白石競走記   作:華燈始

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41.初詣

記念、ホープフルステークスと年末のGⅠレースを終えると、あっという間に年越しをむかえる。

実家にいた頃は家族や友人、先輩達なんかと毎年初詣に行っていたが、今年はチームメイトの3人と行くことになった。

 

朝の支度を終え、ベッドサイドテーブルの上に置いておいた携帯の電源をつける。

部屋のカーテンを開けると、明るい太陽の光と雲がほとんど無い晴天の空が見えた。

初詣と言えば、太陽が昇る前の早朝に行くイメージがあるが、そんなに早い時間だと寮の外出可能時間外となってしまうため、昼間に行くこととなっている。

今日はトレセン学園の近くにある神社に現地集合する予定だが、今まで外が暗い時間帯に初詣をしてきていたのでなんだか新鮮な気分だ。

 

ほどなくして、振り袖を着たマックイーン、ライスシャワーといつも通りおしゃれな私服に身を包んだゴールドシップの3人が到着した。

当初、チームメンバーでの初詣を計画していたのはゴールドシップで、特に服装などこだわらずに集まる予定だったのだが、マックイーンが「せっかくの初詣なら晴れ着を着るべき 」と主張した。

ただ、私は一人暮らしに使わない着物なんて実家に置いてあるし、ゴールドシップに至っては小学生の時以来、着物なんて着ていないと言う。

ゴールドシップは、「着物を着たいなら着てくればいい 」と主張したが、マックイーンは「3人が私服の中で自分だけ晴れ着だと目立つ 」と返した。

そんなに張り切っているなら、お望み通りマックイーンには晴れ着を着てきてもらいたいのだがと私とゴールドシップが頭を悩ませていたところ、ライスシャワーが「自分も着物を着る 」と言ってくれたので本日はこの2人が晴れ着姿で参拝することとなった。

 

石階段を登りきり、神社の本殿があるところまで来ると、本殿前で数人が列をなして並んでいたがそこまで混雑はしていなかった。

列の最後尾に並んで、数分待てばすぐに私達の番がまわってくる。 後ろにには誰も並んでいないので、たっぷりとお参りできるだろう。

ということで、なにをお願いしようか考えていると唐突にゴールドシップが

 

「なぁ、知ってるか? 初詣のお願いは、1人ずつ声に出さないと叶わないんだぜ? 」

 

と話した。

初めて聞いた話だが、意外と雑学に詳しいゴールドシップが言うと本当のように聞こえる。

私は半信半疑なのだが、マックイーンとライスシャワーは完全にその話を信じたようで、マックイーン、ライスシャワー、私、ゴールドシップの順番でお願い事を声に出すことになった。

タイミングは、鈴を鳴らし2礼2拍手をした後だ。

 

カランカランと小気味いい音が鳴り、パンパンと拍手を合わせると、マックイーンからお願いをはじめる。

 

「す…スイーツを食べても太りませんように! 」

 

「皆が元気でいられますように 」

 

「無病息災 」

 

「………… 」

 

と私までは皆お願い事を声に出したのだが、言い出しっぺであるゴールドシップ無言で手を合わせていた。

 

「ちょっとゴールドシップさん!? お願い事は声に出すんじゃなかったんですの!? 」

 

「いや? ゴルシちゃん単純に3人がなにお願いするか知りたかっただけだから。 声に出すといいとかは知らねぇーよ 」

 

……。

彼女のマイペースさに絶句してしまったが、なんと言うか、彼女らしい気もする。 普段から基本こんな感じだし。

そして、この後マックイーンにお仕置きされるのもいつも通りというわけだ。

 

「ゴールドシップ! あなたという人はいつもそうやって! 」

 

「痛い痛い痛い!! マックイーン! 抜ける! ゴルシちゃんの国宝級サラサラ尻尾が抜けちゃう!! 」

 

それにしても、この2人は喧嘩する程仲がいいという言葉にぴったりと当てはまる気がする。 ゴールドシップが一方的にちょっかいを仕掛けるのを喧嘩と呼べばの話だが、よく好きな娘にはちょっかいをかけたくなるのいうのを聞くし、きっとそういうことなのだろう。 マックイーンもゴールドシップが嫌いなら徹底的に彼女を遮断するはずだし、現在の関係が続いているということは、マックイーンもゴールドシップにいじられるのをわるくは思っていないんじゃないだろうか。

……いや、彼女の尊厳に関わるからこれ以上は止めよう。

とりあえず、私が今すべきことは

 

「じゃ、ライスシャワーは私と一緒にりんご飴でも食べよっか」

 

「あ、うん。ライス唐揚げも食べたいな 」

 

ショッキングな絵面をライスシャワーに見せないよう、彼女を現場から遠ざけることだ。

 

 

※※※

 

本殿がある場所から階段を降りたところには、道沿いにさまざまな屋台が立ち並んでいる。

昼間になって、参拝客が減る時間帯なためすでに店を閉めてしまった屋台もあるが、まだまだ充分楽しめるだけの数は残っているだろう。 人が少なく、空いているためこのくらいの方が楽しめるかもしれない。

 

りんご飴、焼きそば、チョコバナナと次々と屋台を移るライスシャワーの後ろをついて行き、今度はベビーカステラの屋台に行った時。

人が少ないため、私は自分の後ろに立つからの視線を感じた。 じっと私の方を見ているように感じるということは、私に用があるのだろう。 振り返って誰が立っているのか確認してみると、つい最近見たばかりの顔が私の方を見つめていた。

 

「君は確か……ウイニングチケット? 」

 

彼女と向かい合うのは初めてなので、こんな名前だったかあまり自信はないが、ホープフルステークスでマックイーン、ゴールドシップと共に走っていたのでうっすらと記憶にあるのだろう。

 

「はい! ウイニングチケットです! 」

 

元気よく彼女は自身の名前を名乗ると、その勢いのまま

 

「私をシリウスに入れてください! 」

 

と迫ったのだった。

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