side熊野優香
何だ、この気持ちは…
優香「…もう一度あの人間に会う必要があるな」
山から降りるとき、部下の1人が話しかけてきた。
「ん、姉貴はどこかへお出かけですかい?」
優香「そうだ」
「俺は近くの人里を襲ってみようと思ってましてね、ご用件が終わったら姉貴も来ます?」
優香「…やめておく」
「そすか…」
優香「じゃあな」
「お気をつけて」
スタスタ
ー数分後ー
途中で人里の近くを通ったため、人間に遭遇した。
「ひっ…鬼だ!」
優香「ほう、人間か」スッ
金棒を振りかぶる。
「あ、あぁ…」
人間は腰が抜けていた。
優香「…死ね」
ドゴッ!
……っ。
「…えっ?」
優香「とっとと離れろ、人間」
「は、はいぃぃ!」ダダダー
人間は逃げ出した。
優香「…何故だろう」
天助が言ったあの言葉…
『俺は鬼とむしろ仲良くしたいヤツだ』
アレを聞いてから人間を殺すのに躊躇いが生じた。
優香「…さっさと行くか」
スタスタ…
ー数十分後ー
途中で何度か人間に会ったが、一度も殺せなかった。
やはり私の中で躊躇いがあるのだろう。
優香「…ついたな」
コンコン。
扉を叩く。
…ガチャッ
扉が開いた。
天助「…熊野?」
優香「…よう」
天助「何のようだ?傷はちゃんと治療したハズだぞ」
優香「少し話があってな」
天助「そうか…入れ」
優香「失礼する」
ー居間ー
天助「…それで、何の話だ?」
優香「そうだな…」
私は今日起きた事を話した。
天助「………」
優香「何か思い当たりはあるか?」
天助「あるな」
優香「それは?」
天助「…単純だ。お前は人間を殺すのに躊躇ってる、それだけだ。それが何故かはお前が一番知っているだろ?」
優香「私がか…」
一昨日、いや天助に会う前までは人間を殺すのがむしろ楽しかったんだがな…
優香「…お前は私に勝っただろう?」
天助「戦いにか?そうだな」
優香「それでお前に情が湧いたのかもしれない」
天助「…そうか」
優香「私は、どうすればいいんだ?」
天助「………」
優香「…天助?」
天助「…俺は人間だ。普通は人間を殺すのをやめちまえ、と言うんだろうが…俺は違う。
お前はお前らしく生きろ、それだけだ」
……!
優香「それで、いいのか?」
天助「そうだ、それでいい」
優香「…ありがとう」
天助「大したことはしてねえよ」
優香「…さらばだ、天助」
天助「ああ、またな熊野「優香」…あ?」
優香「優香と呼べ。しないと気が済まない」
天助「…分かった。じゃあな優香」
優香「…ふっ、またな」
ガチャッ
何だか…
優香「スッキリとした気分だ」
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天助「優香…」
アイツ、俺に負けただけで俺に情が湧いたのか?
天助「…まあいいか」
鬼と仲良くするための第一歩だ。
次回もよろしくおねがいします。