白石競走記   作:華燈始

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47.甘やかそう

日付は変わり、ファン感謝祭で他のチームと合同で喫茶店をやるという方針が決まってから1日が経った。

現在、マックイーンは生徒会室へチーム合同での出し物が可能か確認に行っているため、部室にはマックイーンを除くチームメンバーが揃っている。

この機を逃さず、私は3人にマックイーンをもっと甘やかすべきなのではという持論と、それに協力してくれるよう説得を行った。

 

「確かに…ライス、マックイーンさんにいろいろしてもらってるばっかりだったかも 」

 

「うぅ、マックイーンはチームで1番年下なのに、毎日頑張ってたんだ……感動したよぉ! 」

 

「なーんかマックイーンは年下って感じしねぇーんだよなぁ……なんでだ? 」

 

3人の反応は、納得や感涙などまちまちであったが、大方私の意見に賛同してくれた。

「じゃあ、マックイーンが戻ってこない内にどうやってマックイーンを甘やかすか考えようか 」

 

「「「オー!! 」」」

 

3人の合わさった掛け声を合図に、私達はそれぞれ意見を出し合い、いかにしてマックイーンを甘やかすのか議論した。

議論の中で私達の前に立ちはだかったのは、マックイーンの育ちの良さだった。

メジロ家という名家の出である彼女を甘やかすとなると、並大抵のことではダメなのではないかと、いくつもの案が潰されていった。

マックイーンが生徒会室から戻ってくるという短い時間の中、私達はただ1つ、いつも頑張っている彼女を癒したいという一心で試行錯誤を続けた。

 

 

 

そして遂に、マックイーンが部室へと戻ってきた。

 

ガラッ、プレハブ小屋の引き戸を開く音がし、その音が響く内に彼女は靴を脱いで部室へと入った。 その様子を私とライスシャワーは部室の外から、双眼鏡を使って確認している。

 

「お帰りなさいませ、お嬢様 」

 

戻ってきたばかりのマックイーンを迎え入れるのは、白と黒の2色で構成されたドレス、いわゆるメイド服に身を包んだゴールドシップだ。

名家のお嬢様であるマックイーンなら、家にメイドがいたはずというゴールドシップの意見のもと、彼女自らメイドとなってマックイーンの御世話をするということになっている。

 

「は!? はぁ、ゴールドシップさん? どういたんですの? そんな格好して、改まった口調で 」

 

マックイーンは少し困惑したような様子を見せたが、ゴールドシップの出番はこれからまだまだあるのでその内なれるだろう。

気にせず次だ。

 

「どうぞ、こちらのお席にご着席ください 」

 

マックイーンに先行して、ゴールドシップが椅子を引いて用意しておく。

ゴールドシップには、メイドの格好してマックイーンを甘やかすようにとしか言っていないので、何かの拍子に変なことをしでかさないか心配だが、今のところは大丈夫そうだ。

 

「あ、ありがとうございます 」

 

マックイーンが着席したのを確認し、私は計画を次の段階へ移行させるためライスシャワーに合図を出し、彼女を部室へと向かわせた。

 

「あら、ライスさん。 どこに行っていたんですの? 」

 

さっきよりマックイーンの声は小さくなっていたが、私は他のウマ娘より耳がいいので外からでも充分聞き取れる。

「あのね、ライスはマッサージするから、マックイーンさんはリラックスしててね 」

 

マックイーンはお嬢様だ。 彼女を満足させられる甘やかしとなると、すぐには用意できないというのが現実だった。

そこで考え出されたのがライスシャワーによるマッサージだ。

マックイーンはマッサージ自体なら、プロのマッサージ師から受けていることだろう。 質でいったら素人の私達がやるものとは比べ物にならないと思う。 しかし、ライスシャワーの感謝の気持ちがこもったマッサージなら、身体的な疲労を取り除けなくとも、彼女の心を癒すことができると踏んで採用された案である。

 

「あ、肩を叩くのですね。 ありがとうございます。 と言うか、皆さん一体どうしたんですの? 」

 

懸念点をあげるとすれば、ライスシャワーは肩叩きと肩揉みくらいしかできないということだが、おそらく大丈夫だろう。

さて、ここまで順調に第1、2段階と進んでとうとう私の第3段階の番だ。

ここまで温めておいた私のとっておきを手に取り、3人がいる部室へと突入する。

「! シライシさん! 助けてください。 2人の様子が少し変なんですわ! 」

 

マックイーンが何か言っているが、とりあえず関係ない。

私は計画を遂行して、マックイーンを甘やかさなければいけないのだから!

 

「はい! マックイーン! 鯛の天ぷらだよ! 塩かけて食べると美味しいよ! 」

 

私が温めておいたとっておきとは、私がダッシュで自宅に行き、大急ぎで揚げたこの天ぷらである。

誰かの手料理というのは、お店で食べる料理より美味しく感じるという私達の意見の合致の元作られた私の得意料理だ。 食べればマックイーンもきっと満足できるだろう。

 

「お嬢様、お紅茶が入りました。 どうぞ。」

 

完全にアドリブだが、いいタイミングでゴールドシップが紅茶を出してくれた。 これで満足すること間違いなしだろう。

 

「わたくしの味方はいないのですね……わかりましたわ。何が目的かわかりませんが、もう腹をくくりました。 まずは冷めない内に紅茶からいただきますわ 」

 

そう言って、カップを手に取り音を出さずに紅茶を1口飲んだマックイーンはそこから間髪いれずに

 

「なんですの!? これは!!? 辛い!! 舌が痛いですわ!!! 」

 

悲痛な叫びをあげた。

 

「こちらのお紅茶は、ラー油、唐辛子、からしをブレンドした特別なものとなっております♪ 」

 

「おっ……覚えておけ……ですわ……… 」

 

最後までゴールドシップを睨み付けながら、マックイーンはあまりのショックから気を失ってしまった。

目の前で起こったことに理解が追い付かない私は、しばらくテーブルに突っ伏すように倒れたマックイーンを見ていることしかできなかった。

 

 

30分後、目を覚ましたマックイーンによってゴールドシップはノックダウンされ、残された私とライスシャワーはどうにか事情を説明し、頭を下げ続けたことによりなんとか助かることができた。

計画の最終段階のためにケーキ屋へ、数量限定モンブランを買いに行ったウイニングチケットは、校門付近でエアグルーヴに捕まり連行されていたのだが、この事を私達が知ったのはさらに20分後のことだった。

 

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