白石競走記   作:華燈始

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20.母

カーテン越しに部屋を照らす太陽の光と、鳥達のさえずりによって目覚ましより早い時間に目を覚ました。

実家にいた時は、目覚まし時計よりはやく起きるなんてざらにあったのだが、都会に来てからは今日がはじめてだ。

二度寝をするような時間でもないため、両手をぐっと伸ばしてからベッドを出た。

 

テーブルには、昨日母から送られてきたヘアピンが置かれている。 小さい頃に気に入ったものと言うだけあって、今見てもよく作られてると感心する。 いくらくらいしたのだろうか。

 

あの人の父方の家系は、代々レース場の運営などに携わっていたため、なかなか裕福だったと記憶している。

あの人のお気に入りのクシだって、確か8000円ほどしたはずだ。 そう考えると、このヘアピンも結構なお値段かもしれない。

壊してしまわないか心配だ。

 

 

※※※

 

朝食を取り終え、顔を洗って髪を整えると時計の針は8時をまわっていた。

田舎の人達は起きるのがはやいし、さすがにこの時間なら寝ていることはないだろうと、母の携帯に電話をかける。

 

プルルル……プルルルと2回呼び出し音が鳴ると、母の携帯へつながった。

 

『おはよう、あんたが電話かけるなんて珍しいねぇ 』

 

と母が話す。

母の言うとおり、こっちに来てから一度も連絡をとってないかもしれない。

 

「うん、野菜ありがとうね。 それで聞きたいことがあるんだけど 」

 

『わかってる。 一緒に入れておいたヘアピンの事でしょ? 』

 

母の方も私が聞いてくるのをわかっていたらしい。

だったら手紙でも一緒に入れておけばいいのにと、言ってみたが

 

『こうすればあんたの声が聞けるでしょ? 』

 

と返されてしまった。

なかなかの策士である。

 

話が脇道に逸れたので、本題に戻そう。

 

『そのヘアピンはねぇ、この前奥さんがくれたのよ。あの子の部屋で探し物してたら見つけたんだって。 そのヘアピンが入ってた箱にあんたに渡すようにって書いてあったからってね 』

 

奥さんというのは、あの人のお母さんのことだ。

なるほど、そういった経緯で母の手元にあった訳か。

 

「ところでこれ、いくらくらいするの? 」

 

『現金な子ねぇ。 奥さんがそのヘアピンをくれた時、こんな高そうなもの勿体ないですよって言ったら、あの子が小学生の時にお小遣いで買ったものだから、大した値段はしませんよって言ってたわよ 』

 

「ふーん 」

 

さっきも話した通り、あの人の家は裕福だ。 そのため、あの人も奥さんも金銭感覚が常人とは確実に違うのだ。

そして、私は小さい頃にあの人からお小遣い自慢を何度か聞かされたことがある。

詳しい金額は覚えていないが、あの人は小学生の頃から1万と数千円を自由に使えるお金として持ち合わせていたはず。

 

母とはそれから少しだけ、とりとめの無い会話をし電話をきった。

結局、このヘアピンの価値はわからずじまいだったが、あの人からの貰い物だと思って、大切に扱おう。

そう心に誓ったのだった。




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