呉爾羅ですが、なにか? 作:VSシリーズ
今回は、下層に落ちてから初めての強敵との戦闘の始まりになります。
お待たせしました。
まず、周りに他の魔物がいないことを確認する。
スキルによって強化された聴覚で耳を澄まし、同じく遠くまで見えるようになった視覚で辺りを見渡す。
そうして周囲の安全を確かめたうえで、訓練を始める。
地竜のスキルにより、圧縮された土の塊を、自分の真上に向かって射出する。
上に向かって打ち出された土の弾丸は、やがて重力がかかり続けたことで勢いが衰えていき、真下にいる私に向かって落ちてくる。
私は、やがて自分にぶつかっているだろう土の塊に命中させることを意識して、熱線を吐き出す。
確実に目標を砕けるように、熱線の種類はスパイラル熱線を選んで使用する。
土の弾丸に熱線が当たり、いくつもの破片に砕け散る。
それでも、分かれた塊は地面に向かって落下してきて、そのうちのいくつかは私に当たるコースにある。
ここからが本番。
集中、思考加速、予見、高速演算をオンにすることを意識する。
思考加速は、LV10になった集中のスキルから派生したスキルで、思考速度を加速させる効果があるみたい。
周りの動きがいつもより少し遅く感じられるんだけど、体の動きも鈍く感じちゃうというデメリットもある。
だけど、周囲の状況を把握する分なら高い有用性があるスキルだと思う。
高速演算は、演算処理のスキルがLV10になって進化したスキルで、このスキルで思考による演算が更に強化されたのを感じている。
予見は、予測の進化先のスキルで、発動すると、片方の視界でコンマ数秒先ぐらいの景色――いわば未来――が見えるようになるスキル……だと思う。
まだどんなスキルなのか正確に把握できる状態じゃないから、あくまで予想だけど。
で、それらのスキルを使い、降ってくる破片を避けていく。
思考加速で破片の位置を把握し、予見で動きを捉え、高速演算で自分なりに破片を避けていくためのルートを導き出し、動き回る。
この方法でよけきれない破片に関しては、熱線なり地竜のスキルで使える技なりで対応する。
そうしているうちに全ての破片が地面に落ちたら、周囲を警戒するところから再開する。
これが、私の新しく始めた訓練。
今あるスキルを伸ばしていくための、地道な方法。
私が持っているスキルの数は、覚えている限りでも50は超えている。
だけど、今までと同じ方法で鍛えているスキルを除くと、自分の力で強くしていけるスキルは多くない。
特に耐性系のスキルなんかは、役立つスキルだから私としても積極的に強化していきたいんだけど、ダメージを受けることでレベルが上がる印象が強いから、自分から鍛えることはできないと思う。
私一人でもレベルを上げていくことができ、かつ戦闘に役立ちそうなスキルは、集中、思考加速、予見、高速演算、それに命中と回避のスキルだった。
この訓練にて、思考関係のスキルを駆使しながら回避を行い、熱線などを目標に命中させることを意識することで、これらのスキルのレベルを上げていっている。
こうやって反復練習によるスキルの訓練をしていると、スキルのレベルが上がることによる効果の増大を、確かなものとして感じることができる。
そのことも、この訓練をするモチベーションになってくれる。
でも、目標回数に達したから、今日の分はここまでかな。
休憩に入ろっと。
ふう、神経使ったなー。
スキルのレベルは、集中するほど上がりやすいみたいだから、これぐらいしないと意味がないわけだけど。
でも、そのかいあってか、スキルのレベルもどんどん高まっていってる。
気のせいか、自分自身の種族が進化すると、スキルが成長しやすくなるような気がする……。
最近は、禁忌のスキルで得た情報から、鑑定とか探知とかの新しいスキルを獲得したりとかしていた。
けど今は、こういうふうに既存のスキルのレベルを上げるのを優先したほうがいいかもしれない。
探知みたいに、安易に取得したら後悔することになるかもしれないし。
その探知は、既にLV10になってる。
LV10になった探知から、新しいスキルが派生したり進化したりはしなかった。
発動すると頭が痛くなるのは相変わらずだけど、レベルが上限に達して性能が上がらなくなったのは有難い。
このおかげで、外道耐性のレベルが上がるごとに、探知がもたらす痛みが少しずつ軽減されていっているから、これを繰り返して実用性を上げていきたい。
探知の代わりに索敵用として使いだした、五感を強化するスキルの方だけど、こっちもレベルがどんどん上がってる。
あまり意識して使ってこなかったとはいえ、今までとは比べ物にならないペースでレベルアップするようになったのは予想外だった。
もしかしたら、並列意思のセンスに、これらのスキルを任せたおかげかもしれない。
並列意思を丸々一つ、五感強化系のスキルに集中させることで、熟練度がたまりやすくなったのかも。
そう考えると、並列意思のスキルのレベルを上げていきたいという気持ちが強くなってきた。
意思が多ければ多いほど、他のスキルのレベルを上げるうえでも役立つなら、ぜひそうしたい。
思わぬデメリットもあるかもしれないけど、とりあえず弱肉強食の環境で生き残るための力を優先しよう。
そういう意味では、進化前の並列思考のスキルを、早い段階からレベル上げしてきて良かったなーって思う。
並列意思なんていうスキルに進化するなんて完全に予想外だったけど、スキルレベルが上がりやすいっていう理由で鍛えてきたのが、まさかこんなに大きなリターンになるなんてね……。
自画自賛ながら、過去の自分に「よくやった!」って褒めまくりたい気持ちだよ。
鍛えると言えば、並列意思の熟練度をためるのにも、探知を使い続けるのがいいかもしれない。
探知による膨大な情報を処理するうえで、並列思考――および進化先の並列意思のスキルは、自然と使用することになる。
今は外道耐性を強化することを目的に探知を使用しているわけだけど、その過程で並列意思のスキルもどんどん強化されていくといいなーなんて思ってしまう。
現に、探知を使っているうちに並列意思のレベルが上がってるわけだし。
よし、体も十分に休めたし、精神状態も安定してる……はず。
日課になった探知、やりますか!
探知発動!
あぐっ!
相変わらず痛いな―ー!?
膨大な情報のなか、危険感知に大きな反応あり。
その反応は、私の背後からだった。
反射的に、前に向かって大きく跳躍しながら、体の向きを反転させる。
目に映ったのは、大きな、大きな蛇。
まだ私がフェネグルという種族だったとき、上の階で遭遇した大蛇。
おそらくその種族の進化形と思われる、二回りは大きくなっているほど巨大な蛇がそこにはいた。
その大蛇の、極太な鞭のような尻尾が、横から私に襲い掛かってきた。
さっきの跳躍で距離を取り始めていたとはいえ、この敵の存在を察知できなかった私に向かって放たれた攻撃は、私の頭に命中した。
大蛇の尻尾による攻撃の衝撃で、空中での移動先がずれ、体勢も崩れはじめる。
どうにか立て直そうとして、若干体を動かしにくいことに気づいた。
それでも気力を振り絞り、なんとか空中で体勢を整え、着地する。
《熟練度が一定に達しました。スキル『強麻痺耐性LV2』が『強麻痺耐性LV3』になりました》
……なるほど、どうやら今の攻撃には、相手を麻痺にする効果も含まれていたみたい。
しかも、攻撃を受けた箇所には、単に打撃を受けた痛みとは別に、内側から徐々に壊れていくような痛みが走り、さらに皮膚がジュウジュウと音を立てて溶けていくような感覚までする。
《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV5』が『酸耐性LV6』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV1』が『痛覚軽減LV2』になりました》
酸耐性のスキルレベルが上がったことからも、カエルの攻撃と同じ、酸によるダメージを受けていることは確実らしい。
ついでに、毒によるダメージも含まれていることは、この痛みから分かる。
毒の痛みは、嫌というほど味わったことがあるからね、うん。
つまり、この大蛇による攻撃には、物理的な威力に加えて、少なくとも毒・麻痺・酸という3種類のダメージが含まれていることが分かった訳だ。
おそらく、私が持っている火攻撃や土攻撃のように、自身のあらゆる攻撃に毒や麻痺を付与するスキルがあるんだと思う。
それを使って、さっきの尻尾による攻撃に、更なるダメージを上乗せしてきた。
こういう器用なことをしてきてない私にとっては、正直おそろしい。
酸耐性はともかく、毒や麻痺に対する耐性を高めてきて良かったと思う。
下手したら、毒によるダメージでアウトになっているか、麻痺で体が動かなくなって、そのまま一方的にやられてアウトっていう展開もあった訳だから。
ほんと、恐ろしい話だよ。
だけど、麻痺で体の動きが鈍くなっているのは、あまりよろしくない。
今のところは、少し動かしづらいっていうぐらいだけど、気配感知や危機感知によると、この大蛇は油断したら危ないほどの相手だから、この状況で安心なんてできない。
それに、麻痺を付与した攻撃を受け続けたら、さらに体の動きが鈍くなる可能性もある。
なら、この大蛇を相手にするうえで一番優先すべきは、できるだけ攻撃を受けないこと。
けど、体の動きに麻痺の悪影響が出ているわけだから、近距離で相手の攻撃をかわしていくのは難しいと思う。
この状態で大蛇からの攻撃を避けるには、十分すぎるほどの余裕――距離が必要だ。
他にどんな攻撃手段を相手が持っているかは分からないけど、こっちは距離を詰められずに遠距離攻撃していくのが望ましい。
つまり、私の十八番の出番。
さきほど自分の攻撃を回避しかけたのを警戒しているのか、じっとこちらの様子を窺って動かない大蛇。
実力が拮抗――もしくは、上回っている魔物を相手にするのは、かなり久しぶりのことに思える。
私の種族がフェネグラン――いや、フェネグルだった時以来かもしれない。
マテリア、センス、準備はいい?
[万全……とはいえないけど、とりあえず心の準備はできてる。
私は、あの大蛇の攻撃を避けることを優先しながら、熱線でダメージを与えていけばいいってことだね]
{私の場合は五感担当だから、戦闘中に何をすればいいのか分からないんだけど……}
じゃあ悪いけど、探知をお願い。
私は探知以外での情報収集とかに集中したいから。
{了解。
きつそうだけど、四の五の言う余裕はないだろうしね}
ありがとう。
フェネグラッドに進化してから、おそらく初めてとなるだろう激戦の予感。
いろんなスキルを手に入れてきたけど、それらを実戦でうまく使いこなせるか、不安はある。
だけど、その不安を乗り越えるぐらいじゃなければ、この世界で生き残っていくなんてできないだろう。
今まで培ってきた力を全開にして、この強敵に打ち勝つ。
以下、現時点の設定など
➀主人公のステータス
フェネグラッド LV6 名前 大原 雅美
・ステータス
HP:3941/4339(緑)
MP:2547/3882(青)
SP:4129/4485(黄)
:3743/4450(赤)
平均攻撃能力:4256
平均防御能力:4556
平均魔法能力:3747
平均抵抗能力:3807
平均速度能力:4503
・スキル
地竜LV7,龍鱗LV6,甲殻LV5,
HP高速回復LV6,
MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,
SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,
破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火強化LV9,土強化LV5,
火攻撃LV7,土攻撃LV6,
立体機動LV5,
集中LV10,思考加速LV2,予見LV3,並列意思LV2,記憶LV9,高速演算LV3,
命中LV8,回避LV9,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
鑑定LV2,探知LV10,
影魔法LV3,
過食LV8,
暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV8,大地無効,
猛毒耐性LV4,強麻痺耐性LV3,睡眠耐性LV5,酸耐性LV6,腐蝕耐性LV4,
恐怖耐性LV4,外道耐性LV7,苦痛無効,痛覚軽減LV2,
視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV2,堅牢LV2,道士LV1,護符LV1,縮地LV2,
呉爾羅LV10,
禁忌LV10,命名LV2,
n%I=W
・スキルポイント:95600
・称号
呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者
➁「進化するほどスキルが育ちやすいかも」という記述について
今作では、システムの恩恵を除外した
育ちやすいという設定になっている。
魂は肉体の影響を受けて変容するもの、というのは(自分が解釈した限りの)公式設定。
そして、ステータスやスキルは、システムによって能力として使えるようになった魂の一部。
ならば、進化によって肉体がより強力なものになっていけば、その分スキルやステータスが
強くなりやすくなると、今作では設定している。
原作でも、人族よりも素の身体能力が高い魔族は、同じ訓練量なら人族よりもステータスの伸びで
軍配が上がるらしい。システムの設定によるものかもしれないけど。
➂「並列意思を丸々一つ集中させることで、スキルの熟練度がたまりやすくなる」
今作での設定。原作の描写などを根拠にしている訳ではないので、この小説オリジナルの設定。
しいて言うなら、実戦などで集中するほどスキルのレベルが上がりやすくなるらしいので、
スキルの力で分割しているとはいえ意思の一つに集中させれば、その分スキルの熟練度が
たまるようになり、育ちやすくなると思ったため。
➃今回の敵である大蛇
種族名は「エルローバラギッシュ」。主人公が「VS蛇」で戦った蛇型の魔物、
「エルローバラドラード」の進化先と思われる魔物で、原作主人公はエルローバラドラードが
2回進化したらエルローバラギッシュになるんじゃないかと予想するほどの大きな体を持つ。
漫画版で登場した個体は、地龍に匹敵するほどのステータスを持つうえ、毒・麻痺などの
状態異常を始めとした攻撃スキルを多く有しており、それらの属性を強化するスキルまで
持っている。単純なステータスの数値だけで測ったら痛い目に合うこと間違いなしな相手。
今回、主人公が戦うことになる個体は、LVが1ケタ台のためステータス自体は主人公より
かなり低めなのだが、スキルの質は主人公より高めなのがいくつもあるため、楽勝にはならない。