昨日の模擬レースから一日が経った。
私は昨日の帰り際、ゴールドシップから言われたとおり正門へ向けて歩みを進めている。
この時間帯はほとんどのウマ娘がトレーニングを開始するため、正門への道は人通りが全くと言っていいほどなく、閑散とした状態だ。
そうなると、身長が高くて目につきやすいゴールドシップは遠くからでもよく目立ち、私はすんなりゴールドシップと合流できた。
「おお、ちゃんと来てくれたんだな 」
ぶっきらぼうにそう言った彼女に対して、「そっちが呼んだんだろ 」と心の中でツッコミをいれつつ 「まあね 」と簡単に返す。
「こんなとこで話しててもなんだし、さっそく行くか。アタシについてきな 」
ゴールドシップはそう言って隣に立て掛けてあったセグウェイに乗ると、私を先導するように前を走った。
「どこに行く気なの? 」
と尋ねてみたが、返ってきた返事は
「イイトコ 」
というなんとも曖昧な答えで、彼女を無視して逃げ出してしまおうかと考えたが、さすがに悪いと思い黙って彼女についていくことにした。
「…おまえ、速いのか? 」
不意にゴールドシップが私にそう問いかけてきた。
彼女の方を見てみると、さっきまでとかわらず、前を向いてセグウェイを操縦していた。
「そんなに速くないよ 」
と私の正直な自己評価を返すと
「…そっかぁ……。でも、昨日のレース、凄かったぜ 」
と言われた。
他人から褒められるのに対して悪い気はおきないが、あくまでも私は「そうでもないよ 」と返答をした。
ゴールドシップ……。
彼女もトレセン学園にいるくらいなのだから、きっと私よりずっと速くて、ずっと強いんだろうなぁ。 とぼんやり考えていると「飴ちゃん舐めるか? 」とこれまた唐突に聞かれた。
断るのもなんだか申し訳ないので、「ありがとう 」と言って飴を受け取りその場では開けずにポッケにしまっておいた。
…少なくとも、悪い人じゃなさそうかな。
それからは特に彼女から話しかけられることはなく、ひたすら彼女の後ろを歩いていくと、ピタリと彼女がセグウェイを止め、私の方を振り返って口を開いた。
「ここがアタシ達のチーム《シリウス》の部室だ 」
※※※
ある春の日のこと
今日は何をして楽しもうかと考えていると、なにやら他のウマ娘達がざわざわと騒がしいことに気がついた。
アタシはなんだか面白そうな予感がしてので、そいつらが向かっていく方向についていき、何があるのか確かめることにした。
到着したのはトレセン学園の中距離用レース場。
他のやつらの話を聞くに、今から転校生を交えて模擬レースをやるらしい。
やっぱり面白そうな予感がする。
そう確信したアタシは、ポケットから愛用のルービックキューブを取り出して、馴れた手付きでそれを組み上げながらレースを観戦することにした。
レースは転校生が勝った。
周りの奴等の話を聞くと、転校生は地方で結構活躍していたらしくGⅢレースにも出場経験があるんだとか。
余計に気に入った。
あの転校生は絶対面白い奴だ。
そうと決まればさっそく挨拶しとかねぇとな。
他のウマ娘達がレースの感想やら、考察やらで盛り上がる中、アタシは一人レース場を出た。
※※※
今日は転校生を呼び出した日だ。
アイツが律儀に来るかはわからねぇけど、誘った立場である以上、アタシが約束を守らないと話が進まないため、正門のところで待っていることにした。
電線に止まっている雀の数を数えて暇を潰していると、誰かがこっちに向かってくるような気配が背後からしたので、振り返ってみると、昨日見た顔の奴が立ってたからゴルシちゃん号に乗り換えてシリウスの部室まで連れていく。
途中、いくつかの質問をして転校生の性格をはかってみた。
わかったのは、こいつがちょっとライスのヤツに似てるってことだ。
せっかく面白そうな匂いがするのに自己評価が蟻んこみたいだった。変に他人行儀だしちょっとポイントマイナスだな。
まぁ、アタシと会ったばっかのライスもこんなもんだったしそのうち面白くなるだろ。
そんな期待を込めて転校生を部室に案内した。