翌日、メジロマックイーンから授業が終わり次第すぐに部室に集まるよう連絡が入った。
なにやら今後のチーム方針についてトレーナーから指示がおりたらしく、その通達のためだとか。
私は机の上に広げられたノートや教科書類をさっさと鞄に詰め込んで、言われたとおりに部室へとはやあしで向かった。
※※※
部室の戸を開けると、最近見慣れた顔であるゴールドシップが既に椅子に腰をおろしていた。
彼女のことだからてっきり遅刻するなり、サボるなりするかと思っていたのだが、こういう時では存外しっかりするらしい。
とりあえず、私も肩にかけている通学鞄をおろして適当な席に座った。
マックイーンが入室したのはそれとほぼ同時だった。
「お二人とも、集合時間前にお集まりいただきありがとうございますわ。今回、このような召集をかけたのは事前にお伝えしたように《シリウス》の今後の方針について、トレーナーさんから指示がおりたからです 」
マックイーンはそう話しながら、部室の奥に設置してあるホワイトボードの方へと足を進める。
「とは言え、そこまで長くなるような話ではありませんので手短にすませますわ 」
と言うと、マックイーンは制服のポケットからきれいに折り畳まれた紙を取り出して、それを広げる。
「まず、チーム運営に関してですが、今までチームメンバーの加入を主体として行っていましたが、シライシさんの加入で即時の解体の危険性はなくなったとのことです。ですので、これからはトレーニングに使用できる時間がより多く確保できるとのことです 」
彼女の声色は明るく、トレーニング時間が増えることを喜んでいるのがわかる。
こういうのを目の当たりにすると、私がチームに入ってよかったのかも知れないと思う。
「そして次は、私とゴールドシップさんに関わる話です 」
「お? アタシか? 」
ゴールドシップは自分が話題にあがるとは考えていなかったのか、少し間の抜けたような声で反応する。
「ええ、私とゴールドシップさんのデビュー後はじめてのレースの日程が決まりました。中山レース場、2000m、ホープフルステークスです 」
もうレースの日程が決まるのかと内心驚愕した。それもG1のレースだ。
やっぱり才能のあるウマ娘は違うんだなぁと、しみじみ感じていると先程まで大人しかったゴールドシップが急に立ち上がり
「うおぉぉ!!レースか! ついにこのゴルシ様の走りを見せつける日がきたぜ! ヒャッホゥ! 」
ゴールドシップは、新しいおもちゃをもらった子供のように喜び、右足をテーブルの上に乗り上げて大はしゃぎしている。
「嬉しい気持ちはわかりますが、レースまでまだ半年ほどあります。それにまだ話は終わっていませんわ 」
マックイーンが彼女をなだめると、よほど機嫌がいいのか素直に椅子へと座り直した。
「気をとりなおして、シライシさんに関してですがデビューは既に地方で行ったと聞き及んでいます。それも踏まえて出走レースはこれからのトレーニングや模擬レース等の様子を見て、判断するとのことです 」
「はーい 」
軽めの返事をしながら、話しに出た自分のデビュー戦を思い出す。
一度目の未勝利戦で、すごく緊張してペースを乱して4着。二回目は最初のレースを思い出して出走前に体調不良で取り消し、三回目でやっと初勝利したのは言い思い出だ。
「そして、チーム全体のトレーニング課題ですが、中距離から長距離コースを主に走り、体力強化をメインに進めるようにとのことです 」
すると、ピンっと立っていたゴールドシップの耳がシナシナとしおれていき、先程までとはうってかわって、「えー 」という不服そうな声をあげた。
「えーじゃありませんわ。 レースを走る上で体力は最も重要な能力です。さっそく今から学園の外周を走りに行きますわよ!」
気分屋なゴールドシップはその場で仰向けになって、嫌だ嫌だとじたばた暴れ始めたが、マックイーンは問答無用で彼女を引きずり外へと連れていった。
私は二人についていくように、少し遅れて部室を出た。