白石競走記   作:華燈始

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34.勝負

 

とある日の昼休み。

 

食堂で昼食をとり終えた私は、午後の授業が始まるまでの時間を読書に費やそうと一人、本を読んでいた。

本を開き、本文が始まるところまでペラペラとページをめくっていると、なにやら見慣れた顔が食堂へと入ってくるのが見えた。

ゴールドシップだ。

キョロキョロと食堂内を見渡す彼女と目が合うと、ゴールドシップは純真無垢な満面の笑みをうかべてこちらへと駆け寄ってきた。

 

「おっす! 昼飯食ったか? 」

 

と尋ねる彼女。

それに対して、「食べ終わったところ 」と返事をすると彼女はさらに頬を緩ませて。

 

「それなら、ゴルシちゃんと遊んでくれよ! 」

 

と、小学生の子供のようなお願いをしてきた。

まあ、私も午後の授業まで暇しているわけで、特に断るよう理由も無いため彼女のお願いを承諾した。

するとゴールドシップは

 

「決まりだな! そんじゃあ屋上行くぞ! 」

 

私の左手を引いて屋上へと連れて行こうとする。

なぜ屋上で遊ぶのかと聞いてみると、「ゴルシちゃんと言えば屋上だろ? 」というなんとも独特な答えが返ってきた。 こういう場合は深く考えても答えは見つからないと、半年ほど彼女といる経験からわかるので、その答えで納得しておくことにした。

 

ゴールドシップに連れられ、屋上へ上がる。

トレセン学園に来てから屋上へ上がったのは今日がはじめてだ。 屋上というだけあって、学園内で一番高い場所にあるここからは、周りに視界を妨げる障害物が無いため、いつもより空が広いように見え、なんだか不思議な気分になる。

一通り、いつもと違う空を堪能したので、上を見上げていた首を元に戻すと屋上には私とゴールドシップ以外にもう一人、ウマ娘がいた。

焦げ茶色の髪を肩甲骨のあたりまでのばし、灰色のニット帽を被っているウマ娘だ。

 

「来たなゴルシ…とあんた、誰だ? 」

 

どうやらゴールドシップは私の事を彼女に教えていないようで、ニット帽のウマ娘の方も困惑していた。

 

「おう! ナカヤマ! こいつは今日の勝負を面白くすると踏んで、ゴルシちゃんが連れてきたダークホースだぜ 」

 

ゴールドシップにナカヤマと呼ばれた彼女は、それを聞くと

 

「勝負を面白く。 か、お前がそう言うなら私も楽しませてもらおうか。 で今日は何で勝負するんだ? 」

 

と初対面である私を受け入れ、話を進めた。

私は遊んでくれと言われたからついてきたのだが、なぜだか2人の勝負とやらに巻き込まれることになってしまっている。

「今日の勝負はズバリ! 相撲だぜ! ナカヤマ! 」

 

「相撲か…いいだろう 」

 

私が混乱している間に2人はドンドン話を進めていく。 それに、相撲って普通、1対1の競技のはずだ。 3人いるということは総当たり戦でもやるのだろうかと考えていると。

 

「今日はシライシもいるし、1対1対1のバトルロイヤル形式でやるぜ! 1番最初に負けた奴は今日1日逆立ち移動な! 」

 

まさかのバトルロイヤルだった。 しかも無駄に頭おかしい罰ゲームまで用意している。 さすがにこんなゲームにはゴールドシップ以外のらないだろう。 そう考えていたのだが

 

「なるほど…。 いいねぇ。 絶対に負けられないという緊張感が最高に胸を熱くする! その勝負のった! 」

 

と彼女もノリノリで参加を宣言してしまった。

こうなっては仕方ない。 私も腹をくくり、ゴールドシップが提案した勝負にのることにした。

 

「土俵は屋上全体! つまり、場外無しの真剣勝負だ! いくぜぇ!! 」

 

ゴールドシップはルールの説明を終えるのと同時に、高く跳躍し私を目掛けて飛びかかってきた。

相撲は確かジャンプ禁止だったはずだが、こんな相撲と呼べるかどうか怪しい勝負では関係ないのだろう。

彼女は大きく手を広げ、こちらへ落下してきている。 彼女にどういった意図があるかはわからないが、私はこれに対処しなければ。

そう思い、とっさに体を動かして繰り出されたのは右回し蹴りだった。

相撲ってなんだっけと疑問に思いつつ、ゴールドシップの左脇腹にヒットした足をそのまま振り抜くと、その衝撃で吹き飛ばされた彼女の体は地面に衝突し、数回転げ回ったところで制止した。

 

「そういえば… 」

 

ゴールドシップを脱落させたタイミングで、ナカヤマが口を開いた。

 

「この勝負、1人脱落者が出た後2人が戦う理由無いな 」

 

さっきまでの興奮具合とは打って変わって、冷静な声で彼女は呟いた。

それなら、ここまでの時間は一体なんだったのだろうとなぞの虚無感を感じていると

 

「そろそろ次の授業始まるな。 ゴルシはそのうち勝手に起き上がるから、放っておいていいか。 それじゃ、またどっかで勝負しような 」

と彼女は屋上を後にした。

結局、ゴールドシップは私に飛びかかって何をしたかったのだろうか。

当の本人がノックアウト状態のため、真相は謎に包まれたままで終わった。

 





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