なお、作者の競馬と馬知識と政治と軍事知識はニワカ以下です。ご了承下さい。
おウマさんとして生を受けて一年が過ぎようとしています。
夜間放牧とか寒い冬の夜に放牧とか止めて貰えませんかね。暖かな部屋でゆっくりと眠りたいんですよ。俺は。
しかし、おウマさんは人間よりも遥かに良い生活をしてるんやなて。
朝にお医者さんが健康チェックしてくれて、豪華な朝食を食べる。それから、気儘に牧場のコースを走り回る。
昼は、栄養価を考えられた食事をモグモグ食べて、お昼寝して、起きたら好き勝手にコースを走る。
夜はまたお医者さんに健康チェックしてもらって、晩御飯をモグモグしたら温泉へゴー。
週に一度。血液検査や骨身密度測定とかして、病気や怪我をしてないか徹底的に調べてくれる。
本当に前世よりも良い生活をしてますよ。
ちなみに、俺の父親むらくもは負けてしまいました。
厳密に言うと、ロシアの旗艦馬であるアドミラル・クズネツォフには勝利した。しかし、その後直ぐに中国と戦争が勃発。ロシア相手に勝利したが疲弊していた日本軍は中国に大規模模擬演習で惨敗してしまったらしい。
その結果。中国軍馬に超有利なレース設定を押し付けられた日本軍馬達は、斤量80キロを背負って苦手な距離を走る羽目に成ったんだとか。
要するに短距離が得意なウマは中長距離を、中長距離が得意なウマは短距離マイルを走る羽目になったそうです。ロシア軍馬相手に激戦を繰り広げ、疲弊しきった状態で。
レース結果は当然のように凄惨な結果に。一着とハナ差で負けたのは父親だけなんだそうです。後は掲示板にすら載れなかったそうな。
苦手な短距離で斤量80キロを背負い二着と言う結果は、日本軍馬の意地と誇りを世界に魅せつけたと担当の厩務員さんが泣きながら言ってました。
でもね、その後「お前も、むらくもの様な立派で偉大な旗艦馬に為るんだぞ」なんて無茶振りをしてきたんですよ。無茶を言い寄る。前世が一般人の社畜に出来るわけ無いでしょ。常識で考えて欲しい。
まぁ、とにかく、日本は中国に負けた。その結果、中国から輸入しているレアメタルを通常の二倍の価格で向こう五年間購入しなければならなくなったらしい。
厩務員さんの話では、最初の要求は尖閣諸島と沖縄の譲渡だったらしいが、台湾と韓国。そしてアメリカとドイツがぶちギレて「今すぐそのフザケタ要求を取り下げろ。ぶちのめすぞ?」と発言してくれたから、要求が変わったそうです。
前世の世界では韓国は日本嫌いだったから、違和感があるけど、この世界の韓国は日本好きぽいんですよね。韓国軍の御偉いさんが俺に会いに来て、涙を流しながら「おお・・・・・・武蔵だ。武蔵の面影がある」とか「三笠の様な知性溢れる目をしている。この子は賢いウマになる」とか「走りはまるで長門だ。きっと先行が得意で王者の走りを魅せてくれるに違いない」とか「山城の様な健康難が心配だったが、これだけ元気なら心配は無さそうだ。山城の様な日本を代表するウマに成ってくれ」とか好き勝手に言ってたから。
本当にもうね。皆は好き勝手に言ってくれるのよ。
アメリカ軍の御偉いさんとかドイツ軍の御偉いさんとか、わざわざ俺に会いに来て、口々に言いたい事を言って帰っていく。
走るのは楽しい。けど、レースを走れるようになったら・・・・・・父親の様に背負えるわけがないモノを背負わされて走るのだ。
レースはイヤだ。断固拒否したい!
俺に拒否権が無いのが本当に辛いです。
誰か助けて。早く助けて。
中国軍にとって、突然の日本との戦争は驚きと戸惑いしか無かった。
何故なら、日本軍はロシアとの激戦で疲労しきっている状態。日本軍馬も同様に疲れきった状態だった。そんな状態の相手に戦争を仕掛けるのは、軍人として絶対に有り得ない事だったからだ。
軍人にとって戦争とは、お互いが万全の状態で、可能な限り平等な条件で行われるものであり、疲弊しきった相手に不意討ち同然に仕掛ける事は恥じでしかない。だからこそ、中国軍上層部は国家首席であり総指揮官に当然の如く抗議した。しかし、外交筋が功を焦って吹っ掛けてしまった戦争は止まらなかった。止められなかった。
全国人民代表大会を通さずに始まってしまった戦争は、宣戦布告後に「卑怯なのでやっぱり辞めますね」なんて言って取り止める事はできなかった。
かと言ってわざと負けるなんて選択肢は有り得ない。卑劣なタイミングで戦争を吹っ掛けておいて勝ちを譲る真似をすれば、怒った日本にどんな要求をされるかわからない。
だから、中国軍は勝つしか無かった。通常なら精強で粘り強い日本軍がドンドン追い込まれ惨敗する様は中国軍にとって涙が滲み出る程に情けなく、自身の誇りを著しく傷付け損なう光景だった。
自分達は国を国民を守る為に武器を握った。しかし、今、自分達は何をしている? 自分達と同じ使命を背負ったボロボロの同士を一方的に攻撃しているだけだ。こんな事をするために武器を取ったわけじゃない。辛く苦しい訓練を積んできたわけじゃない。
そう慟哭したい衝動を押さえながら日本軍に勝利した。
そして、中国軍は更に絶望し、心の中で慟哭する事になる。
中国政府の一部が欲に駆られ暴走。突然の戦争にドタバタしている騒動の中で無理矢理に意見を押し通し、絶対に有り得ない条件を日本軍に突き付けたのだ。
出走する軍馬の苦手とする距離、適正の無い芝・ダートを走らせる。斤量は80キロ。
有り得ない。余りにも恥知らずなレース設定。
軍馬とは、軍人にとって絶対の誇り。
特に、戦車や航空機に軍艦の名を名付けられた軍馬は、己の命よりも大切な特別な存在。
そんな存在が実力を発揮できない様に仕向けるのは屈辱でしかない。斤量80キロなんて故障しても可笑しくはない物を背負わせるなんて有り得はしない。
しかし、軍人は政府の決定に逆らえない。流石に民間人を虐殺しろと命じられたらクーデター一直線だが、一応は国際ルールに添った――勝者の権利として認められている範囲のモノに異議を言えても、逆らう事はできなかった。どんなに恥知らずなモノだとしても。
実力を全く発揮できなかった日本軍馬達は一頭を除いて惨敗した。
こうして、中国軍は、日本軍に完全勝利した。
完全勝利に調子に乗った一部が、勝手に日本にフザケタ要求をしたが様々な国の抗議にビビり要求を取り下げる場面もあったが、国家首席が強権を振るい無難に収めてみせた。
中国国家首席であり中国軍総指揮官は、この日の勝利を"中国史上最も恥ずべき勝利"と公式に発言し、綱紀粛正に力を入れる事を声明した。
続かない。