栄養等を考え抜かれた食事をモグモグしながら、俺は絶望の未来をどう乗り越えるのか思考していた。
この世界はおおよそ平和である。何せ二度の世界大戦ですら、民間人の死者は零。軍人さんの死者は数百人程度で死因は病気や事故である。
世界中の多くの軍人さん達は、「如何なる理由があれ、民間人に危害を加えるのは外道。外道に慈悲はない即座に処理する」が標準思考の誇り高き方々。
上から下までそんな軍人さん達なので、東京大空襲や原爆投下も無かった。
民間人に危害を加える犯罪者やテロリスト絶対許さんマンな軍人さんは、軍隊vs軍隊の戦争時には実弾等は使わずに大規模模擬戦闘と競馬で決着を付ける。
実弾等を使わない理由は「軍人の使命は国家国民の守護であり、同じ使命を全うする者と殺し合ってどうする」という認識だからである。
血が一滴も流れない大規模模擬戦闘だから、世界中のメディアがその光景を放送するし、最後に決着を付ける競馬は世界中が熱狂する。
そう──模擬とは云え、国家の未来を賭けた戦いの決着の付け方が、おウマさん達の競争なのだ。
とちくるってませんかね。この世界は?
日清戦争の時は、清最強の戦艦馬である
日露戦争では、バルチック艦隊馬相手に旗艦馬三笠率いる連合艦隊馬が奮闘した。
それ以降も、様々な名を名付けられた馬達は、国家の威信と未来を背負って走ったのだ。
んで、戦艦馬とか空母馬てナニ? 戦車馬てなんですか? 航空機馬? ちょっとナニ言ってんのかわからないですね?
そもそも、国家の威信とか未来とかを馬に背負わせないで?
マジでイカれてませんかね。この世界??
そして、俺はやんごとなき血筋である。
俺に流れる血を知れば、日本人は感涙し、外国の方々は驚愕する事は間違いなしの凄まじい血統。
日清戦争で大活躍した松島。
バルチック艦隊旗艦馬を破った三笠。
偉大な七頭として讃えられた長門。
健康に難があったが、それでも幾度の激戦を征した山城。
アメリカ海軍馬を相手に、大日本帝国海軍馬の意地を見せ付けた武蔵。
彼等の血が俺に流れているのだ。
元々は平々凡々な一般日本人の俺は、気が付いたらおウマさんに生まれ変わっていた。
只の馬ではなく、日本の誇りと意地と未来を賭けた戦いに否応無しに駆り出される馬としてな!!
時は平成。日本は戦争しないしイージーモードやんと思うかもしれない。しかし、この世界は戦争が簡単に起きる。
何せ、人が死なないエセ戦争。エンタメとしても最高の見せ物であり、外交が拗れたら「なら、戦争で決着着けようぜ」とアッサリ始まったりするのだ。
実際に俺の父親であり現在の旗艦馬。むらくもがロシアとの貿易関係の交渉が拗れたせいで出兵ならぬ出走に駆り出されている。
つまり、俺が2歳馬になり走れる様に成ったら、背負えるわけ無いモノを背負わされて、出走するかも知れないのだ。
嫌だ。そんなモノ背負えるわけがない。
勝てれば良い。でも、負けた場合、沢山の日本人が苦しむかもしれない。キツい。キツすぎる。
競馬の事を全く知らない俺が、なんでこんな立場に成ってるんだろう。
誰かぼすけて。
幼名ソウ。戦艦馬名はカミカゼを名付けられる事に成る彼は知らない。
国内の競馬で、経験積みと称して競走馬として出走する未来を。
偉大なる旗艦馬の血統故に、活躍して当たり前。もしかしたら無敗三冠もやれるかも知れないと思われている現実を。
そして、彼の同期には、かの英雄。深い衝撃が存在する事を。
光の無い暗い目で、食事をモグモグしている彼は、まだ、何も知らなかった。
衝撃をギンシャリに置き換えてもよし。
色々と妄想して貰えたら嬉しいです。