ゴールドシップに案内されてたどり着いた場所は、広大なトレセン学園の校庭の隅にひっそりとたたずむ、小さな小屋のような建物。 彼女が言うところの《シリウス》の部室だった。
イイトコって自分のチームの部室のことだったのか…。と言うか、そもそも私はチームにはまだ入らないと断ったつもりなのに。
頭の中でさまざまな感情が錯綜するが、私が声をあげるより前にゴールドシップは私の手を引いて部室の中に連れこんで行ってしまった。
「マックイーン!新しいメンバー連れてきたぜ 」
跳ねるような声色でゴールドシップはそう告げた。 マックイーンと呼ばれた彼女は、きれいな薄紫色のロングヘアーをした上品な雰囲気をかもしだすウマ娘だ。
部室備品であろうパイプ椅子に腰かけていた彼女は、先程まで読んでいた小さめの本をテーブルに置くと、スクッと立ち上がり
「ゴールドシップさん!あなた昨日、トレーニングをサボってどこほっつき歩いてましたの!? 」
と怒髪天を衝くような大きな声でゴールドシップの前まで駆け寄った。
「昨日はゴルシちゃん逆立ちボーリング大会に出場してたから来れなかっただけだよ。それよりもだ!マックイーンが喉から紅茶が湧き出るほど欲しがってたチームメンバーを連れてきたんだぜ?ゴルシ様を褒めてもいいのよ? 」
なんだか昨日別れ際に聞いた文言と違う気もするが……。
ゴールドシップはマックイーンの怒りをかわして、話を自分のペースで進めようとする。
「それを言うなら喉から手が出るほどですわ!それに、逆立ちボーリングとはいったいなんなんですの!? ああ!もう!ツッコんでたらキリがありませんわ!」
マックイーンは両手で頭を抱え、悲鳴をあげるように声をあげている。
なんと言うか、お気の毒に。
「……コホンッ。気をとりなおして、そこ方、はじめまして私はメジロマックイーンといいます。お名前をお聞かせ願えますか? 」
さっきまでのゴールドシップに振り回されていた調子とは打って変わって、すっかり落ち着いた様子で自己紹介をする彼女に一瞬戸惑いつつも、失礼のないようにこちらも自己紹介を返す。
「ご丁寧にどうも。私はシライシっていいます。あの、チームのことなんですけど… 」
私に話を振られたということは、自分の会話を広げる絶好の好機だ。マックイーンはゴールドシップと違ってしっかりしてそうだから、しっかり話せばこっちの事情を理解してくれるかもしれない。
そう思って会話を続けようとした矢先、私の話に割り込むようにマックイーンが切り返す。
「シライシさん、素敵なお名前ですわね。実は我々のチーム《シリウス》はメンバーが少なくこのままでは解散の危険がありますの。加入していただけると嬉しいのですが、いかがですか? 」
上品な口調の節々に圧のようなものを感じる……。
だけど、ここで折れるわけにはいかない。しっかりと事情を話さないと……
「あの、だから私まだトレーナーも決まってなくてですね。そういうのが諸々決着するまでチームのことは考えるつもりないんですよ 」
そこまで話したところで、先程まで黙り込んでいたゴールドシップまで会話に参入し
「トレーニング管理なら《シリウス》のトレーナーが見てくれるから心配すんなよ 」
とマックイーン側についてさらに話を進めようとする。
このままじゃマズイ。 そう思ってすぐさま口を開こうとするが、タッチの差でマックイーンに遅れをとり、ズルズルと会話の主導権を二人に奪われる。
「そうですわ!《シリウス》に入ればトレーナーのことは心配いりません!これで解決ですわね。ゴールドシップさん!シライシさんを生徒会室までご案内してください。善は急げ、さっそくチーム加入の手続きをいたしましょう。」
「ほーい 」
結局、なにも言えぬまま完全に流れを持っていかれてしまった。
せめてもの抵抗をしようとしたが、またもや初動が遅れたため、私より3cm程身長の高いゴールドシップに抱えられそれすらも封じられてしまった。
はぁ……災難だ。