白石競走記   作:華燈始

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22.海

「すいませんが、海には行けませんわ。 トレーニングをしなくてはいけないので 」

 

狭い部室のなかで、こだまするように響くのはマックイーンの声だ。 案の定と言うか、私が思っていたとおりに断られてしまった。

さすがのゴールドシップも、こんなにキッパリと断られたらどうしようもできないだろう。 そう思っていたのだが

 

「う…うぅ…うわぁぁぁん 」

 

驚くべきことに、ゴールドシップは嘘泣きをし始めた。 誰がどう見ても嘘だと見抜けるような、バレバレの嘘泣きをしたのである。

 

「アタシは…マックイーンと、海に行きたいのに…うわぁぁん、うわぁぁぁん 」

 

びっくりするほど感情のこもっていないセリフに、漫画などでありがちな涙を拭う仕草、これはさすがに諦めるよう言った方がいいんじゃないかと、肩を叩こうとしたところで

 

「ああ! 泣かないでくださいまし! わかりました! 行きます! 一緒に海に行きますから! 」

 

まさかのマックイーンが折れたのだった。

もしかして……彼女はゴールドシップが本当に泣いていたと思っているのだろうか。 もしそうだとしたら……

いや、言わないでおこう。 彼女は素直で、とてもピュアなだけだ。 それは決して悪いことではない。

将来、誰かに騙されないか少し心配ではあるが……。

 

兎も角、かくして私達三人での外出が決定したのだった。

 

※※※※※※※※※※

 

場面は変わり、海水浴当日。

私達は電車に揺られ、海水浴場へとやってきた。

天気は雲一つない快晴で、まさに絶好の海水浴日和というやつだ。

「よっし! 着替えっぞ! 」

 

と張り切るゴールドシップに連れられて、更衣室へと入る。 休日なだけあって、中は相当な混み具合だ。

私が持ってきた水着は、学園指定の紺のスクール水着だが、そのうえからパーカータイプの白いラッシュガードを着る。

マックイーンが着替えたのは、肌の露出が少ない、ワンピースタイプの黄緑色の水着だ。 彼女の淡い紫色の髪によく似合っている。

驚いたのはゴールドシップの水着だ。 彼女は私服もオシャレなものを選んでいたが、今回の水着も赤くて派手なハイネックビキニに、同じ色のロングスカートと彼女の体型も相まって、海外のスター女優のように見える。

 

「ゴールドシップさん…あなた、服のセンスはいいんですね 」

マックイーンも、彼女のセンスに驚いた様子だったが

 

「ああん!? 服の“センスは”ってどう言うことだよ! ゴルシ様はいつ、いかなる時でもパーフェクトゴルシちゃんなんだぜ?」

 

と返したゴールドシップを見て、服装が違っても中身を変わらないんだなと安心させられる。

 

 

更衣室から出た私達三人は、人の少なそうな場所を探して海水浴を楽しむことにした。

ただ、やはりどこもかしこもこみ合っているため、最終的にはテトラポッドが並ぶ、海水浴場の端っこまで歩くことになった。

その後は、水泳競争や砂の城を作るなどの定番の遊びで楽しんだ。

はじめはトレーニングを優先しようとしていたマックイーンも、終始ゴールドシップに振り回されていたが、その顔ははしゃぐ孫を見るような穏やかで、微笑ましいもので、彼女も今日の海水浴を楽しんでいたのがうかがえた。

帰りの電車では、遊びつかれたのか二人とも身を寄せあって寝ていて、私も仲がいいんだなと楽観していたのだが、下車駅についても二人は目を覚まさないため、一人で二人を担いで電車を降り、そのまま寮へと届けることになった。

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