白石競走記   作:華燈始

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26.勧誘

 

夏の暑さもだんだんと和らぎはじめ、山々を彩る木々の色が、鮮やかな赤や黄色へと移り変わりはじめた。

 

今日は《シリウス》のチーム練習が休みの日なのだが、私達三人はとある理由で部室に集合していた。

事の発端は3日前、私達が普段通りトレーニングを行っていると、マックイーンのもとへ理事長秘書のたづなさんが“あること”を伝えにやってきた。

それは「《シリウス》二度目のチーム解体の危機 」である。

元々《シリウス》は定員割れのため解散予定だったのだが、私が加入したことと、たづなさんのはたらきかけによって猶予期間が設けられていた。

しかし、私がチームに加入してから約4ヶ月。

更なるチームメンバーの増加が見込めないとなると、猶予期間も終了し、チームを解体せざるおえなくなってしまうらしい。

 

要するに、私達はチームメンバーを増やす作戦会議のために本日集まったという訳だ。

 

「メンバーを増やすとなると、誰かをチームに勧誘するわけですが、この時期にチームに加入してくれる人なんているのでしょう? 」

 

眉をひそめ、頭を抱えるマックイーン。

確かに、今頃になってもまだチームに入っていないウマ娘はほんの一握りだけだろう。 そうなると他のチームに入っているウマ娘に移籍を促すことになるのだが…

 

「うちはアタシとマックイーンがデビュー戦1勝づつと、シライシの札幌記念しか戦績がねぇーからな。 移籍したいなんてヤツそうそう出てこねぇーだろうな 」

 

ゴールドシップの言うとおり、移籍するメリットというのは現在、自分がおかれている環境より上のレベルで鍛えたいから行われるのだ。 つまり、うちみたいな実績ほとんど0のチームに移籍を考えるウマ娘なんてまずいないだろう。

 

「ゴールドシップさん。 どうにかなりませんの? 」

 

とマックイーンが泣きつく。

中等部ながらに《シリウス》のリーダーをつとめている彼女としては、ここでチームを解散させるのは心苦しいことだろう。 私としても彼女にそんな思いしてほしくないのだが、いかんせん私は人脈が狭すぎる。 となると必然的に頼れるのは顔が知れているゴールドシップだけになってしまうのだ。

 

「うーん、つってもよぉ。 いくらこのゴルシ様でも流石に今回はどうしようも━━!! 」

 

そこまで言いかけると、ゴールドシップは何かを閃いたようで、カッと目を見開いてポンッと手を叩いた。

 

「一人なら心当たりがあるぜ。 そいつがまだチームに入ってなければだけどよ。 」

 

「本当ですの!? でしたら早速勧誘をいたしましょう! 善は急げですわ! 」

 

マックイーンは大喜びで手をたたく。 それにしても流石の人脈の広さだ。 こんな状況でもあてにできる人物に心当たりがあるとは。

 

早速、私達はゴールドシップの案内のもと、学園の図書室へと向かった。 ゴールドシップ曰く、「アイツなら今日はここにいるはず 」らしい。

彼女が特定の人物の行動パターンまで把握しているのはさておき、扉の向こう側から図書室の中を覗く。

何人かのウマ娘が本を読んだり、勉強を行っていたりするのがわかるが、ゴールドシップの言う心当たりのある人物とは誰なのだろう。

 

「どれどれ…おっ! いたぜ、アイツだ 」

 

と小声でゴールドシップが指を指したのは、一人でイスにちょこんっと腰掛け、物語本を読んでいる、右目を覆い隠すほど長い黒髪ショート伸ばした小柄なウマ娘。

私も面識があるライスシャワーだった。

 

「ライスはまだどのチームにも入ってなかったはずだ。 それに、アタシとシライシの両方と面識がある。 他のやつらよりかは可能性があるはずだぜ 」

 

鼻息をフンッと鳴らしながら、自信満々に話すゴールドシップ。

確かに彼女の言うことは理にかなっている。 ライスシャワーならチームに加入してくれるかもしれないが、問題は彼女にどうアプローチをかけるかだ。

 

その旨を二人に伝えると、ゴールドシップは

 

「アタシに考えがある 」

 

と返した。

 

「言ってみてくださいまし 」

 

マックイーンが彼女に尋ねると

 

「まず、シライシがライスを図書室の外へと誘い出す。 そこをアタシが捕獲して部室へと連れ込むんだ。 後はマックイーンがシライシにやったように加入するよう迫れば、ライスは落とせるはずだぜ 」

 

……要するにごり押しである。

上手くいくか疑問に思う作戦だが、私を除く二人は成功を確信しているようなので、多数決で決行が決まった。

まあ、私の負担は少ないから別にいいんだが。

 

「久しぶり 」

 

図書室内なので、囁くようにライスシャワーに話しかけた。

「ひゃっ!? …あ、シライシさん? なんだ…ビックリした 」

 

よほど本に熱中していたのか、彼女は私が近くまで来ていたのを察知していなかったらしい。

この分だと外から覗いていたこともバレていないだろう。

 

「あー…タキオンが呼んでたよ。 ちょっと手伝ってもらいたいことがあるんだって 」

 

「タキオンさんが? わかった。 ライス頑張る! 」

 

口からでまかせで彼女を誘い出すことに成功したが、あまりにも素直すぎる彼女を騙すと、なんだか胸が痛む。

しかし、これもチームのためと心を鬼にして彼女を図書室の外へと誘導すると

 

「どっせぇぇい!!! 」

「ひゃあああ!!? 」

 

外で待ち構えていたゴールドシップが、麻袋のような大きな袋でライスシャワーを包み込み、そのまま抱えて行ってしまった。

 

…一応私も部室へと向かうが、後はマックイーンがなんとかするだろう。 彼女の……力強い話術ならきっとライスシャワーを引き込めるはずだ。

 

そんなことを考えながら、私はゆっくりと部室へ向かった。

 

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