白石競走記   作:華燈始

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42.ウイニングチケット

「ええっと…とりあえず私には加入を決める権限とか無いからチームリーダーやってるマックイーンに言ってもらえないかな? まだ階段登った先にゴールドシップといると思うから 」

 

と、真剣な表情で私を見つめているウイニングチケットに伝える。

 

「わかりました! 行ってきます! 」

 

彼女はそう言うと、ダッシュで階段の方向へと走って行ってしまった。

真面目な娘…なのかな?

素直に指示に従ってくれるし、階段へと向かう彼女を見ればわかるのだが、急ぎつつも危なくないように走るスピードを抑えている。

初対面の印象としては、好感を持てると言ってもいいだろう。 最終的な決定権はトレーナーが持っているため、私はどうこうできないが、できることならチームに加入させてあげたいと思う。

 

※※※

 

ウイニングチケットを見送り、たくさん買った食べ物を頬張るライスシャワーをぼんやりと眺めていると、私の携帯に1件のメッセージが届いた。

メッセージはマックイーンから送信されてきたもので、内容は

 

『部室に戻ってウイニングチケットさんの面接を行うのでライスさんにも伝えてください 』

 

というものだった。

まさか今日の内にこの話を進めるとは思っていなかったので、メッセージを見たときは少し驚いたが、ウイニングチケットのことを考えるとはやく答えを出した方がいい案件だろうと納得し、名残惜しそうに屋台を見るライスシャワーの手を引いてマックイーン達と合流した。

 

「なあなあ、チケゾーはその話するためだけにわざわざ神社まで来たのか? 」

 

ゴールドシップはすでにウイニングチケットのことを気に入ったのか、後ろから抱きつくような姿勢で彼女にそう尋ねる。

「うん! 最初は部室に行ったんだけど誰もいなくて、トレセン学園の周りで皆がいそうな場所をハヤヒデに教えてもらって来たんだ! 」

 

と、ウイニングチケットはゴールドシップにホールドされていることに関しては特に触れず質問に答えた。

 

いきなり抱きつかれたら普通、何かしらの反応をすると思うのだが、彼女はこういうスキンシップに慣れているのだろうか? それともただ単純になんとも思っていないのか。

前者ならまあ、彼女を取り巻く環境のせいだろうが、後者だとしたら……なんと言うか、残念な感じの娘となってしまう。

 

そんなことを考えていると、いつの間にかトレセン学園に到着し、より深く考える前にウイニングチケットの面接の準備に取りかかることになった。

 

 

※※※

 

 

オフィス用の折り畳みテーブルを畳んで部屋の隅に置き、いつも使っているパイプ椅子を4席並べ、それと向かい合うように収納から引っ張り出してきた椅子を設置して面接の準備は整った。

 

「それではウイニングチケットさん、あなたの面接を始めますわ 」

 

いつにも増して真剣そうな声色で、マックイーンが話す。

やはり、面接官の方も相手がどんな人間性を持っているのか厳正に審査しなくてはいけないため彼女も気合いが入っているということなのだろうか。

 

「まずは、あなたがシリウスに入りたいと思った理由からお聞かせください 」

 

いろんな面接でよく聞くようなセリフから始まる。

まあ、志望理由も審査の上で重要な項目の1つだろうから聞いておかなければならないのだが、なんだかバイトの面接みたいだと感じた。

 

「はい! 私! ホープフルステークスでマックイーンさんとゴルシの走りを見て凄いと思いました! そんな2人の所属してるシリウスでトレーニングすれば、私ももっと速くなれると思って来ました! 」

「私! 日本ダービーで勝ちたいんです! 今まではハヤヒデやタイシンとトレーニングしてたんだけど、2人に全然追い付けなくて、トレーナーさんがチームに入ってもっとたくさんのウマ娘とトレーニングをしようって言ってくれました! 」

 

とこちらが少し圧力を感じるような大きな声で、ウイニングチケットはチームに入りたい理由を語った。

 

「なるほど…つまり、日本ダービーで勝つためにシリウスでトレーニングをしたいということですわね? 」

 

顎に手を当てるマックイーン。 視線はやや下の方を見ていて、なにか頭の中で考えをめぐらせているのが伺える。

しばしの間沈黙が訪れる。 考えるマックイーンに、期待を持った瞳で彼女を見つめるウイニングチケット。

下手に割り込めないような空気の中、スッとマックイーンが顔をあげ口を開き

 

「わかりました。 チケットさんの加入をトレーナーさんに伝えておきます。 正式に決定したら連絡いたしますわ 」

 

と伝えた。

 

「やっっったぁぁ!!! 」

 

両手をあげて、子供のように大はしゃぎするウイニングチケット。

そんなウイニングチケットに対して

 

「おっしゃぁ!! そうと決まればアタシに着いてこいチケゾー! 太陽の向こう側のサターンを捕まえに行くぞ!! カッシーニと一緒にリングの上でドーナッツパーティーだぜ!! 」

 

と、思わず頭の上に?マークが浮かぶようなことを言ったと思えば

 

「うおぉぉぉ!! よくわからないけどついてく!! ダァービィー!!! 」

 

ウイニングチケットもそれに答え、2人して外に飛び出して行ってしまった。

これには私も開いた口が塞がらない。

 

「マックイーンさん…あの2人、止めなくていいの? 」

 

唖然としている私の変わりにライスシャワーがマックイーンにそう尋ねると、マックイーンは

 

「ええ、構いませんわ 」

「チケゾーさんとゴールドシップさんにはライバル関係になってもらいます 」

 

そう言って彼女は不適な笑みをこぼしたのだった。

 

 

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