新年を迎えてから数日が経ち、1月も後半に差し掛かった頃。
このところ、クラスメイトやその他の生徒達の話題は、4月に行われるファン感謝祭のことでもちきりだった。
ホームルームの時間でも、クラスの出し物について話し合いが行われたりと、イベント3ヶ月前にしてすでに盛り上がりつつある。
ということで、トレーニングの時間前、マックイーン達に内のチームはイベントで何をやるのか聞いてみた。
マックイーンはハッとした顔をして
「そういえば……もう3ヶ月前ですわね 」
いつものキリッとした表情を崩し、口を開けパチパチと数回まばたきを繰り返している様子を見るに、何をやるか全然考えていなかったのだろう。
「準備もありますし、早めに決めておいた方がいいですわね…… 」
彼女は、自身の足元に視線を落としてそう呟いた。
「トレーニング後にでも話し合いましょう 」
善は急げということで、本日のトレーニングメニューの一部を削り、トレーニング後にファン感謝祭でやる出し物についての話し合いの時間がもうけられることになった。
※※※
部室内に置かれたパイプ椅子に、私を含む5人がそれぞれ腰かける。
1人人数が増えただけだが、いつもと違う景色のように感じて新鮮だ。
しみじみとそんなことを考えていると、さっそく増えた人員であるウイニングチケットが「ハイハイ! 」と元気よく右の手を天井に向かってあげて意見を述べた。
「アタシ、皆で喫茶店やれば面白いと思うんだ! 」
「喫茶店……いいですわね! コーヒーや紅茶だけでなく、軽食やスイーツも一緒に作って、本格的なものにすれば人が集まりますわ! 」
ウイニングチケットの提案に両手を合わせ、嬉しそうにして自分の意見を付け加えるマックイーン。
「確かに面白そうだけどよ……皆料理できんのか? 買ってきたものそのまま出すのは違うだろ? 」
それに対して疑問を投げ掛けるのはゴールドシップだ。
彼女の言うとおり、コーヒーや紅茶はインスタントやパックがあるからできるだろうが、軽食となると簡単な料理くらいできないと現実的じゃないだろう。 それに喫茶店をやるとして、内のチームはメンバー5人で店をまわすことになるから、なるべく全員が料理をできないと何かしらのトラブルがあった時に穴埋めが難しくなる。
「試しに、この中で料理できるやつ手をあげてみろよ 」
ゴールドシップの言葉に応じてあがったのは、5人中2人。 ゴールドシップ本人と私だけである。
「これじゃあ喫茶店は流石に厳しいんじゃねぇか? 」
「うぅ……スイーツ……… 」
マックイーンはさっきまでの明るい表情から一変、眉尻を下げ悲しそうな顔でうつむいてしまう。
そんな顔をされたら、どうにかしてあげたい気持ちがわかざるをえないのだが、そもそもの人手不足に加えてそれを補えるだけの要素も無いとなると、もうどうしようも無いという結論に至ってしまう。
私だけでなく、ゴールドシップや他の3人もどうにかできないかと頭を悩ませる。
他のどのウマ娘と比べてもしっかり者で、責任感が強く、シリウスのリーダーまで担っているため忘れがちだが、マックイーンはチーム内唯一の中等部生。 1番年下であるにも関わらず、毎日チームをまとめるために頑張っている彼女を悲しませたくないがために、皆何か手はないかと頭をひねっているのだ。
しばらくの間、部室内には時折誰かの「うーん 」といったようなうなり声のみがこだまする静かな時間が訪れた。
どれくらいの時間、思考を巡らせ続けただろうか。 10分なんてゆうに超え、20分も目前に迫っていたかもしれない。
「思い付いた! 」
ライスシャワーから発せられたその言葉で、室内はやっと静寂に近い静けさから開放されたのだった。
「他の人数の少ないチームと一緒に喫茶店をやればいいんだよ! 」
「なるほどな、それならどうにかなりそうだな 」
なかなか妙案が出た。
この案なら、相手となるチームが上手く見つかりさえすれば現状の問題点である人材不足をどうにかできるだろう。
条件に当てはまるチームがいるのか、交渉を上手くできるのかなどの懸念点はあるが、やってみるだけの価値がある策だと思う。
「よっし! さっそく一緒にやってくれそうなチーム探しに行くぜ! 着いてこい! チケゾー! 」
「オー! 」
2人が、座っていた椅子から勢いよくバッと立ち上がり、部室の外へと駆け出そうとしたところを私が「ちょっと待って 」といったん止める。
「まずは、生徒会あたりに合同の出し物が可能か確認した方がいいんじゃない? 計画進めてる途中でルール違反でしたじゃ骨折り損のくたびれ儲けでしょ? 」
今は無理に急ぐ必要はない。 ファン感謝祭まではもう3ヶ月、されど3ヶ月あるのだ。 確認をとって、確実性をもたせるのには遅くても数日から1週間程度しかかからないはず。 だったら急ぐより回った方が得策なはずだ。
「そうですわね……では、わたくしが明日確認してきますわ」
マックイーンが賛同してくれたお陰で、それでもといった表情をしていたゴールドシップも「そうだな 」と納得し、今日のところはこれで解散となった。
今日はいつも頑張っているマックイーンのために、皆が一丸となって策を練ったわけだが、もっとマックイーンを甘やかした方がいいのかもしれない。 そう考えさせられる1日となった。