足を上げても、腕を伸ばしてもその筋肉が悲鳴を上げる。 そのため、着替えにはいつもの倍以上の時間がかかり、なんだか申し訳ない気持ちに苛まれながらとぼとぼと外へ出た。
「お! 遅かったじゃねーか。 てっきりゴルシ様でも見きれないスピードで逃げちまったのかと思ったぜ 」
と軽口をたたくゴールドシップは、いつもの見慣れた制服や体操服ではなく、白のブラウスにブラウンのワイドパンツを合わせた私服姿だった。
普段の行動や言動からは感じられないが、私服の格好を改めて見てみるとなかなかの美人であることがわかる。
美人女優やモデルとも遜色ない、抜群のスタイルで私服を着こなしている彼女を見ていると、多少時間がかかってでも、もう少しおしゃれな服を着てくればよかったと後悔してしまう。
クローゼットから適当に取った白Tシャツとジーンズという、おしゃれも流行も考えていない着こなしで彼女の隣を歩く自分の姿を想像すると、言葉では言い表せないような羞恥心がわいた。
戸締まりをし、彼女に連れられてやって来たのは私達が通うトレセン学園の正門前だった。
どうやら私の他にも後二人誘っているらしく、正門前を集合場所に指定したらしい。
私は他に誰が来るのか聞かされていないのだが、ゴールドシップ曰く、私と出掛けたい人を募ったらしい。寝耳に水とはまさにこの事だろう。
ただ、ここで癇癪を起こしたところでどうにかなるわけではないため、ひとまず彼女の言い分に了解し、せめて皆といるときに腹の虫が騒がないようにと家から持ってきたプロテインバーを食べて待ち時間を潰すことにした。
そんなこんなで待つこと十数分。
私達が待っていたであろう二人のウマ娘が、遠くからこちらに徒歩で向かってくるのが見えた。
片方は小柄な体格で、黒い長髪にクリーム色のワンピースをまとった可愛らしいウマ娘で、もう一方は茶色のショートヘアーに紫のベアトップと黒のスキニーパンツを合わせた大人びた雰囲気をかもしだすウマ娘だ。
「おーい! 待ってたぜー! 」
とゴールドシップが左右にブンブン手を振ると、二人とも自身の体の前で小さく手を振り返したので、待っていたウマ娘はあの二人で確定なのだろう。
ゴールドシップは小柄なウマ娘の頭をワシャワシャと撫でながら
「シライシは二人と初対面だよな。 紹介するぜこのちっこい方がライスシャワーで、こっちのマッドでサイエンスな方がアグネスタキオンだ。二人ともオモシれー奴だぜ 」
とゴールドシップは指を指しながら二人を紹介した。
「はっ、はじめまして…あの…ライスシャワー…です。 よろしく…お願いします 」
とたどたどしく挨拶をするライスシャワーは、私と目を合わせようとしては怯みを繰り返しながら、耳と尻尾をピコピコと忙しなくうごかしていた。 おそらく人と話すのが苦手なんだろうなとうかがわせる。
そして
「ご紹介にあずかったとおり、私がアグネスタキオンだ。 以後お見知りおきを頼むよ 」
と自己紹介するアグネスタキオンは、ライスシャワーとは対照的に、私と目を見合わせたまま堂々と挨拶を行った。
しかし、ゴールドシップが話していたマッドなサイエンスという不穏な呼称はどういうことなのだろう。 面倒事に巻き込まれなければいいのだが。
「おっしゃあ! 挨拶も済んだことだしさっそく行こうぜ! 俺たちの戦場によぉ! 」
と意気込むゴールドシップに連れられて、私達は駅周辺にあるゲームセンターへと行くことになった。
ゲームセンターでは交代でクレーンゲームをプレーしたり、太鼓を叩くリズムゲームを皆で対戦したりしながら三人との和気あいあいとした時間を楽しんだ。
なぜだか、アグネスタキオンにはまじまじと私の体…主に脚の方を見られていた気がするが、おそらくただの思い上がりだろう。 詳しく知らない方が幸せなこともあるはずだ。
過ぎていく時間を忘れて、ゲームセンターを大いに満喫した私達は、お昼時が近いということでゲームセンター近くのラーメン屋で昼食を取ることにした。
服の名前を調べるのに死ぬほど時間を使いました。日頃からファッションに気を遣っている人達は凄いんだなぁと実感しました。