白石競走記   作:華燈始

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18.三女神の像

雨が減り、夜でも蒸し暑くなるような日が増えてきた。

外での走り込みや、他チームのウマ娘達との模擬レースも増え、マックイーンとゴールドシップは本格的にホープフルへと動き出している。

だが、私だっていつまでも二人に置いていかれている訳じゃない。 “自分の目標”をたててそこに向けて毎日トレーニングをしている。

そして、《シリウス》のメンバーとしてはじめてのレース出走も決まった。

8月に行われる札幌記念だ。

いきなりのGⅡ出走に戸惑いがないわけではないが、公式レースはまだ未勝利戦しか走ってない二人がGⅠに出るんだ。それと比べたら対したこと無い。

何より、昔と違って今の私は誰にも負ける気は無いのだ。どんなウマ娘が立ちはだかろうとも、立ち止まる訳にはいかない。

 

私の夢はGⅠウマ娘になることだ。

 

 

 

※※※

 

「……速くなったな 」

 

一心不乱にターフを駆け抜ける彼女の姿を見て、思わず言葉がこぼれた。

やっぱりゴルシ様の目に狂いはなかったんだと確信する。

 

それにしても、マックイーンは上手くやってくれたものだ。

彼女がいなかったら……アタシじゃあれ以上どうしようもできなかっただろう。

こんなに面白いヤツとおさらばしそうだったなんて、考えたくもないな。

兎も角、マックイーンにシライシ、この二人とアタシは同じチームでもいずれ絶対闘うことになるだろう。もしかしたら三人で一つのレースに出ることだってあるかもしれない。

 

いつの話になるかはわからないが、そういう事を想像してると……無意識のうちに口角があがってくる。

「しばらくは退屈しなさそうだな 」

 

 

 

※※※

 

「ふぅ 」

 

と一息ついて額の汗を拭う。

ここのところ気温が真夏並みに高いため、外でのトレーニングはなかなかにハードだ。

今日なんて、トレセン学園の外周を何度も何度も走って、ジャージは汗でずぶ濡れになっている。

マックイーンは途中でサボってどこかに行ったゴールドシップを探している。 私も手伝おうかと聞いたが、彼女は自分の手で見つけ出して、今日という今日はきっちり反省させると意気込んでいた。

なので私は一人、部室へと戻っている最中な訳だが

 

「━━━━━━ 」

 

はて? 辺りには誰もいないはずなのだが、どこからか声が聞こえる。

茂みの中に中等部のウマ娘が隠れて、イタズラでもしているのかと思ったが、どこにもそれらしき姿はない。

「━━━━━━━ 」

 

こうやって探している間にも、主の見当たらない声は聞こえてくるのだ。

近辺をくまなく探しまわっていたところで、どういう訳だか私の目がピタリと引き付けられた物があった。

 

「…三女神の像……? 」

 

それは、トレセン学園の校舎前に置かれている三女神の像だった。

石像が声を出すなんてあり得ない。 そう思った瞬間━━

 

「!!?━━ 」

 

目の前がまばゆく輝く白い光に包まれ、私はとっさに目をつぶった。

 

 

 

※※※※※

 

ここはどこだろうか。

手足は動かすことができず、目も開かない。暑さや寒さも感じない空間でふわふわ浮かんでいるような感覚だ。

 

「━━━━━━━ 」

 

さっきまで聞こえていた声が、今度は耳元でする。

相変わらず何を言っているのかわからないが、なんだか懐かしい声のような気がする。

 

「━━━━━━━ 」

 

一体、誰の声なのだろうか。聞いてみたくても声を出すことができない。

 

「━━━━━━━ 」

 

なぜだろう。 この声を聞いていると、知らないうちに目から涙がこぼれてくる。

 

「━━━━━━━ 」

 

もっと一緒にいてほしい。 そう思ったが、また眩しい光が現れて、意識が遠のいていく。

もしかして…この声の主は………

 

 

 

※※※※※

 

ハッと意識が舞い戻る。

確かさっきまで、どこからか声がしてその主を探していたはず……。

その後にも何かあった気がするが、なんだったか思い出せない。ただ、とても不思議な体験をしたような…それに、なぜだか身体中から力がわいてくる。

今までじゃ考えられないような力が。

原因不明のパワーアップに喜んでいると、不意に右の頬を熱いもの何かがつたっていった。

「…あれ? なんで涙なんて…… 」

 

すぐに拭き取ったらもう流れてくることはなかった。目にゴミでも入ったのだろうか。

なんだか今日は可笑しな日だ。

 

 

 

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