白石競走記   作:華燈始

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1.黒い白石

トレセン学園。

在籍するウマ娘達が、トレーナーと共に自らの夢、目標、憧れへとたどり着くための場所。

多くのトレーナーが未来あるウマ娘達と契約をかわし、それぞれの目標へと歩みをはじめてから数日が経過しようとしていたある日。

トレセン学園内に設けられたいくつかのレース施設の一つである、この中距離用レース場では、例年類を見ないほどの盛り上りを見せていた。

それもそのはず、今から数名のウマ娘達によって模擬レースが行われるのだ。

なぜただの模擬レースでこんなにも多くの人や、ウマ娘が沸き立っているのかというと、地方からやってきたという転校生がこの模擬レースに出走するからである。 彼女の走りを、ウマ娘と契約できなかったトレーナーや、これから闘うことになるライバルの実力を一目、収めておこうと考えたウマ娘などが観戦のためにレース場のまわりに押し寄せたのである。

 

集まった人々によって、ざわざわと多くの話し声が響くなか、スターターピストルの引き金が引かれ、芝2400m の模擬レースが開始された。

レース展開は序盤から中盤、二人のウマ娘が逃げで先頭を争い、他の三人が三バ身程離れたところでほぼ並びながら先頭を追う。 噂の転校生は、そのさらに二バ身程後ろで最後尾を走っていた。

レース展開が動いたのは、先頭集団が最終コーナーをまわりはじめた終盤、先行策をとっていた三人のウマ娘の速度が目に見えて落ち始めると、それに変わるように後方で待機していた転校生が前へと躍り出た。

そのままじりじりと逃げている先頭二人の後ろに追い付くと、転校生は大外をまわらずに、二人の間を押し広げるかのように突っ切り、一着で模擬レースを終えた。

 

レース場外ではざわめきのような声がおきる。

それもそのはず、終盤不信とも言えるような失速をした三人に、後ろからいっさい外にまわることなく真ん中を通り抜けるという滅茶苦茶な走りを見せた転校生。

多くのトレーナーの口からは ヤラセか? だの、 こんな走りがあるか! だのさまざまな雑言が飛び交うがしかし、観戦にきたウマ娘達やそれと契約を結べた実力のあるトレーナー、多くのレースを見てきた経験のあるトレーナーなどは口を揃えてこう言った。

 

面白いウマ娘だ

 

と。

前者と後者では転校生の映り方が違っていたのだ。

後者がレース終盤で感じたのは、後ろから追い上がる転校生から発せられた鋭い視線に威圧感。そして、先頭の二人を追い抜いた時に見せた驚異的なパワーに根性。2400mを難なく走りきるだけの豊富なスタミナ。

彼女はステイヤーとしての素質を十二分に持ち合わせていた。

この先、彼女がどのようなトレーナーと共に歩み、走り、成長していくか。また、将来的に自信や自分の担当するウマ娘の障壁になり得るか。

このレースで彼女は自らが持つ可能性を一部にではあるが示したと言えよう。

 

春の穏やかな風に揺れる真っ黒の髪は、走りきった後だが汗をほとんどかいておらず、余裕ある顔で一緒に走ったウマ娘達と談笑をしている。

 

彼女の名は“シライシ”。

今この場所で、黒い白石が掘り起こされた。

 




アニメを未視聴なので、アプリの世界観で書いているつもりです。
競馬についてもあまり知識がないので勉強しながら書いていきたいと思います。
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