(原作:ウマ娘プリティーダービー )

 アニメの少し、あるいはずっと後の、運命としか言えない出会いの話。▼ エゴン・シーレ曰く、『芸術とは根本的に永遠である』。▼ 一度目の骨折。▼ トウカイテイオーは無念の無敗二冠に終わった。▼ 二度目の骨折。▼ トウカイテイオーは無敗ですらなくなった。▼ 三度目の骨折。▼ そして、トウカイテイオーは伝説になった。▼ 四度目の骨折。▼ その後に。▼ かくして、ト…


総合評価:20637/評価:9.38/完結:25話/更新日時:2021年07月16日(金) 08:13 小説情報

強めのモブウマ娘になったのに、相手は全世代だった。(作者:エビフライ定食980円)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

トウカイテイオー育成中に、シンボリルドルフが「やあ」ってシナリオの脈絡に関係なく目標レースに出てきたことで思いついた物語です。▼これは怠惰に生きようとしたオリウマ娘が『3億円』を稼ぐためにトゥインクル・シリーズに挑戦したら、相手になる世代が全ウマ娘だった話。


総合評価:30092/評価:9.01/完結:90話/更新日時:2022年03月09日(水) 20:06 小説情報

【完結】閃光と隼と風神の駆ける夢(作者:そとみち)(原作:ウマ娘プリティーダービー)

有マで勝利したハルウララを見送ってきたトレーナーが、新しい世界線でまた運命に出会うお話。▼今回の世界線は、どうやらいつもと事情が違うようです。▼※前作のトレーナーのループ後のお話です。前作を一読してから読んでいただくのをお勧めします▼↓前作▼ハルウララ ~有馬突破のキセキ~▼https://syosetu.org/novel/285729/▼※2023/3/…


総合評価:26444/評価:9.29/完結:196話/更新日時:2023年03月31日(金) 20:00 小説情報

羂索の目論見を破綻させる、天元渾身の一手(作者:金鳥)(原作:呪術廻戦)

▼ 呪術廻戦の二次創作読んででそういえばあの時こうしてたら諸々の問題解決したのでは?と思ったので書いてみました。▼ 駄文です。


総合評価:3046/評価:8.33/短編:4話/更新日時:2026年05月04日(月) 13:28 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>