白石競走記   作:華燈始

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シライシ視点に戻ります。


14.腕相撲

雨の降る回数がだんだんと増えてきて、水溜まりを見る数も多くなると、室内トレーニングの割合が多くなってきた。

 

今日はマックイーン、ゴールドシップと共に室内トレーニング上でメニューを消化している。

雨で外の施設が使えないということもあり、トレセン学園の広い室内トレーニング場は少し混雑気味だ。

なので、どのトレーニング器具もある程度の時間使ったら他のウマ娘にかわらなければならず、休憩という名の待ち時間の割合がいつもより多めだ。

 

ベタつく汗をタオルで拭き取り、水分補給をしているとベンチプレスを使っていたゴールドシップが駆け寄ってきて

 

「なあなあ! 腕相撲しようぜ! 」

 

と唐突に勝負を申し込んできた。

「どうしたの、急に? 」と返すと

 

「ゴルシちゃんは気まぐれ乙女だから理由なんてお家のタンスに置いてきたのよ! それに、他にも暇してるやつら誘えば盛り上がりそうだろ? 」

 

となぜかお嬢様口調を交えてそう語った。

私としてはマックイーンの意見も聞いておきたいところだが、彼女はちょうどルームランナーに乗ってしまったところだった。

少し考えた末、まぁいいだろうとゴールドシップの提案にのることにした。

 

「それじゃあ、まずはアタシとシライシからな 」

 

ということで、私とゴールドシップはベンチの上に右腕を置いて

 

「レディー……ファイト! 」

 

ゴールドシップの掛け声で腕相撲をスタートさせた。

 

彼女の腕に力が入り、私の腕が少し傾いたがすぐに押し返して元の位置に戻す。そこからは一歩も譲らない攻防戦で、左右に多少傾きかけるがすぐに持ち直して反撃するという接戦を繰り広げた。

お互い息があがりはじめ、持久力戦に持ち込まれるかと思った矢先、ゴールドシップが一気に力を入れ、私はじりじりと押されはじめた。

なんとか返そうとしたがさっきまでとは変わって彼女は私の反撃を寄せ付けず、そのままゴールドシップが勝利した。

 

「はぁ…はぁ…おっしゃぁ! ゴルシちゃんの大勝利だぜ! 」

 

彼女の勝利宣言がトレーニング室に響き渡り、いつの間にか休憩していたマックイーンに「静かにしなさい! 」と怒られていたが、彼女は両手でピースサインをつくって、子供のようにはしゃいでいた。

 

天は二物を与えずというが、才能のある人はやっぱり何をやらせても上手くやるものだと痛感した。

その後は空いた器具に入りつつ、休憩時間に何人かのウマ娘と腕相撲をして時間を潰しながら今日のトレーニングを終えた。

 

私の勝率はあまり芳しくなかったが、ゴールドシップは全戦全勝で締めくくり、終始圧倒的な試合を繰り広げていた。

 

 

家に帰って、シャワーで汗を流し終わるとインターホンがなったのでドアを開けると管理人のおばちゃんがハンバーグを作って持ってきてくれたのでありがたく頂戴し、今日の晩御飯にした。

お風呂、食事に今日出された課題とやることを全て終わらせてベッドに入る。

最近はよく寝る前に考え事をするようになった。

はじめのうちはなかなか寝つけなかったため、どうでもいいようなことを考えていたのだが、ここのところは毎日の習慣のようになり始めている。

近頃考えているのは《シリウス》のことだ。

ゴールドシップも、マックイーンも素晴らしい才能と能力を持っている。そして二人ともGⅠのホープフルステークスという高い目標に向けて彼女達なりに努力している。

そのチームに…私は必要なのだろうか?

 

ハイレベルなステージで闘おうとしている二人対して、私はGⅡにすら勝てないような実力しか持っていない。

私は二人の足を引っ張っているのではないか。

 

毎日、毎夜考えても相変わらず答えは出せていないが、どうしようもなく不安に思ってしまう。

この日も結局、結論を出すことができず眠りに落ちてしまった。

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